ベトナムへの投資状況と魅力と課題 2011年12月12日 日本アセアンセンター主催ベトナム投資セミナー 辻尾 嘉文 計画投資省(MPI)外国投資庁(FIA) 海外投資アドバイサー(JICA専門家) [email protected] 本日お話すること (1)ベトナム概況 (2)ベトナムの特徴 (3)経済動向 (4)投資動向 (5)ベトナムの魅力 (6)ベトナムの課題 (7)ベトナムでの雇用問題 (8)ベトナムへの進出における留意点 2 アジアの中のベトナム 3 1.ベトナム概要 ―地勢― ・位置: 東南アジアの中心(国境:中国、ラオス、カンボジア) ・面積: 33万Km2(日本の約0.9倍。九州を除く日本) ・南北に長い(1,650km)、3/4が山岳地帯 -気候- ハノイ 亜熱帯性モンスーン(四季) ホーチミン 熱帯性気候(乾季雨期) -人口- 8,700万人 ハノイ 700万人 ホーチミン 750万人 (推定) 内、60%が 30才以下、 就業人口 60% ピラミッド型の年齢構成 4 ―民族・文化- ・民族: キン族(越人) 約90%、 53の少数民族 ・宗教: 仏教(80%)、カトリック(10%)、カオダイ教 (新興宗教)他 ・言語: ベトナム語(識字率: 93%) ・通貨: ベトナム ドン (US$1.=VND21,000程度) 5 ―政治― ・首都: ハノイ ・行政区分: 63省、5直轄都市(ハノイ、ホーチーミン、ハイフォン、 ダナン、カントー) ・政治体制: ベトナム共産党の指導する社会主義共和国( 一党支配) →但し、集団指導体制による安定した政権 書記長 ノン・ドック・マイン(北) → グエン・フー・チョン(北) 大統領 グエン・ミン・チェット(南) → チュオン・タン・サン(南) 首相 グエン・タン・ズン(南) → グエン・タン・ズン (南) 国会議長 グエン・フー・チョン(北) → グエン・シン・フン(中) ⇒ 南北中のバランスをとった体制 政治局員 14名(北6 南 4 中 4) ⇒ トップの一部が交代するが政治路線に大きな変化は ない。 6 2.ベトナムの特徴 (1)日本に類似 ① 地政学 : 南北に長く 平野少ない 中国との接点 ② 宗教&文化 : 仏教(80%)、儒教(敬老)、農耕民族(農民60%)、 箸の文化、元は漢字 ※ イスラム教徒実質不在。 ③ 人柄 : 勤勉、我慢強い、頭が良い、手先が器用 ④ 生活習慣 : 地縁、血縁、学閥、派閥、縦割り、根回し、義理&人情 先祖崇拝、冠婚葬祭、寺社詣で。お礼の精神(歳暮) ⑤ 考え方 : 中庸を重んじる(BCC) ⑥ 組織 : ボトムアップの国(稟議の世界) ⑦ 文書主義 : 官庁のアポを取る時は文書で依頼。 議事録、注文書等も書面で。 7 ( 2) BCC → 時間がかかる、時には混乱、但し、大きな波乱なし ⇒ 遅々として進む。 ①Balance バランス(均衡) ②Consensus コンセンサンス(意見の一致) ③Compromise コンプロマイズ(妥協) ・政府 : ノン・ドック・マイン書記長(北部出身)、グエン・ミン・チェット大統領 (南部出身)、グエン・タン・ズン首相(南部出身) → グエン・フー・チョン国会議長(北部出身) ・開発目標: 北も南も中部も山岳地帯も。都市も農村も (所得差2.0 倍) → 貧困層の減少。 ・物事の決定&実施(法令の朝令暮改等) (3) 北と南は異なる 歴史、民族、気候風土、言葉、考え方。 8 北と南は異なる 歴史、民族、気候風土、言葉(北は6声 南は5声)、考え方。 ①気候: 南は熱帯性気候(雨季乾季) 北は亜熱帯性モンスーン(四季) ②地勢: 南は 豊かなメコンデルタ(3期作 直蒔き)、 北 は厳しいホン河デルタ( 2期作田植え) ③民族性: ④性格: ⑤考え方: ⑥購買: 南は商業民族、北は農耕民族 北は我慢強い、南は明るい 北は固い、南は弾力的 南は実利的(借りてでも買う)、 北はブランド志向(貯めてから買う) ⑦歴史: 北と南は必ずしも仲が良くない → ホーチミンとハイバントンネル 9 3.