「ドラッカー学会」講演 21世紀におけるチェンジマネジメントの本質 ―P.F.ドラッカー思想を読む― 平成22年11月14日(日) 社団法人 中部産業連盟 副会長 竹 内 弘 之 1.イノベーションの新展開 1950年代~1980年代 繊維、製鉄、石油化学、家電、自動車 エレクトロニクスなど壮大な科学技術の進歩 正:人類は快適で便利な文化生活を享受 反:反面、公害の多発、環境の破壊を招く 合:自然保護、環境循環型社会の実現 環境ビジネスの輩出 1980年代~ バイオテクノロジーは生命の神秘を明かし、人々 を病気から守った 正:長寿社会 反:高齢化社会という新しい課題を生み、貧富、老 若の対立で人間の退廃を予知。労働人口の高 齢化、年金増大、医療費増大など社会福祉問 題の拡大 合:長寿人生の享受、家族社会への回帰、福祉ビ ジネスの輩出 2.P.F.ドラッカー先生との出合い 「The Practice of Management」読書会 (開催:1954年~1956年) 名古屋経済人によるマネジメント研究会発足 主催:中部生産性協議会(中産連内に設立) 座長:津島染色整理(株)社長 遠山 静一氏 コーディネーター:南山大学 教授 小関 藤一郎氏 (社)中部産業連盟研究部長 高仲 顕氏 記録係:竹内 弘之(学生)ほか1名 学んだこと (1)経営管理者の役割と課題 (2)「経営管理」とは (3)「経営管理」のための組織と機能 (4)企業とは何か (5)企業の社会的責任 3.ドラッカーと考える21世紀の経営 (1)若きエグゼクティブの使命 「日本の若い世代のエグゼクティブ 21世紀を 担うエグゼクティブが直面する課題は何か」 「彼らが知らなければならない最も重要なこと は何か」 (2)文明の衝突と日本の役割 「21世紀における日本の役割と使命は何か」 (3)会社は誰のためにあるのか ― 新しい企業価値を求めてー 「21世紀には、企業は誰の利益のために 存在し、奉仕すべきか、企業の価値は何で あるべきか」 (4)グローバルなITの時代 ― 求められる経営者のリーダーシップとはー 「IT時代のビジネスリーダーには、どのような 資質や能力が求められるのか、明日のビジネ スリーダーに求められる資質や能力は、20世 紀を築いたビジネスリーダーのそれとはどこが 違っているか」 (5)コーポレートガバナンス ― 多様性を源泉とするグループ経営の実現ー 「日本の多くの企業が、取締役と執行責任者と を切り離している」 「日本は持株会社が可能となり、企業グループ という形に移行している動きが出てきたが、成 功のカギは何か」 (6)「チェンジ・リーダーの条件」 本書の中で主題として取り上げられているの は、「マネジメント」である。「マネジメント」につ いては、彼の初期の代表的な著作 「現代の経営」(The Practice of Management) において、ドラッカー経営学の核心として明ら かにしている。 チェンジ・マネジメント ー成長追求型経営の転換とその対応ー 歴史に見る経済のターニング・ポイント 1971年 ・為替固定相場制から変動相場制への 移行 ・ペーパー・マネー・ソサエティ時代 1975年~1985年 ・金為替本位制の崩壊 資本の世界的流動化と膨張 ・東アジア諸国の工業化伸展の基礎条件 が整う 背景:アメリカの規制緩和による貿易の自 由化。その結果として輸出だけを目 的とした工業化が進行 1985年~1990年 ・急激なエレクトロニクス技術の進歩 ・加工機のメカトロ化を生み自動加工機に よる技術なき高品質製品の生産拡大 1990年~1995年 ・メガ・コンペティション・エイジのはじまり ・華人系資本が工業分野へ参加 ・工業の高度知的産業時代の終焉 産業の歴史的転換点 ラジオ・テレビ 21世紀への突入 デジタル情報産業社会 電 話 無線モールス信号 コンピューター 高度情報社会 デジタル情報革命 自らの頭脳の何億倍も 速く単純計算や情報処理 有線モールス信号 モールス信号 工業社会 産業革命 自らの能力をはるかに 超える大きな力を発揮 農業社会 農業の発生 飢えへの恐怖からの解放 21世紀型企業への転換のポイント (1)日本経済は、成熟化社会にあり、新たな 局面は、「雇用なきゆるやかな成長」である。 (2)産業構造の転換に伴い余剰人員が生じ、 産業間・職種間の労働移動がはじまる。 (3)労働力人口(15歳~64歳)は、急速に 高齢化が進み、一方若年層が減少する。 また、労働力人口の伸び率は鈍化し、中高 年とくにホワイト・カラーの過剰化が進行。 (4)高コスト体質の改革促進と余剰労働力の削 減強化 (5)日本企業の海外現地化、技術移転、 東アジア諸国の工業化による発展 結果として、日本国内の産業空洞化が拡大 以上を克服することが21世紀型企業への 道である。 新しい工業化国のあり方 規制緩和された 先進諸国 巨大な外国資本 の導入 国内市場を持たない 製造業立国 低賃金・豊富な労働力 エレクトロニクス化された 設備導入 中国沿岸部を含む東アジア 工業部品工業 チェンジ・マネジメントの焦点 新しい歴史胎動の時代 経営哲学をもった企業経営者出現の期待 ①キーワードは理念・熟慮・決断・責任 ②グローバルな見識 ③少ない情報から大きな決断 ④スピーディな決断と実行 技術革新の流れ エレクトロニクスと通信情報分野が経営の あり方を変える。 チェンジ・マネジメントによる新たな挑戦 ダイナミック組織の動向 (1)組織編成の目的 ・いかに価値ある仕事を効率的に実行し利 益を生み出すか ・いかに業務プロセスにおいて、組織の活 性化、人材の育成ができるか 社長 フラット化 カンパニー 権限委譲 人材育成配置活用 社内資本制度の採用 利益責任をもち独立採算制 (2)カンパニー組織 ・複数の事業単位を組織化 ・経営資源(人・物・金・情報)の結集 ・フラット化組織 トップ 生 産 部 門 プロジェクト・ チーム (3)ネット・ワーク組織 ・意思決定の迅速化 ・プロジェクト・チームによる仕事の効率化 ・人と組織の関係を柔軟化した組織 トップ 策定 策 定 常務 大部屋 本部長 実行 (4)アクション実行型組織 ・トップ・マネジメントを大部屋化し、常にコン センサスをとる ・トップ・マネジメントが実行の指揮をとる組織 (5)バーチャル・コーポレーション VIRTUAL CORPORATION ・技術の共有、コスト分担 部品・製品の共同開発供給、販売 ・外部経営資源を有効活用する組織 以上、多様な組織形態を研究、導入する 雇用・就業形態の多様化 ・産業構造の変化、業種格差、企業成長の 減速により雇用の需給変化 ・労働市場の構造―ゆるやかに流動化 ①「長期蓄積能力活用型」 ・長期継続雇用 ・処遇は、職務・階層別に決定 ②「高度専門能力活用型」 ・専門的熟練・能力を評価し活用、長期 雇用を前提としない ・プロジェクト契約、期間契約 ・成果主義を前提とした年俸制賃金 ③「雇用柔軟型」 ・フリーター ・定型業務から専門的業務までニーズに 応じた雇用 採用・雇用条件の多様化 ・定期採用と異なり年間を通じた複線的採用 制度を導入 ・雇用期間、労働時間、勤務体系、労働日、職種、 勤務地などにより柔軟な採用を導入 ・高齢者採用のための選択的再雇用制度の導入 ・個別契約更改制度の導入 複線型人事システムの導入 ・能力適正、意欲を中心に職能資格制度を採用 ・基準を明確化し、昇格、降格、任期制を導入 ・企業内外に通用する専門能力の開発、 育成制度を確立 ・目標管理と人事評価制度を関連させた自己確 認型の評価制度を導入 チェンジ・マネジメント・その視点と分野 (1)インター・ネットの活用、ペーパーレスの 迅速な情報交換で取引を効率化 CALS(COMMERCE AT LIGHT SPEED) などNETWORKによる協業体制の確立 (2)企業イメージの確立と独自市場の創造、 優位性の発揮 ①コア・コンピタンス経営 CORE COMPETENCE 「企業力」再発見し、資源を集中投入し 競争力の強化をはかる ②ベンチ・マーキング 他社に学べ ③TQM TOTAL QUALITY MANAGEMENT 経営全般の質的向上のための企業 活力の展開 ④ISO9000認証 国際的な品質規格への対応 ⑤脱コンベア生産方式の再起 多品種少量生産における高生産性向上 のための生産方式のとりくみ ⑥コンカレント・エンジニアの導入 CONCURRENT ENGINEERING 開発から製造、販売までの業務システ ムの再構築開発期間、コスト、製品完成 度の飛躍的改善 期間短縮 所 要 工 数 企 画 開 発 生産準備 販売準備 時間 新方式→ 従来→ ⑦アウト・ソーシング 戦略性の低い業務の外部委託により コア業務の集中的強化 戦 略 的 重 要 度 パートナー・ シップ 放 棄 自 前 アウトソーシ ング外注化 自社の遂行能力 ⑧環境管理・環境監査制度 ・環境と経済効率の両立 ・クリーン・マーケティング 結 ―環境は常に新しいマネジメントのあり方を要求するー トップ・マネジメントのリーダー・シップ ・モノの本質を見きわめる ・企業家精神とパイオニアとしての気概を もつ
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