熊野雄太 グリーン・ニューディール Perfect Review 末吉竹二郎 国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問 グリーン・ニューディールで始まるインフラ大転換 井熊均 日本総合研究所 Sustainability economics, resource efficiency, and the Green New Deal Bretschger lucas International Economics and Economics Policy August 2010, v7, iss2-3, pp187-202 1. 2. 3. 4. グリーン・ニューディールとは 主な政策内容 各国のグリーン・ニューディール 論文の要約 景気回復のきっかけを「環境」に求めた政策 言葉の発端はグリーン・ニューディール・グループが 2008年7月に出した報告書 3つの危機の解決が目的 ◦ 金融危機 ◦ 気候変動 ◦ エネルギー価格の上昇 グリーン・ニューディールの解釈はひとつではない ◦ 規模 ◦ 期間 国内、グローバル 短期、中期、長期 単に環境分野でのビジネスから景気回復というレベ ルではなく、インフラを根本的に変えることで社会構造 から国全体を活性化する 「スターンレポート」 2006年 イギリス 温暖化によるコスト 世界全体のGDPの20% 対策にかかるコスト 世界全体のGDPの1% 2-1 エネルギー転換 これまでの化石エネルギーから再生可能エネルギーへ 石油危機などを経て、自国でのエネルギー生産の重要 性を認識 スマートグリッド(次世代送電網) ◦ 需要家(各家庭など)を送電網に組み込んで相互性のある電 力供給を目指す。 エネルギー産業の変化 ◦ 今は電力が競争力を持っている ◦ 電力、ガス、石油という業界間を超えた新しい「総合エネル ギー産業」の創出の可能性 ただ、エネルギー需要量自体は減少していく 2-2 交通インフラの再構築 従来の自動車からの脱却 ◦ 電気自動車 長距離輸送、充電設備などの課題あり ◦ 公共交通網、高速鉄道網の整備 自動車に比べ、鉄道・バス・飛行機はCO2排出量が少ない ◦ コンパクトシティ 都市単位を小さくすることで、移動距離を小さくする モーダル・ミックス ◦ 様々な交通手段を用いた輸送体系を目指す 出発地 目的地 自動車 出発地 EV 代替交通手段 (鉄道、海運) モーダル・ミックス・ステーション ・・・複数の交通を結びつける拠点 EV 目的地 3-1 アメリカ オバマ大統領が主導して、規模・具体性で世界をリード 3つの柱 ◦ 雇用の創出、景気回復 ◦ 未来世代への遺産 ◦ エネルギーの安全保障 中東依存からの脱却 再生可能エネルギーの開発 ◦ 豊富な資源、広大な土地を生かす インフラの整備が急務 ◦ アメリカのインフラは老朽化が進んでいる (例、2007年8月、ミネソタ州での橋崩落) ◦ 電力に関して、停電時間も多い インフラの復旧と“グリーン化”を同時に行う 環境分野に比べ技術が確立しているので雇用創出の 即効性がある 3-2 日本 省エネ技術では世界のトップ しかし、政策面ではまだ勢いがない 政策によって企業を後押しできないと、企業も積極的な開発が できない。 (例、太陽光発電) 2004年、日本は生産量トップ。しかし、2008年には中国が トップ、欧州が2位に。 