vol.234 木造校舎のJISが改正、軸組工法での建築がより簡単に

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ハウジング・トリビューン【ウィークリー】
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2015 年 4 月3 日号
http://www.sohjusha.co.jp
今週のトピック解説
木造校舎のJISが改正、軸組工法での建築がより簡単に
文部科学省は、木造校舎の標準的な構造モデルを定めた「木
造校舎の構造設計標準」
(JIS A 3301)を改正した。これを
用いることで設計、施工の簡略化を図りながら、木造校舎を
建築できるようになる。
建築基準法では、木造校舎の安全性を確保するために、高
いレベルで構造強度を確保することを求めている。木造建築
のノウハウを有する建築技術者であれば対応できるが、木造
建築の建築技術者は、圧倒的に不足しているというのが実情だ。
木造建築の設計経験がない設計者などが、木造校舎に取り組
改正JISを応用することで木造建築全般への波及効果も期待されている
もうとすると、複雑な構造計算などを要求されるため、ハー
ドルが高いという課題があった。
一方で、建築基準法では、JIS A 3301に適合することで、
木造校舎の建築を許可するという規定も設けている。この
JISで規定された通りに建築することで、経験の少ない建築
技術者も容易に木造校舎の設計や施工に取り組めようになる。
ただし、JIS A 3301は、もともと昭和30年代に木造校舎
技術資料も策定
建築確認申請作業の簡略化に寄与
また、今回のJIS A 3301の改正に伴い、技術資料も策定
した。これはJIS A 3301をより使いやすくする留意事項な
どをまとめたもの。木造校舎に求められる防火性能や耐久性、
を全国に普及させるために、制定されたものであり、その後、
遮音性、断熱性能などの基本情報を示したほか、耐力壁や接
長く使用されず形骸化していた。
合部などの強度性能を証明した実験データや、構造計算例な
そこで今回、現在の建築技術や材料などを考慮した内容に
改正。31年ぶりの抜本的な改正となった。
どを明示した。
今回、JISの改正作業に携わった東京大学大学院農学生命
例えば、改正前のJIS A 3301では、構造部材として製材
科学研究科の稲山正弘教授は「構造根拠となる実験データが
しか選択肢がなかったが、改正後には、集成材や構造用合板
示された技術資料を活用することで、確認申請手続きの簡略
などを追加。さらに、今回、改正されたJISでは、在来軸組
化に寄与する」としている。
住宅用の流通材やプレカット技術を多用して製造できる高耐
さらに、今回改正されたJISは、学校建築だけでなく、中
力壁や、これに対応した補強金物、12mのスパンを飛ばせ
大規模木造全般に応用できるものとして注目を集めている。
る屋根トラスなどを利用できるようにした。
稲山氏は「ノウハウがない設計者などが木造建築に取り組
つまり今回、改正されたJISを用いることで、軸組工法の
もうとすると、接合部のディテールなどから設計しなければ
住宅建築に関するノウハウや技術を有していれば、比較的容
ならないといった課題があった。対して、今回、JISの改正
易に木造校舎を設計、施工できるというわけだ。
に伴い策定した技術資料には、接合部などの接合強度を証明
なお、JIS A 3301の適用範囲は、平屋建ておよび2階建て、
した実験データなどを明示している。これらのデータを引用
軒高さ9m以下、最高高さ13m以下で、延床面積が2000㎡
することで、従来のように、個別に接合部のディテールを計
以下の木造校舎に限られる。
算するといった手間を省ける」と話す。
今週の主なニュース
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・パナホーム 主力住宅商品で ZEH 仕様を標準搭載 施工の省力化も図る
・トヨタホーム インドネシアに現地法人を設立 戸
建て分譲事業を展開
・スウェーデンハウス 半屋外空間を設けた高級住宅
を発売 庭を楽しむライフスタイルを提案
・三協立山 三協アルミ社 躯体構造を傷めず設置でき
る独立式テラスを開発 狭小地にも設置可能
・永大産業 内装建具の新シリーズを展開 伝統的様
式美を現代の住空間に調和するようにアレンジ
・文化シヤッター 自己発電装置を内蔵した防火・防
煙シャヤターを提案 安全性と意匠性が向上