わが国のタバコ規制の現状と課題

2008.2.10 横浜
第17回日本禁煙推進医師歯科医師連盟学術総会
わが国のタバコ規制の現状と課題
日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長
(大阪府立成人病センターがん相談支援センター)
大島 明
FCTC発効以降のわが国のタバコ規制の動き
2005年2月27日 WHO「たばこ規制枠組み条約」発効 (2008年1月20
日現在締約国数:152カ国 )
2006年2月 第1回締約国会議開催、日本は事務局予算801万ドルのうち
22%を負担する最大の拠出国となる
2006年4月 保険診療報酬改定の中に「ニコチン依存症管理料の新
設」、6月にはニコチンパッチの薬価収載
2007年4月 標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)公表 2月に
は暫定版に対して日本公衆衛生学会意見表明
2007年5月 世界禁煙デー テーマ「たばこ、煙のない環境」(厚労省訳)
2007年6月 がん対策推進基本計画を閣議決定、喫煙率削減の数値
目標は見送り
2007年7月 第2回締約国会議開催、FCTC第8条履行のためのガイド
ラインを全会一致で採択
2007年7月 日本学術会議シンポ「脱タバコ社会の実現を目指して」
2007年10月 禁煙推進議員連盟タバコ税の大幅引き上げを決議
2007年10月世界医師会「タバコ製品の健康障害に対する声明」更新
日本のタバコ規制対策採点表
Tobacco Control Scale (Tobacco Control 15:247-253,2006)に沿って大島が試算
05年7月
07年1月
1.タバコ価格 (最高30点)
8
7
2. 職場や公共の場所の禁煙 (最高22点)
3
4
3. 政府の禁煙対策予算 (最高15点)
0
0
4. タバコ広告や販売促進の禁止(最高13点)
5
6
5. タバコ箱の大きな直接的警告表示(最高10点)
4
4
6. 喫煙者の禁煙指導診療(最高10点)
1
6
21
27
合計(最高100点)
タバコ規制の進展、欧州30カ国と日本の比較
(2005年→2007年)
Tobacco Control Scaleを用いた評価 (Tobacco Control 15:247-253,2006)
100
9 3 イギリス
80
アイルランド7 4
ス
コ
ア
60
平均 4 7
40
52
ヨーロッパ
30ヵ国
ルクセンブルグ
26
20
21
3 5 オーストリア
27
日本
0
2005年
2007年
WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008 - The MPOWER package
2月7日に公表されたWHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008 - The
MPOWER package(http://www.who.int/tobacco/mpower/en/)の付録を見ると、日
本のタバコ規制の取り組みが世界の中で取り残されていることがさらに明確となる。
2007.4.21毎日新聞
広橋説雄国立がんセンター総長
(がん対策推進協議会会長代理)
どんな対策をとるべきか、最後に決めるのは
国民だが、専門家として主張すべきことは主張し、
情報提供にも力を入れたいと思う。
国はたばこ産業に配慮し喫煙率の削減目標を
掲げていないが、同協議会は喫煙率の半減を
打ち出した。
「喫煙は、はっきりとした発がん要因で、喫煙率の
削減なしに対策は進まない」。
がん対策による死亡率減少割合の試算(大阪府)
<各対策による死亡率減少割合>
150
大阪府におけるがん死亡率は減少傾向
10年間で約10%は現状のままでも減少する
全
が
ん
年
齢
調 100
整
死
亡
率
(
人 50
口
十
万
対
)
喫煙率の激減
1.7 %
20年後
には
3.6%減
肝炎ウイルス検診
体制の充実 0.9 %
10%減
10%減
早期診断の
推進
4.3 %
さらに約10%の死亡率減少の実現には
各項目ごとの具体的な行動計画に基づいた
対策が不可欠
がん医療の
均てん化
2.9 %
0
1990
1995
2000
2005
2010
2015
(大阪府立成人病センター調査部)
asahi.com>健康>医療・病気> 記事
国のがん対策原案、10年間で死亡率2割減が目標
2007年05月18日
4月施行のがん対策基本法を受けて、厚生労働省は18日、患者や医師、識者らで作
る厚労相の諮問機関「がん対策推進協議会」に国の基本計画の原案を提案した。75歳
未満のがんによる死亡率を今後10年間で20%減らす目標を盛り込む一方で、喫煙率
の削減については数値目標を見送った。
原案は、▽予防対策と早期発見▽全国どこでもがんの専門医療を受けられるようにす
る▽研究の推進などが柱。全国のがん拠点病院で5年以内に放射線療法・外来化学療
法を可能にすることや、在宅での緩和ケアの推進などが盛り込まれた。
数値目標は死亡率のほか、5年以内に乳がんや大腸がんなどのがん検診の受診率を
50%以上にするとした。現在の受診率は、がんの種類によって13.5~27.6%。
一方、喫煙率については、4月の協議会では「半減」でいったんは合意したが、原案は