2009年に太陽光発電による余剰電力を電力会社が従来の 2倍で買い取る制度を導入。 経済刺激のための投資の環境投資の割合(2009年) ◦ ◦ ◦ ◦ ◦ アメリカ EU 中国 韓国 日本 12% 59% 38% 81% 3% 政府による刺激だけでなく、消費者・投資家が企業に 呼びかけることも大切 1. 2. 3. 4. 5. 6. Introduction Efficiency focus Long-run analysis Medium-run analysis Comparative dynamics Conclusions 今回は3までやりました 3-1 introduction 経済理論によって持続可能な発展を目指す 環境クズネッツ曲線 経済・環境の両立のため に長期の政策を短期の政 策に反映させる必要があ る 環境負荷 経済規模 エネルギー効率は持続可能な発展にとって重要だが、 それは単なる技術的な水準ではなく様々な経済分野 の構造に強く依存する 経済回復と持続可能性には違いがある 中期的な解析の結果から、グリーン・ニューディール の1部がうまくいきそうである 政府の投資は中期的にはそこまで重要ではない 3-2 Efficiency focus (エネルギー効率) 生産モデルは階層的な構造 初期投入 生産要素 最終産出 𝛼 1−𝛼 Y 𝑡 =A(𝑡)K(𝑡) 𝑍(𝑡) Y 𝑡 :最終産出 A(𝑡):全体生産性 K(𝑡):生産資本(ノウハウ、インフラなど) Z(𝑡):中間投入 0<𝛼<1: 最終産出の生産資本弾力性 K(𝑡)、 Z(𝑡)はそれぞれ異なる経済分野の初期投入から作 られる 𝑑k(t) ≡ 𝐾 𝑡 =𝐿𝑘 𝑡 𝑑𝑡 𝛽 𝐸𝑘 𝑡 1−𝛽 𝑍 𝑡 = 𝐿𝑍 𝑡 𝛾 𝐸𝑘 𝑡 1−𝛾 − 𝛿𝑘(𝑡) 𝐿 𝑡 : 労働力の初期投入 E 𝑡 : エネルギーの初期投入 𝛿: 生産資本の減価償却率 0 < 𝛽, 𝛾, 𝛿 < 1 全体としてのエネルギー効率は 𝑌 𝑌 = 𝐸 = 𝑥𝐸 𝐸 𝑥:エネルギー効率。全生産分野を含むモデルのパラ メータ 定常状態( 𝐾 𝑡 =0)の下では、 𝑑k(t) ≡ 𝐾 𝑡 =𝐿𝑘 𝑡 𝛽 𝐸𝑘 𝑡 𝑑𝑡 𝑘 𝑡 = 𝛿 −1 𝐿𝑘 𝑡 1−𝛽 𝛽𝐸 𝑘 𝑡 − 𝛿𝑘 𝑡 = 0 1−𝛽 よって 𝑌 𝐴 𝑡 𝑘(𝑡)𝛼 𝑍(𝑡)1−𝛼 𝑥= = 𝐸 𝐸(𝑡) = 𝐴 𝑡 ・𝛿 −𝛼 𝐿𝑘 𝑡 𝛼𝛽 𝐸𝑘 𝑡 𝛼(1−𝛽) ・𝐿𝑍 (𝑡)(1−𝛼)𝛾 𝐸𝑍 (𝑡)(1−𝛼)(1−𝛾) 𝐸(𝑡) エネルギー効率xは全体での生産性A(t) に強くは依存しない 𝑥= 𝐴 𝑡 ・𝛿 −𝛼 𝐿𝑘 𝑡 𝛼𝛽 𝐸 𝑘 𝑡 𝛼(1−𝛽) ・𝐿 (𝑡)(1−𝛼)𝛾 𝐸 (𝑡)(1−𝛼)(1−𝛾) 𝑍 𝑍 𝐸(𝑡) 例えばA(t)が一定の場合、xを高くするには、 ◦ L(= 𝐿𝑘 + 𝐿𝑍 )を増やす ◦ 𝛿を小さくする ◦ 初期投入LとEの配分を考える。ただし、パラメータ𝛼、𝛽、𝛾に依存する。 3-3 Long-run analysis 長期的にはエネルギーの初期投入量は減少する。Y の成長を維持するには、 𝑥 ≥ −𝐸 𝑓𝑜𝑟 𝑌 ≥ 0 エネルギーの減少率よりも、効率の改善率が大きいこ とが必要。 