留学生のニーズに応える 音声コミュニケーション教育

2004年6月26日
第一回
日本語と音声研究会
日本語教育における
発音指導の到達目標を考える
早稲田大学
大学院日本語教育研究科
戸田貴子
[email protected]
日本語学習者の発音 -1-

単語・文の意味が変わってしまう
→来てください・着てください・切ってください
切手ください・聞いてください
→信頼・親愛・市内
特殊拍(促音・長音・撥音)・単語のアクセント
日本語学習者の発音 -2-

単語・文の意味が変わってしまう
→天気・電気
→心情・心臓
清濁の混同・ザ行とジャ行の混同
日本語学習者の発音 -3-

聞き手に思わぬ印象を与えてしまう
→わたち
→むじゅかしです
シとチの混同・ザ行とジャ行の混同
日本語学習者の発音 -4-

表現意図が伝わりにくい
→申し訳ありませんが、休んでもよろしいでしょう
か
→今日は仕事が早く終わったんじゃないでしょうか
→そんな高い家賃、だれが払うんでしょうか
文末イントネーション
日本語学習者の発音 -5-

聞いていて疲れてしまう
→株式証券市場
→~と~という株式オプションを売買する
取引所
複合語のアクセント
名詞修飾句のイントネーション
音声習得に関与する要因
 L1とL2の音韻構造
 L1とL2の使用頻度
 L1における母方言
 L2音声の有標性
 L2学習経験
 L2学習動機
 L2学習開始年齢
 教師の発音・教授法・使用教材
問題点 -1-

母語を問わず見られる問題と、
母語の特徴を反映した問題がある。
→音声習得の普遍性と個別性を考慮した
指導が必要である。
効果的な発音指導 -1-

日本語の音声特徴の練習と、
母語別発音練習を分ける。
第1部 日本語の音
日本語の音声特徴を学び、練習する。
第2部 母語別発音レッスン
母語干渉による問題点を重点的に指導
する。
問題点 -2-
発音に問題がある場合、様々な段階がある。
音韻知識:目標言語において意味を持つ音韻
対立が、母語には存在しないため、発音も
区別していない
知覚:聞き分けができていないため、発音もで
きない
生成:聞き分けはできるが、調音点や調音法
などが適切でないため、発音ができない
→問題の所在を確認する必要がある。

効果的な発音指導 -2-

日本語の音声特徴が聞き分けられるか
どうか確認してから、発音練習に入る。
[聞いてみよう]
[発音してみよう]
[声に出して練習しよう]
問題点 -3-

音声の専門用語を使った説明や音韻
構造の解説が中心になる。
→学習者自身が主体的に考えることが
できるように工夫する。
効果的な発音指導 -3-

日本語の音韻構造に関する知識を整理
し、学習者の気づきを促す。
[考えてみよう]
[コラム]
問題点 -4-

日本語の音韻構造を理解しただけでは
会話の中で実際に使えるようにならない。
→運用能力につながる発音練習が必要で
ある。
効果的な発音指導 -4-

ロールプレイやタスクを活用し、文脈化さ
れた発音練習を十分に行い、モニター能
力を育成する。
[応用練習1~3]
[タスク]
まとめ

日本語の授業に効果的な発音指導を
とりいれる方法について
参考文献



鮎澤孝子(1999)「中間言語研究-日本語学習者の音声」
『音声研究』3巻3号、日本音声学会 p4-12.
戸田貴子(2001) 「日本語音声習得研究の展望」『第二言
語としての日本語の習得研究』4号、凡人社 p150-168.
TODA, Takako (2003) Second Language Speech
Production and Perception: Acquisition of Phonological
Contrasts in Japanese, Lanham, MD: University Press of


America.
戸田貴子(2003)「外国人学習者の日本語特殊拍の習得」
『音声研究』7巻2号、日本音声学会 p70-83.
戸田貴子(2004)『コミュニケーションのための日本語発音
レッスン』スリーエーネットワーク.