韓国目録規則(KCR)の現在と未来 金泰樹 延世大学文献情報学科 翻訳:国立国会図書館書誌部 1.序文 韓国において図書館目録は長い歴史的背景を持っており、韓国最初の蔵書目録としては、奎章 總目が 1781 年に刊行されている。 一方、目録規則を見ると、1948 年に朝鮮東書編目規則(朴奉石編)が刊行されたが、この規 則は書名を最初に記入するレコード方式(書名基本記入方式)を規定した規則であった。 その 後、1954 年に刊行された韓銀図書編目法は、著者基本記入方式を導入した最初の目録規則とし て評価されている。 1964 年には国内最初の標準目録規則である韓国目録規則(KCR 初版)が発刊され、続いて 1966 年には修正版(KCR2)が、1981 年には第 3 版(KCR3)が刊行された。この KCR3 は、 国際標準書誌記述に定められた原則を受け入れると同時に、記述だけでレコードを完結する目録 方式を採択した。この方式は、韓国の伝統的な書名基本記入方式を根幹として取り入れた点と、 これがまさに国際的な書誌記述法とも方向性を同じくする点で、目録史的に大変意味のある規則 として評価されてきた。それにもかかわらず、この KCR3 はいくつかの点で限界を持つ規則で あると指摘された。その一つは、記述対象資料を印刷媒体に限定したという点であり、もう一つ は、機械可読目録の出現で伝統的に使用されてきた標目の選択と形式の問題を新たな視点から見 直す必要があるという点である。 KCR3 が持つこのような限界を解消するために、2003 年に韓国目録規則第4版(KCR4)が 発刊された。この規則は、基本的に KCR3 の記述体系を用いているが、資料の書誌的特性を提 示する記述事項を追加しながら、標目の選択と形式については別途に規定しなかった。 2.KCR4 の主要特性 KCR4 が備える重要な特性は次のとおりである。 第一に、目録の機能を初めて提示した規則である。従来の KCR では、規則の制定意図がはっ 1/5 きりと提示されていなかった点を考慮し、この KCR4 では目録の機能を明示した。 第二に、従来の単行本や印刷媒体中心の目録規則から抜け出し、多様な媒体の資料を記述の対 象とした。 第三に、オンライン環境では書誌データの収録方式とレコードの配列方式が、伝統的な印刷(カ ード)目録の構造とは異なる方式で処理される。例えば、印刷(カード)目録で標目の種類と形 を指示するために使用されていた標目指示は、オンライン環境では違う技法で処理されている。 さらにレコードの配列も標目と関係なく決定されている。したがって、標目という概念の代わり にアクセスポイントという用語を使用した。 第四に、レコードに含まれる責任表示(著者等)の数に原則的に制限を加えなかった。従来の 規則では、代表著者が記載されていない 4 人以上による著作物では、一番目の著者だけを責任 表示に記載し、残りの著者を記述から除外するよう規定したことで、目録の機能の遂行が不完全 となる結果を招いたためである。したがって、記述対象資料に記載された全ての著者を責任表示 に記載できるよう規定した。 第五に、原則的に基本記入の標目という概念を目録から除外した。その主な理由は、基本記入 の標目を選択するための絶対基準を規定するのが難しく、また機械可読目録では特定の書誌資料 について大抵一つのレコードだけを作成するため、実際に基本記入の標目という概念を適用でき ない。その上、目録の機能において他のアクセスポイントとの違いを発見できないためである。 言い換えれば、基本記入の標目もレコードを検索するための様々なタイプのアクセスポイントの 中の一つと理解する必要がある。さらに、多様な形の同一アクセスポイントをリンクによって相 互に関連づけることができるため、基本記入の標目の選択規定を目録規則から除外した。 3.将来の課題 1)目録の機能の再定義 FRBR では書誌的実体を発見、識別、選択、入手することを新しい目録の機能として規定し ている。さらに書誌レコードに実体-関連モデルを適用し、特に個人や団体については著作と表 現形を強調している。したがって FRBR で規定した目録の機能と関連モデルを KCR に導入す る必要がある。 2)新しい構造の件名標目 現在のような事前結合方式の件名標目の代わりに、用語間の関係を設定できる事後結合方式の 件名標目を開発する必要がある。あわせて、様々な異なる形の件名標目を同時に検索できるシス テムの開発も必要である。それには、利用者が好む言語で検索した場合、対応する外国語の件名 2/5 標目も同時に検索する言語変換システムの開発も含まれなければならないだろう。 3)典拠システムの構築 伝統的な標目のコントロール方法は、特定の形を標準として規定し、それを目録全般に渡って 一貫して使用する方式であった。ところが、この方法は利用者の言語習慣を無視することになる。 そこで、利用者の言語環境と情報要求を充足させるため、標目の多様性を認める必要がある。そ の主な理由は次のとおりである。 (1) 我々は、日常的に接する全ての事物や実体をそれぞれ多様な形の名前で識別している。 さらに、資料に記載された個人名それ自体は独立した一つの書誌的アイデンティティ (bibliographic identity)であるため、書誌レコードでは該当資料に記載された形の名前を使 用しなければならない。そうすることで、標目の形を決定する過程が単純になり、利用者が 使用する言語と文字で標目を表現できる。ここで言う「書誌的アイデンティティ」とは、著 作者が自身の著作で使用した名前である。たとえば次の例は、一人の著者が自分の著作で使 用しているものだが、二つの名前は、それぞれ独立した二つの書誌的アイデンティティと言 うことができる。 