「受動喫煙防止、広告規制、普及啓発など各種の方策を適切に行う」との表現にとどまっ
た。厚労省は00年と昨年、国民の健康づくりの計画「健康日本21」に喫煙率の数値目
標を盛り込もうとしたが、たばこ業界や自民党などの反対で断念している。
喫煙率について、同省がん対策推進室は「数値を盛り込めばいいというものではない
。たばこ対策を幅広くとらえ、打ち出していくことが重要だ」と説明している。
厚労省は今月中に基本計画案をまとめ、6月中の閣議決定を目指す。この基本計画を
もとに、各都道府県は年度内に計画を作る。
肺がん、肺がん以外のがん、循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD) に分けて、
禁煙によるリスクの軽減に関して、系統的に文献レビューをおこなった。
禁煙後の肺がんリスクのまとめ(IARC Handbook, 2007)
• 禁煙者における肺がんのリスクは、喫煙継続者に
比べて相当に減少する。ただし、禁煙しても肺がん
のリスクの絶対値は減少しない。喫煙継続者におけ
る肺がんリスクの急激な増大を、禁煙により避ける
ことができる。
• 禁煙後5-10年以内に、肺がんのリスクは、喫煙継
続者に比し減少が明らかになり、禁煙期間が長くな
るとともに、禁煙者と喫煙継続者のリスクの差は増
大する。
• ただし、長期間禁煙しても肺がんリスクは、非喫煙
者のレベルにまではもどらない。
禁煙後の冠動脈疾患のリスクのまとめ(IARC Handbook, 2007)
• 禁煙者のリスクは喫煙継続者に比べて相当に減少
する。
• 禁煙後2-4年以内に、冠動脈疾患のリスクは、喫
煙継続者に比し35%程度に減少する。
• 禁煙後10-15年で非喫煙者のリスクと同様の大き
さになるとする研究もあるが、10-20年後も10-
20%増が続くとする研究もある。
• 誤分類などの方法論的な問題があるが、禁煙後非
喫煙者のリスクに漸近するということは出来る。
出生コホート別
現在喫煙者0~29歳累積割合(prevalence-years of current smokers, age 0-29)
および過去喫煙者0~69歳累積割合(prevalence-years of ex-smokers, age 069 )
Prevalence-years of
current smokers, age 0-29
Prevalence-years of
ex-smokers, age 0-69
Ever- smokers
Ex- smokers
Current smokers
(祖父江先生作成のスライド)
Fig. 6 US, white, male
1900 birth cohort
1930 birth cohort
100
80
Smoking prevalence
Smoking prevalence
100
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
米国白人、男性
80
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
0
10
20
30
40
Age
1910 birth cohort
80
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
70
80
90
80
禁煙者は、30歳から増加、
後年出生コホートほど若い時か
ら増加
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
0
10
20
30
Age
40
50
60
70
80
90
80
90
Age
1920 birth cohort
100
1950 birth cohort
100
80
Smoking prevalence
Smoking prevalence
60
1940 birth cohort
100
Smoking prevalence
Smoking prevalence
100
50
Age
現在喫煙者は、12歳から増加
、30歳でピーク、以降減少
ピークは後年出生コホートほ
ど若い(1950年で25歳)
ピークの高さは、1900-30年
で一定、その後減少
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
80
60
Ex-sm oker
40
C urrent sm oker
20
0
0
10
20
30
40
50
Age
60
70
80
90
0
10
20
30
40
50
Age
60
70
(祖父江先生作成のスライド)
Fig. 7 Japan, male
1930 birth cohort
100
80
80
Smoking prevalence
Smoking prevalence
1900 birth cohort
100
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
日本人、男性
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
0
10
20
30
40
50
60
Age
70
80
90
0
10
1910 birth cohort
40
50
Age
60
70
80
90
1940 birth cohort
Smoking prevalence
