Webを利用したリアルタイム 授業評価システムの開発と運用 著者:大塚一徳・八尋剛規・光澤舜明 (東海大学福岡短期大学) 発表者:千葉 佑介 (教育情報システム学講座 4年) ≒「この論文がどう自分の研究に 役立つと考えたのか」 本論文を選んだ理由 授業評価の大まかな流れの例を知りたかった リアルタイムに評価できる事の利点について 考えたかった 本論文で挙げられていると思われる「現状の 授業評価の問題点」を知り、自分が卒論を作 成する上での動機を明確にしたかった (何故自分が卒論に授業評価を取り上げたの かを深く考える機会が欲しかった) 情報システムゼミA 論文講読 論文に入る前に ~おことわり~ 「1.はじめに」の冒頭部分にある通り、本論文 では、「授業評価」という言葉を次の2つの授 業評価内容を示す用語として限定的に用いる。 学生による授業態度や授業内容の理解などに対 する自己評価 教授法や教師の授業態度などに対する学生によ る教授法評価 情報システムゼミA 論文講読 大学における授業評価の問題点 半期に一度しか評価を行わないので、実際に 授業を受けた学生へのフィードバックがない 授業評価の結果公開が不十分 評価結果のリアルタイムな授業へのフィード バックが行えていない 学生による評価が中心で、他の教師や専門家 による他者評価は十分に行えていない 授業評価に関するシステムの開発・運用例が 少ない 情報システムゼミA 論文講読 東海大学における現状の授業評価 「Minute Paper」という評価形式を採用 (東海大学における)「Minute Paper」とは? 授業評価を毎時間、授業最後の1分間で行う 紙を配布し、学生が評価と授業のポイント、疑問 点を書き込む マークシート方式による評価 授業評価を(従来よりも)適切かつ迅速に行えるよ うにする事が目的 ※参考文献1より要約 情報システムゼミA 論文講読 東海大学における授業評価の問題点 マークシート形式での評価である為、集計結 果が教師に伝わるまでに時間がかかる 時系列的な評価の変化を見るには別途集計 作業を行う必要がある 評価結果そのものを学生にフィードバックする 仕組みがない これでは「適切かつ迅速な評価」になっていない! ↓ これらの問題点を解決する為に本研究を行った 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて(1) 概要 Web上で授業評価を行えるシステム 評価結果が即時集計される 集計結果は誰でも見る事ができる(一部データを 除く) (管理者は)評価項目を任意に設定できる (管理者は)集計結果をCSVファイルで出力させら れるので、自由に加工できる 拡張子「.csv」のファイル。 第三者による、他者評価にも対応 「,(カンマ)」で区切られた データファイルで、Excel やメモ帳で編集できる。 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて(2) 評価項目の設定 サーバ 評価結果(集計済)の閲覧 評価データのCSVファイルを送信 評価結果 の送信 評価結果 (集計済)の閲覧 評価結果 の送信 教師 評価結果 (集計済)の閲覧 リアルタイム 授業評価システム 学生 第三者 (他者評価の評価者) 情報システムゼミA 論文講読 ★図解★ リアルタイム授業評価システムについて(3) 評価方法 授業終了後に、Webクライアントから評価システム の授業評価入力フォームにアクセスする 表示された質問に記述・10点法・三者択一で答える 集計結果を閲覧できる(後述) 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて (4) 評価項目 表1参照 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて(5) 評価項目 表1の評価項目群は以下の理由により選定した 記入に要する時間が5分程度でなければならない事 から、従来のMinute Paperと同一の項目数にした カリフォルニア大学のMinute Paper運用例から、授 業に関するポイントと疑問点を述べさせる項目を設定 した(問1) 学生の自己評価に関する部分(問2・14・15)、授業 評価に関する部分(問4~13)共に、従来のMinute Paperによる評価に沿った評価項目とした 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて(6) 評価項目 授業改善がより効果的に行えるよう、講義ごとに設定できる 評価項目を三者択一・10点法評価各1問づつ設定した(問 13・15) 評価結果の閲覧 以下の3通りの方法で閲覧できる 授業ごとの各評価項目値(図2参照) 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて(7) 評価結果の閲覧 以下の3通りの方法で閲覧できる 複数回の授業における評価値の時系列変化(図3参照) 学生による授業のコメント(図4参照) 情報システムゼミA 論文講読 リアルタイム授業評価システムについて (8) 管理者モード(図6参照) 通常の評価結果表示機能に加え、以 下の機能を備える CSV形式で集計済データを出力し、 担当教師にメールで送信できる 学生以外の他者(他の教師など)評 価の結果も表示できる 情報システムゼミA 論文講読 システムの導入について 1998年度第4クォーターに、以下の授業に本システ ムを導入し、各授業の最後の5分を使って運用実験 を行った。