語意推論の基盤となる能力 としての刺激等価性 今井むつみ(慶應義塾大学) 岡田浩之(玉川大学) Cognitive Developmental Robotics Lab. 語意学習の制約説 • 出会った語の意味としてあらゆる可能性をす べて探索・検討するのでは無い • 語の意味として適切な概念に関する信念を 持つ • その信念によって探索すべき仮説空間を制 約し,効率良く語の意味を獲得している Cognitive Developmental Robotics Lab. 語意学習における非論理的制約 言葉の学習を加速する 非論理的な認知的制約 • 事物全体原理 – ことばの指示対象は事物の部分、素材、色ではなく 全体である • 形状類似バイアス – ことば(名詞)は色、大きさ、素材ではなく、形の類 似したものに適用される Cognitive Developmental Robotics Lab. 語意学習と推論の対称性 Cognitive Developmental Robotics Lab. 刺激等価性が ヒトの推論過程や言語獲得過程に 果たす役割を実験的に解明する Cognitive Developmental Robotics Lab. 対称性が • 先天的に備わっている • 生後~初期の言語獲得前に学習により獲得 – 言語獲得のためのバイアスとして利用? • 初期の言語獲得の過程で、対称性も同時に獲得 • 対称性(2項関係)から刺激等価性(3項関係)へ – 言語以外の複数モダリティ(音、画、触)間でも刺激等 価性が成立するのか? モー、 モー Cognitive Developmental Robotics Lab. 乳幼児における対称性推論の検証 • 2種類の音声ラベル→対象を学習させる。 – 音声ラベル→動物 – 音声ラベル→顔 • テストでは動物と顔のペアを提示する – びっくり条件 • 異なる音声ラベルで学習したもの – びっくり無し条件 • 同じ音声ラベルで学習したもの Cognitive Developmental Robotics Lab. 学習フェーズ 「ドナ、ドナ、ドナ」 「コタ、コタ、コタ」 「ドナ、ドナ、ドナ」 「コタ、コタ、コタ」 Cognitive Developmental Robotics Lab. テストフェーズ ビックリ条件 注視時間の差 ビックリ無し条件 Cognitive Developmental Robotics Lab. 動物からヒトへの思考革命 -対称性が思考をネットワーク化する- • 動物 – 時系列情報処理のため遷移ルールの記憶に基 づく推論 → 一方向 • ヒト • 既知のルールに対して対称性を適用する → 双方向 ヒトは対称性を獲得することにより、 双方向性の情報処理が可能になり、 知識がネットワーク化されることにより 爆発的に増大した Cognitive Developmental Robotics Lab. 双方向認知 • 視覚情報処理の双方向性 – 視覚領野間の双方向結合による光学と逆光学計 算モデル • 随意運動制御 – 小脳の運動学習 – フィードバック誤差学習法 • ミラーニューロン – 運動の観察(理解)と運動の生成(表出)が一つの 処理過程 刺激等価性との関連 Cognitive Developmental Robotics Lab. 日常生活における推論 • 推論を可能とする心の基本操作を分析する – 論理学と思考の心理学は同一である Bool(1854) • 大部分の形式論理の規則は人間の直感に反 する Rips(1977) • 演繹推論を可能としている心理学的機構、ひい ては、そもそも人間に合理的な推論を行う能力 Johnson-Laird(1977) があるか疑問である 形式論理学の教える通りに推論することは難しい Cognitive Developmental Robotics Lab. 形式論理と対称性 • PならばQである • Pである。従ってQである • Qでない。従ってPでない 【肯定式】 【否定式】 • Qである。従ってPである • Pでない。従ってQでない 【後件肯定の錯誤】 【前件否定の錯誤】 こちらも出来ないの? Cognitive Developmental Robotics Lab.
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