化学概論

化学概論
第2回
化学概論
第2回
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先週のまとめ
• 原子の構成要素
– 電子:粒子として発見
– 原子核:陽子と中性子
– 非常に小さい原子核の周りに密度の小さな電子
• 量子論の起こり:それまでの物理学では原子の性質を
説明できなかった
– (1)光の2重性
• 粒子としての性質もある:光子 E=hn
– (2)電子の波動性
• 電子線の回折現象
• ドブロイ波(物質波)
原子の構成要素は次のうちどれか
陽子と電子
中性子と電子
原子核と電子
しらない
95%
な
い
し
ら
核
と
電
子
2%
子
性
中
原
子
と
電
子
と
電
子
2%
子
2%
陽
1.
2.
3.
4.
電子の性質は?
1. 負電荷をもつ粒子
2. 正電荷を持つ粒子
3. 負電荷の粒子であ
り、かつ波の性質も
持つ
4. 波である
5. どれも間違い
74%
21%
5%
ど
れ
も
間
で
あ
る
違
い
0%
波
...
子
粒
荷
の
電
負
で
あ
り
を
電
荷
正
負
電
荷
を
も
持
つ
粒
つ
粒
子
子
0%
ドブロイ波(物質波)
• 光の粒子性の逆で、粒子である電子などが
波の性質(物質波)を持つ(1924年ドブロイ)
• 電子線(のちに水素分子、陽子、中性子)で
回折現象が発見
ドブロイの関係式
運動量 p (=mv) で運動する粒子は
l =h/p= h/mv
の波長をもつ
ドブロイ波の計算
静止状態の電子が1000Vの電位差で加速された場合、電子の
持つ波長は?
電位差Eで加速された電子の運動エネルギーは
1 2
mv  eE
2
電子の運動量は p  mv  2meE
ドブロイ波長は l 

h
h

p
2m eE
6.6261034 Js
2  9.10910-31 kg 1.6021019 C 1.00103 V
 3.881011 m  38.8pm  0.388Å
38.8pm:固体中の原子間距離と同程度⇒金属などに当てると
回折現象が起こる
電子(粒子)の波動性とは
①~④
⑤
二重スリットに電子線を当てると、
①どちらかのスリットを通って?、電子がスクリーンに到達する
②スクリーンに到達する電子の位置はかなり不規則
単なる粒子の運動とすると、スリット後方の2ヶ所だけに電子が通るはず
③、④当たらない場所と、集中して当たる場所が徐々に明確になってくる
⑤多くの電子が通ると(時間をかけて測定すると)回折縞が表れる
(3)電子の運動の不確定性
電子はどちらのスリットを通ったのか?
確定できるのであれば、「回折」は起こらない
↓
電子の位置は確定できない??
検出器に当たった瞬間に、位置は特定され
るが、電子の状態(運動量など)は確定でき
ない
不確定性原理
粒子の位置xとその方向の運動量pxの不確かさ Dx Dpx
Dx  Dpx  h 4
電子の位置が決定された(Dx=0)とき、電子の運動量px
は決定できない(Dpx→∞)
不確定性の計算例
1.1.0 gの弾丸の速度が10-6 m/sの確かさで分かっているとき、弾丸の位置に対する
不確かさは?
Dp  mDv
Dx 
h
1

 5 10 26 m
4 mDv
事実上、不確かさは0
2.電子(m=9.109×10-31 kg)の速度が10-6 m/sの確かさで分かっているとき、電子
の位置の対する不確かさは?
Dp  mDv
h
1