Smoking prevalence
30
100
100
80
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
80
Ex-sm oker
60
禁煙者は、40歳から増加、
後年出生コホートほど若い時か
ら増加(米国より少ない)
40
C urrent sm oker
20
0
0
0
10
20
30
40
Age
50
60
70
80
0
90
10
1920 birth cohort
20
30
40
Age
50
60
70
80
90
80
90
1950 birth cohort
100
100
80
Ex-sm oker
Smoking prevalence
Smoking prevalence
20
現在喫煙者は、20歳前に急増
(米国よりも)、40歳でピーク
、以降減少
ピークは後年出生コホートほ
ど若い(1950年で25歳)
ピークの高さは、1900-20年
で一定、その後減少(米国より
高い)
60
40
C urrent sm oker
20
80
Ex-sm oker
60
40
C urrent sm oker
20
0
0
0
10
20
30
40
50
Age
60
70
80
90
0
10
20
30
40
Age
50
60
70
(祖父江先生作成のスライド)
生年別、年齢階級別肺がん死亡率の推移、日米の比較
( 米国 )
( 日本)
75歳-
75歳-
70-74歳
70-74歳
65-69歳
60-64歳
65-69歳
死
亡
率
(
人
口
1
0
万
対
)
55-59歳
60-64歳
55-59歳
50-55歳
50-55歳
45-49歳
45-49歳
40-44歳
40-44歳
35-39歳
35-39歳
出生年
出生年
平成18年度診療報酬改定における
ニコチン依存症管理料の新設について
ニコチン依存症について、疾病であるとの位置付けが確立されたことを踏まえ、ニコ
チン依存症と診断された患者のうち禁煙の希望がある者に対する一定期間の禁煙
指導について、新たに診療報酬上の評価を行う(4月1日より)
ニコチン依存症の管理に伴う場合、禁煙補助剤(ニコチンパッチ)を診療報酬の対
象とする。(6月1日より)
ニコチン依存症管理料
• 「禁煙治療のための標準手順書」※に沿って外来で禁煙治療
• 12週間にわたり計5回
• 対象患者
- スクリーニングテストでニコチン依存症と診断
- 1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じた数が200以上
- 直ちに禁煙することを希望し、文書により同意している者
ニコチン依存症管理料に
関する施設基準
• 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること
• 禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を1名以上配置していること
• 呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること
• 医療機関の敷地内が禁煙であること
※ 日本循環器学会、日本肺癌学会及び日本癌学会により作成
ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における
禁煙成功率の実態調査
(中医協診療報酬改定結果検証部会、2007年4月18日)
• この調査は、2006年12月から2007年1月にかけて
2006年7月1日現在ニコチン依存症管理料を算定し
ている施設から無作為に抽出した1000施設を対象
として実施され、このうち501施設が回答した。
• 1施設あたりの1ヶ月の初診の患者数(2006年11月)
は2.92人であった。これを2007年1月末現在の
4251施設に当てはめると、1年間に約149,000人と
推定される。
• これは日本の喫煙者総数約3000万人の0.5%に相
当する。
ニコチン依存症治療の状況別にみた
指導終了9ヶ月後の状況
3次調査
合計
3 2 .6
4 .6
3 3 .3
2 3 .9
5 .6
(N=2546)
1 回目で中止
1 3 .5
4 .4
3 7 .5
3 3 .3
1 1 .3
(N=459)
2 回目で中止
2 2 .2
4 .5
3 4 .7
3 0 .1
8 .4
(N=418)
3 回目で中止
3 1 .9
4 .0
3 5 .2
2 4 .6
4 .4
(N=480)
4 回目で中止
4 0 .7
3 .8
3 1 .3
1 9 .5
4 .7
(N=425)
5 回目終了
4 5 .7
5 .5
3 0 .1
1 6 .8
2 .0
(N=764)
0%
20%
(注)回収率は61.2%(一次調査回答施設456
施設のうち、279施設が回答)
40%
60%
禁煙継続
1 週間禁煙
80%
失敗
100%
不明
無回答
(中医協 診療報酬改定結果検証部会資料、2007年10月10日)
(特定健診特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き、2007年7月)
血糖:空腹時血糖が100mg/dl以上・HbA1cが5.1%以上
脂質:中性脂肪150mg/d以上・HDLコレステロール40mg/dl未満
