鹿児島大学/愛媛大学 宇宙電波天文学特論 第2回 輻射輸送と電子1個の放射 半田利弘 鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻 Mellinger 光線 ▶ 微小面から微小面を照らす ■ エネルギー保存則 dE=I1 dA1 dt dW1 df =I2 dA2 dt dW2 df ▶ 立体角の定義から dA2 𝑑𝐴2 𝑑𝐴1 dA 1 , dW = ■ dW = 1 ■ 𝑅2 2 𝑅2 代入して、整理すると dW dW 2 1 I1 =I2 ▶ 光線の強度は保存する R Mellinger 電磁波への物質の影響 ▶ 輻射輸送 ■ ■ ■ 物質中を電磁波が伝わる現象を分析 現象論的に考える 光線に沿った1次元で考える ▶ 2つの効果 ■ ■ 物質が光を吸収する 物質が光を放つ Mellinger 輻射輸送のモデル ▶ 吸収:吸収係数 k ■ ■ 物質の量(柱密度)に比例する(後で反映) 入射光の強さにも比例する ▶ 放射:放射量 j ■ 物質の量(柱密度)に比例する(後で反映) Mellinger 輻射輸送方程式 ▶ 微分方程式を立てる dI= -k I dx + j dx → 𝑑𝐼 𝑑𝑥 = -k I + j ▶ 変数2つを導入 ■ ■ 𝑗 𝜅 源泉関数 S = :物質の特性だけで決まる 光学的厚さ t =∫ k dx → ▶ 後は、“算数” ■ 初期条件:I=I0 𝑑𝜏 𝑑𝑥 =k Mellinger 簡単な場合の解:減光のみ ▶ 放射がない場合:j=0 𝑑𝐼 𝑑𝑥 ■ 𝑑𝜏 𝑑𝑥 = -k I =k を使うと、 𝑑𝐼 𝑑𝜏 ■ = -I これは簡単に解けて、 I=I0 exp(-∫k dx)=I0 exp(-t ) ▶ 指数関数的に減光する Mellinger 簡単な場合の解:放射のみ ▶ 吸収がない場合: k =0 𝑑𝐼 = 𝑑𝑥 ■ これは簡単に解けて、 j I=I0 + ∫ j dx ▶ 単純な積分にしたがって増光する Mellinger 簡単な場合の解:熱平衡 ▶ 𝑑𝐼 定常状態: 𝑑𝑥 =0 k I=j → I = j/k = S ■ ■ 熱平衡なら放射は黒体放射になる: I = Bn(T) したがって、S = Bn(T) ▶ キルヒホッフKirchhoffの法則 S =j/k =Bn(T) ■ ■ 物質の放射吸収特性に関する制限 Sは物質の種類と状態による Mellinger 一般の場合の解 ▶ I etの微分 元の微分方程式も使って 𝑑(𝐼𝑒 𝜏 ) = 𝑑𝜏 ■ I et + 𝑑𝐼 t e 𝑑𝜏 = I et + et (-I + S) =S et これは簡単に解けて I et = (I et)|t=0+ ∫ S et’ dt’ ∴ I = I0 e-t + ∫ S e(t’-t) dt’ ■ Sが光線に沿って一定ならば積分は単純になり I = I0 e-t + S (1- e-t) Mellinger 輻射輸送の解の意味 ▶ 均質媒質の場合の一般解 I = I0 e-t + S (1- e-t) ■ 変形すれば I = (I0 –S) e-t + S ▶ t→0の場合: I = I0 元の輝き ▶ t→∞の場合: I =S 媒質の輝き ▶ 一般には、両者の間になる Mellinger 輝度温度 ▶ プランク関数 Bn(T) = 2ℎ𝜈3 1 𝑐 2 1−exp(ℎ𝜈) 𝑘𝑇 ■ ■ ℎ𝜈 𝑘𝑇 ≪1で1次近似:レーリージーンズ近似 2 2𝜈 Bn(T) RJ= 2 kT 𝑐 強度は温度に比例→強度を温度で表す ▶ 黒体放射でなくても、逆に以下で定義 ■ 𝑐2 TB= I 2 2𝑘𝜈 輝度温度:光源の物理温度とは限らない Mellinger 1次近似とテーラー展開 ▶ 1次式の関係でないと解きにくい ▶ 任意の関数を1次式で表せないか ■ ■ ■ そこそこ合っていればよい:近似 そこそこの区間で合っていればよい “自然な”関数でOKならいい。 ▶ 多項式で書けたとしよう ■ f = S an xn のanを求める→ 𝑓 𝑛 (0) an= 𝑛! Mellinger である f ’(0) = a1 n階微分してx=0を代入すると f (n)(0) = n! an 両辺を微分してx=0を代入すると レーリージーンズ近似 ▶ ℎ𝜈 ≪1の条件: 𝑘𝑇 ■ ■ n [GHz] ≪ 20.8 T[K]で HIガスだと T~103 K→n ≪2x104 GHz 分子雲だと T~20 K→n ≪416 GHz ▶ 分子雲観測では近似に注意が必要 Mellinger ▶ 輝度温度 ■ RJ近似が成り立たない場合でも TB= 𝑐2 2𝑘𝜈 2 I 輝度温度表現での輻射輸送 ▶ 輻射輸送の一般解 I = I0 e-t + S (1- e-t) ▶ 熱平衡の場合、S= Bn(T) ■ ■ 源泉関数から逆に、媒質の温度Tを定義 この温度は熱力学的温度と等しいとは限らない ▶ 輻射を輝度温度で表現すれば、 TB= TB,0 e-t + T (1- e-t) Mellinger 輻射・吸収の基礎 ▶ キルヒホッフの法則 𝑗 𝜅 S= =Bn(T) = 2ℎ𝜈 3 1 𝑐 2 1−exp(ℎ𝜈) 𝑘𝑇 ▶ 物質と光の相互作用 ■ ■ 放射係数jと吸収係数k 一方を求めよ。されば他方も与えられん! Mellinger 1個の電子の電磁波放射(1) ▶ 加速度運動に伴う電磁波の放射 ▶ 双極子近似(双極子放射) P ■ 𝑑𝑃 𝒅2 = 3 𝑑Ω 4𝜋𝑐 2 = 3 𝒅2 3𝑐 sin2q 等方化 ここで、d=q r, (静電モーメント) d Mellinger 1個の電子の電磁波放射(2) ▶ 全過程での放射→全時間積分 32𝜋4 3𝑐3 32𝜋4 3𝑐3 ∫ P dt = = 32𝜋4 3𝑐3 32𝜋4 3𝑐3 = = dn n 2e 2ipn t dn dn′n′ 2e 2ipn′ tdn′ dt dn dn′ n 2 n′ 2 e2ip(n +n′) t dn dn′ d𝑡 dn dn′ n 2 n′ 2 d (n +n′ ) dn dn′ ∫ dn d-n n 4 dn Mellinger フーリエ変換 ▶ 任意の関数を三角波の重ね合わせで ■ ■ そこそこ合っていればよい:近似 “自然な”関数でOKならいい 𝑓𝜈 = ∫ f(t) exp(2ipnt) dt, フーリエ変換 f(t)=∫ 𝑓𝜈 exp(-2ipnt) dn, 逆フーリエ変換 Mellinger デルタ関数と複素共役 ▶ フーリエ、逆フーリエの両方が成り立つなら ■ ■ f(t)=∫∫ f(t' ) exp(2ipn (t' -t)) dt' dn, つまり、 ∫ exp(2ipn (t'-t)) dn =d(t'-t) ▶ デルタ関数:任意の関数f(x)に対して ■ f(x)=∫ f(x') d(x'-x) dx' が成り立つd(x)のこと ▶ 複素共役 ■ f(t)=∫ 𝑓𝜈 exp(-2ipnt) dn ■ f(t)*=∫ 𝑓𝜈 * exp(+2ipnt) dn =∫ 𝑓−𝜈 * exp(-2ipnt) dn ■ f(t)が実関数なら両者は等しい。つまり 𝑓−𝜈 = 𝑓𝜈 * Mellinger 1個の電子の電磁波放射(3) ▶ 実関数d(t)のフーリエ成分だから d-n =dn* ▶ よって、∫ P dt = ■ 32𝜋4 3𝑐3 偶関数なので区間を正だけにすれば ∫ P dt = ■ 64𝜋4 3𝑐3 ∫ |dn |2 n 4 dn そのスペクトルは Pn = ■ ∫ |dn |2 n 4 dn 64𝜋4 3𝑐3 n |dn 4 |2 振動数n を角振動数w =2pn に直すと Pw = 8𝜋 3𝑐3 w4 |dw |2 Mellinger
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