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ソルトピルの作製と
断熱消磁冷却実験
宇宙物理実験研究室 佐々木美保
1.目的
・ マイクロカロリーメータという超伝導体のX線検出器
を使用する際、低温にしなくては高い分解能を得られな
い
→そのための冷却を断熱消磁冷凍機を使って行う
→冷却の媒体となる新しい磁性体カプセル(CrKミョウ
バンのソルトピル)を作製し、到達温度および比熱の向
上を目指した。(現状は鉄ミョウバンのソルトピルで
65mK)
2.冷却の原理
断熱消磁では
S
磁場0[T]
S0
A
等温磁化
S1
0 T1
C
断熱消磁
B
磁場H1[T]
T0
磁性体の温度TとエントロピーSの関係
T(K)
H
 const
T
(H:磁場、T:温度)
3.断熱消磁冷凍機(ADR)の構造
50cm
4.ソルトピルの構造
結晶注入口
完全に充填すると65.1g
金線160本
外筒(SUS)
張り板
(ガラスエポキシ)
熱リンク(Cu)
磁性体としてCrKミョウバン
[KCr(SO4)2・12H2O]を
選択した。
5.CrKミョウバンの結晶作成
約1cm
[KCr(SO4)2・12H2O]・・・2.8g
蒸留水・・10ml
<ビーカー内で作製した結晶>
一日に約1.5g析出
6.実験方法
<ソルトピルの組み込み>
液体窒素予冷(~77K)
等温磁化、断熱消磁
8時間
2時間
<ソルトピルの組み込み>
等温磁化
7.結果①
b
b
断熱消磁
a
断熱消磁
等
温
磁
化
c
b
a
c
c
温度と磁場の関係
上図:時間と磁場の関係
下図:時間と温度の関係
- CrKミョウバン
- 鉄ミョウバン
a
8.結果②
CrKミョウバン 鉄ミョウバン
断熱消磁開始磁場
B0(T)
2.82
2.85
断熱消磁開始温度
T0(K)
2.41
2.24
最低到達温度T(mK)
224
66.3
最終内部磁場B(mT)
B=B0(T/T0)
210
84
9.考察①
・重さから見積もれる充填率
作製した結晶の量
58.3g

 89.6%
ソルトピルに入る結晶 の量 65.1g
・ ソルトピルのレントゲン写真
→ ソルトピル内部に結晶は十分出来ていた。
10.考察②
最低到達温度が高かった原因を考察する。
⇒内部の結晶状態を調べるため、比熱を求めた。
<比熱の測定方法>
1. ソルトピルに熱を加える
2. 温度上昇から比熱を求める
3. 文献値と比較して、内部の結晶状態を調べる
比熱測定は ①235mK
②240mK
③254mK
の3つの温度で行った。
11.比熱測定結果
磁気比熱
Cb 2
CM  2
T
(C:キュリー定数、b:内部磁場、T:温度)
ソルトピルの温度
測定値(J/K) 文献値(J/K)
235mKの時
0.48
0.136
245mKの時
0.35
0.131
254mKの時
0.27
0.117
測定値の方が文献値よりも大きい
12.結論
・結晶の形状から6水和物であることが分かった
Cb 2
・比熱 CM  2 が大きいことから、内部磁場が大きく、到達
T
温度が高かった
CrKミョウバン(6水和物)
鉄ミョウバン(12水和物)
12水和物を確実に作製する方法を考えなければならない
温度の最適化など検討を進める