1/15 大離心率トランジット惑星HD17156bの ロシター効果の観測結果 成田 憲保 (東京大学) 佐藤 文衛 (東工大) 大島 修 (水島工高) Joshua N. Winn (MIT) 2/15 目次 背景 ロシター効果について、HD17156bについて 観測・解析・結果 岡山での同時分光・測光観測 視線速度と光度曲線の同時フィット 観測結果と惑星軌道進化モデルの比較 まとめ・今後の展望 3/15 トランジット惑星系のロシター効果 恒星 惑星 近づく側を隠す → 遠ざかって見える 惑星 遠ざかる側を隠す → 近づいて見える ロシター効果 = 惑星がトランジット中に主星の自転を隠すため 見かけの視線速度がケプラー運動によるものからずれる効果 4/15 ロシター効果による視線速度変化 惑星がどのような軌道を通ったかで ロシター効果の形が変わる 5/15 ロシター効果の観測量 恒星の自転軸 惑星の公転軸 惑星 惑星の公転面 恒星 天球面上で主星の自転軸に対する 惑星の公転軸のなす角度(λ)がわかる 6/15 これまでの観測例 これまで5つのトランジット惑星系でλが報告されている HD209458 V=7.7 (Queloz et al. 2000, Winn et al. 2005) HD189733 V=7.7 (Winn et al. 2006) TrES-1 V=11.8 (Narita et al. 2007) HAT-P-2 V=8.7 HD149026 V=8.2 (Winn et al. 2007, Loeillet et al. 2007) (Wolf et al. 2007) これまでに報告されたλの値は、どれもそれほど大きくなかった (0度と統計的に consistent だった) 7/15 HD17156bについて N2Kプロジェクトで発見(佐藤文衛他 2007年秋季年会P55a) 2007年10月にトランジットが報告された(Barbieri et al. 2007) 非常に面白い恒星・惑星パラメータ 主星が明るい (V = 8.2) 大きな離心率を持つ (e = 0.67) トランジット惑星としては最長の公転周期 (P = 21日) 大きな惑星質量 (Mp = 3.1MJup) 絶好のロシター効果の観測ターゲット 8/15 今回の観測 2007年11月12日(トランジット発表後、最初のトランジット) 世界で初めてこの惑星系のロシター効果を観測できるチャンス かつ2007年中に日本で観測できる唯一の機会 岡山での同時分光・測光観測 岡山天体物理観測所 188cm望遠鏡 HIDES による分光観測(※) 「日本トランジット観測ネットワーク」による測光観測 ※:謝辞 京大の森谷氏のグループと岡山プラネットサーチグループより観測時間をいただきました 9/15 得られたデータ 上段 Rc バンド測光データ 251 samples 約4mmag の測光精度 下段 HIDES視線速度データ 25 samples 10~20 m s-1 の精度 10/15 データの解析方法 視線速度にpublished dataを追加 Ohta, Taruya, & Suto (2005, 2006) の公式でモデル化 Subaru 9, Keck 24 samples (Fischer et al. 2007) Rossiter効果を含む視線速度・光度曲線を同時フィット 3つの統計手法で最適値と誤差の評価 Δχ2 Monte Carlo bootstrap Markov Chain Monte Carlo (MCMC) 11/15 ロシター効果のフィット結果 λ= 62 ± 25 度 (Δχ2), reduced χ2 = 0.97 67 ± 26 度 (bootstrap) 65 ± 25 度 (MCMC) 12/15 小まとめ HD17156bのロシター効果を世界で初めて観測 ロシター効果のフィットから λ= 62±25 度 を得た ~ 2.5 σ (99 %) の統計精度で 0 度からずれている まだ 3 σではないものの、λが大きな可能性が高い この値が本当なら、この惑星は奇妙な公転軌道を持っている 大きな離心率 e = 0.67 公転軌道の大きな傾き λ= 62 度 これらの特徴を説明できる惑星形成のモデルはあるのだろうか? 13/15 惑星の軌道進化モデルとの整合性 惑星が円盤の中で徐々に移動 (Type II migration) 大きな離心率や大きな公転軌道傾斜角を説明できない 伴星による古在効果による惑星移動 (Kozai migration) この系には伴星が見つかっていない 複数の巨大惑星同士の散乱による移動 (Jumping Jupiter) 現在のところ、観測結果を上手く説明できるのはこのモデル ただし、外側にあるべき巨大惑星はまだ確認されていない 14/15 最近の重力散乱モデルの理論予想 大きな離心率と共に大きな公転軌道傾斜角も予言されている 0 30 60 90 120 150 180 度 Nagasawa, Ida, & Bessho (2008) による公転軌道傾斜角の頻度分布 15/15 まとめと今後の展望 大きなλを持つ可能性が高い惑星を初めて発見 すばる望遠鏡などでのより精度の高い追観測が必要 他にも大きなλを持つ惑星はあるのか? 多くのトランジット惑星系でロシター効果の観測を実施中 惑星形成理論に対しλの分布という観測事実を提供できる 本当に外側に惑星はあるのか? コロナグラフなど相補的な手段での探索が必要
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