はじめに ― なぜ量子力学を学ぶ必要があるのか? ―

2015/4/23
はじめに ― なぜ量子力学を学ぶ必要があるのか? ―
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量子力学を使って自然を理解する。
(1) 物質のミクロな構成要素:分子→原子→原子核→クオーク(自然界の階層構造)
これらミクロ粒子の状態や運動を記述する。(原子核物理)
(2) 量子力学は物質の多彩な性質を理解することに使われる。
物性物理(固体物理、量子化学など)
・ ダイヤモンドがなぜ固いのか?
・ 銅が電気の良導体であること?
・ 鉄が強い磁石になること。
エネルギー環境
――― “ 環境量子論 “
・地球温暖化現象をミクロな視点でみる。 太陽エネルギーの起源、温室効果
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量子力学の応用(Ⅰ):新しい物質や機能の創生
・原子力エネルギー
: 原子核内のエネルギー利用
・レーザ(光通信&メス): 原子・結晶のエネルギー準位間の電子遷移
・超 LSI(サブミクロンの加工技術):半導体中の電子挙動のコントロール
・分子熱流体: 連続体現象を原子・分子レベルで理解し、新素材開発へ応用
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量子力学の応用(Ⅱ):先端技術の進歩が量子力学の原理を直接利用
・走査型トンネル顕微鏡: 原子1つ1つを見たり、操作したりできる
・量子細線・量子ドット: 10-9m のナノスケールの世界(ナノテクノロジー)
・量子コンピュータ、量子暗号、量子テレポーテーション
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実学としての量子力学
工学系の中でも重要な教育科目という位置付け
量子力学的考え方に馴染み、計算手法をマスターし、先端的理工学へ応用する。
○授業計画(14 コマ)
1.物理量と期待値 (教科書 第6)4/23, 4/30, 5/14
 物理量と演算子、期待値、エルミート演算子(復習)
 関数空間と行列表現
 交換関係(復習)
 調和振動子の代数的な計算(生成消滅演算子)
2.角運動量とスピン(教科書 第7) 5/21, 5/28,6/4
 電子とスピン
 角運動量演算子の交換関係
 角運動量演算子の合成
 スピン・軌道相互作用
3. 多粒子系(教科書 第8) 6/11,6/18
 多粒子系のシュレーディンガー方程式と波動関数
 同種粒子・波動関数の反対称性
 ハートレー近似とハートレー・フォック近似
中間試験 6/25
4. 近似解法(教科書 第9) 7/2, 7/9, 7/16
 摂動論(時間に依存しない摂動、時間に依存する摂動)
 変分法
5. 散乱 (教科書 第10) 7/23,7/30
 散乱断面積
 ボルン近似
 部分波展開と位相のずれ
○授業の進め方
教科書を使った講義。必要な資料は配布する。課題レポートを課して、適宜解答を説明する。
○教科書
「量子力学」原 康夫著(岩波書店)
○参考書
「量子力学―その基本的な構成―」日置善郎著(吉岡書店)
「量子力学 上、下」シッフ著(吉岡書店)
「量子力学」有馬朗人著(朝倉書店) (散乱)
「量子論で宇宙がわかる」マーカス・チャウン著(集英社新書): お薦め図書
○講義 HP
研究室HP(http://enep.ence.kyushu-u.ac.jp/)に講義コンテンツあり。活用ください。
○試験・成績評価等
出席状況・課題レポート等の平常点、試験の合計が60点以上を合格
平常点が極度に不足する場合は再履修とすることがある。
○連絡先
渡辺幸信 筑紫キャンパス D 棟 316 室
電話 092-583-7601 E-mail: [email protected]
○大学生のための素粒子・原子核、物質・生命スクール サマーチャレンジ 2015@つくば
参考 2014 年度の HP
http://www2.kek.jp/ksc/8th_2014/index.html