4 mDv
6.6261034 J  s
1


4
9.1091031 kg 106 ms1
 57m
事実上、位置は全く特定できない
Dx 
(4)水素原子スペクトル
19世紀中頃より分光学(spectroscopy)が発展。水素ガスを入れた真空放電管か
ら放出される光のスペクトルに注目された
スペクトル:光を波長成分に分けて、光の強度の波長分布を表す
光
プリズム
水素ガス
(水蒸気) 放電管
検出器(写真フィルム、乾板)
白色光(太陽光)の
スペクトル
400
500
600
700
波長(nm)
水素原子スペクトル
410
434
486
656
波長(nm)
水素原子スペクトルの解釈
特徴 :
・細い(鋭い)線スペクトルの集合
・短波長になるほど、間隔が狭い
バルマーは可視部スペクトルの波長が次の関係となることを発見
n2
l  a 2
aは定数 (n=3,4,5…)
n 4
波長の逆数を用いて、リュードベリは次の関係に書き換えた
1
1
1
 R( 2  2 )
(n=3,4,5…)
l
2
n
Rはリュードベリ定数:R=1.097×107m-1
可視部のスペクトルを「バルマー系列」と呼ぶ
その後、紫外部、赤外部にもスペクトル系列が発見され、すべて
の系列は次の一般式で表される
1
1
1
 R( 2  2 )
( n2 > n1 の整数)
l
n1 n2
水素原子スペクトルの系列
系 列
■ ライマン
■ バルマー
■ パッシェン
n1
1
2
3
n2
2,3,…
3,4,…
4,5,…
最長波長(nm)
121.6
656.5
1876
紫外部
可視部
赤外部
■ ブラケット
■ プント
4
5
5,6,…
6,7,…
4052
7460
赤外部
遠赤外部
■ハンフリーズ
6
7,8,…
12400
遠赤外部
水素原子スペクトルの発光機構
・放電エネルギーを吸収して、原子が高いエネルギー状態(励
起状態)になる
・低いエネルギー状態(基底状態、別の励起状態)に変化する
際に、余分のエネルギーを光として放出
・放出される光(光子)のエネルギーは
E=hn=hc/l:状態間のエネルギー差
発光スペクトルはとびとびの位置(波長)
↓
原子はある決まった離散的なエネルギー状態しかとりえない
(任意の状態になれるなら、発光スペクトルは連続のはず)
ボーアの水素原子モデル
ボーアは水素原子スペクトルが、原子内の電子の持つエネル
ギー変化と考え、3つの仮説を設定
1.(量子仮説)電子はとびとびの角運動量(h/2の整数倍)をも
つ円軌道を運動
2.(定常状態の仮説)ある軌道で運動する電子はエネルギーを
放出しない。各軌道には一定のエネルギー準位が対応
3.(遷移仮説)高いエネルギー準位(E2)から低いエネルギー準
位(E1)の軌道に電子が移るとき、そのエネルギー差(DE)に
対応する光を放出する
hn=DE=E2-E1
ボーアの水素原子モデルの導出
電子の遠心力とクーロン引力のつりあいは
電子 -e
v
r
+Ze
原子核
Ze 2
mv2

2
4 0 r
r
① 0:真空中の誘電率
電子の持つ全エネルギーEは運動エネル
ギーとポテンシャルエネルギーの和
E (r )  K  U
mv 2
Ze 2


2
4 0 r
②
ポテンシャルエネルギー??
電子のポテンシャルエネルギー
無限遠
∞
電子を原子核から無限に離れた場所(距離 ∞)
から、距離 r にまで近づけたときに、電子が受け
る仕事を電子のポテンシャルエネルギーと呼ぶ
仕事=力×距離
Ze22
Ze
Ze 2
dr
U
dr
2
2
 4
4 00rr
4 0
r
電子 -e
Ze2
力:
4 0 r 2
+Ze
r
r
1
Ze 2  1 
 r 2 dr  4 0  r  
r
Ze 2

4 0 r
原子核
電子のポテンシャルエネルギーの最大値は無限遠において零、原
子核に近づくと、低いエネルギーを持つと考える(負の値)。
ボーアの水素原子モデルの導出
電子の遠心力とクーロン引力のつりあいは
電子 -e
v
r
+Ze
原子核
Ze 2
mv2 ① 0:真空中の誘電率

