情報化と職業倫理」 ~ 社会保障行政に携わる理数系官僚の立場から

「情報化と職業倫理」
~ 社会保障行政に携わる理数系官僚の立場から ~
〔 5日目 〕
厚生労働省年金局数理課
数理調整管理室 室長補佐
西岡 隆
9.社会人として理学出身者に求められること(理解力と説明力)
(社会人として理学出身者に求められること)
• 情報化が進む中で、行政の分野においても、情報開示と適切な説明が強く
求められる。
• 理学部で学んでいること → 他の学問に比べても純粋で、真を追求する
ことが最終目的
• 社会人になると ・・・ 理学部で学んだことをどのように活用するか、また、
それをどうやって人に伝えるかが求められる。
(理学出身者だから出来た仕事の例)
・ 医療費の将来見通し及び医療費と経済成長率の関係について
・ 少子化傾向と合計特殊出生率
(1) 医療費の将来見通し及び医療費と経済成長率の関係について
国民医療費、医療給付費、老人医療費の将来見通し
(医療制度改革案ベース、平成18年1月)
(医療制度改革ベース、平成18年1月)
年 度
平成18
予算ベース
(2006)
平成27
平成37
(2015)
(2025)
33.0
44
56
10.8
16
25
27.5
37
48
34.0
47
65
11.1
18
30
28.5
40
56
改革後
改革案
国民医療費(兆円)
老人医療費(兆円)
医療給付費(兆円)
改革実施前
国民医療費(兆円)
老人医療費(兆円)
医療給付費(兆円) (注) 平成18年度の老人医療費は74歳以上の高齢者が対象、平成27年度、平成37年度は75歳以上が対象。
「医療費の将来見通しに関する検討会」第1回資料(厚生労働省保険局調査課)
医療費の将来見通しの手法の概略(改革実施前)
加入者数<初期値>
将来推計人口
(平成14年1月推計(中位推計):
国立社会保障・人口問題研究所)
加入者数の将来見通し
(将来の人口高齢化の変化等を加味)
加入者数の将来見通しデータ
1人当たり医療費<初期値>
医療費の伸び率
医療費の将来見通し
(加入者数×1人当たり医療費)
(70歳未満年当たり2.1%、
70歳以上年当たり3.2%)
過去の医療費の伸び率から設定
医療費の将来見通しデータ
「医療費の将来見通しに関する検討会」第1回資料(厚生労働省保険局調査課)
国民医療費の将来見通しの試算方法
(改革実施前)
平成37年度の国民医療費
=
1人当たり医療費
(平成18年度予算)
×
過去の実績から得ら
推計時点の医療保険
れた1人当たり医療
等の人数の見込み
費の伸び(※)の累乗 • ××
(平成37年度)
(19年間分)
(Q)
(P)
※ 1人当たり医療費の伸びは、まず、「人口構成の変化による影響」を除き、更に、現行制度を前提としてい
るので、「制度改正の影響」を除いている。
しかし、残りの将来の診療報酬改定の影響や自然増については、将来の動向を見込むことが難しいため、
過去の実績を機械的に用いている。
※ 過去の実績として将来見通しに用いる期間としては、平成14年5月に公表した将来見通し以降、平成7~11
年度の伸びを用いている。この理由は、平成12年度以降、介護保険制度創設や平成14(2002)年改正による
健保3割負担の導入など医療費に大きな影響を与える大きな制度改正が毎年のようにあったことから、実績の
伸びから制度改正の影響を除くためには、精度の低い方法によらざるを得ず、将来見通しの算定期間にするこ
とは適当でないためである。
※ 将来見通しに用いた伸び率 : 70歳未満 2.1%
70歳以上 3.2%
(注) 上記の数式について、より詳細にいうと、医療費の将来見通しでは、基本的に5歳刻みの年齢階級別の
データを用いて計算を行っている。
「医療費の将来見通しに関する検討会」第1回資料(厚生労働省保険局調査課)
過去の医療費の将来見通しの比較
1.公表時期
2.2025年度の国民医療費の見通し
対国民所得比
社会保障に係る給付と負担
の将来見通し(試算)
(21世紀福祉ビジョン)
社会保障の給付と負担
の見通し
今回試算
(改革実施前)
平成6年3月
平成12年10月
平成18年1月
141兆円
81兆円
65兆円
10 1/2~13 1/2~14%
12 1/2 %
12.0 ~ 13.2%
全体 … 4.5%
全体 … 3.1%
全体 … 2.6%
平成2~4年度の平均
平成2~11年度の平均
平成7~11年度の平均
2000年度まで
5~4%
2001年度以降
