2015/9/30 2007.2.21(水)特定領域A05班 地震研究所第2会議室発表 火山学のアウトリーチを行う時の 科学の視座 京都大学 人間・環境学研究科 鎌 田 浩 毅 私の5年間の経験から 1.新書5冊はアウトリーチのためにとても有効でした! 2.トークの実績も積み試行錯誤をしました。 「科学の伝道師」 次の課題 1.講演会や出前授業で興味をつなぐ話を用意しよう 2.市民に伝えたい。大事なメッセージ 3. 論理的な話も充分理解してもらう仕組みを作る →全ての火山学者へ これであなたも名アウトリーチ家 2015/9/30 第1部 「面白くてためになる」のスローガンから出発 あるとき「面白い」には落とし穴 があることに気づいた 例:「地温曲線の美学」「火砕物の分類」も 「階段ダイアグラム」の感動も市民には通じない 市民はオタクばかりじゃない 2006年2月 横浜講演会(防災協議会) 10月同志社大(公開講座)「地球と人間」 ここに来ている人は比較的地学に関心のある人たちだが、 それでも話についてこられない 2015/9/30 「市民に面白い話」をチェックする キーコンセプト:「知的雑談をもりこめ!!」 お笑いやだじゃれはいけない 雑談はあくまでも「知的に」かつ、 科学的・論理的思考法をさりげなく伝える 目的:1.科学のおもしろさに目覚める入り口まで導く 2.地学的な考えかた、世界観を描いてみせる 3.トリビアの火山から、火山学の理解へ 2015/9/30 「知的な話」のコンテンツ ②科学的思考法は市民にとってためになる 1)科学的思考法とテクニック 棚上げ法ほか16の方法 「ラクして成果があがる理系的仕事術」PHP新書 2006年5月出版 2)自然に対する畏敬の念 噴火と恵みがある 「火山と防災」(仮題)岩波新書 2007年刊行予定 3)自然科学にはモノ派とスジ派のふたつがある 火山地質とテクトニクス 「火山とはなにか」(仮題)中公新書 執筆中 4) 科学者の日常生活と考えかた『成功術 時間の戦略』→ 5)アウトリーチに集中する戦略「月刊地球」特集号 2015/9/30 第2部 市民に伝えたい科学的思考法の模索 科学者の日常の行動を分解して、「役に立つ」内容を紹介 集める 目的優先法 不完全法 落ち穂拾い法 考える 要素分解法 一望法 棚上げ法(ブラックボックス) まとめる わり算法 三脚法 コピーペースト法 残り7つで計16個の理系的テクニック ポイントは3つのキーワードに 2015/9/30 A.「ラクして」 → 1.アタマを節約する(セーブする) 2.システムを作る (=努力しなくても済む方法) B.「理系的」 →1.何でも単純化する 2.本質だけに集中 C.「仕事術」 → 効率的な時間管理の戦略 →アウトプット優先主義 →これを実践したアウトプットが、 『ラクして成果が上がる理系的仕事術』(PHP 新書) (2006年5月刊行、3刷り、23000部出ました) 2015/9/30 例:コピーペースト法 仕事は、何でもラクに始める! →最初はオリジナルではなく、 クリエイティブからはじめよ 学ぶはまねぶ=先人たちの知恵を、まず自分の武器に 歴史と伝統をまず身に付ける。改革はその後でよい。 天才(アインシュタイン・デカルト)ではないのだから、 クリエイティブで十分。 レポートや企画書の大半は、クリエイティブから開始 例:枠組み法 2015/9/30 まず最初に、仕事の枠組みを決める <話の枕> 科学者は、実験する前に先に論文を書いてしまう。 科学の実験では、先人が同じようなことをやっている。 手法やデータの表し方をそっくりもらって、自分の論文を書 く。 数字だけを空欄にしておき、前書き、後書き、謝辞まで書い てしまう。 数字をあとで埋めて完成させる。こうして論文生産効率を上 げている。 例:2年間のアメリカ留学の報告書を行く前に書いてお く。そして新しい研究成果は国際誌に。 例:目的優先法 2015/9/30 目的優先法 ☆「緊急」と「重要」を見わける。 時には、「緊急」よりも「重要」を優先する。 例1:「重要」=中長期的な仕事(私の場合、著書を書く) 「緊急」=電話をとらない。留守電モードに。 本当に大事な電話は吹き込んでくる。 メールは昼から返事をまとめて書く。 例:目的優先法 2015/9/30 ■ 私の『仕事術』のポイント →アウトプット優先主義 ☆執筆の時間は、何があっても朝に確保する。 つまり、「自分の時間を確保する闘争!」(福田和 也) <話の枕> パソコンのバージョンアップを行わない。 →とことん使い倒す。NEC 98に「松」「ワードスター」 ☆電子メール、インターネット、文書作成(ワープロ機能) だけで済む! →本来の仕事の目的を、絶えず考える習慣を 2015/9/30 16個の理系的テクニックが、市民にウケル理由 1)火山そのものや火山学よりもずっと身近 2)研究者のエピソードから、日常の仕事や活動に、 役に立つテクニックが得られる 3)雑談としては、知的でかつ喜ばれる。