2
4 0 r
r
電子の持つ全エネルギーEは運動エネル
ギーとポテンシャルエネルギーの和
E (r )  K  U
mv 2
Ze 2


2
4 0 r
①と②より
Ze 2
E (r )  
8 0 r
②
③
ボーアの水素原子モデルの導出
Ze 2
E (r )  
8 0 r
③
このままだと、電子の全エネルギーは連続な値をとる
そこで、
1.量子仮説より電子の角運動量を
 h 
mvr  n
 ④ n=1,2,… (量子数)
 2 
 0h2 n2
n2
rn 
  a0
⑤ 量子数nの電子の
①、④より
2
m e Z
Z
周回半径
 0h2
a0 
 52.9pm :ボーア半径
2
m e
電子は⑤で与えられる特定の周回半径だけが許され、同心円状
の軌道のいずれかを回っていると考える
ボーアの水素原子モデル
r2
r3
r4
r5
r1
ボーアの水素原子モデルの導出
③、⑤より電子の全エネルギーEnもまた、とびとびの値となる
e4m Z 2
En   2 2  2
⑥ n=1,2,… (量子数)
8 0 h n
Enを電子のエネルギー準位という
水素原子(Z=1)の場合
e4m 1
En   2 2  2
8 0 h n
最小のエネルギー準位(n=1):基底状態
それ以外
(n>1):励起状態
エネルギー準位が変化することを「遷移」といい
hn=EniEnj
に相当する光の吸収または放出が起こる
ボーアのモデルとスペクトル
e 4 m  1
1 
hn  Eni  Enj  2 2 2  2
8 0 h  n j ni 
e4m
R  2 3  1.09737107 m-1
8 0 h c
Rは実験値とよく一致する
エネルギー
パッシェン系列
5
4
3
2
バルマー系列
ライマン系列
n=1
 1
1 
 R 2  2 
l
 n1 n2 
1
励起状態からn=1に遷移するとき放出
される光: ライマン系列
励起状態からn=2に遷移するとき放出
される光: バルマー系列
...
ボーアのモデルの問題点
• スペクトル強度は全く説明できない
• 水素型原子以外(電子を複数個持つ)へ拡張す
るのは困難
• 電子の円軌道や量子仮説の導入に必然性?
• 電子の波動性が考慮されていない
↓
• 電子の振る舞い(運動)に新たな考え方が必要
他の原子スペクトル
He
Ne
いわゆるネオンサインの元。ネオンサインの様々な色は別の蛍光物質で出す。
Na
NaのD線と呼ばれる
道路、トンネル内の街路灯でよく使われるオレンジ色のランプ。
今日のまとめ
• ドブロイ波(物質波)
• 電子の波動性と不確定性原理
• 水素原子スペクトル
– リュードベリにより定式化
1
1
1
 R( 2  2 )
l
n1 n2
( n2 > n1 の整数)
• 量子論を使って、水素原子スペクトルを説明
したボーアの原子モデル
出席確認 その2
今日の講義はどうでしたか
1. 難しい (ちんぷんか
んぷん)
2. 少し分かったような気
がする
3. よくわかった
48%
44%
っ
か
し
分
少
難
し
い
(
ち
た
よ
た
っ
か
くわ
よ
ん
ぷ
うな
気
ん
か
ん
ぷ
ん
)
が
す
る
8%
参考
• この講義のシラバスは見ましたか。シラバスに毎回
の講義予定があります。次回の講義内容に相当す
るテキストを簡単に予習してください。
• この講義で使ったスライドは
http://struct.pc.uec.ac.jp/yasui/kagaku2012/
にあります。(シラバスからリンクあり)
• ただし、スライドを印刷しただけでは勉強したことに
はならないので注意すること。
• スライド、ノート、テキストを基に復習すること。
• 宿題は必ず自分で解いて提出すること。