4~3%
2010年度まで
2.5%
2011年度以降
2.0%
年平均2.0%、1.5%
(2011年度まで
年平均3.0%、2.1%、
2012年度以降
1.6%、1.3%)
3.見通しの前提とした1人当たり医療費
の伸び率
伸び率(高齢化分及び制度改正
の影響を除く)
伸び率の算定期間
4.推計時点における経済成長率の
見通し
「医療費の将来見通しに関する検討会」第1回資料(厚生労働省保険局調査課)
<国会議事録抜粋>
平成18年5月17日 衆議院厚生労働委員会
(質問者) 医療費推計なんですけれども、これは資料を見ていただくと、総理も見なれている資料
だと思いますが、国民医療費の推計値の推移を見ると、推計のたびに、試算のたびにどんどんと
下がっているわけですね。1994年には、2025年の国民医療費は141兆円になるというふうに試
算をしておりましたが、97年の試算では104兆円、2000年には81兆円、2002年には70兆円とい
う形でどんどん下がってきて、2005年には65兆円まで減っている。10年余りで約4割もこの推計
が減っているわけですね。
こんな推計で、この数字を根拠にして、これを前提に、例えば今回の改革によって、このままの
制度だったら2025年に56兆円になるはずの医療給付費が、今回の改革を行えば49兆円まで7
兆円削減できる、そういうことを言うことに、これは総理、どれくらいの意味があると思いますか。
<略>
小泉内閣総理大臣 私は知らないことは知らないと言っているんですよ。高校のときには微分積分
をやりましたけれども、今はもうすっかり忘れていますね。足し算、引き算、割り算ぐらいはできる
かな。しかし、連立方程式ももう覚えているかどうかわからない、政界の連立方程式も難しいよう
だけれども。
しかし、そういう数字の突き合わせという点については、私は自分でする気もないし、する必要も
ないと思っています。そういう数字を積み重ねた統計等の問題につきましては、専門家の意見を
聞いた方がいいんじゃないか。私より優秀な方々がたくさん周りにおられますから、そういう方々
の、専門家の意見を尊重して、私よりもできる人にお任せして、それをもとにした資料で政策を
打っていくというのが政治家の立場として適切ではないかと思っております。
医療費の伸びと経済成長率
• 1970年代からのわが国の国民医療費の伸び率と経済成長率との関係をみると、両者
は、概して、経済成長率の高い時期は国民医療費の伸びが高く、経済成長率の低い
時期は低く推移してきた。
• いくつかの時期に分けて見ると、
① 1970年代の経済成長率が高かった時期は、その伸びを超えて、国民医療費は
伸びていた。
② 1980年代に入って、老人の一部負担導入などもあり、国民医療費の伸びは、成
長率よりもやや低く推移した。
③ 1990年代以降、急速に経済成長率が鈍化する中、国民医療費の伸びはあまり
低下せず、経済成長率を超えて伸びる時期が続いた。
• このように、国民医療費の伸びと経済成長率にある程度の関係がある背景としては、
国民医療費の伸びを構成する要素の1つとして診療報酬改定があり、これが当時の経
済情勢を勘案して、設定されてきたことが考えられる。
「医療費の将来見通しに関する検討会」第3回資料(厚生労働省保険局調査課) 1
医療費の伸びと経済成長率
25.0%
20.0%
国
民
医
療
費 15.0%
の
対
前
年
度 10.0%
伸
び
率
国民医療費の伸び > 経済成長率
1970年代後半、経済
成長率も大きかった
が、それを超えて医
療費は増大
1975年
1990年代、経済成長率が低下す
ることにより対GDP比が上昇し、
制度改正や診療報酬のマイナス
改定を行った
1980年
国民医療費の伸び < 経済成長率
5.0%
1990年
-3.0%
0.0%
-1.0%
1.0%
2000年
2006年 3.0%
5.0%
7.0%
9.0%
1980年代後半、医療
費は経済成長率より
も小さく推移
11.0%
13.0%
15.0%
名目経済成長率
-5.0%
(注) 国民医療費は、2004年度までは実績。2005年度は医療機関メディアス、2006年度は医療機関メディアスによる4~9月伸び率。
経済成長率は、2005年度までは実績。2006年度は政府経済見通しによる実績見込み。
(出典) 「国民医療費」(厚生労働省大臣官房統計情報部)、「国民経済計算」(内閣府)
2
過去に行われた将来見通しにおける経済成長率の仮定と国民医療費の伸び率の関係をみると、いずれの将来見
