パーシャルアニーリングによる 連想記憶安定領域の拡大 三好 誠司 上江洌 達也 阿部 啓 岡田 真人 関西大 奈良女子大 奈良女子大 東大,理研 1 あらまし 多体相互作用系においてスピンの変化よりゆっくりと 相互作用も変化する枠組みはパーシャルアニーリン グと呼ばれる.今回われわれはスピンのヘブ則にラン ダムパターンの相関学習の形のバイアスが加わって 相互作用を変化させるモデルについてレプリカ法を用 いて解析した.連想記憶モデルに有限個のパターンを 記憶する場合,記憶パターンとその混合パターンがい ずれもアトラクタになることが知られているが,パーシ ャルアニーリングにより記憶パターン,混合パターンと も安定領域が広がることが明らかになった. 2 背 景 • 多数の「スピン」とそれらの「相互 作用」という二種類の変数を有す る系の解析においては,相互作用 の方は固定されておりスピンだけ が変化するモデルを考える場合が 多い. • 「スピン」よりもゆっくりと「相互作用」も変化す るモデル(パーシャルアニーリング)の性質は 興味深い. 3 先行研究 Penny, Coolen and Sherrington, J. Phys. A (1993), Coupled dynamics of fast spins and slow interactions in neural networks and spin systems Coolen, Penny and Sherrington, Phys. Rev. B (1993), Coupled dynamics of fast spins and slow interactions: An alternative perspective on replicas Penny and Sherrington, J. Phys. A (1994), Slow interaction dynamics in spin-glass models Dotsenko, Franz and Mezard, J. Phys. A (1994), Partial annealing and overfrustration in disordered systems Uezu and Coolen, J.Phys.A (2002), Hierarchical self-programming in recurrent neural networks 4 目 的 • スピンのヘブ則にランダムパターンの相関学習 の形のバイアスが加わるパーシャルアニーリン グについてレプリカ法を用いて解析する. • ヘブ則の強さを制御するパラメータを導入するこ とにより記憶パターン想起状態や混合パターン 想起状態に対してパーシャルアニーリングがど のような影響を与えるかについて調べる. 5 モデル(1/3) 相互作用Jのダイナミクス ヘブ則の強さ ランダムパターンの 相関学習の形 バイアス 逆温度 ランジュバンノイズ で特徴付けられたノイズ 6 モデル (2/3) スピンσの分布 すべてのスピン状 態に関する和 熱平均 ハミルトニアン (スピンの)分配関数 7 モデル (3/3) • スピンσは で特徴づけられている • 相互作用J は で特徴づけられている 8 理 論 (1/4) 実効ハミルトニアンの導入 相互作用Jのダイナミクス 系全体の分配関数 レプリカ数(正の有限値 0) 9 理 論 (2/4) オーダーパラメータの導入 レプリカ対称性の仮定 10 理 論 (3/4) レプリカ計算により最終的に得られる鞍点方程式 [・・・]はパターン に関する平均 11 理 論 (4/4) • 解の種類(パターン数 p=3 の場合) – P解(Para) – SG解(Spin Glass) – H解(Hopfield Attractor) – 2M解(Mixed State) – 3M解(Mixed State) 12 計算機実験の方法 パーシャルアニーリングではスピンと相互作用の両方がダイナミクスを 有するので,計算機実験は慎重に行う必要がある. 1.相互作用の初期値{Jij}を乱数で設定 2.{Jij}を止めて<σiσj>を計算する. (a)メトロポリス法でR1[MCS]回のサンプリング→過渡状態として捨てる (b)メトロポリス法でR2[MCS]回のサンプリング→ <σiσj>計算 3.求められた<σiσj>を使って{Jij}を差分で更新 4.2と3をR3回繰り返す→過渡状態として捨てる 5.2と3をR4回繰り返す→mやqの平均値を計算 スピン更新のトータル回数=N (R1+R2) (R3+R4) 13 結果1 H解(Hopfield Attractor)のm (相互作用の温度は に固定) へブ則を強くすると安定領域拡大 1.0 ε=0.5 ε=0 ε=1 ε=1.5 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 0.2 0.4 0.6 スピンの温度 0.8 1.0 1.2 14 結果2 3M解(Mixed State)のm (相互作用の温度は に固定) 1.0 0.8 へブ則を強くすると安定領域拡大 0.6 0.4 ε=1 ε=0 ε=1.5 0.2 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 スピンの温度 15 結果3 H解と3M解のq (相互作用の温度は に固定) ε=1 ε=1.5 1.0 1.0 0.8 H解 3M解 H解 0.8 0.6 3M解 0.6 q 0.4 q 0.4 0.2 0.2 0 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 スピンの温度 1.0 1.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 スピンの温度 16 1.2 結果4 H解と3M解の相転移温度 (相互作用の温度は ヘブ則の強さ 0.58 (ホップフィールドモデルに相当) ε=0.5 0.61 ε=1 0.83 ε=1.5 1.07 3M/H 3M解 安 定 領 域 拡 大 0.27 0.38 0.68 0.92 安 定 領 域 拡 大 0.47 0.62 0.82 0.86 (AT安定性を考慮に入れている) 混合状態の安定領域が 相対的に拡大される ε=0 H解 に固定) 17 結果5 相図 (相互作用の温度は に固定) ε=1 1 H解 3M解 m ヘ ブ 則 の 強 さ ε SG+M+H+P M+H+P M+H+P H+P H+P SG解 3M解 0 0 SG+M+H+P H解 q 0 ε=1 1 1 0 1 P P ε=0.5 ε=0.5 破線:一次転移 実線:二次転移 1 1 H解 m H解 q 3M解 SG解 0 3M解 0 0 1 0 1 スピンの温度 18 結果6 相図 ヘ ブ 則 の 強 さ (相互作用の温度は に固定) 破線:一次転移 実線:二次転移 ε スピンの温度 19 結果7 相図 (ヘブ則の強さεを固定) 破線:一次転移 実線:二次転移 相 互 作 用 の 温 度 スピンの温度 20 まとめ • パーシャルアニーリングにおいてヘブ則を強く することにより二次相転移が一次相転移に変 わり,安定領域が拡大する. • H解(Hopfield Attractor)は常にAT安定. • 3M解(Mixed State)はヘブ則が弱いときAT 不安定だがヘブ則を強くするとAT安定になる. 21
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