社会的問題を考慮したWeb情報活用技術 取得に向けた実践的教育 加藤源太郎* 真鍋絵美理* *神戸大学 田中美名** 大月一弘* 森下淳也* **神戸松蔭女子学院大学 報告者 加藤源太郎(神戸大学大学教育研究セン ター) 1 はじめに 自己紹介 専門:科学技術社会論(STS) 社会学 →情報技術の進展によって現れはじめた 「情報が社会にもたらす影響」 2 今日の報告 授業実践の報告 Web情報の活用技術 + 情報の信頼性、有害情報、個人情報 の流出、 著作権etc. =「情報倫理」 情報に対する判断力、評価 3 授業のねらい 情報教育:操作技術に偏重する傾向 ↓ 初等中等教育から情報教育が充実していくこと が期待される 自ら情報を収集して、分析し、評価し、再構成し て新たな情報を創出するという段階 4 メディアリテラシー教育(参考) 能動的にメディアにアクセスし、分析し、評価 し、多様な形態でコミュニケーションを創り 出す能力を育成する ↓ 氾濫する情報を主体的に理解し、活用する 技術を取得する Web情報を活用しようとするときには、ネッ トサーフィンの方法や検索エンジンの利用 法を知るだけでなく、情報の内容を分析し、 判断する能力なども重要な要素になる。 5 授業内容 オリエンテーションなしであらかじめ 準備したページを閲覧 課題を与え、自発的に検索しページ を閲覧 質問(課題)の答えと感想をメールで 提出 履修者約20名の専門科目(二年次後期対象) 履修者約140名の必修科目(一年次後期対象) 受講した学生はすべて人文系の国際文化学部の学生 6 図1 授業のトピックと授業目的の相関 神戸市立農業公園 「神戸市農業公園」に関するサイトを 検索し、信頼できるページと他人に勧 めたり「お気に入り」に入れたりしたい ページ、それらの判断理由を提示し てもらう 目的: 2ちゃんねる→個人が発信する情報 は信頼性に欠けるという意見 公式ページの情報の信頼性を考え、情報 の信頼性や情報の信頼性の判断基準につ いて再認識し、主観的/客観的情報といっ た情報の種類が存在することの理解 8 神戸市立農業公園 結果1 信頼できるページ、他人に勧めたいページ ともに、神戸市が運営している公式サイトを 挙げ、理由も「公式だから」とする学生が多 かった。 情報についての主観性や客観性といった視点から の分類を説明 「公表しないことによってみんなに伝わらない可能性のある情報」 「公表することによって間違いを指摘される可能性のある情報」 「面白みがないが、文句のつけようがない情報」 「面白みがあるが、クレームがつく可能性がある情報」 9 神戸市立農業公園 結果2 信頼できるページ 「公式のものである」「更新頻度が高い」「製 作者が分かる」といった要素 勧めたいページ 「写真が多い」「意見や感想がたくさん載って いる」「見やすい」といった要素 10 神戸市立農業公園 考察 2ちゃんねるの回では個人が発信する情 報の有益性を限定的にとらえる意見が多 かったが、情報の種類と特性を認識し、目 的によって重要度や評価が変わりうること を理解したと言える 11 表3・4 情報の信頼性の判断能力、および情報の種類を考慮す る能力の向上度と授業の必要性 授業A(専門科目)終了時に実施したアンケートより 授業全体のまとめ Web情報の活用 技術的側面 + Web情報の特性の認識 Web情報を利用するときに直面する 問題を見抜くスキルの獲得 アンケート結果から 多くの学生が、それぞれの項目に応じたス キルが身についたと実感し、こうした授業を 必要と感じている 13 授業全体のまとめ(2) 「情報論の授業はプログラミングなど理系よりの 授業が多いので、こういう文系の立場で情報を 考える授業というのは面白い」 ・・・情報検索の回の感想 「窮屈なネットワーク社会の到来を招くよりも、そ れを技術的に保護できる方法があれば、それに 委ねることが妥当である」 ・・・法と倫理の回の感想 文系学生にとって関心を持ちやすい内容で あったことに加え、個人の権利や社会問題の 対策といった人文科学的な問題の再認識にも つながったと言える。 14 授業全体のまとめ(3) 「正解」がない領域 当該の問題に自発的に考える契機にも なっ た 自発性を重視するために、最低限の説明し かしなかったので、最初の授業で「授業の 趣旨が伝わりにくい」と感じられた 授業内容のレベル設定 学生は実生活に役立つと実感しない領域を 不必要だと感じる傾向が見られたことから、 学生のWeb利用の程度を考慮して、慎重に 15 設定すべき 報告のまとめ 機器操作に偏らない情報教育 文系学生の関心をひくことができ、学 生のニーズもあることがわかった Web情報が内包する問題を見抜くため の視点を理解し、より高度に情報を判断 する能力が身についたと感じられた 情報化社会が引き起こす社会的問題 のいくつかを認識し、それぞれの立場で 意見を持つ機会になった 16 報告のまとめ (2) コンテンツプロバイダ マスメディア教育 メディアリテラシー教育 コンテンツ x x x これまでに扱われてこなかった領域 「情報教 育」 アクセスツール コンピュータリテラシー 社会的次元の諸問題 ↑ 見抜くための視点 情報の信頼性・情報の種類・・・ ⇒情報に対する判断力・評価能力 17
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