血圧:収縮期130mmHg・拡張期85mmHg以上
医療保険者は、特定保健指導以外の保健指導は義務づけられていないが、医療保険者
の判断で自由に保健指導をおこなうことは差し支えない。
特定健康診査の結果及び服薬歴、喫煙習慣の状況、運動習慣の状況、食習慣の状況、
休養習慣の状況その他生活習慣の状況に関する調査の結果、加入者に対し、適切な
保健指導を行うよう努めるものとする。
(特定健診特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き、2007年7月)
「標準的な健診・保健指導プログラム」に対する意見
(喫煙に関する部分、日本公衆衛生学会、2007年2月23日)
• 禁煙指導はがん、循環器疾患、呼吸器疾患
等の予防にとって、 とりわけ重要な保健指導
項目であり、メタボリックシンドロームの有無
にかかわらず禁煙指導を実施すること。
• また,喫煙者にとっては健診を受診すること自
体が禁煙の動機付けを促す介入となるように、
健診の標準的な質問票には,現在の「喫煙の
有無」のみでなく「禁煙意志」に関する質問を
加えること
2008年1月5日朝日新聞
提唱者も戸惑う。
・・・・
「ただウェスト85cmはわかりやす過ぎた。
厚労省が目をつけ、利用された面もある」
「基準根拠ない」
・・・・
「ニセモノ」批判は医学界に少なくない。
厚労省は、特定健診開始前から診断基準を
見直すための研究班を設置。全国2万4千人
を対象に、初めての大規模調査に乗り出す。
World No Tobacco Day 2007
Theme: SMOKE-FREE ENVIRONMENTS
厚生労働省訳:「たばこ、煙のない環境」
日本禁煙推進医師歯科医師連盟の
ホームページには、この小冊子の翻訳
のほかFCTC第8条(受動喫煙の防止)
履行のためのガイドライン関連の資料
を掲載した.
(http://www.nosmoke-med.org/)
世界保健機関WHO タバコ規制枠組み条約
第8条(受動喫煙の防止)保護を履行するためのガイドライン
(第2回締約国会議にて日本を含め全会一致で採択、2007年6月30日から7月6日まで、
タイバンコク)
●自主規制ではなく、法的な規制であるべきこと
●100%全面禁煙の環境とするべきこと
●適切な罰則を設けるべきこと
●市民団体を関与させるべきこと
●モニタリングと評価を行うべきことなど14項目
各国・州の場所別の受動喫煙防止措置の概況
職場
交通機関
公共施設
飲食店
バー
英国
◎
◎
◎
◎
◎
フランス
◎
◎
◎
○
○
ドイツ
△
-
-
-
-
イタリア
○
○
○
○
○
スウェーデン
○
○
○
○
○
アイルランド
◎
◎
◎
◎
◎
ノルウエー
○
◎
○
◎
◎
ニューヨーク州
◎
◎
◎
◎
◎
カリフォルニア州
◎
◎
◎
◎
◎
オンタリオ州
◎
◎
◎
◎
◎
ニュー・サウス・ウェールズ州
◎
◎
◎
◎
○
韓 国
△
△
△
△
△
タ イ
○
◎
◎
◎
◎
シンガポール
◎
◎
◎
◎
-
▲
▲
▲
▲
▲
国・州
EU
欧州
米国
カナダ
豪州
アジア
日 本
◎:全館禁煙(実施義務)、○:完全分煙(実施義務)、△:非完全分煙(実施義務)
▲:非喫煙者の健康に配慮するなどの努力義務、-:特に規定なし
(出典:大和 浩、日本学術会議シンポジウムシンポジウム「脱たばこ社会の実現のために―エビデンスに基づく対策の提言―」での発表スライド)
資料:Global Voices for a Smokefree World
Movement Towards a Smokefree Future 2007 Status Report
米国における各州の屋内施設における喫煙の法的規制の状況
(2007年第4四半期)
Banned
100%
Smokefree
Separate
Ventilated
Areas
Designated
Areas
Bars
13*
2
5
Total Number
of States with
Any
Restriction
20
Commercial Day
Care Centers
34*†
1
4
39
12
Enclosed Arenas
22*
3
13
38
13
Government
Worksites
Grocery Stores
27*
6
14
47
4
23*
3
16
42
9
Home-based Day
Care Centers
33*†
1
3
37
14
Hospitals
23*
4
18
45
6
Hotels and Motels
5
1
22
28
23*
Malls
Prisons
21*
6
4
2
6
3
31
11
20
40*
Private Worksites
22*
3
13
38
13
Public
Transportation
Restaurants
31*
3
11
45
6
21*
3
18
42
9
No
Restrictions
31
* Includes Washington, DC
† Includes 11 states where smoking is banned when children are on premises for Commercial Day Care centers and 23 states for those of Home-based Day Care Centers.
