外 傷 2014.2.10(月) 佐治 攻 当院での外傷診療の流れ 救 急 救 命 医 FAST陽性かつ ”Non-responder”, “Transient responder” ⇒ 緊急開腹止血術の適応 ★蘇生目的の手術 ①Primary survey ・ABCDEアプローチ 生理学的徴候を主眼に,迅速かつ 的確に患者の生命危機を把握 ( Damage control surgery) (②蘇生) ③Secondary survey ・生命の安全確保の上で,全身の系 統的な損傷部位を検索 Definitive operation 外科医 IVR Non operative management(NOM): 放射線科医 外傷でのABCDEアプローチ 救急室における治療戦略 1、A & B の異常 ・気道閉塞 ・誤嚥 ・気道狭窄の危険(出血、熱傷、損傷など) ・無呼吸 ・低換 気 ・低酸素血症 ・出血性ショック ・心停止 ・切迫するD ・ALI/ARDS ・肺水 腫 ・脂肪塞栓症候群 ・敗血症 ・肺炎 ・無気肺 2、C の異常(初期輸液療法) 乳酸加リンゲル液などの晶質液による蘇生では出血量の3倍程度必要とされて おり、生理食塩水1000〜2000ml(小児では20ml/kg x3回)を初期輸液として15-20 分で使用 →反応がないものがnon-responder ・3Lを超えるまでに輸血開始が望ましい ・成人に室温程度の輸液1Lすると体温0.25℃低下 切迫するD 頭蓋内圧が>20mmHgに上昇すると治療が必要 >40mmHgが持続すると死亡率が著明に高くなる。 (正常頭蓋内圧 5-10mmHg) 頭蓋内圧亢進、脳ヘルニア進行する場合には ・過換気 (ICP亢進ではPaCO2 30-35mmHg、脳ヘルニアではPaCO2 25-30mmHgを目標とする) ・上半身を15-30°挙上 ・浸透圧利尿薬(マンニトール 0.25〜1.0g/kg) 循環血漿量低下、過度の過換気、高体温、高血糖を来さないよう注意 FAST (focused assessment with sonography for trauma) Damage Control resuscitation 1980年代までは外傷外科治療は完全な止血とすべての損傷修復し ていたが、貧血や難治性アシドーシスで高度凝固異常や不整脈で 死亡するケース多かった。 →Damage Control Surgery(DCS)という概念 DCSの適応 ・解剖学的損傷携帯からでなく、生理学的恒常性が破綻した場合 「deadly triad」(低体温、代謝性アシドーシス、血液凝固異常)が 揃った際には手術を30分以内に終了させるよう努める。 ・深部体温 <35.5℃ ・BE <-7.5mmol/L または pH <7.2 ・PT,APTTが>50%の延長、2-3Lの出血、または10単位以上輸血 外傷手術におけるDCS • 出血コントロール(Control of bleeding) • 損傷臓器の固定・検索(Identification of injury) • 汚染のコントロール(Control of contamination) • 再建(Reconsutruction) 初回手術では上記4項目のうち、3項目までを迅速に施行する。 ガーゼパッキングまでの手順 2本以上の吸引管を用意 パッキングは5ヶ所 ガーゼは大ガーゼかタオル Trauma laparotomyは剣状突起から恥骨結合に至る正中切開が標準 見逃してはいけない出血部位 Zone 1 Zone 2 Zone 3 後腹膜アプローチ法 肝損傷 分類 肝被膜損傷なし a.被膜下出血 b.実質内出血 深さ3cm以上の損傷 a.単純性 b.複雑性 深さ3cm未満の損傷 (Glisson脈管系損傷 が少ないので) 肝損傷修復 肝損傷修復 脾損傷 分類 脾被膜損傷なし a.被膜下出血 b.実質内出血 脾表面から実質の約 1/2以上の深さ a.単純性 b.複雑性 脾表面から実質の 約1/2の深さ未満 脾損傷症例 膵損傷 分類 損傷部位は頭部(Ph)、体部(Pb)、尾部(Pt)で表す I型:膵被膜の連続性保たれていて、膵液の腹腔内漏出なし (膵実質挫滅(contusion)や実質内血腫を含む) II型:主膵管損傷を伴わず実質損傷の深さは実質径の1/2未満まで III型:実質径1/2以上の損傷、または主膵管損傷を伴うもの aは主膵管損傷を伴わない bは実質損傷の程度に関わらず、主膵管損傷を生じているもの 膵損傷症例(Pb-IIIb) 消化管損傷 分類 非全層性損傷 消化管連続性あり 腸管内容の漏出な し 全層性損傷 a.一部でも連続あり(穿孔) b.全周に渡り完全離断 腸管損傷修復 間膜・小網・大網損傷 分類 腸間膜損傷症例 横隔膜損傷 分類 非全層性の損傷 全層性損傷 a.横隔膜ヘルニアを伴わない b.横隔膜ヘルニアを伴う 点状出血や血腫 (挫創) 横隔膜損傷修復 2-0以上の非吸収糸を使用 腎損傷 分類 腎損傷例 他 臓器損傷分類 気管・気管支損傷 肺損傷 胸郭損傷 心損傷 大血管損傷 心損傷修復 骨盤損傷 分類 用手的骨盤動揺性検査は感度が低く、骨盤動揺させて出 血を助長する危険があるため行うべきでない。 骨盤損傷 分類 骨盤環連続性が保たれている 前方骨盤環に限局する損傷 前方骨盤環離解あり 後方骨盤環の離解がない か、10mm未満 後方骨盤環の離解が明らか または垂直不安定型 Abdominal Compartment Syndrome 1、腹腔内圧はmmHgで表記(1mmHg = 1.36cmH2O) 2、中腋窩線の高さをゼロ点と設定 3、間欠的腹腔内圧の測定は膀胱内圧を用い、測定時の膀胱内へのPSS注入量 は最大で25mlとする。 4、仰臥位、呼気終末時に測定 5、重症患者における正常値は5〜7mmHgである。 6、Abdominal perfusion pressure = 平均動脈圧 – 腹腔内圧 Intra-abdominal hypertensionの重症度分類 重症度 腹腔内圧 再開腹適応に明確な基準なし I 12〜15mmHg II 16〜20mmHg III 20〜25mmHg 1、腹腔内圧>20mmHgに加えて、尿 量<0.5ml/kg/h、最高気道内圧 >45cmH2Oなどを伴う IV >25mmHg 2、腹腔内圧>26mmHg 当科のSilo-closure 外傷外科手術のチームワーク <術者(医師)> 術野が見える。 見たものから何を考え、何をするのか =意思を伝える必要性 外傷外科 手術 日常定時手術の 「阿吽の呼吸」 は通用しない <看護師> 術野が見えない 状況が理解できなければ用意が出来ない =意思疎通の必要性 効果的なコミュニ ケーションが手 術時間を短縮 外傷手術のポイント 外傷手術に熟練したスタッフを集めろ ≒ ATOM(Advanced Trauma Operative Management course)講習受講者 大坪教授、小泉講師、小林慎二郎講師 を呼ぼう👍 生命の危険を伴う重症外傷とは… 外傷重症度スコア(injuury severity score:ISS) 最重症外傷例とは >15 >25 AIS-Abbreviated Injurey Scale:自動車事故を元に米国で考案された指標 ISS-Injury Severity Score: AISを基に多発外傷の重症度を評価するスコアで、損傷部位を6部位(頭頚部、顔面、胸部、腹 部および骨盤内臓器、四肢および骨盤、体表)に分けて各部位、最高のAIS重症度スコアの中 から上位3つを抽出して二乗したものの合計(最大値は75点)
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