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緊急地震速報の伝達と受容の実
効性に関する研究~運用開始か
ら1年を検証~
紹介する論文の著者:桶田敦
論文紹介者:村山浩平
1.はじめに
TBSは緊急地震速報が視聴者にどのように伝わ
り、どのように活用してきたのか調査してきた。
放送メディアの問題点
その広域性のため細かな情報は伝わりにくい。
間に合わなかった場合、混乱を招く。
本研究では、アンケート調査結果をもとに
緊急地震速報の伝達と受容の有効性の問題
について論じていく。
2.研究の目的と仮説
(a.) 新しい概念の災害情報として誕生した緊急地震速報が、気象庁
によりどう発信され、
(b.) 主たる伝達側である放送メディアとりわけ民間テレビ放送局に
よってどのように伝達されたのか
(c.) そして住民はどのように受容し、行動したのか
を明らかにすることによって、緊急地震速報が地震防災に役立つ
「期待通りの」災害情報なのかを検証することが本論文の目的である。
(a.) 緊急地震速報の伝達が、主として放送メディアに頼らざるを得ない
現状では、緊急地震速報が発せられても多くの住民には情報が届か
ず、情報格差が生じている
(b.) 緊急地震速報を受容しても情報リテラシーの低い住民は十分な回避
行動をとれていない
(c.) 緊急地震速報は、受け手である住民に「役に立っている情報」とは
評価されていない
調査対象とした地震
a)パターンA
緊急地震速報の発表が深夜だったケース
宮古島近海を震源とする地震
b)パターンB
緊急地震速報が間に合った地域と間に
合わなかった地域が混在するケース
岩手・宮城内陸地震
c)パターンC
緊急地震速報発表が対象地域で間に合った
パターン
十勝沖の地震
電話調査・Web調査・対面調査
アンケートの調査結果①
〈緊急地震速報は住民に届いているのか、住民は何で見聞きしたのか〉
パターンA
地震の揺れ
緊急地震速(警報)を聞いたか
気がついた
揺れる直前
揺れの最中
68.0%
4.3%
揺れが収まっ 聞かなかった
た後
その他
14.6%
81.1%
・「揺れる前」に伝わるはずの地震速報が伝わっていない
・81.5%の人が緊急地震速報をテレビで知った→伝達手段としてテレビの役割が
大きい
アンケートの調査結果①
〈緊急地震速報は住民に届いているのか、住民は何で見聞きしたのか〉
パターンB
発表されたとき何をしていたか
テレビを観
ていた
家事や勉強
何もしてい
ない他
25.8%
23.8%
22.3%
仕事中
13.8%
運転中
4.8%
・緊急地震速報をいつ見聞きしたか、についてはおよそ半数の住民が本震
や余震で緊急地震速報が出たときに見聞きしている。
・土曜の朝で在宅率が高く、テレビを観ていた人が多かったため、緊急
地震速報を見聞きした人が住民の半数に達した。
アンケートの調査結果①
〈緊急地震速報は住民に届いているのか、住民は何で見聞きしたのか〉
パターンC
地震発生が平日の昼間
揺れの前にかなりの人が緊急地震速報を知ったと予測
・「揺れを感じる少し前」「揺れを感じる直前」→17.3%
・後からニュースで知った→31.4%
・出たのは知らなかった→39.0%
およそ6割の人が緊急地震
速報に直接接していない
アンケートの調査結果②
〈見聞きした人はどう行動したか〉
パターンB
緊急地震速報が出てから揺れるまでの猶予期間
・ほとんどなかった→42.4%
・5秒くらい余裕があった→31.3%
・10秒以上の余裕があった→17.2%
回避行動を
とった
24.2%
子どもを守ろ 家具などをお なにもできな どうしたらいい
うとした
さえた
かった
か判らなかった
10.1%
10.1%
20.2%
46.4%と半数近くの人が危機回避行動をとっている
10.1%
アンケートの調査結果②
〈見聞きした人はどう行動したか〉
パターンC
・「何もできなかった」「どうしたらいいか判らなかった」の割合は
「揺れの直前に速報を聞いた人」が最も多い(41.2%)
・次いで「揺れの少し前に聞いた人」(32.0%)「揺れの最中に聞いた人」(25.6%)
揺れる前や揺れる直前に緊急地震速報を聞いた人の方が、「何もできな
かった」、どうしたらいいか判らなかった」という結果
地震の揺れから身を守る行動をとったのは、揺れの最中に緊急地震速
報を聞いた人が一番多く、「子どもを守る」、「家具を押さえる」な
ど具体的な行動を起こしていることが判った。
テレビによる緊急地震速報は「行動指示情報」となっていない?
受け手は緊急地震速報を評価し
ているのか
「地震の大きな揺れが始まる前の防災対応に資する」
情報とはなっていないことの方が多い
・これまでに「見聞きした」人の評価点の平均値→62.7 点
・「聞いていない・判らない」人の平均値→57.0 点
「見聞きした」人の方が,評価が高いという結果
・「身を守る備えができる」(39.2%,48.2%)
・「地震の発生をいち早く知らせてくれる」(25.2%,16.0%)
緊急地震速報が「役に立った」と評価される理由を分析。主な理由と
して「身の安全を図ることができる」情報ということだけではなく
「揺れの大きさ」や「どこで起きた地震いち早く知らせの評価が高い
緊急地震速報の「認知情報」として側面を評価している
まとめ
現状ではテレビをつけていないと緊急
地震速報が発表されたことに気づかな
いため、情報格差が生じる。
 行動支持情報が十分でなく、情報リテ
ラシーの低い受け手の危機回避行動に
はあまり結びついていない。

まとめ
情報リテラシーを高めれば緊急地震速報は
危機回避行動につながる可能性がある。
(1)緊急地震速報の伝達が、主として放送メディアに頼らざるを得ない
現状では、緊急地震速報が発せられても視聴していない多くの住
民に情報が届かず、情報格差が生ずるため防災情報としては十分に
機能しない。
(2)また、緊急地震速報を受容しても、情報に対するリテラシーの低い
住民の多くは回避行動を行えない。
という仮説の妥当性が検証された。
まとめ
緊急地震速報は「行動指示情報」として
だけではなく、「認知情報」として、受
容した住民から評価を受けている。
 緊急地震速報が主要動の到達に間に合わ
なくても、「地震発生情報」としての価
値は失われず、受け手である住民に有効
的に受容されることを実証した。