Source: Office on Smoking and Health (OSH)
職場・公的場所における喫煙の法的規制の効果
(米国での経験から)
1. 非喫煙者を受動喫煙の害から守る
2. 喫煙者に禁煙させる、あるいは喫煙本数を
減少させる
3. 「タバコは吸わないのが当たり前」との社会
規範(social norm)を強化する
Ending the Tobacco Problem: A Blueprint for the Nation.pp.189-203
Institute of Medicine of the National Academies, 2007
神奈川県公共的施設における禁煙条例制定の取り組み
名称
神奈川県公共的施設における禁煙条例(仮称)検討委員会
設置根拠法令等
神奈川県公共的施設における禁煙条例(仮称)検討委員会設置要綱
設置年月日
平成19年9月26日
所掌事務
公共的施設における禁煙条例(仮称)の検討に関すること その他必要な事項
委員数・任期
11人、条例制定日まで
委員の氏名
(会長) 津金 昌一郎(国立がんセンター予防研究部長)
(副会長) 増沢 成幸(神奈川県医師会理事)
中田 ゆり(産業医科大学健康開発科学教室研究員)
玉巻 弘光(東海大学法学部教授)
安田 修(みずほ情報総研株式会社シニアコンサルタント)
金井 正志郎(藤沢商工会議所専務理事)
川上 彰久(神奈川県中小企業団体中央会理事)
三橋 弘美(厚木市市民健康部長)
落合 厚志(二宮町健康課長)
﨑本 真由美(平成19年度県政モニター)
古座野 茂夫(平成19年度県政モニター)
会議公開
公開
会議開催日 ・会議記録等
第1回
平成19年11月27日
第2回
平成19年12月26日
審議速報
第3回
平成20年 1月29日
審議速報
第4回
第5回
審議速報
審議結果
審議結果
神奈川新聞ローカルニュース カナロコ 11月29日
公共的施設禁煙条例の検討委がスタート
社会 2007/11/28 たばこの受動喫煙から県民を守ることを目的とした全国初の「県公共
的施設禁煙条例」(仮称)の内容を協議する検討委員会(会長・津金昌一郎国立がんセン
ター予防研究部長)は二十七日、初会合を開き、二〇〇八年度中の条例策定に向けた作
業をスタートさせた。今後の検討内容などが確認されたが、制定されれば県民生活にも影
響を与えるだけに、検討結果が注目される。
委員会は医療、法律、経済、行政、県民の各代表計十一人で構成された。議題として世
界保健機関(WHO)や欧米各国の受動喫煙防止対策、十月に実施した五千人対象の県
民意識調査の中間報告などが行われた。県民意識調査では、公共性の高い施設での喫
煙規制について、八割以上が「賛成」と答えた。
冒頭、松沢成文知事は「たばこ対策はがんの予防に欠かせない。他人のたばこの煙を
吸わないよう、非喫煙者を守ることが必要。県が国をリードして、先進的な禁煙条例をつく
りたい」とあいさつした。
事務局の県健康増進課は「条例の制定を前提に、不特定多数の者が利用する公共施
設で喫煙を禁止することを原則として検討してほしい」と要請した。
今後は来年にかけて計五回の委員会を開き、〇八年度中に条例案を策定。議会の議決
を得て、〇九年度からの施行を予定している。
受動喫煙防止対策の効果
米国公衆衛生長官の報告書(2006年)には、下記のよう
に記述されている。
1. 受動喫煙が、男女とも、冠状動脈性心疾患の罹患と死亡リスクを
増加させることに十分な証拠がある。
2. メタアナリシスにより、受動喫煙により冠状動脈性心疾患のリスク
が25~30% 増加することが示されている。
(以下略)
それでは、受動喫煙防止の法的規制によって受動喫煙
をなくしたらどのような効果が得られるだろうか。
職場・公共の場所の禁煙による虚血性心疾患の減少
• モンタナ州ヘレナの事例(BMJ 2004;328:977-980)
ヘレナは、人口68140人の地理的に孤立した社会で、職場と公共の
場所を禁煙にする条例が2002年6月5日に施行されたが、2002年
12月3日に裁判所命令によって停止された。
禁煙条例が施行されていた6ヶ月間の心筋梗塞の入院は24件で前
後の期間の平均40件に比べて、16件 (95%信頼区間:31.0から0.
