擾乱と渦位場の変化の関係

傾圧不安定波動の時間発展
についての数値実験
― 擾乱と渦位場の変化の関係 ―
地球および惑星大気科学研究室 北野太朗
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発表の内容
序論
研究の目的
実験設定
結果と考察
結論
概要
•傾圧不安定場における擾乱の発達の数値実験を行った
•擾乱の発達が強い場合, 弱い場合について, それぞれ渦位場
から考察を行った
導入 - 渦位の紹介 ―
「渦位」とは, 傾圧不安定場で擾乱の発達を考える上で
重要(役に立つ)物理量である
 定義 :
 性質 :
渦位
絶対渦度
温位
惑星渦度
相対渦度
重力加速度
断面積
1. 断熱(=等温位面上) で摩擦のない場において保存する
→温位面に沿った運動を考えることが重要
2. 渦位の分布から、風速・温度・気圧場を知ることができる.
(基本場の渦位の値は, 北側の上層ほど大きく, 南側の下層ほど小さい)
気圧
擾乱の発達メカニズム 1
等温位線
大
上層と下層で渦が発生したとする[①]
①
(下層の渦が上層の渦よりも東側にあるとき)
狭
下層の渦の西側には
南向きの流れが生じている[②]
③
南向きの流れにより,
上層の渦は南に流される
広
小
①
渦は温位面に沿って下降する[③]
②
西
北
東
南
南北-鉛直断面での温位分布
温位面は下層ほど間隔が大きいため,
渦が引き伸ばされ, 渦度が大きくなる[③]
擾乱の発達メカニズム 2
上層の渦の東側では
北向きの流れが生じている[④]
北向きの流れにより,
下層の渦は北に流される[④]
渦は温位面に沿って上昇する[⑤]
④
渦が引き伸ばされ, 渦度が大きくなる
⑤
北
上層と下層の渦が相互作用することで
擾乱が発達する
西
東
南
過去の研究と本研究の目的
過去の研究
• 二階堂 (1986)
– 低気圧が急速に発達した観測例について上層の渦の変化を, 渦位を
用いて説明
• Takayabu (1991)
数値実験により,
– 上層と下層に存在する初期の渦の与え方を変え,
下層の渦の発達の違いを記述した
– 最も発達した場合の渦位場の変動について調べた
本研究の目的
• 擾乱の発達の強さに違いがあるときの上層の渦位分布
の違いを調べる
数値計算の概要
• モデルの概要
– 静水圧近似を行い, 理想気体で考えた
3 次元大気大循環モデル dcpam
– 基礎方程式
運動方程式
連続の式
熱力学の式
静力学平衡の式
– 物理過程は考えない
– 離散化の方法
水平:スペクトル法, 鉛直:差分法
u, v, wは x, y, z 方向の速度成分,
p は圧力, は密度, は温度, は比湿
,
は重力ポテンシャル(= ), は外力,
はコリオリパラメタ
,
は外部からの加熱の項と, 粘性による加熱の項を
まとめたものだが今回は考慮していない.
は
と定義する量である.
ここで,
である.
上付き d と上付き v はそれぞれ,
乾燥空気および水蒸気に関する量である.
は地球半径, は乾燥空気の気体定数.
数値計算の概要
• 計算設定
– 初期場:温度風平衡した場(右図)
– 初期の温度擾乱 (4 通り)
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鉛直方向に一様に与えた場合(以後, 一様実験)
高高度のみに与えた場合(高高度実験)
低高度のみに与えた場合(低高度実験)
高高度と低高度に与えた場合(複合実験)
初期場を表した図
色つきの等値線は温位(2.5 K毎), 黒
高
の等値線は風速(5 m/s 毎) を表す.
高
度
実 北
験 緯初
期
45 に
度与
上え
た
最
温
複
大
度
合
値
擾
実
験 1 乱
(
一
様
実
験
0
0
,
0
0
K)
低
高
度
実
験
計算結果1 (上層と下層の渦の関係)
擾乱[下層の渦]の
発達の強さ
渦位[上層の渦]の
値の大きさ
①一様実験(実線)
②低高度実験(一点鎖線),
②低高度実験(一点鎖線),
複合実験(点線)
③高高度実験(破線)
③高高度実験(破線)
上層の渦位分布と中下層の渦度分布
が対応している
複合実験
低高度実験
①一様実験(実線)
複合実験(点線)
一様実験
渦
度
高高度
実験
(
渦
位
平
均
偏と
差の
)
一様実験で擾乱が
最も成長したとき
の300K 面の渦位
分布図(12 日目.
経度100-200 度,
北緯25 - 75 度).
単位は,
time
各実験ごとで最発達した 1 つの擾乱に
着目し, 渦度と渦位の時間変化を表した
グラフ. (上) 500 hPa 面[中下層]の渦度.
(下) 300 K の等温位面[上層]の渦位.
計算結果 3
(南北断面で見る渦位分布の違い)
緯度
一様実験
高高度実験
緯度
緯度
複合実験
低高度実験
擾乱の発達が強い箇所
→等渦位面の南下度合いが大
擾乱の発達が弱い箇所
→等渦位面の南下度合いが小
各実験設定で, 擾乱が最も発達した場合の南北断面.断
面は下層の擾乱の中心で取っている.色つきの等値線
は温位(2.5 K毎), 黒の等値線は風速(5 m/s 毎) を表す.
結論
 擾乱の発達が強いときと弱いときで、上層の渦位分
布にどのような違いが見られるのかの比較を数値
実験により行った
- 擾乱の発達が強い場合
→渦位の値の大きな領域の下降幅が大きい
- 擾乱の発達が弱い場合
→渦位の値の大きな領域の下降幅が小さい