意味構造グラフを用いた 授業の時系列分析法 中学校体育授業を事例として 菅野俊郎(一関工業高等専門学校) 竹谷誠(拓殖大学工学部) 論文講読発表者:山本雅之(鈴木研3年) 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 1 内容 はじめに 意味構造グラフを用いた授業観の意識構造比較 – – – – 意味構造グラフによる授業評価 順序性係数と意味構造グラフ 重要度と類似度の意義 意識構造グラフの形成的な比較評価法 単元における授業の時系列評価の実践 – 授業の概要と評価表 – 単元の進行を伴う意味構造グラフの変容 – 重要度と類似性 まとめと考察 19 Dec 2002 参考文献 情報システム演習C 論文講読 2 はじめに(1) 授業研究において – 授業実践を実践し、授業改善に役立てるため の分析法が盛んに利用 – しかし・・・ • 単位時間を対象とした分析は多いが、 • 単位時間をまたがった分析は少ない。 – そこで・・・ • 単位時間による分析評価だけでなく、単元の流れ に沿った分析評価 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 3 はじめに(2) 評価分析する方法 – 授業内容を細かくカテゴリー分析して、処理す る数量化の技法がほとんど – 学習者の授業に対するデータを収集し、時系 列変化に基づき授業内容を分析考察した例 は少ない 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 4 はじめに(3) 授業評価に対する態度データの測定 – 態度データ • 人間の行動や心理的側面を測定するためのデー タ – 評定尺度法の質問紙調査法(選択肢方式) • 結果をプロフィール・データで表現 – マトリクス形式 • 項目間の関係を構造的に把握するのが困難 • 時系列的な分析評価が困難 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 5 はじめに(4) 意味構造分析法(SS分析法) – 評定尺度データから項目間の順序関連構造 をグラフで表現し、評定者群の意識構造を分 析する – 特徴 • 個々の項目や項目群の順序関係の意味を解析し、 • 学習者の意識構造を解釈することができる 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 6 はじめに(5) この論文では・・・ – 一連の授業課程において、数回の意識調査 を実施し、意味構造分析を実施した新しい形 成的評価法の提案 • 授業内容を学習者の意識構造の変容として、定量 的にとらえられる • 教師の学習観に基づき分析結果を吟味することが 重要 – 体育の事例で説明 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 7 意味構造グラフによる授業評価 授業評価 – 通常、評定尺度法のアンケート調査 • 調査項目の分析評価 – 項目間の関連性を含めた構造的理解による分析評価 – 単元による授業評価を時系列に沿って比較する この論文では・・・ – 意味構造グラフを用いて、学習者の意識構造を時系 列的に比較することにより、指導内容や方法の妥当 性を評価する 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 8 意味構造グラフ 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 9 順序性係数 順序性係数 – 2つの測定項目間の順序に関して、ⅠiからⅠj の順序の程度を定量化する • • • • • 学習者(評定)数:N人 評定項目数:n項目 評定項目の評定値:1,2,3,4,5・・・m 段階 評価項目:Ⅰi,Ⅰj それぞれ評定値をq,rとした評定者の人数:Nij(q,r) – 項目ⅠiからⅠjへの順序性係数rij 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 10 意味構造グラフにおける重要度 と類似度の意義 認知マップによる理解度評価法 – 順序構造グラフの比較を定量的に評価する方 法を提案、重要度と類似度を定義した – 認知マップ:学習者の認知構造を表現 – 重要度:意味構造グラフに適用 – 類似性:複数の意味構造グラフの類似性を定 量的に評価する尺度 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 11 意味構造グラフにおける重要度 重要度 – 順序構造グラフ内で要素間の1つの関係が他の要素 間の関係にどの程度寄与しているかを評定尺度とし て定量化 – 意味構造グラフに適用し、個々の要素間の関係が意 識構造の中でどの程度重要であるかの評価 • 意識構造グラフ上での重要度の意義 – 意識構造グラフの中核の柱に位置する観念を抽出する測度 – 中核にあって多くの順序関係の項目と多くの関係を持つことに 注目することにより、授業の特徴を見いだすことができる – 低い評価から高い評価へのつながりの項目 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 12 項目間の重要度(1) 意味構造グラフGにおける任意の順序関係(V i,Vj)の重要度I(Vi,Vj;G) – n:測定項目数 – C(Vi,Vj;G)は順序関係(Vi,Vj)を経由する経路の始点 と終点の順序対の集合 – N[C(Vi,Vj;G)]は集合C(Vi,Vj;G)の要素数 • 先行要素数(N[A(Vi)])と可到達要素数(N[R(Vj)])との積 – 値が高い場合は授業評価において授業の中核的な 柱をなす項目 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 13 項目間の重要度(2) Gbのf,g,hそれぞれを 経由する経路の始点 と終点の順序対の数 – f:2, g:3, h:4 重要度 – f:0.3, g:0.5, h:0.7 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 14 意味構造グラフにおける類似度 類似度 – 複数の意味構造グラフの類似性を定量的に 評価する尺度 – 複数の授業評価から得られる意味構造グラフ を重ね合わせて比較するときの類似の割合 • 学習者の意識構造がどれくらい授業観で共通する 部分があるかを示す指標 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 15 グラフ間の類似度 複数の意味構造グラフをGa,Gbとする – 2つの意味構造グラフが類似するほど、その 値が高くなる – S(Ga,Gb)=(10/19)=0.53 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 16 意識構造グラフの形成的な比較 評価法 概要 – 単元のねらいに基づき、評価の観点を抽出し、各観点 を複数の評価項目に分解し、調査表の作成 – 単元の中を授業時間ごとに分割し、それぞれの単位 時間ごとの指導内容を明確にすると同時に、各授業 実施直後に意識構造を測定する調査の実施 – 最初の単位時間の意識調査より得られた意味構造グ ラフを基準、単元系列で意識構造を比較し、次の授業 への指導案等の修正 – 授業の重要度や授業間の類似度を比較することに よって、中核をなす柱項目や授業展開の共通性を検 出 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 17 授業の概要と評価表 対象授業 – 体育授業 単元名「バスケットボール」 • 中学3年の選択授業 • 2時間授業:5回 1時間授業:2回 – 授業展開 • 「本時の説明とめあての確認」 • 「作戦練習とゲーム」 • 「まとめ」という課程 – 指導計画のねらい設定と構成 • 試しのゲーム(2時間) – 実態をつかみ、学習の計画をたてる • ねらい1のゲーム(4時間) – 今できる技能でゲームを楽しむ • ねらい2のゲーム(6時間) 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 – 技能の向上に応じてゲームを楽しむ 18 授業の概要と評価表 意識調査 – 5回実施 – アンケート内容 • (1)興味関心 – ①精運動 ④仲間 ⑤楽しさ ⑦自主性 • (2)学び方 – ⑥めあて ⑧課題適 ⑨準備 • (3)技能 – ②技の伸 ③新発見 – 5段階評定尺度 – 「学び方」→「技能」→「興味関心」領域へ推移すること を前提に捉える 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 19 単元の進行を伴う意味構造グラ フの変容 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 20 単元の進行を伴う意味構造グラ フの変容 分析結果 – 単元の進行→全項目の平均評定値の平均が高く、標 準偏差が小さくなった • 授業のたびに授業評価のフィードバック情報を元に授業改善 につとめた • 学習者は授業に見通しを持ち、より自主的活動場面が広く多 くなることによる – 順序性の矢印の長さが短くなる傾向 • さまざまな学習要素が入り交じった関係下授業が成立してい るため • 学習要素間が密に連携することは望ましいこと 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 21 単元の進行を伴う意味構造グラ フの変容 分析結果 – グラフから比較 • Ga,Ge:「技能」→「学び方」→「興味関心」左上り • Gc:「学び方」→「技能」→「興味関心」 – 評価の観点であるねらいの高まりと同じ傾斜 • 「学び方」「興味関心」が高まってくると「技能」のモ チベーションも高まる 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 22 意味構造グラフの重要度 下位項目と上位項目を結ぶ中心的な柱 – Ga: ⑧課題適→⑦自主性 (8,7) 0.8で最大 • 課題が適切であるために重要な活動ができること – Ga,Gb: ⑦自主性→④仲間関係 (7,4) 0.8で 最大 – Gc: (2,6) 0.4 – Ge: (9,7),(8,9) 1.0 • 評価の観点としての「学び方」領域が高まり、授業 展開の特徴が強く現れ、授業評価の高まりへ 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 23 授業間の類似性(1) Ga・Geが類似度が高い – 「作戦・ゲーム」が自主的な活動が中心のゲー ム – Gcでは問題解決のためのゲーム 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 24 授業間の類似性(2) Ga授業に対するGb,Gc,Gd.Ge授業の類 似度 – S(Ga,Gc)<S(Ga,Gd)<S(Ga,Ge)<S(Ga,Gb) • 初回の授業が以後の授業にどのような関わりがあ るか • Ga・GbとGc間にねらいによる活動の差 – 類似度がGaと比べて低い 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 25 まとめ(1) 提案 – 単元授業において時系列に学習者の意識調 査を行い、調査データを元に意味構造グラフ を作図し、グラフの時系列の変容を分析評価 する方法 具体例 – 中学校の体育の単元「バスケットボール」 – 学力観・評価の観点を分類 – 学習者の意識構造を捉えた 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 26 まとめ(2) 結果 – 重要度に基づき授業の中核的な柱は体育の 学力観や評価の観点の柱と一致する – 学習者の意識構造を捉えることができた – 本方法が授業評価する上で有効であった – 今後 • どのような場面で有効であるかの検証 • 授業改善のための方法論の確立 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 27 感想 構造分析法を少しかじることができた 意味構造グラフが授業の進行により変化 することが具体例により分かり、学習の観 念の分類と合わせてみてみると学習者の 意識構造の変化がわかりやすかった 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 28 参考文献 竹谷誠(1991) 「新・テスト理論 教育情報 の構造分析法」 早稲田大学出版部 日本教育工学学会 「教育工学事典」 実 教出版 19 Dec 2002 情報システム演習C 論文講読 29 S-P表分析法とは S-P(Student-Problem)表 – テストなどの得点を一覧表に並び替えて、学習診断や 指導評価のために、 – 生徒と問題の特性を視覚的にとらえやすくチャート(図 表)化したもの。 – 正答ならば1、後藤ならば0とした得点一覧表 – 生徒を正答数(正答率)の高い順に並び替えた得点 一覧表 – 問題も正答者数(正答率)の高い順に並び替えた得 点一覧表 30 情報システム演習C 論文講読 19 Dec –2002 生徒と問題の特性を示す2つの曲線(P・S曲線)を描 いた得点一覧表
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