3件)減少した。
同じ期間に、ヘレナ以外の地域では12.4件から18件へと5.6件増
加していた。
以上の結果は、職場と公共の場所を禁煙とする法的規制によって、
直ちに心臓病の減少をもたらすことにつながることを示唆する。
Admissions for acute myocardial infarction during six month periods June-November before,
during (2002), and after the smoke-free ordinance (ordinance did not apply outside Helena). The
law was implemented on 5 June 2002
ヘレナ
ヘレナ以外
Sargent, R. P et al. BMJ 2004;328:977-980
6月から11月までの6ヶ月間の急性心筋梗塞の入院数の推移
Copyright ©2004 BMJ Publishing Group Ltd.
職場・公的場所における喫煙の法的規制の効果
ー大規模の人口地域での観察ー
論文
調査地域・禁煙の法律
調査対象
結果
Barone-Adesi F,
et al. The
European Heart
Journal 2006;
27: 2468-2472
イタリア北部ピエモン
テ州(人口約430万
人) イタリアでは
2005年1月10日から禁煙
法施行
病院退院記録から調
査AMI入院状況
禁煙法施行前の2004
年10〜12月と施行後
の2005年2〜6月、各1
年前の同時期と比較
禁煙法施行後5か月間
の60歳未満の心臓病患
者数は、前年同時期に
比べて 11 %減少、施
行前では前年と比べて
変化なし。60歳以上で
は観察されず。
Juster et al.
American J
Public Health
published
online ahead of
print Sep 27,
2007
米国ニューヨーク州
(人口約1900万人)、
2003年包括的禁煙法施
行
1995年から2004年の
期間の郡別年齢調整
急性心筋梗塞の入院
率(月)の推移の回
帰分析
包括的規制のない場合
に比し、急性心筋梗塞
の入院件数は、3813件
(8%)少なかった。
2008年2月4日世界がんデーのポスター
2008年5月31日世界禁煙デーのテーマは、SMOKE-FREE YOUTH
英国における最も売れ筋の紙巻タバコ希望小売価格の推移
2007年1月:5.23ポンド、
うち税4・03ポンド(74%)
(5月10日の為替レート1ポンド:239.5円
比較:日本では300円のタバコで
税合計は189.17円、63.1%
平成20年度 厚生労働省税制改正要望項目
第1 新健康フロンティア戦略等に基づく国民の健康の
増進
(4) たばこ対策としてのたばこ税の税率の引上げ〔たばこ税、地
方たばこ税〕
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の批准国と
してたばこ対策を強力に進めていくことが求められていること
や、「健康日本21」において成人の喫煙に関する目標が設定
され、「がん対策推進基本計画」においてもたばこ対策が重要
な位置づけとされていることを踏まえ、喫煙率の減少のために
たばこ税及び地方たばこ税の税率を引き上げる。
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煙
推
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議
員
連
盟
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議
タバコ製品の健康障害に関するWMA声明(1)
1988年9月、オーストリア、ウィーンにおける第40回世界医師会(WMA)総会で採択
1997年11月、ドイツ、ハンブルクにおける第49回WMA総会で修正
2007年10月、デンマーク、WMAコペンハーゲン総会で修正
(日本医師会ホームページ:http://dl.med.or.jp/dl-med/nosmoke/tabaco_j.pdf)
勧告 WMAは、タバコの使用に関する健康障害を減少させるため、各国医師会
およびすべての医師に対し下記の措置を講じるよう促す。
1.
2.
3.
4.