経済動向(1) • 経済成長率: 2000年以降 5.3~8.4% 07年 8.4% 08年 6.18% 09年 5.3% 2010年 6.78% 2011年1~6月 5.57% (10年1~6月5.43%)→通期6.0%? → 2012年目標 6.5% • GDP(名目):2008年 906億ドル 2009年 916億ドル(推定) → 2008年 中国 43,300億ドル タイ 2,724億ドル ⇒ 中国の 1/50、 タイの 3割 ・ 一人当たりGDP: 2007年 833ドル 2008年 1,042ドル → 2008年 中国 3,259ドル タイ 4,116ドル(推定) ⇒ 中国の1/3、タイの1/4 ・ 物価上昇率 2007年 8.3% 2008年 23.0% (年平均) 2009年 6.88% 2010年 9.19% → 2011年1~9月 前年同月比 18.16% (9月22.42%) 10 3.経済動向(2) ―貿易動向- ・輸出額: 2007年 486億ドル 2008年 627億ドル 2009年 571億ドル 2010年 722億ドル (+26.4%)、2011/1~11月 872億ドル(+34.7%) 2010年 縫製品(112)、履物(51)、水産品(50)、原油(49)、電子製品(36)等 内、米国(142)、日本(77 +22.8%) 、中国(73 +48.9%)、韓国(31)、オーストラリア(27) ・輸入額: 2007年 608億゙ル 2008年 807億ドル 2009年 700億ドル 2010年 848億ドル (+21.2%) 2011/1~11月 961億ドル(+26.4%) 2010年 機械機器(135)、鉄鋼(62)、石油製品(57)、衣料原料(54)等 内、中国(200 +21.8%)、韓国(98 +39.9%)、日本(90 +20.7%)、 タイ(56)、シンガポール(41)、米国(38 +25.21%) 等 ・貿易総額: 2007年 1,092億ドル 2008年 1,434億ドル 2009年 1,270億ドル 2010年 1,570億ドル 2011/1~11月 1,833億ドル(+31.7%) 2010年 内、中国(273億ドル)、米国(180億ドル)、日本(167億ドル)、韓国(129億ドル) 台湾(90億ドル? )、シンガポール(62億ドル)等 ・貿易赤字: 2007年 124億ドル → 2008年 180億ドル→ 2009年128億ドル → 2010年 126億ドル (2010年 内 中国 127億ドル 総赤字の1012% ) 2011/1~11月 89億ドル (輸出額の10.2%) 11 4.投資動向 1)投資推移 ・ 外国直接投資: 08年640億ドル、09年 214億ドル、 10年 186億ドル 内、新規 08年 603億ドル、09年163億ドル、10年 172億ドル 内、追加 08年 37億ドル、09年 51 億ドル、 10年 14億ドル 2011年(1月~11月) 新規 99.1億ドル (▲18.1%) 919件 (+10.3%) 件数 (833→919件) 追加 27.8億ドル 324件 実行額 101億ドル(+1.0%) ・ 日本の投資: 08年75.8億ドル、09年3.7 億ドル、 10年 22.0億ドル 11年1-11月 (203 件) (116 件) ( 149 件) 内、新規 08年 72.9億ドル、09年1.4億ドル、 10年 20.0億ドル 16.0億ドル (154 件) (77件) (114件) (172件) 内、追加 08年 2.9億ドル、 09年 2.3億ドル、10年 2.0億ドル (48件) (39件) ( 35 件) 新規投資: 2010年1~11月比 金額 +1百万ドル(+0.5%)、件数 +84件 件数の172件は過去のピーク 2007年の154件を超え過去最高となる。 (除、神戸製鋼プロジェクト +1,008百万ドル(+169.1%)、件数 +95件 ・累計(88~2010) 認可:1,929億ドル(12,213件)→ 内、日本 208億ドル(1,397件) 4位 実行(~2008) 408億ドル(27.2%) → 内、日本 52億ドル(30.2%)1位 12 世界からベトナムへの投資額推移 70000 1800 1600 60000 1400 50000 1200 40000 1000 新規認可額 30000 800 実行額 600 20000 400 10000 200 0 0 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 93年 新規認可額 実行額 新規認可件数 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 2615 3721 6524 8497 4737 3668 1567 2013 2529 1376 1900 2200 4268 9200 17855 66499 16345 1118 2241 2792 2914 3215 2369 2535 2413 2450 2591 2650 2850 3300 4200 6036 11700 261 1445 1557 340 367 325 417 228 308 374 518 697 752 723 922 914 839 10年 17229 969 13 日本からベトナムへの投資推移 新規認可額 拡張認可額 4000 160 3500 140 3000 120 2500 100 2000 80 1500 60 1000 40 500 20 0 0 94 新規認可額 拡張認可額 新規認可件数 95 96 97 98 99 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 94 447 95 1,520 96 968 97 850 98 254 35 66 73 61 12 99 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 80 110 341 144 137 222 451 1,058 965 7,653 138 2,040 560 476 355 339 382 234 169 26 48 51 57 63 57 107 154 154 147 77 114 出所: 越税関総局 「統計年鑑」、越統計総局速報 14 ベトナムへの外国投資形態別累計 (1988年~2011年4月まで) (世界) 産業 加工・製造/建設 加工・製造 建設 農水産 サービス 不動産 その他サービス 合計 件数 8,235 7,501 734 480 3,962 356 3,606 12,677 構成比 (%) 65.0 59.2 5.8 3.8 31.2 2.8 28.4 100 認可金額 構成比 (百万ドル) 109,247.8 97525,2 11,722.6 3,097.5 85,877.6 48,127.8 37,749.8 198,222.9 55.1 49.2 5.9 1.6 43.3 24.3 19.0 100 15 ベトナムへの投資形態別累計 (1988年~2011年4月) (日本) 産業 加工・製造/建設 加工・製造 建設 農水産 サービス 不動産 その他サービス 合計 件数 937 907 30 28 507 16 491 1,472 構成比 (%) 63.7 61.6 2.1 1.9 34.4 1.1 33.3 100 認可金額 構成比 (百万ドル) 18,925.3 89.3 18,338.6 86.5 586.7 2.8 110.0 0.5 2,169.1 10.2 158.2 0.7 2,010.9 9.5 21,204.4 16 2)ベトナム向け国&地域別投資動向(1) (1)国別業種別進出傾向 ①日系企業は製造業が中心(累計 86%) 最近になり、サービス業や不動産開発(商業施設等)が出始めた。 ②欧米系、又、アジアでもシンガポール、香港、台湾、韓国等は不動産業 (工業団地、リゾート開発、マンション、ホテル等)の開発や案件が多く、 製造業への進出は少ない)。 ③但し、韓国&台湾については製造業も可なり出ている(電機、電子製 品、繊維、部品製造、等)。 (2) 2008年は製油所、製鉄所、石化プラント、不動産投資(大型リゾート 開発)案件のライセンスが大量に下りたことから、600億ドルを超えるラ イセンス供与となっている。 17 2)ベトナム向け国&地域別投資動向(2) (3)2009年の動向 ①2008年比大幅減少(665億ドル→163億ドル) ② 日本、中国、アセアン諸国が大幅に減少している中、米国(リゾート開発 案件等)が大幅に増加、台湾、韓国(主に不動産投資)も頑張った。 (4)2010年の動向 新規認可額 172.3億ドル(+5.3%) ①世界景気の回復もあり、金額、件数(969件)とも増加。 ②米国(39億ドル)(不動産中心。含むオランダ経由迂回投資 火力発電案件21億ドル)、韓国(20億ドル)、日本(20億ドル) ③実行額 約80億ドル(+4.8%) 18 3)日系企業の投資動向 (1)特徴 ①製造業が大半 ②不動産&サービ関係(小売等)投資が少ない (2)南北への進出 ①1900年代は南への進出が多い →北部のインフラ未整備 2000年にタンロン工業団地、野村ハイフォン工業団地が完成 ②2001年にキャノンの進出後、北部への進出が急増(中国との関係、 労働市場) ③2007年までは北部に集中。2008年以降再び南部が増加 中部にも70社程度が進出 ④日本商工会加盟社数 ベトナム日本商工会(ハノイ近郊・ハイフォン): 418社(2011年9月) ホーチミン日本商工会(ホーチミン近郊): 525社(2011年9月) ダナン日本商工会(ダナン近郊);47社(2011年9月) 19 日系企業の投資動向(地域別) 投資額: 件 百万ドル 2008年 件数 投資額 北部 中部 南部 合計 48 7 49 104 237,766 6,233,535 814,228 7,275,529 2009年 件数 投資額 35 1 40 76 22,670 650 117,790 141,110 2010年 件数 投資額 53 10 149 212 350,500 1,393,000 332,900 2,076,400 出所; 計画投資省 20 日系企業の投資動向 ベトナム進出日本企業(主要製造業)の投資形態 合弁事業 100%独資 自動車(トヨタ、三菱他) バイク(ホンダ、ヤマハ他) 組立産業 家電(パナソニック、東芝他) 電子機器(富士通、マブチ、 日本電産他) 事務機器(キャノン、ブラザー、 キョウセラミタ) タイヤ(横浜、ブリジストン、井上) 自動車部品(矢崎総業、デンソー、 バッテリー(GS) タカコ) 部品産業 ランプ類(スタンレー) 電子機器 (フォスター、HOYA、 ワイヤーハーネス(住友電工・電装)、メイコー、UMC、アイデン他) 航空機部品(三菱重工、日機装) 素材・建材 セメント・ガラス(太平洋セメント、 その他 日本板硝子) 衛生陶器(TOTO、INAX) 鉄鋼材、銅電線(共栄製鋼、 住友金属) 医療機器(TERUMO他) 食品(味の素、ヤクルト、エースコック、 キリン: 内需型) 医薬品(サロンパス、ロート) 21 4)昨年以降の進出状況の特徴(1) ①大型組立産業の進出が少なかったが、今年に入り増加。 キョウセラミタが進出、パナソニックが洗濯機&冷蔵庫の 工場を新設、ホンダ&ヤマハが増設を決定。 フォスター新規工場を建設。 又、中小・中堅製造業の進出増加 ②基礎産業(インフラ)に対する大型投資 ・出光興産、三井石化による製油所&石化プラント建設 ・神戸製鋼による一貫製鉄所(高炉)建設 ・住友金属による高級鋼材製造 ③裾野産業関連企業の進出が増加 部品生産が中心。 金属加工、表面処理等も。 但し、本格化はこれから。 22 4)昨年以降の進出状況の特徴(2) ④サービス関連企業の増加 ・工場・企業へのサービス提供(機械取付・メンテ・修理、電気・空調、 清掃、品質検査、人材派遣、経理支援、IT関連アドバイス) ・コンサルタント会社(投資・経営・市場調査) ⑤輸入販売会社の増加 ・2009年1月以降の100%外資による輸入・販売、国内市場開放が背景 ・メーカーの輸入・販社、中堅・中小商社の進出 ⑥国内市場志向企業の進出と検討 ⇔ Economic Needs Test (ENT) ・輸入&製造: 化粧品、清涼飲料、ビール、自動車 ・小売ビジネス(コンビニ、スーパー、百貨店) → ファミリーマート、ミニストップ (フランチャイズ) 23 4)昨年以降の進出状況の特徴(3) ⑦設備の増強等追加投資の増加 ・製品(国内販売):ホンダ、ヤマハ、パナソニック、コクヨ、 王子製紙 ・製品(輸出): 住友重機、日本トムソン ・部品:日本板硝子、フォスター、住友電気&住友電装 ・物流:各物流会社による 物流拠点&サービスの強化 (陸上定期便等) ⑧IT関連会社(ソフトサービス等)の進出が再び増加 ⑨不動産投資も(アパート・商業施設。