Euclid and his modern rivals / Charles L. Dodgson Alice’s adventures in Wonderland / Lewis Carroll 作家としての Lewis Carroll は、数学者としての Charles Lutwidge Dodgson とは書誌的に 別の実体である。したがって、この人物は二つのレコードでそれぞれ独自の形で表現されな ければならず、典拠コントロール・システムがこの二つの実体をリンクする役割を果たす。 (Gorman 1982, 172-173). (2) 名前の表現構造は言語圏や文化圏によって各々違う(例:공자、孔子、こうし、Confusius)。 したがって、ある特定の形を標準形と規定するのは難しい(Tillett 2004)。特定の一つの形を 典拠形として規定することになれば、それと違う形を使用する言語圏や文化圏の利用者はア クセスに制約が伴う。同一の国家や言語圏でさえもこのような現象を見ることができる。例 えば「김소월(金素月)」 「김정식(金廷湜)」 「소월(素月)」のうち、ある形を典拠形と規定でき るだろうか。また、名前は常に可変性を備えているので、一つの特定の形を標準形と規定す るのは難しく、時代や文献によってその形を異にすることがある。このほか、同一の言語圏 でも綴りの違い(Labor と Labour)や翻字体系の違いによって表現の一貫性を担保できない でいる。そのため、次のような新しい典拠方式を考える価値がある。 ① 国際標準典拠データ番号(ISADN)を識別子として使用し、特定人物の異なる形の全て 3/5 の名前を集中させる方法を見出す。ISADN を使用すれば、使用されている目録規則や言語 とは関係なく個人名や団体名を識別でき、様々なデータベースで使用された多様な形の名前 を互いにリンクできるだろう。 ② UBC では資源共有という側面から、典拠レコードに含まれるべき最小限のキーデータ要 素を提案し、ある実体には標準形を使用し、同一の実体についてレコード間をリンクするこ とで、多数の国の典拠ファイルを同時に探索する方法を推奨している。各国の図書館は、イ ンターネットを通して相互参照や典拠レコード番号でお互い該当するレコード間を照合で きる。この方法で異なる形のアクセスポイントがリンクされるが、一つの特定の形を標準(典 拠)形として規定しない。個々の利用者あるいは図書館は各自の望む形(あるいはデフォル ト形)を選択できる。文字種や言語を含め、利用者が望む形や構造を使用する多様なアクセ スポイントをリンクする方法である。 ③ アクセスポイントとして使用される個人名、団体名、地名、件名を、各種辞典、用語集、 人名事典等のような情報源とリンクすることでアクセスポイントの機能を拡張する必要が ある。該当する実体にリンクしている体系的な情報を通して、利用者の情報探索効果を大き く改善することができるだろう。例えば、ある個人とその人物に関する伝記をリンクする方 法である。 同一の実体の異なる形のアクセスポイントをリンクできることで、国際的なレベルで典拠情報 を共有できるようになった。言い換えれば、文字や言語の制約を越えて、利用者は、目録でどの ような形を選択しようとも、望む形のアクセスポイントで探索できるのである。典拠情報の共有 を通して、目録の機能は、知識に対する全般的なゲートウェイの役割を果たすところまで拡張さ れるだろう。 4.書誌記述と資源との結合 書誌記述と資源との結合とは、電子情報資源を作成する際、タイトル、著者、作成日付のほか、 基本的なメタデータを付加する方式をいう。それにより目録作成者は、基本的な記述メタデータ と同時に必要に応じて件名標目と分類記号を追加してレコードを拡張し、特定の個人や団体との 関係を表現できるだろう。また、オンライン書店とリンクさせ、検索した資料を利用者が入手で きるようなシステムも考えられる。 (訳注)日本語訳は、概ね韓国語版「한국목록규칙의 현재와 미래」から行った。 参考文献 4/5 김태수. 2004. “전거제어활동의 최근 동향 연구”, 지식처리연구, 5(1/2): 1-20. Gorman, Michael. 1982. "Authority Control in the Prospective Catalog", In Authority Control: the Key to Tomorrow's Catalog, Proceedings of the 1979 Library and Information Technology Association Institutes. Edited by Mary W. Ghikas. Phoenix, Oryx Press, 166-185. Tillett, Barbara B. 2004. “A Virtual International Authority File", In IFLA Cataloguing Principles: Steps Towards an International Cataloguing Code; Report from the 1st IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code, Frankfurt, 2003: 54-63. Edited by Barbara B. Tillett, Renate Gömpel and Susanne Oehlschläger. München : K. G. Saur. 5/5
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