通しにおいても、概ね、経済成長率+2%程度となっている。
これまでの将来見通しにおける医療費の伸びと経済成長率
国
民 9.0%
医
療
費
の
対 7.0%
前
年
度
伸
5.0%
び
率
1994年
平成6年3月の将来見通し
(2025年度で141兆円)
平成12年10月の将来見通し
(2025年度で81兆円)
3.0%
平成18年1月の将来見通し
(2025年度で65兆円)
1.0%
名目経済成長率
-3.0%
-2.0%
-1.0%
0.0%
-1.0%
1.0%
2006年
2.0%
3.0%
4.0%
2000年
-3.0%
(注) 国民医療費は、2004年度までは実績。2005年度は医療機関メディアス、2006年度は医療機関メディアスによる4~9月伸び率。
経済成長率は、2005年度までは実績。2006年度は政府経済見通しによる実績見込み。
(出典) 「国民医療費」(厚生労働省大臣官房統計情報部)、「国民経済計算」(内閣府)
3
診療報酬改定率と経済成長率(1)
○ 診療報酬改定率と経済成長率の関係を単年度ごとにみると、必ずしも両者に関係があるとはいえず、例えば、
同じ2%程度の経済成長率のときであっても、1992年のように+2.5%の改定が行われるときもあれば、2006
年のように▲3.16%の改定が行われることもある。
診療報酬改定率と経済成長率
(1986~2006年)
3.0%
1992年
診
療 2.0%
報
酬
改
定 1.0%
率
1990年
1986年
1995年
2000年
-4.0%
-2.0%
0.0%
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
経済成長率
-1.0%
-2.0%
-3.0%
2006年
-4.0%
(注)経済成長率は、内閣府「国民経済計算」。ただし、2006年度については、政府経済見通しによる実績見込み。診療報酬改定率は、年度当初に設定されたもの。
4
診療報酬改定率と経済成長率(2)
•
しかし、1970年代は国民医療費の伸びが高く、1990年代以降低く推移しているといった長期のト
レンドをみると、診療報酬改定率と経済成長率に全く関係がないとはいえない。
•
以下のグラフは、診療報酬改定が最近は2年に一度であることから、各年度の改定率の2年平均
値を出し、それと各年の経済成長率の相関をみたものである。
1.5%
-2.0%
診
療
報
1.0%
酬
改
定
率
( 0.5%
2
年
平
均
) 0.0%
0.0%
改定率 1990年
成長率 1990年
y = 0.1554x - 0.002
相関係数 = 0.513
R2 = 0.2633
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
経済成長率
-0.5%
-1.0%
-1.5%
-2.0%
改定率 2006年
成長率 2006年
5
診療報酬改定率と経済成長率(3)
•
•
診療報酬改定が、その改定率決定時における過去の経済動向を踏まえつつ、決まることを考える
と、両者の関係に一定のタイムラグがあると考えられるため、前のページの診療報酬改定率と経
済成長率の関係について、経済成長率を1年ずつ過去にずらして、相関係数をとる試みを行った。
すると、タイムラグを4~5年とった場合に、約0.9という非常に高い相関係数が得られた。
診療報酬改定率と経済成長率の相関係数
参照期間
タイムラグ
0年
1年
2年
3年
4年
5年
6年
改定率
成長率
改定率
成長率
改定率
成長率
改定率
成長率
改定率
成長率
改定率
成長率
改定率
成長率
(1986~2006)
(1986~2006)
(1986~2006)
(1985~2005)
(1986~2006)
(1984~2004)
(1986~2006)
(1983~2003)
(1986~2006)
(1982~2002)
(1986~2006)
(1981~2001)
(1986~2006)
(1980~2000)
相関係数
0.513
0.590
0.602
0.718
0.885
0.882
0.758
6
診療報酬改定率と経済成長率(4)
1.5%
-2.0%
診
療
報
酬 1.0%
改
定
率
( 0.5%
2
年
平
均
) 0.0%
0.0%
改定率 1994年
成長率 1990年
y = 0.2548x - 0.0067
相関係数 = 0.885