工業団地) ⑩間接投資(出資・買収)の増加(共通投資法による認可) キリン、ニッポンハム、大王製紙、レンゴー、JFEスチール、 ドコモ、日興コーディアル証券他 24 5.ベトナムの魅力 – – – – – – 優秀&豊富な労働力 → 人口の60%が30歳以下(ロボコン、数学オリンピック) 社会の安全と安定 → 共産党一党支配(バランスのとれた政治体制) 若い8,700万人の人口 → 将来のマーケット 地理的優位性 → ASEANと中国の中間(東西回廊、中越回廊) 日本人との類似性 →仏教、儒教、農耕民族、中庸、 優れた投資政策 → 優遇税制、投資形態の幅の広さ、聞く耳を持つ政府 ・共通投資法、統一企業法(2006年1月) ・ 日越共同イニシアチブ、 – 良好&緊密な日越関係→ ODA(1位)、投資(1位)、貿易(2位)、 日越投資協定(05年)、日越経済連携協定(09年10月発効) -国際化の推進と各国&地域とのFTA&EPA締結 ・ASEAN(95年)、APEC(98年)、WTO(07年) ・関税優遇措置の活用(生産&輸出基地としての魅力) -工業団地の整備 260カ所(日系、外資系、ベトナム資本) 25 26 投資案件に対する優遇税制(法人税) (2009年1月発効 政令124) 税率 25% 20% 10% 10% 条件 減税期間 (半免) なし なし 2年間 4年間 優遇期間 免税期間 下記以外 全期間 奨励(経済的困難)地域 10年間 工業団地入居のみの優遇措置撤廃 特別奨励地域 15年間 4年間 (ハイテクパーク、経済特区、特に経済的困難地域) 特別奨励分野 15年間 4年間 (ハイテク、IT、インフラ開発) (首相決定で期間30年も可能) 特別奨励分野 15年間 4年間 (教育、職業訓練、医療、文化、スポーツ、環境) 9年間 9年間 9年間 出典: 計画投資省 27 28 法定最低賃金の各国比較(2010年1月) (米ドル換算) 国名 ベトナム 中国 都市 ハノイ/ホーチミン 上海 深圳 バンコック タイ マニラ フィリッピン ジャカルタ インドネシア バタム島 最低賃金 備考 71 165 162 157 152 121 120 2010年1月改定 推定 換算レート:VND19,000/US$ 出処: 三菱東京UFJ銀行(2010年1月調査) 29 投資事業コスト比較 項目 一般工 給与(US$/月) エンジニア 中間管理職 社会保険料 (雇用者負担) ハノイ 104 287 822 21% ホーチミン 100 293 669 21% 上海 302 633 1,104 44% 深圳 235 567 1,065 15.6-30,2% 項目 工業団地 (US$/m2) 事務所賃貸 (US$/m2/月) 住宅費 (US$/m2) 国際電話料 (US$/3分) 産業用電力 (US$/kwh) コンテナ(40ft) (最寄港→横 浜) ハノイ ホーチミン 上海 深圳 バンコック 35-75 35-100 76.8 27.2-105.5 85.5 45 27.5-56.5 57 64.8 16.1 19.8 20 2,100-4,000 2,600 2,600-3,200 1,200-1,900 0.68 0.68 2.1-3.5 2.1-3.5 0 + 0.028/ 0 + 0.028/ 970 750 740 ジャカルタ 148 294 812 4.2-5.7% ジャカルタ 1,400-2,000 1,900-3,800 0.64 0 + 0.12-0.13/ 6.44 + 0.03-0.17/ 6.94 + 0.11/ 565-665 バンコック 231 540 1,342 5% 1,140 1.8 3.2 + 0.05/ 1,100 JETRO調査(2010年1月) 30 所得税比較 項目 ハノイ ホーチミン 上海 深せん バンコック ジャカルタ 法人税 個人所得 税 (最高税 率) 利益送金 税 付加価値 税 25% 25% 25% 25% 30% 25% 35% 35% 45% 45% 37% 30% 0 0 10% 10% 10% 10-15% 10% 10% 17% 17% 7% 10% 出所: (JETRO 2010年1月調査実績) 31 ~日越共同イニシアテイブ第3フェーズの特徴~ 1. 