第2回小テストの採点結 果について 2012年12月10日 川端望 もっともな意見ですぐに改善にかか るもの 私語禁止。 私語をしたいならば、自己責任で「小テストを受け損 ねるというリスクをとりつつ、授業に出ないで友達とお しゃべりする」という選択をしていただきたい。 もっともな意見だがすぐにとりかか れないもの 授業の初めに、当日行う授業の概要を言ってくれな いか。 いまだに空欄が小さく、書き込みづらい。 時間的に厳しい。前回の概要のみで勘弁。 検討するが、空欄自体に書き込まなくてもいいのではない か 空欄に入る文字が読みづらい 今年度の第7章から、もう少しポイントを上げることを検討 する(現在は周囲の字プラス2ポイント)。 教員から見てよい着眼点と思うもの 実際の会社に距離の近い話だと感じてもらえている。 「能力主義管理」が男子正社員には年功的に運用され ていることと、①若者の正社員採用抑制、②非正規の 増加、③ジェンダーバイアスが補完的であることは、3年 前及び2年前よりもよく理解してもらっている。 漠然とした「能力主義の方がよい」「年功序列の方がよい」とい う意見が減り、補完性に注目して考える記述が増えている。 現状は悪循環だという着眼点 「年功序列では企業にとって負担が大きいからといって、非正 規雇用に頼り、景気が悪くなったら首を切る、ということを続け ていると経済は後退する一方」 悪循環は何によって解決するのか?単に自由化するのか、今 とは別の補完性を持った制度を設計して実施するのか。 授業の説明不足を衝いたもの 「女性の非正規雇用の割合が高い原因として、現在の社 会では一度仕事を辞めると正社員として戻ることは難し い(Ka:中略)状況下だからということも含まれるのですか ?」 その通り。学卒一括採用慣行が強いうえに、正社員を年功的に 処遇していると年齢が上の人を低い給与で採用しにくいから。 「非正規社員に求められる仕事の質は変化しているので しょうか?つまり、非正規社員の持つ仕事に対する専門 性というのは過去に比べて高まっているのでしょうか」 独特の訓練が必要な専門性ある仕事でも、需給バランスが緩ん でいるため非正規化されているケース。 ある程度技能が必要な基幹的な仕事が、無理があっても非正規 によって担われているケース。 コメントしておきたい意見 日本では1960年代に地縁・血縁は崩壊しているの で現在初めて生じた問題とは関係ないのでは? 自営業の衰退度合いが大きく異なる。 男女の平等には、結婚による出産などを経る可能 性が高い(一時的に離職しなければならない確率が 高い)など障害は多いと思うが、どう考えるか。 女性の出産休暇は離職ではないし、企業にとって法定の 義務。 育児休暇を男女とも取るように、企業と個人を労働法制や 税制で誘導すれば、男女が同様に働きながら育児をする ことは可能ではないか。 主な質問について(1) 女性の社会参加は少子化を逆転させるのか、よりいっ そうすすめるのか。 「会社を家庭より優先し、家事は妻に任せればよい」という前提 のもとで組まれた人事査定や労働時間管理が支配的な社会の もとで個人的に努力して社会参加した女性は、子どもをつくる のがたいへんになる。 その場合、社会全体として経済成長が順調で、働き手の夫・専 業主婦の妻の家族内分業が安定すれば出生率は下がらない。 ところが、社会全体として家族内分業が合理的でなくなる(年功 的に出世する見込みのある夫がいなくなり、若者全般がパート や派遣で生活が安定しない)と、子どもをつくる展望がなくなり、 出生率は下がる。 女性が無理なく男性と同様にはたらける制度・慣行が社会に定 着すると、出生率は上がる。 OECD加盟国の女性労働力化率と出生率の関係も単純でない。 主な質問について(2) 貧困の具体的基準は何か。 企業内労働市場で他部署からの欠員補充を繰り返せば、 結局のところ外部から採用・補充せざるを得ないので、 閉鎖型と開放型は同じではないか? 等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合を 算出したものを相対的貧困率という。 閉鎖型の場合、最下級職務だけが開放されて外部から採用す ることになる 「テストと面接がかぶってしまったとしたら、企業論のテ ストは日程をずらしていただくことは可能ですか?」 期末試験の追試験のことだと思うが、その条件は『学生便覧』 の「「専門教育科目の履修上の注意」を参照。学部全体統一基 準であり、川端に決定権はない。 主な質問について(3) 民間よりも公務員のほうが男女が平等に扱われるとい うのは本当か。だとすればなぜか。 労働基本権を制限する代償としての勤務条件法定主義 公務員の労務管理は形式主義なので、良かれ悪しかれ法律が 杓子定規に適用されやすい。 非正規公務員にはこの点は劣悪待遇につながるので注意! 背景として、手段を選ばず利潤を追求したい、という誘惑が民 間企業より弱い 公的セクターの労働条件は、「優遇され過ぎ」の観点だけでなく 「女性が働き続ける条件の確保」の戦後史としても見る必要が ある。
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