Eが最終産出に与える影響を調べる 𝛼 1−𝛼 Y 𝑡 =A(𝑡)K(𝑡) 𝑍(𝑡) log Y 𝑡 = log A(𝑡) + 𝛼 log 𝐾(𝑡) + (1 − 𝛼) log 𝑍(𝑡) 𝑌 𝑡 = 𝐴 𝑡 + 𝛼 𝐾 𝑡 + (1 − 𝛼)𝑍(𝑡) 長期的にLやEが制限されると𝑍(𝑡) = 0になる。しかし、 Kは時間をかけて蓄積されていくのでZとは異なる。 さらに、AとKはお互いに影響していて正の波及効果を 及ぼす。 𝐾(𝑡)𝜂 𝐴 𝑡 =𝐴 𝑍(𝑡)1−𝛼 𝐴:係数 0<η<1:波及効果密度 Y 𝑡 =A 𝑡 K 𝑡 𝛼 𝑍 𝑡 1−𝛼 に代入 𝑌 𝑡 = 𝐴𝐾(𝑡)𝛼+𝜂 長期の発展を決める変数は、K、𝜶、𝜼の3つ 𝑌 𝑡 = 𝐴𝐾(𝑡)𝛼+𝜂 簡単のために、𝛼 + 𝜂 = 1とすると、 𝑌 𝑡 = 𝐴𝐾(𝑡) AKモデル 生産資本の成長が直接最終産出の成長につながる 𝑌=𝐾 𝐾について考える 𝑑k(t) ≡ 𝐾 𝑡 =𝐿𝑘 𝑡 𝑑𝑡 𝛽 𝐸𝑘 𝑡 1−𝛽 − 𝛿𝑘(𝑡) の両辺を𝐾 𝑡 で割ると、 𝐾(𝑡) 𝐿𝑘 𝑡 𝛽 𝐸𝑘 𝑡 1−𝛽 =𝐾 𝑡 = −𝛿 𝐾(𝑡) 𝐾(𝑡) 単位資本あたりの成長率 全体でのEが成長に直接影響するわけではない 𝐸𝐾 と𝐿𝐾 が重要。 𝐸𝐾 が小さくなれば成長には𝐿𝐾 が大きくなるこ とが必要 𝐸が𝑌 = 𝐾に与える影響を考えるために、 𝐸が𝐸𝐾 , 𝐿𝐾 に与える影響を考える 影響のメカニズムが2つある 1. 需要効果 2. 供給効果 1、需要効果 Kへの需要がKの蓄積のための投入にどんな影響を与 えるか 𝛼 1−𝛼 𝐸 < 0を仮定する。Y 𝑡 =A(𝑡)K(𝑡) 𝑍(𝑡) におけるKの 割合が変わり、生産者のKへの需要が変わる KとZの代替弾力性(elasticity of substition) 𝑑(𝐾 𝑍) (K/Z) 𝜎= 𝑑(𝑝𝑍 𝑝𝐾 ) (𝑝𝑍 𝑝𝐾 ) 相対価格𝒑𝒁 𝒑𝑲 が1%変化したとき、投入要素の比率 K/Zが何%変化するか 𝜎が大きいとき ◦ YにおけるKの割合が増加、つまりKへの需要が増加 成長 𝜎が小さいとき ◦ Kへの需要が増加しない、かつ𝐸 < 0であるので 衰退 𝛼 1−𝛼 ただ、 Y 𝑡 =A(𝑡)K(𝑡) 𝑍(𝑡) で、この効果は生まれない の場合は、𝜎 = 1なの 2、供給効果 𝑑k(t) ≡ 𝐾 𝑡 =𝐿𝑘 𝑡 𝑑𝑡 𝛽𝐸 𝑘 𝑡 1−𝛽 𝑍 𝑡 = 𝐿𝑍 𝑡 𝛾 𝐸𝑘 𝑡 1−𝛾 − 𝛿𝑘(𝑡) 𝛽、𝛾が一定でなく、EとLの相対的な価格(コスト、賃金) に依存するとする。 𝜎は𝛽、𝛾によって決まるので、Eの投入量には依存しな いことになる。 CES(constant elasticity of substitution)関数 𝜎が一定の関数 𝐸 < 0を仮定すると、代替が起こる。 𝜎が𝛽、𝛾によって決まるので、価格によって代替が起こ る。 例えば、労働力はよりいい賃金の分野へ移動していく 𝐿𝑍 → 𝐿𝐾 つまり、𝑥は代替弾性力の絶対的な値ではなく、相対的 な値に依存する。 𝐸𝐾 が小さくなったときに𝐿𝐾 が大きくなるには、高い代替 弾性力が必要だが、このモデルだと相対的な値で評価 できる。また、初期投入がKに傾いたときに、成長が進 むような構造変化も必要。 つまり、持続可能な発展には投入の代替性だけでなく 代替が起こる分野の構造変化も大切。 生産資本Kの投入量が増加したことで、成長が促進さ れるような構造が必要
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