好感がある 4)今時代は「理系」ブーム 理系脳・日産:カルロスゴーン・数学ドリル 2015/9/30 その他の市民が喜ぶ話 1.世界をリードする科学者が好き。 日本の火山学は世界最先端 2.2000年の有珠山と三宅島 「盆と正月がいっしょに来た」 不謹慎と怒られたが笑っていた。 3.噴火したら直ちに出かけていく。 授業はもちろん休講です。補修の代わりに噴 火のニュースを見ていてください。 2015/9/30 第3部 自然に対する畏敬の念 実用段階の短期予知噴火予知 地震予知より進んでいる しかし難しい長期予知 科学には限界がある→市民の驚き 噴火は止めることも、コントロールも出来ない 噴火のエネルギーは莫大すぎて、発電できない 2015/9/30 エピソード:火山学者が噴火で死んだ 自然は人智を超える 1991年 雲仙 1993年 ガレラス 自然は人間が思い付く以上の現象が必ず起きる 科学者が一番畏敬の念を持っている 2015/9/30 テーマ:火山学者は火山で死ぬのは本望か Q&Aでよく出る質問の一つ: 私の回答 「ちがう!」 → 市民のおどろき 火山学者は司令塔みんなの命をあずかっている と言う。 だから火山学者は死んではいけない。 市民がガイドを失って判断できなくなるから。 2015/9/30 第4部 地球科学に特有の世界を伝える モノ派とスジ派の存在する火山学 モノ派→岩石→ 地質学 スジ派→理屈 →プレ−トテクトニクス 私の二つの仕事 図幅制作に15年 九重火山 フィリピン海プレ−トと火山の連動 豊肥火山地域 モノ派 2015/9/30 フィールドワークで現物を見て驚く。 小野晃司さんの火山学 噴火は、水がコントロールする・・・融解温度が下がる →大変な驚き フィールドワークの面白さ 日常生活と全く違うイメージの水の働き 物理・数学とは違う世界を強調 博物学の面白さ フィールドワークの面白さ 今西錦司:京都学派の伝統 2015/9/30 スジ派 スジ派の一つの見かたとして 長尺の目がある 地球科学は、歴史科学でもある 進化を扱っている よって長尺の目でモノを見る スジをとことん追ってゆく 火山のテクトニクス eg.中村一明さんの火山学 2015/9/30 第5部 科学者の日常生活と考えかた 地球科学は「長尺の眼」を持っている 「地球科学者の常識は、市民の非常識!?」 市民は1ヶ月かせいぜい1年先まで →一方で火山学は 1万年 活火山 10万年 火山の寿命 100万年 ダイアピル 1000万年 プレート運動の変化 一億年 プルーム でものをみる →市民の驚き 2015/9/30 第5部 いかにして火山学者になったか 私がアウトリーチに没頭するようになった理由 月刊地球特集号2006年10月号:目的 最近、理系の分野ではどこでもアウトリーチ(啓発活動・ 教育)が大問題。 アウトリーチには、3点のポイント ・研究資金の獲得 ・後継者の育成 ・一般社会への認知 月刊地球特集号2006年10月号: 目次 執筆者とタイトル 2015/9/30 鎌田浩毅 京都大学 大学院人間・環境学研究科 教授 「特集巻頭言:地球科学のフロンティアとしてのアウトリーチ」 井田喜明 兵庫県立大学 生命理学研究科 教授 「噴火予知をめぐる火山研究者と社会の関係」 井上能行 東京新聞 デスク長 「自然災害報道の課題 学者が知らないこと・マスコミが知らないこと」 小川勇二郎,長谷川仁子,久田健一郎 筑波大学生命環境科学研究科 教授 「地学教育における大学の役割とアウトリーチの問題点」 鎌田浩毅 京都大学 大学院人間・環境学研究科 教授 「アウトリーチを効果的に行う秘訣:フレームワーク法の技術と実例」 小松美加 東京大学出版会 編集部長 「学術専門出版社の現場から」 月刊地球特集号2006年10月号: 目次 執筆者とタイトル 2015/9/30 瀬川茂子 朝日新聞社 科学医療部 記者 「新聞記者のつぶやき」 谷原和憲 日本テレビ報道局 社会部 記者 「災害取材者のアウトリーチ」 千葉達朗 アジア航測株式会社総合研究所 主任研究員 「三宅島2000年噴火と掲示板『ある火山学者のひとりごと』」 寺戸 真 岸和田高校 教諭 「高校でできる地球科学についての啓蒙活動」 土井恵治 気象庁 総務部企画課 防災企画調整官 「東京大学地震研究所でのアウトリーチ活動」 林田 明 同志社大学 工学部環境システム学科 教授 「リベラルアーツとアウトリーチ」 藤岡達也 上越教育大学 学習臨床講座総合学習分野 教授 「持続可能な開発のための教育と自然災害に関する防災・減災のための教育」 2015/9/30 まとめ 1.「おもしろくて」「ためになる」 の2本立てで話をくみたてる →それぞれの内容を市民向けにチェックする 2.科学的思考法を伝える 『ラクして成果が上がる理系的仕事術』(PHP 新書) をもとに市民講演会 cf.,養老孟司さん 3.火山学者が伝えられる世界観 a)畏敬の念:科学はずいぶん進歩したが万全ではない b)モノ派とスジ派 c)市民の日常的感覚から離れた驚き 異次元・異空間のイメージ「長尺の眼」 d)科学者の生き方
© Copyright 2024 ExpyDoc