(表2参照) 実習科目 授業回 実習時間 評価結果 他者評価 受講者 数(回) (分) 公開 数(名) プログラミング実習Ⅲ 6 150 有 有 27 表計算実習Ⅱ 7 150 有 無 90 ワープロ実習Ⅱ 4 75 無 無 76 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~成果~(1) 授業評価(問4~13)の項目平均値が他より も劣っている項目については、教授法の改善 が必要であるとして次回以降に留意した 平均値が下降傾向にあるものは、その後の授 業運営の際留意すべき事項として把握し、授 業改善に役立てた 実習における題材の再検討 配布資料の追加 etc… 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~成果~(2) 評価結果が授業終了後、即時に閲覧できる為、 受講者個人への対応が可能になった 従来のMinute Paperによる評価と比べて、 早い段階で学生の意見や評価が分かるので、 授業内容・構成・教授法と評価結果との因果 関係を教師が把握しやすくなった 記述方式の評価項目(問1)を設けた事により、 学生にとって、質問の機会が増えた 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~成果~(3) 記述方式の評価項目(問1)に書かれた質問 については各教師が回答を行うようにしてみ たら、学生も積極的に授業評価に取り組む姿 勢を見せた 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~課題・問題点~ プログラミング実習Ⅲと表計算実習Ⅱでは評 価結果を公開したが、学生は約12%しか見て くれなかった 評価結果の公開については、結果の表示方 法の改良を行う必要があると思われた 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~他者評価について~(1) 基本的には学生と同様の方法で評価を行った (但し、問2・問3は学生の自己評価項目であ るので回答しない) 6回、他者評価を行った(但し、3回目の授業 は評価者の都合で他者評価を行えなかった) 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~他者評価について~(2) 問4~問13の評価結果は以下の通り(表3参照) 問 授業 問4 問5 問6 問7 問8 問9 問10 問11 問12 問13 問14 問15 1回目 3 2 3 3 3 1 2 2 3 3 7 8 2回目 3 2 3 3 3 2 2 2 3 2 8 8 4回目 2 2 3 3 3 3 2 2 3 3 8 8 5回目 2 2 3 3 3 2 2 1 3 2 8 9 6回目 2 2 3 3 3 2 3 1 3 3 8 8 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~他者評価について~(3) 問1の主な評価内容は以下の通り(表4参照) 1回目 IF文に関する説明の不備について 2回目 IF文に対する受講生の理解度について 4回目 CASE文に対する説明と 受講生の変数名に関する理解について 5回目 実習課題のアルゴリズムに関する受講生の理解度に関して 6回目 IF文とCASE文に関する受講生の理解度について 情報システムゼミA 論文講読 システムの運用とその結果 ~他者評価について~(4) これらの他者評価データは、教授法等に関す る専門的見地からの意見や、学生の客観的 理解度を把握するのに役立った 情報システムゼミA 論文講読 今後の課題・展望(1) 授業評価の回数を減らし、授業の計画に沿っ て必要な回数だけ行う事も可能 本システムはコンピューター実習授業での運 用を目的に開発したものであるが、講義形式 の授業に於いても運用できそうである(自宅か らの授業後評価など) 情報システムゼミA 論文講読 今後の課題・展望(2) 今回の運用では、授業評価結果に対する学 生の関心度は低かった。今後、学生個人に評 価結果をフィードバックできる機能を付加し、 学生自身が自らの授業の取り組み方や理解 度を把握し、積極的な授業参加を動機付ける ようなシステムを構築する必要がある 学生による主観的な授業評価が、授業内容の 客観的理解度(成績?)とどのような関係にあ るのかについても、定量的に検討する必要が ある 情報システムゼミA 論文講読 感想 大学に限らずコンピューターを用いて行う授業 に導入すれば、かなり有効なシステムではな いかと思った。(高校の「情報」の授業などに 導入するとおもしろいのでは・・・) 「評価項目をMinute Paperに従って設定し た」とあるが、Minute Paperの評価項目を設 定した理由については言及されていない。そ の点について書かれた論文があれば、近いう ちに読んで評価項目設定の参考にしたい。 情報システムゼミA 論文講読 疑問点 文中に「表計算実習における授業評価入力時 間は平均178秒」とあるが、90名も受講者の いる講義でどのように統計を取ったのか? 評価結果を学生が閲覧しないという問題を本 論文の発表後、どのようなアプローチで解決し ようとしているのか?(卒論で行う予定の、「履 修登録システムとの連動」という私のアイディ アも効果的なのではないか) 情報システムゼミA 論文講読 卒論を書くに当たって、 本論文がどう役に立ちそうか Web上における授業評価の流れがなんとなく 分かった 「現状の授業評価の問題点」を解決する事が 卒論を書く理由(動機)の一つになった 本論文でどのようにして評価項目の選定を 行ったのかが、卒論にも応用できそう 本システムの機能を卒論の参考にできそう 情報システムゼミA 論文講読 参考文献 1. 今月の研修ノート(最終閲覧日:2004/7/7、 URL:http://homepage3.nifty.com/tanningaku/s4(kensyuukai).htm) 2. 学会発表:八尋剛規:東海大学福岡短期大学 (最終閲覧日:2004/7/7、 URL:http://www.staff.ftokai-u.ac.jp/~yahiro/info/gakkai.php) 情報システムゼミA 論文講読
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