R2 = 0.7831
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
経済成長率
-0.5%
-1.0%
-1.5%
改定率 2006年
成長率 2002年
-2.0%
7
「医療政策は選挙で変える(再分配政策の政治経済学4)」
(権丈善一(慶應義塾大学商学部教授)、2007.10)
勿凝学問74 医療政策担当者と、いち医療政策研究者の齟齬 -所得、政策、
医療費の因果関係をめぐって (2007.3.28) より抜粋
「
医療費コントロール政策を一定とした医療費の伸びを見通して、政策効果を
シミュレーションすることは、政策選択の際には無いよりはあった方がましでは
あろう。さすがに当てずっぽうでは問題もある。これまでも厚労省は、こういう
考え-医療費コントロール政策を一定-のもとに医療費の見通しを、「名目医
療」と「名目医療費の国民所得に占める割合」というかたちで出してきたのであ
る。そこでの問題は、経済状況が変化すれば必ず医療費コントロール政策が
強化されるにもかかわらず、医療費コントロール政策を一定とした「見通し」が
「予測」として解釈され、しかも名目医療費のみが取り上げられて予測が当
たった外れたの議論としてもてあそばれることになる-挙げ句の果てには、厚
労省は医療費を過大推計して医療費抑制機運を高めようとしているという「厚
労省陰謀説」まででっち上げられてしまい、医療費の見通し作業が昨今の官
僚バッシングの流れの中に置かれたりすることであった。」
(2) 少子化傾向と合計特殊出生率
図1 出生数及び合計特殊出生率の年次推移
万人 第1次ベビーブーム
(昭和22~24年)
300
最高の出生数
第2次ベビーブーム
(昭和46~49年)
2 091 983人
2 696 638人
5
昭和41年
ひのえうま
1 360 974人
出
平成19年
1 089 745人
200
平成17年
最低の出生数 1 062 530
最低の合計特殊出生率 1.26
生
数
100
平成19年
1.34
4
合
計
特
3
殊
出
2生
率
1
出生数
合計特殊出生率
0
0
22
昭和・・年
・
30
・
40
・
50
・
60
2
平成・年
7
・
・ 19
8
平成19年人口動態月報年計(概数)の概況(厚生労働省大臣官房統計情報部)
〔 合計特殊出生率の定義 〕
TFR :合計特殊出生率
pi : i 歳の出生率、
Bi : i 歳の出生数、
49
N i : i 歳の女子人口
49
Bi
i 15 N i
TFR   pi  
i 15
表4-1 合計特殊出生率の年次推移(年齢階級別内訳)
年 齢
総 数
対前年増減
合 計 特 殊 出 生 率
昭和50年
60
平成7年
16
17
18
19
17年-16年
18年-17年
19年-18年
1.91
1.76
1.42
1.29
1.26
1.32
1.34
△ 0.03
0.06
0.02
15~19 歳
0.0205
0.0229
0.0185
0.0275
0.0253
0.0250
0.0246
△ 0.0022
△ 0.0003
△ 0.0004
20~24
0.5128
0.3173
0.2022
0.1859
0.1823
0.1871
0.1831
△ 0.0036
0.0048
△ 0.0040
25~29
0.9331
0.8897
0.5880
0.4388
0.4228
0.4353
0.4341
△ 0.0160
0.0125
△ 0.0012
30~34
0.3569
0.4397
0.4677
0.4364
0.4285
0.4516
0.4613
△ 0.0079
0.0231
0.0097
35~39
0.0751
0.0846
0.1311
0.1755
0.1761
0.1886
0.2025
0.0006
0.0125
0.0139
40~44
0.0106
0.0094
0.0148
0.0239
0.0242
0.0286
0.0305
0.0003
0.0044
0.0019
45~49
0.0004
0.0003
0.0004
0.0006
0.0008
0.0007
0.0008
0.0002
△ 0.0001
0.0001
注:年齢階級別の数値は各歳別出生率を合計したものであり、15歳及び49歳にはそれぞれ14歳以下、50歳以上を含んでいる。
平成19年人口動態月報年計(概数)の概況(厚生労働省大臣官房統計情報部)
参
考
