その他のヨーロッパ諸国にお けるソーシャル・ファーム: イギリス、フィンランドおよび ギリシャの事例 フィリーダ・パービス リンクス・ジャパン 1 EUによる支援 欧州社会基金(ESF)を通じて 1994年から1999年まで、EUの全予算の 10%にあたる額が ESFを通じて支給され、 「職を見つけたり、維持したり、或いは再就職 をする際に、最大の困難に直面する人々が 成功することができるよう状況を改善すること を目的とした」さまざまな分野にわたるプログ ラムに充てられた。 2 ヨーロッパ全土にわたる協力活動が もたらす利益 お互いに学びあえる 成功事例を確認できる 革新的なビジネスのアイディアを探求し、普 及することができる 共同でロビー活動ができる 共同研究および共同生産ができる 実践的なネットワークを新たに築くことができ る 3 イギリス 福祉への依存を減らし起業を奨励するための政府 による新たなイニシアティブ ソーシャル・エンタープライズ部門にイギリス政府の 第3セクター・オフィスによる強力支援 現在50社のソーシャル・ファームが存在、 新たに70社を立ち上げ1,550の仕事を提供、その 55%に障害者が従事(旅行代理店、印刷・印刷仕 上げ、移動式清掃、ゲストハウス、健康食品販売店、 契約ガーデニングデザインサービス、グラフィック・ デザイン、ケータリング等) エンタープライズ(企業)、エンプロイメント(雇用)、 エンパワメント(地位向上) 4 ソーシャルファームの説明 ・ソーシャルファームとは、社会性と経済性を追求する社会企業の一つである。イギリ にはソーシャルファームの他に次の法的に認められた社会的企業がある。 コミュニティ・インターレスト・コーポレーション、コミュニティ・エンタープライズ、クレ ジット・ユニオン、ハウジング・コーポラティブ ・ソーシャルファームは、障害のある人や援助つき雇用が必要な人、職業訓練所授 産所に通う人たちを率先して雇用する形態の一つである。それぞれのサービスモ デルには、それぞれ独自の環境、特徴、条件があるが、ソーシャルファームの発展 に伴ってその選択肢が広がる。 ・ソーシャルファームは良質のサービスと製品を供給する持続的なビジネスである。 ソーシャファームを設立することは、通常、リスクと長期にわたる責任が伴う(通常 企業には3年から5年かかる) その労働環境は質が高く支援が行き届いているが、 ケアのデリバリはない。どんな人にも適しているわけではない。時間、エネルギー、 資金面でコストがかかる。ソーシャルファームは、雇用における最高の実践モデルであり、 全従業員が適切な仕事に就いて、適切な給与を得ている。また一連のトレーニングや雇用 関係のサービスの一部となっている。ソーシャルファームは個人の素質を最大限に引き 出す機会を提供している。 5 ソーシャルファームの特徴は、比較的小規模な組織 であること、隙間市場の製品や契約を持っているこ と、初期の段階から継続的な支援を必要としている こと。外部の専門知識(ビジネス、製品など)を利用 していること。社会企業によって起業に導かれてい ること、母体となる組織の外部にあること ソーシャルファームは、短期間に多くの仕事を起こ すことはしない。ソーシャルファームは簡単ではない。 また障害者に対する研修プロジェクトでもなければ、 授産施設でもなく、デイケア施設でもない。 6 ソーシャルファームUK ソーシャルファームUKは国営のネットワークとして1999年 に作られた。「ソーシャルファームUKは、ソーシャルファーム とは少なくとも雇用者の25パーセントが障害者(精神障害者 を含む)であり、収入の50パーセントがビジネスからのもの である。」という基準を設けた。ビジネスとして成長しつつある 「エマージング・ソーシャルファーム(新興のソーシャルファー ム)を支援。 ソーシャルファームUKはソーシャルファームのために多くの 貴重なツールを生み出している。たとえばソーシャルファー ムの起業ガイド。ビジネスプランガイド、雇用計画やスタッフ の職務記述書のテンプレート、訓練用マニュアル、ライセン ス契約、商標、インターネットマーケッティング、様々なソー シャルファームのタイプや組織構造オプションについての ケース・スタディなど。パフォーマンス・ダッシュボード(活動 計測)と障害者雇用に関する公的企業など他の機関のため のリソースを含むValue based checklistといった査定と評 価のツールなどである。 7 ソーシャルファームUKは、メンバーが未入札の契約にアクセスできるよう に働きかけたり、地方の100,000ポンド相当以下の契約に登録し通知を 受けることを可能にしている。 ソーシャルファームUKはソーシャルファームセクターの社会的インパクト を安定させるための標準づくりに取り組んでいる。 ソーシャルファームUKは、ソーシャルアワード(賞)を開発している。ア ワードはすでにソーシャルファームとしての業績、実行可能で健全はビジ ネスと高い品質をもち、コミュニティに良い影響を与え、ソーシャルファー ムのイメージを上げて高く評価されている10のソーシャルファームの取り 組みを基準としている。 ソーシャルファームUKは、全国の新しいソーシャルファーム、資格取得者、 フランチャイズ取得者とともに、製品やサービスの販売を促進するため、 メンバーと一緒に活動している。 8 Pack-IT Product Promotions Ltdは、学習障害者に研 修と終身雇用の機会を提供するために1988年に設立され たソーシャル・ファームで、地域に根づいたビジネスを展開し ている。 倉庫管理および在庫管理 フルフィルメント(受注から入金までの作業)および出荷 発送および郵送 郵便仕分けサービス 9 フィンランド ソーシャル・ファーム71社で400人の従業員 を雇用。その半数は不利な立場にある人々。 2004年1月のソーシャル・エンタープライズ 法で、ソーシャル・ファームが新たな法人組織 として認められた。 現在補助金に関する規定が不十分であると して改正中。 10 フィンランドの事例 ELWARE – 家電リサイクル部門のソーシャル・ファーム。 SENECA (環境保護協力活動の社会経済ネットワーク)、Mind the Gap(第三 セクターと第一セクターのギャップを解消するプロジェクト)など、フィンラ ンド、オーストリア、イタリア、チェコ共和国、ドイツおよびオランダとのプ ロジェクトを通じ、国境を越え、ヨーロッパ全土で連携。 高齢者の自立生活支援サービスを提供するHOTプロジェクト – STAKES(フィンランド国立福祉保健研究開発センター)の調整により、 イタリア、スコットランドおよびポーランドと国際協力 Vates財団 ソーシャル・ファームネットワーク 11 ギリシャ ソーシャルエコノミーの概念に対する理解と支援は十分では ない 例外は1999年の全国社会的協同組合法のもとに設立され た、精神衛生上の問題を抱える人々を雇用する社会的協同 組合(KOISPE) 現在12の社会的協同組合(KOISPE) 従業員の35%が精神衛生上の問題を抱えており、 従業員 数の45%を上限として、メンタルヘルス指導員(政府が給与 を支給)を雇用することが義務づけられている 12 ギリシャの事例 レロスのKOISPE – 従業員数54名、そのう ち32名が精神病患者 – 園芸、パン製造、蜂 蜜の製造および販売、やまうずらの飼育 アテネのGood Life - 41人の従業員、24人 は精神病、家具製造、カーペットの製造、コー ヒーショップ、体育館、図書館 コルフ - グラウンド整備、精神病患者の従業 員10名 2003年に支援・ネットワーク機関の設立 13
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