7・文化という名の下に 2011.11.9. 成蹊・文化人類学Ⅱ 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [2] 1950-60年代の変化~1970-80年代の変化 ふつうのひとびとの生活に注目すると、1890-1900年 代と、1950-60年代が大きな変化の時代にあたるとい える 1890-1900年代は、国民国家を支える諸制度(学校教育、 新聞/郵便メディア、鉄道交通、地方制度、軍事制度な ど)がほぼ国の隅々まで行き渡った時期 1950-60年代は、生活の自給自足的な部分の比率と購買 消費的な部分の比率が逆転し、大量生産・大量消費型社 会へと転換した時期 さらに1970年代に入ると「文化の再文脈化」、80年代 には「文化の観光化」現象が起こり始める……この場合 の「文化」は主に「地方の文化」のことを指している 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [3] 「文化」が地方に与えた2つの課題 明治以降「地方の文化」をめぐって、中央からの文化政 策に基づくいくつかの課題が「地方」には課せられた 地方はもっと「文化的」でなければならない 地方は「文化」を保存しなければならない 概ね1960年代まで 概ね1980年代以降、現在まで 1950~60年代の自給自足→大量消費で起こった社会変 化からやや遅れて、1970年代を転換点として「文化」 の意味づけが大きく変化する 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [4] 第1の課題:地方はもっと「文化的」であれ 地方の「封建遺制・因習」は、文化国家日本の足手まと い 物質的・経済的発展が「文化」であり「善」 地方の〈文化〉は否定・駆逐・矯正 地方改良運動(1900年代末~1910年代) 民力涵養運動(1910年代末~1920年代) 生活改善運動(1940年代末~現在、ピークは1950/60年代) 浪費・虚礼・怠惰・貧困・非効率・不衛生・地域間抗争 といった「悪」のない「地方」へ 文化的地ならし 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [5] 第2の課題:地方は「文化」を保存せよ 地方には、実は豊かな「文化」が残されているから、そ れを次世代に向けて継承し保持せよ 第1の課題とは異なる意味=「日本の伝統」としての 「文化」 1970年代の3つの舵の切り替え 1. 2. 3. 高度経済成長の浸透、文化的地ならしの完了 「地方の時代」1979年長洲知事発言 /「文化の時代」197980年大平総理諮問機関 1975年文化財保護法改正→「日本人のこころのふるさと」と しての地方の祭りの位置づけ 7・文化という名の下に 政策テーマの変遷 2011/11/09 - [6] 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [7] 「文化を売り物にする」という戦略 「文化」を観光資源化して外部に対する売り物にする 地域の歴史・文化と生産品をリンクさせ、それを観光と パックにして外部の需要を呼び込む 地域に根ざした一次・二次産業育成をめざす「まちおこし・むら おこし」事業と並行 全国規模でパッケージングが行なわれ、「文化」が商品化されて ゆくのが、1980年代後半から 国のお墨付きや日本○○選選定により、ナショナルな格 付けが進行するのが1990年代半ば以降 cf. 成蹊学園の欅並木は、1982年に都民の日制定30周年記念として 「新東京百景」に、1996年に当時の環境庁によって「日本の音風景 100選」にそれぞれ選ばれている 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [8] 文化を売る戦略がもたらしたもの 1. 地方の文化が優劣の基準で評価される 2. 地方内部の文化が外部化される 3. より観光的に「ウリ」になる文化 より「日本人のこころのふるさと」にふさわしい文化 ナショナライズされる過程で、国/国民のものとして 観光化される過程で、観光客の消費物として しかしながら、文化のメンテナンスは地方に任される 文化が陳腐化したり供給過剰を起こす 物質的な資源と同様に、文化資源も枯渇する それを防ぐために、順位づけや許認可・指導を通じた行政のコ ントロールが始まる 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [9] 地方と文化の関係性 「国民のこころのよりどころ」「日本人としてのルー ツ」という非物質的な文化リソースを抱える場としての 「地方」 ただし、地方は、その文化リソースを自由に処分はできない 国民の共有物として、保存・継承していかなければならない 一方で、基幹産業が衰退し経済・コミュニティの崩壊の 危機を抱える「地方」 枯渇しつつある文化・文化のメンテナンス主体として機 能しなければならないのに、経済的・社会的に疲弊しつ つある地域社会 地方涵養策を施して、再び「豊かな文化の息づく地方」を取り戻 さなくてはならない 7・文化という名の下に 2011/11/09 - [10] 文化という名の下に 「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方 針)」2007年2月文化審議会答申~閣議決定 基本的視点② 文化力で地域から日本を元気にする……地域文化 の豊かさが日本文化の基盤であり、人々を元気にする力となる 地域の歴史や特色を表し、古来様々な形態で存在・継承されてき た文化財については、地域の視点から総合的に把握し、地域住民 の心のよりどころとしてその保存及び活用を図ることが望まれる
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