合計特殊出生率について
1. 期間合計特殊出生率とコーホート合計特殊出生率
○ 合計特殊出生率は「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」
であり、次の2つの種類がある。
A 「期間」合計特殊出生率
ある期間(1年間)の出生状況に着目したもので、その時点における各年齢(15
~49歳)の女性の出生率を合計したもの。
どの年齢の女性の人数も同じとして算定される出生率なので、女性人口の年
齢構成の違いを除いた「その年の出生率」であり、年次比較、国際比較、地域比
較に用いられている。
B 「コーホート」合計特殊出生率
ある世代の出生状況に着目したもので、同一年生まれ(コーホート)の女性の
各年齢(15~49歳)の出生率を過去から積み上げたもの。
「その世代の出生率」である。
○ 実際に「一人の女性が一生の間に生む子どもの数」はBのコーホート合計特
殊出生率であるが、それに相当するものとして一般に用いられているのはAの
期間合計特殊出生率である。
これは、各年齢の出生率が世代(コーホート)によらず同じであれば、この二
つの「合計特殊出生率」は同じ値になるからである。
○ 晩婚化・晩産化が進行している状況では、各世代の結婚や出産の行動に違
いがあり、各年齢の出生率が世代により異なるため、別々の世代の年齢別出
生率の合計であるAの期間合計特殊出生率は、同一世代のBのコーホート合
計特殊出生率の値と異なる。
2. コーホート合計特殊出生率(ごく粗い計算)
コーホート合計特殊出生率は同一世代の女性の出生率を過去から積み上げる
ため、その世代が50歳になるまで得られないが、現段階で得られる到達年齢まで
のコーホート合計特殊出生率を、5歳階級ごとに1つの世代とみてごく粗く計算した。
例えば1968~1972年生まれ(平成19年における35~39歳の世代)につい
ての39歳までのコーホート合特殊出生率は約1.43であり、実際にこの世代の
「一人の女性が一生の間に生む子どもの数」は、少なくともこの水準を上回ると見
込まれる。
平成19年の期間合計特殊出生率は、現在、晩産化の進行中であり、出産を終
えた世代の高年齢時における低い出生率と、晩婚化・晩産化により出産を先送り
している世代の若年齢時の低い出生率の合計であって、「実際に1人の女性が一
生の間に生む子どもの数」より低く現れている。
平成19年人口動態月報年計(概数)の概況(厚生労働省大臣官房統計情報部)
合計特殊出生率のモデルベースの誤差について
~「現代人口学の射程」(稲葉寿編著、2007年)「第4章 人口指標の精度について」(石井太 国立社会保障・人口問題研究所)
ある年齢 i の女子がその年の子どもを生むか否かが、
一定の確率 pi に従って決定されてい
るというモデルを考える。
ˆ i ] は二項分布の分散を用いて、
このとき、観測される年齢 i の出生率 pˆ i の分散 V [ p
V [ pˆ i ] 
pi (1  pi )
Ni
となり、出生率 TFR の分散は独立性からそれらの和
49
49
i 15
i 15
V [TFR]  V [ pˆ i ]  
pi (1  pi )
Ni
となる。これにより出生率の標本誤差を計算すると、その値は約 0.00119 となる。正規近
似が成り立つとすれば、95%信頼区間は[1.2578, 1.2624]となる。
すなわち、このモデルで考えれば、出生率は、通常公表されている少数第 2 位までは見る
ことができそうであるが、それより下の桁は誤差の範囲と考えることができよう。
図2 モデルに基づく出生率作成の実験
度数
1.2578
95%信頼区間
1.2624
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
1.2550
-1.2555
1.2575
-1.2580
1.2600
-1.2605
1.2625
-1.2630
出生率
1.2650
-1.2655
10.高度情報化社会における職業人の社会責任(まとめ)
レポート(課題)
(課題1) この講義で説明した社会保障に関するト
ピックのうち、もっとも興味があるもの1つについて
以下のことを記述
① テーマの概要
② テーマに関しての感想・意見
(課題2) 自分が専攻している(もしくはこれから専攻
する)内容について、以下のことを記述
① 専攻内容の概要
② 専攻内容の(数学の専門性がない人でも)わか
りやすい説明と社会の有用性