11[再]・文化という名の下に

11[再]・文化という名の下に
2010.12.22. 成蹊・文化人類学Ⅱ
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2010/12/22 - [2]
文化財のジレンマ
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文化に優劣はつけるべきではない←→文化を文化財と
して保護しようとすれば順位付けせざるを得ない
文化財はできるだけ保護するのが望ましい←→保護す
るのには費用や人的資源が必要である
有識者が密室で文化財を決定するのは民主的ではない
←→文化財の価値をランキングするには一定の知識が
必要である
文化を保護することと観光に利用することは別である
←→観光で稼ぎでもしなければ保護するための金銭支
援も人的支援も得られない
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「文化」が地方に与えた2つの課題
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地方はもっと「文化的」でなければならない
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地方は「文化」を保存しなければならない
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概ね1960年代まで
概ね1980年代以降、現在まで
1950~60年代の自給自足→大量消費で起こった社会変
化(cf. 10月に確認した映像資料)からやや遅れて、1970年代
を転換点として「文化」の意味づけが大きく変化する
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第1の課題:地方はもっと「文化的」であれ
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地方の「封建遺制・因習」は、文化国家日本の足手まと
い
物質的・経済的発展が「文化」であり「善」
地方の〈文化〉は否定・駆逐・矯正
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地方改良運動(1900年代末~1910年代)
民力涵養運動(1910年代末~1920年代)
生活改善運動(1940年代末~現在、ピークは1950/60年代)
浪費・虚礼・怠惰・貧困・非効率・不衛生・地域間抗争
といった「悪」のない「地方」へ
文化的地ならし
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第2の課題:地方は「文化」を保存せよ
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地方には、実は豊かな「文化」が残されているから、
それを次世代に向けて継承し保持せよ
第1の課題とは異なる意味=「日本の伝統」としての
「文化」
1970年代の3つの舵の切り替え
1.
2.
3.
高度経済成長の浸透、文化的地ならしの完了
「地方の時代」1979年長洲知事発言 /「文化の時代」197980年大平総理諮問機関
1975年文化財保護法改正→「日本人のこころのふるさと」と
しての地方の祭りの位置づけ
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政策テーマの変遷
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「文化を売り物にする」という戦略
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「文化」を観光資源化して外部に対する売り物にする
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地域の歴史・文化と生産品をリンクさせ、それを観光と
パックにして外部の需要を呼び込む
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地域に根ざした一次・二次産業育成をめざす「まちおこし・むら
おこし」事業と並行
全国規模でパッケージングが行なわれ、「文化」が商品化されて
ゆくのが、1980年代後半から
国のお墨付きや日本○○選選定により、ナショナルな格
付けが進行するのが1990年代半ば以降
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cf. 成蹊学園の欅並木は、1982年に都民の日制定30周年記念として
「新東京百景」に、1996年に当時の環境庁によって「日本の音風景
100選」にそれぞれ選ばれている
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文化を売る戦略がもたらしたもの
1.
地方の文化が優劣の基準で評価される
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2.
地方内部の文化が外部化される
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3.
より観光的に「ウリ」になる文化
より「日本人のこころのふるさと」にふさわしい文化
ナショナライズされる過程で、国/国民のものとして
観光化される過程で、観光客の消費物として
しかしながら、文化のメンテナンスは地方に任される
文化が陳腐化したり供給過剰を起こす
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物質的な資源と同様に、文化資源も枯渇する
それを防ぐために、順位づけや許認可・指導を通じた行政のコ
ントロールが始まる
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地方と文化の関係性
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「国民のこころのよりどころ」「日本人としてのルー
ツ」という非物質的な文化リソースを抱える場としての
「地方」
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ただし、地方は、その文化リソースを自由に処分はできない
国民の共有物として、保存・継承していかなければならない
一方で、基幹産業が衰退し経済・コミュニティの崩壊の
危機を抱える「地方」
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文化という名の下に
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それ自体として枯渇しつつある文化・文化のメンテナン
ス主体として疲弊しつつある地域社会
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地方涵養策を施して、再び「豊かな文化の息づく地方」を取り戻
さなくてはならない
「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方
針)」2007年2月文化審議会答申~閣議決定
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基本的視点② 文化力で地域から日本を元気にする……地域文化
の豊かさが日本文化の基盤であり、人々を元気にする力となる
地域の歴史や特色を表し,古来様々な形態で存在・継承されてき
た文化財については,地域の視点から総合的に把握し,地域住民
の心のよりどころとしてその保存及び活用を図ることが望まれる