東京医科歯科大学 歯科器材・薬品開発センター シンポジウム 歯科器材の開発・改良における諸問題と これからの対策 歯科器材の規格を中心に 歯科理工学の立場から 2006年12月7日 日本歯科大学新潟生命歯学部 歯科理工学講座 小倉 英夫 規格における歯科器材の 評価方法と合格基準 JIS(日本工業規格)やISO規格では, 歯科器材の有用性・安全性確保を目的と して評価方法と合格基準を規定している。 (クラスIおよびIIの歯科器材承認の基礎) 評価方法: 研究結果に基づく試験方法, メーカー独自の試験方法 合格基準: 研究結果に基づく基準, 使用結果に基づく基準 規格における問題点 1.JISとISO規格の整合性 2.規格作成のルール 3.試験方法の妥当性 4.合格基準の妥当性 5.新しい歯科器材への対応 6.規格に対する社会的環境・認識 JISとISO規格の整合性 ISO規格→JIS (ISO規格=JIS) 有用性や安全性の試験方法や合格基 準は,人種や各国の自然環境あるいは 社会制度の違いによって変える必要が ある。 (体格・感覚の違い,気候ー温度・湿度の 違い,健康保険制度の違い) これらの違いをISO規格の中に取り込 むことが必要である。 規格作成のルール ISOでは, すでに市場で受け入れられている製品を阻害 する内容の規格は認められない。 →基準の低下が避けられない。 <解決策> 科学的根拠の提示と各国間の協議・合意 試験方法の妥当性 (1) 規格における試験の要件: 誰にでもできる簡単で再現性の高い試験 歯科器材の規格では, 日用品などの一般工業製品の規格と異なり, 比較的複雑で難易度の高い試験が必要となる。 簡単で再現性の高い試験方法の開発が求めら れている。しかし,規格試験の研究は非常に少 ない。 試験方法の妥当性 (2) ISO規格の試験方法: 基本的にIn vitro の試験 臨床結果を反映? ●ISO/TC106 (ISO歯科専門委員会)では, “Clinically relevant test method”(臨床的に 妥当な試験方法)の適用が提言されている。 ●多くのISO規格試験はClinically relevant と 考えられるが,現時点では臨床試験に代わり得 るIn vitroの試験がないことがある。 臨床試験に代わり得るIn vitro 試験の開発が 必要であるが,--------------- 合格基準の妥当性 ●ISO規格における合格基準は, 市場の受け入れ実績によって左右される。 市場で問題を起こしていなければ,性能が低く ても,その製品の試験結果が合格基準となる。 →品質向上? ●試験方法が臨床的に妥当でなければ, 合格基準は意味がない。 新しい歯科器材への対応 ●ISO規格は市場性を基盤として制定の可否が問 われる。 →市場が開拓されていない新製品の規格は基 本的に制定が不可能に近い。 しかし,新製品が国際市場で受け入れれられた ならば,即座にISO規格制定への道が開かれる。 ●開発メーカーは,ISO規格作成のリーダーシップ を取ることが容易であり,開発の段階からISO規 格作成の準備をしておくことが薦められる。 規格に対する社会的環境・認識 ●「水はただ同然で手に入る。」 水→歯科器材の有用性と安全性 歯科器材の規格について,歯科医師や患者,さ らに歯学研究者の認識を変える必要がある。 →研究者の規格試験開発に対するモーティ ベーション ●「規格はメーカーサイドが決めるもの。」 メーカーのみならず,ユーザーや研究者が参画 して初めて有用性と安全性の確保された規格が 制定される。
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