第1フェーズ&第2フェーズ 第1フェーズ: 03/12~05/12 (達成率85%) 第2フェーズ: 06/6~07/12 (達成率93%) 第3フェーズ: 08/7~10/12 (達成率82%) 平均85% 2. 第4フェーズ (1) 期 間: 2011年7月~2012年12月 行動計画: 28項目(70小項目) (2) 商工会対応組織: 6ワーキングチーム(実質9WT) 電力、労働、マクロ経済、共通(裾野産業他)、小売、官民連携 3.特 徴 ①両国首相の関与 ②官民一体事業 ③共同で行動計画を策定 ④ODA等による日本政府支援 ⑤成果を○×方式で評価する 32 6.ベトナムの課題 – 裾野産業の弱さ: 設備、技術、経営 →日越による育成 – 原材料の外部依存: 基礎産業の未整備(製油所、製鉄所、化学プラ ント) → 2009年製油所完成 2008年以降に幾つかの事業認可 製油所: 出光興産 製鉄所: 神戸製鋼 – インフラの未整備 : 電力、道路、鉄道、港湾、上下水道 (通信) → ODA、BOT、PPPによる整備推進中 →電力計画の遅れ。 – 中間管理職&熟練工不足: 求人難&高いコスト → 育成中。 – 行政手続きの煩雑&不透明感 : 政令の遅れ、地方への徹底不足 ⇒ 職員による裁量 → 中央政府による改善努力中 -工業団地における小規模区画、小規模賃貸工場の不足 → 小規模賃貸工場の建設中。 -高い賃貸住宅や事務所賃貸料 → 新ビルの建設による賃貸料低 下開始。 -賃金の上昇が続く可能性が高い → 円、ドルベースでは上昇鈍化。 付加価値製品への転換。一部機械化で対応。 33 裾野産業育成の背景と経緯 1)何故裾野産業の育成が必要か? (1)ASEAN諸国内の関税撤廃 共通効果特恵関税(CEPT)の撤廃 対ベトナム ①原則2015年にASEAN域内諸国との 関税をゼロに。 ②2018年には完全撤廃 (2)付加価値の増加 ⇒貿易赤字の解消 (3)2010年の工業国化戦略達成 (4)地場日系企業による部品調達 ①低い現地調達率 22.4%(JETRO2010年調査) ⇒ タイ56.1%、マレーシア 45.9%、インドネシア 42.9%、フィリッピン 27.2%、中国 58.3% 34 ②業種別 ①二輪車 80%以上(但し、可なりの部分が日系&外資系からの調達) ②自動車 10%以下 ③電気電子 20%以下 ベトナムと周辺諸国の日系企業の原材料の調達先 地場 日本 ASEAN 中国 その他 ベトナム 22.4 42.5 16.6 10.2 8.4 タイ 56.1 31.0 4.7 3.5 5.0 インドネシア 42.9 33.3 15.8 2.5 5.5 フィリッピン 27.2 50.0 13.2 4.4 5.2 マレーシア 45.9 29.1 12.5 5.5 7.0 中国 58.3 35.4 3.0 3.4 JETRO2010年調査 35 3) 最近の新しい動き (1)首相決定12(12/2011/QD-TTg) 2011/2/24 ①裾野産業定義:機械製造、電子・通信情報、 自動車部品組立、紡績・縫製、皮革・履物 ハイテク開発事業 ②裾野産業の発展奨励&支援 市場開発、土地等インフラ提供、技術移転・ 人材育成、情報提供、財政支援・関税優 遇 ③執行機関: 商工省 ⇒裾野産業発展プロジェクト査定委員会 (2)首相決定12関連財政政策施行通達 (96/2011/TT-BTC) 2011/7/14 ①輸出税・輸入税に関する優遇(免税) ②政府の開発投資信用基金の借入 ③中小企業育成のための財政補助 ④ハイテク産業の発展を支える裾野産業への 税制優遇(輸出税、輸入税、企業所得税) ⑤付加価値税の納付延期&還付 (3)裾野産業の対象事業詳細 (首相決定 1483/QD-TTg 2011/8/26) 上記(1)裾野産業の具体的事業リスト 49業種 進出が期待される日系の裾野産業 (1)業種 ①部品(板金・溶接品、樹脂成型品、ダイキャスト、ゴム・タイヤ、ガラス 、機械加工品、電気・電子部品等) ②付属品(製缶品、プレス・成形金型、治具、ゲージ等) ③素材(薄板鋼板、塗料、樹脂、紙等) ④処理(熱処理、メッキ等表面処理等) ⑤電子パーツ、フレキシブル基板、精密切削品、絞りプレ品 