喫煙およびタバコ製品の使用に反対する立場を表明した政策を採択し、そ
の政策を公表する。
WMA自体のあらゆる会合において喫煙の全面禁止を課したWMAの決定
にならい、各国医師会のすべての会議、社交行事、学会および式典行事に
おいて喫煙を禁止する。
タバコの使用(依存を含む)および受動喫煙が健康に及ぼす害に関して、医
師および一般公衆を対象にした教育プログラムを作成、支援し、それに参
画する。喫煙者および無煙タバコ製品の使用者にタバコ製品の使用を止め
させるよう教育し支援するためのプログラムや、非喫煙者や無煙タバコ製品
の非使用者が被害を回避するためのプログラムも重要である。
個々の医師に対し、(タバコ製品を使用しないということで)模範になるよう、
またタバコの使用から生じる健康に有害な影響とタバコの使用を止めること
の利点について、一般公衆を啓発するキャンペーンの代弁者になるよう奨
励する。すべての医学校、生物医学研究機関、病院、その他の保健医療施
設に対し、その構内では禁煙とするよう要請する。
タバコ製品の健康障害に関するWMA声明(2)
医学生や医師が患者のタバコ依存症を発見し、治療できるような教育プロ
グラムを導入または強化する。
6. 個々の患者の診察、禁煙教室、禁煙相談ホットライン、ウェブサイト上の禁
煙サービス等の適切な手段により、エビデンスに基づいたタバコ依存症の
治療法(カウンセリングや薬物療法など)を幅広く利用できるよう支援する。
7. タバコの使用および依存症の治療に関する臨床ガイドラインを作成または
推奨する。
8. WMAと協同し、有効性が確立されている禁煙治療薬をWHOの必須医薬品
モデルリストに加えるようWHOに促す。
9. タバコ産業からのいかなる資金または教材提供も固辞し、医学校、研究機
関および個々の研究者に対しても、タバコ産業にいかなる信頼性も与えな
いようにするために、同様のことを行うよう促す。
10. 国民の健康を守るため、タバコ規制枠組み条約を批准および完全実施する
よう各国政府を促す。
11. 先進国から開発途上国へとタバコ市場が移行しつつあることに対し反対意
見を述べ、各国政府にも同様のことを行うよう促す。先進国から開発途上
国へとタバコ市場が移行しつつあることに対し反対意見を述べ、各国政府
にも同様のことを行うよう促す。
5.
タバコ製品の健康障害に関するWMA声明(3)
12.
下記のような法律の制定・施行を提唱する。
a) 以下に挙げる特定の規定を含む、タバコ製品の製造、販売、流通、販売促進に関する包括
的な規制を制定する。
b) タバコ製品の販売に用いられるすべてのパッケージ、およびタバコ製品のあらゆる広告・ 宣伝
材料に、健康障害についての警告の文章や画像を掲載するよう要求する。このような
警告は人目を引くものでなければならず、また禁煙に関心を持った人がこの警告を見て、
禁煙相談ホットラインやウェブサイトなどの支援サービスを受けられるというものでもな ければな
らない。
c) あらゆる屋内公共空間(保健医療施設、学校、教育施設を含む)、職場(レストラン、バー、
ナイトクラブを含む)および公共交通機関における喫煙を禁止する。精神保健施設や
薬物依存症治療施設も禁煙とすべきである。刑務所における喫煙も許可すべきではない。
d) タバコ製品のすべての広告と販売促進を禁止する。
e) 小児や青少年に対する紙巻タバコや他のタバコ製品の販売、流通、また入手機会の提供を
禁止する。
f) 国内線および国際線のすべての民間旅客機における喫煙を禁止し、また空港および他のあ
らゆる場所での非課税タバコの販売を禁止する。
g) タバコおよびタバコ製品に対するすべての政府助成金を禁止する。
h) タバコ製品の使用の流行、およびタバコ製品が国民の健康状態に及ぼす影響に関する研究
を実施する。
i) 現在入手できない新型のタバコ製品の販売促進、流通、販売を禁止する。
j) タバコ製品に対する税率を引き上げ、税収の増加分をタバコ使用予防プログラムや、エビ
デンスに基づいたタバコ使用中止プログラムやサービス等の保健医療対策に用いる。
k) タバコ製品の不法取引および密輸タバコ製品の販売を抑制または排除する。
l) タバコ農家が別の作物に切り替えられるよう支援する。
m) 国際貿易協定からタバコ製品を除外するよう政府に促す。