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太陽コロナ波動加熱勉強会(2004.2.23)
磁気リコネクションによる
Alfven波の発生
木暮宏光1
共同研究者:柴田一成1、野澤恵2、高橋邦生2
他(シミュレーションサマースクールのメンバー)
1.京都大学、2.茨城大学
イントロ(1)
コロナ加熱問題:
スモールスケールの磁場の活動性(nanoflare,Parker 1988)
Vs
波動加熱
依然として決着はつかず…
(heating flux F∝B1~2 for nanoflare model, F∝B1 for
Alfven wave model; cf. Yashiro & Shibata 2001)
波動加熱説に着目してみると…
イントロ(2) ー波動加熱説ー
波動加熱:非一様なコロナ(高温のcoronal loop→磁力線に対
応; cf. Poletto et al. 1975)。磁力線に沿って伝わる電磁流体
的波動が有力。
Slow-mode wave:磁力線に沿った方向に伝わる。圧縮性の波
なのでShockを作ってすぐに熱化してしまうかも。でもコロナ下
部の加熱には効きそう。
Alfven-mode wave:非圧縮の横波。散逸しにくいのでコロナ上
部の加熱に効きそう。散逸メカニズムに関してはKudoh &
Shibata 1999に挙げられたreferenceやParker 1991, Moore
et al. 1992を参照。
イントロ(3) ー波動加熱説ー
Kudoh & Shibata 1999
Alfven wave→nonlinear coupling→slow-mode wave &
fast-mode wave→spicules
energy fluxはコロナ加熱に必要な3.0x105ergs s-1 cm-2
(Withbore & Noyes 1977)以上で、Alfven waveはそれに支配
的な寄与を与えている。
Moriyasu et al. 2004
熱伝導、放射冷却込みのflux loopのシミュレーション→loop
は100万度まで加熱される。さらには観測されるX線強度の時
間変動を再現。
イントロ(4)
初期摂動の発生原因
1. Random motion (Kudoh & Shibata 1999, Saito et al.
2001,Moriyasu et al. 2004) ←数km/sの運動。
2. Reconnection (Yokoyama 1998, Takeuchi & Shibata
2001a,b)
Reconnectionはnanoflare modelにおける磁気エネル
ギー解放機構。だからReconnectionを原因とする波動加
熱とnanoflare modelとは無関係ではない。
イントロ(5)
完全反平行な磁力線によるreconnection→Alfven波は発
生しない。
非対称な(完全反平行でなく磁気シアーのある)磁場での
リコネクション。Alfven波が生成される。
イントロ(6)
ReconnectionによるAlfven wave, Slow-mode waveの発
生を調べたシミュレーション。
Yokoyama 1998
Alfven波のエネルギーはリコネクションによって解放され
た磁気エネルギーの3%。(Shibata & Moriyasu 2003で
は10~20%と書いているが…)
Takeuchi & Shibata 2001a,b
slow-modeとAlfven-modeのEnergy FluxはFslow:Falfven
= 100:1とか10:1
イントロ(7) ー本研究でやった
事ー
前のスライドで挙げたシミュレーションは実際の太陽大気
をモデリングした初期条件。しかし磁気シアーはある限ら
れた場合のみ。
初期条件は簡単化。しかし磁気シアーのパラメータを幾つ
か試した。そしてAlfven wave、Slow-mode waveによる
energy fluxのパラメータ依存性を調べた。
数値計算の概要(1)
CANS(Coordinated Astronomical Numerical Software)
を使用。計算スキームはModified Lax-Wendroff法。
2.5次元のresistive MHD方程式を数値的に解く。
数値計算の概要(2)
計算領域は-13.1<x<13.1, -36.3<y<36.3
(グリッド数は603x1003)。
周期境界
境界条件は全て周期境界。
(だからエネルギーは保存
している)
周期境界
周期境界
上記の形の抵抗をr<rηに
与えた。ここでη0=0.1, rη
=1.0。
散逸領域
周期境界
数値計算の概要(3) ー初期条
件ー
Yokoyama & Shibata 1997
と同じ形の抵抗。
磁気レイノルズ数Rmは
Rm=VAL/η~1.1・72.6/0.1
~800
プラズマβは計算領域のほ
ぼ全域で0.08。
初期のプラズマβ分布
数値計算の概要(4)
θ
Θが0,10,20,30,40,45,50,60,70,80,90の場合につ
いて計算を行った。
磁気シアーを与える以外は初期条件は対称。
結果(1) ーMovieー
movie
0 10 20 30 40 45 50 60 70 80 90
° ° ° ° ° ° ° ° ° ° °
Log(P) Click C C C C C C C C C C
Bz
C
C
結果(2) ー磁気エネルギーの解
放ー
計算領域中の磁気エネルギー
の初期からの差の時間変化。
黒:0°、赤:10°、ピンク:20°
黄:30°、橙:40°、水色:45°
青:50°、緑:60°、茶色:70°
灰:80°、金:90°
結果(3) ーEnergy Fluxー
右の式の計算をy=±5.0で
行って、Fluxを求めた。
結果(4)
各エネルギー流束は解放された磁気エネルギーのど
れほどの割合なのか?
黒:Alfven waveの
energy flux
赤:Slow-mode waveの
energy flux
75°の時最大でそれぞ
れ33.8%と37.4%で
あった(一方向に伝わる
もののみカウントするな
らばその半分)。
結果(5)
反平行からずれるにしたがって、解放される磁気エネル
ギーは減少。その効果を考慮して、完全反平行の場合に
解放される磁気エネルギーに対する割合を計算。
黒:Alfven wave
赤:Slow-mode wave
Alfven waveは70°の
時に8.4%で最大。
Slow-mode waveは
60°の時に9.1%で最
大。
Summary(1)
非対称リコネクションの2.5次元MHDシミュレーションを
行った。
リコネクションによりAlfven wave, Slow-mode waveが
生成され、各波は解放された磁気エネルギーの一部を
運んでいた。
磁気シアーに対して、75°まではきれいな角度依存性
を示した。それ以上の磁気シアーに対しては2.5次元の
制限があるため、厳密なことはいえないと考えられる。
Summary(1)
Alfven wave, Slow-mode waveの運ぶenergy fluxは磁
気シアーが75°の時が最大で、それぞれ解放されたエ
ネルギーの33.8%、37.4%となった(一方向に伝わる量
はその半分)。
磁気シアーが大きくなるにつれて解放される磁気エネル
ギーの量は減少する。磁気シアーがない場合に解放さ
れる磁気エネルギーに対しての割合を見ても、Alfven
wave, Slow-mode waveともに最大で10%程度のエネ
ルギーを運んでいることがわかった。
エネルギーインプットを仮定しての計算に示唆を与える
結果といえるかも。
補足
Takeuchi & Shibata 2001a,bではP0Cs~1011 ergs cm-2
s-1として、Alfven wave, Slow-mode waveのenergy
fluxをそれぞれ109,1010 ergs cm-2 s-1と見積もった。
同様に考えると、今回の計算ではP0Cs=0.6 (|x|>2くら
い)~1.2 (x = 0.0)であるので、だいたい1010~1011
ergs cm-2 s-1に相当。ただし初期条件の分布が単純で
あることに注意。