パネル部品 ⑥専用部品(抵抗、半導体、電気、電子部品、板金フレーム、 ワイヤー線等小物部品) (2)留意点 ベトナム市場で十分か? (3) 地場裾野産業企業の活用 38 改善されるインフラ • • • • ・ 道路網の整備 経済回廊(東西回廊、第二東西回廊、南北回廊、中越回廊) 自動車専用道路整備 電力供給量の増大(第7次電力マスタープラン) → 発電所の建設 → 発電能力を2020年までに 現有能力(18,000MW)の75,000MW(4倍)にする計画 → 原子力発電所の建設(2020年稼働予定) → 配電網の整備 → 50万KVの送電線を2系統に。 港湾の整備 北部: ラックフェン、カイラン、ハイフォン 中部: ダナン 南部: カイメップ、チイバイ港(2014完成予定) → ハブ港を目指す 通信網の整備 高速通信回線の導入 水処理能力j向上(水資源、浄水、配水、水質、漏水対策) →上水: 家庭用 → 大阪市等による技術供与(配水、水質改善、漏水対策) 工業用水(河川水活用) → 下水処理 → 排水能力向上(ハノイ&ホーチミン市)、環境対策(工業団地) 39 6.ベトナムの課題(2) – 中間管理職&熟練工不足 → 求人難&高いコスト → ホーチミン&ハノイ近辺ではワーカーも不足 → ワーカーの生活基盤整備(モデル団地に住宅等整備) – 行政手続きの問題 → 政令の遅れ、地方への徹底不足、 → 税関 (場所により解釈&対応に違い) ー工業団地における小規模区画、小規模賃貸工場の不足 → 裾野産業用賃貸工場整備計画を推進中 -高い賃貸住宅や事務所賃貸料 → 供給増加で改善へ。 -賃金の上昇が続く可能性が高い →相対的な優位性はあるものの、絶対額は増加。 →労働集約型企業は地方に進出又は移転。 →一部機械化、高付加価値製品への転換等。 40 7.ベトナムでの雇用問題 (1)賃金上昇 ①背景に物価の上昇 ・2008年23%に次ぐ大幅な上昇 → 2010年1~9月18.16%(2009年6.9%) ・2011年2月 首相決定11号により物価安定を最重点策とする(金融引締) → 前月比上昇幅の低下 8月 0.93%、0.82% ②2008年以降毎年最低賃金が上昇(毎年ドンベースで10%~15%程度の引 上げ) 第1地域(ハノイ&ホーチミン等) ・2010年1月 1,340,000→1,550,000ドン (15.7%) ・2011年10月に前倒し実施(予定) : 2011年~2012年12月に適用 1,550,000→2,000,000ドン(29.0%) ③それでも、タイ、中国等周辺諸国に比して低い水準 タイの約1/3、中国の約1/2程度 ⇒ ドン安のためドル建てでの上昇幅ドン建てほど高くない。 41 2011年10月最低賃金引上げ案 単位:1,000ドン 地域Ⅰ 地域Ⅱ 地域Ⅲ 地域Ⅳ 平均 2011 ベトナム企業 外資企業 1,550 1,350 1,350 1,200 1,170 1,050 1,100 830 1,293 1,108 新最低賃金 2,000 1,780 1,550 1,400 1,683 引上げ幅(率) 外資企業 ベトナム企業 450(29.0%) 650(48.1%) 430(31.9%) 580(48.3%) 380(32.5%) 500(47.6%) 300(25.6%) 570(54.2%) 390(30.2%) 575(51.9%) 外資系で地域Ⅰから地域Ⅱに変更となった地域の最低賃金引上げ: 650千ドン(48.1%) 42 7.ベトナムでの雇用問題(2) (2)労働力確保の問題 ①ハノイ&ホーチミン近辺での大量の労働力確保が難しくなって来ている。 ・背景は物価上昇による生活の困窮、低レベルの生活環境 ・地方にも生活手段がある → 農業と地方で就職機会の増加 →地方での労働力確保は容易。 ②数十名の確保には問題が少ない。 →500名以上の雇用となると対応策が必要 ③日越政府による体策検討&実施 ⇒ 工業団地ワーカーの生活環境改善プロジェクト →ドンナイ省とフンエン省のモデル工業団地でのコンサルによる調査と 青写真の作成(JICAプロジェクト) ・工業団地周辺での公共住宅の建設 ・生活環境整備(公共施設、商業施設、医院、学校等の整備) 43 → 学校&職業訓練センターによる技術&社会教育の拡充 7.ベトナムでの雇用問題(3) (3)不法ストライキ ①2007年頃より日系でも発生。背景には物価上昇、賃金問題 ②短期間で収束(5日間) ③ベトナム政府の対応(労働法改正、タスクフォースチーム) ④日頃のコミュニケーションが重要 →離職率の低下にも貢献 ⇒ 今年、4月以降は日系では殆ど起こっていない。 (4)教育 ①もとは農民 素質は良いが基本的にきちんと、一から教育する必要あり。 ②熱意をもって教えれば、必ず報いてくれという経営者が多い。 ③考え方の違い&何も知らないということを理解して教えること ・謝らない。言いわけをする。 ・ホウレンソウがない ④納得するまで教える。 ⑤先輩が教えない → 教えるように教育 ⇒ →良き指導者、上司、経営者であること。 44 ベトナム人での雇用問題(付録) (4)ベトナム人との付き合い方 背後に歴史と地縁血縁、儒教の精神 ①プライドの尊重 ②日頃のコミュニケーションと仲間意識 ③冠婚葬祭を大事に ④ボーナスや評価制度をうまく活用 45 8.ベトナムへの投資上の留意点 1)十分な事前検討&調査 (1)立地選択 ・北部、南部、中部 ・都会近辺、地方 ・輸出加工区、工業団地、ハイテクパーク、経済区 その他 → 工業団地(日系、外資系、ベトナム系) ・オフイスビル(IT産業用、一般用) ・土地リース又は賃貸工場 ・インフラ整備状況(電力、道路・鉄道、港湾、空港、 上水・下水) & サービス&支援体制 46 (2)進出形態 ①合弁又は独資 ②会社形態 株式会社、有限会社、合名会社、BCC(ビジネ ス協力契約)、支店、駐在員 (3)市場選択 ①輸出型(日本&近隣諸国: 中国、ASEAN諸国) ②国内販売型 ③組合わせ型 47 (4)法律上の規制 ①共通投資法 ・条件付投資分野 ・首相決裁案件 ②環境関連 ・環境アセスメント ③業種別の規制 ・薬品、化粧品、農薬等 ・教育関係(語学教室、塾、技術指導教室) ・運輸関係 ④工場建設 建築確認等、環境対応 ⑤小売業 外資企業に対するEconomic Needs Test (ENT) 48 2)十分な事業性調査 ベトナムでの最大のポイント → 部品の供給体制と製品の販売先確保 ①市場確保 ベトナム国内販売を主とする場合 →市場調査重要 ②原材料の大半が輸入 ③裾野産業が未成熟(技術レベル、設備) → 部品の調達が困難、金属加工&処理等の レベルが未だ低い ⇒ 日越政府による裾野産業育成支援策 49 ④賃金コスト → 未だに相対的に安く、優秀な人材確保が可能 ・賃金上昇傾向 →労働集約型から、一部機械化 &付加価値製品へ ・最低賃金がここ数年毎年上昇 ・今年は来年1月分を10月に前倒し ⑤労働力確保 大都会周辺での大量の労働力確保。 工業団地周辺の生活環境整備への注力 ⑥ブランドと先駆者利益 ・日本ブランド ・先行し自社ブランドを確立すること重要 ・但し、価格が2倍以上では競争困難 ⑦その他 雨季対策、高温多湿対策 50 3)ベトナムを知ること (1)ベトナム人の考え方 ・日本人に類似: BCC、勤勉、頭が良い、手先が器用 ・異なる点も:プライドが高い、まずは言いわけをする等 (2)南北の違いと魅力 (3)人的関係が重要 ⇒ 人脈形成が第一 ・ビジネスも ・コネの社会 (4)官僚社会 ⇒ 時として時間と手間暇がかかる ・文書主義 ・縦割行政 ベトナム政府は行政改革を大きな目標の一つとしている。 51 ご静聴ありがとうございました。 連絡先は次の通りでございます。 ご質問等がございましたらご遠慮なくご連絡 下さい。 Ministry of Planning and Investment (計画投資省) Foreign Investment Agency (外国投資庁) 住所: 65 Van Mieu Str, Hanoi, VIetnam 電話番号&FAX (事務所): 84-4-37474656 電話番号(携帯電話): 84-127-678-5476 e-mail : [email protected]; [email protected] 52
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