回復期リハビリテーションの 成績報告 脳卒中の病型・部位別に 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟(医師) 澤田石 順 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 は じ め に 回復期リハビリテーションにおいて、個々の症例毎 の予後予測はリハビリテーションの実施および退 院への計画策定のために重要である。 脳卒中の病型・部位と回復期リハの効果・効率と の関連について研究をするための、予備的検討の 結果を報告する。 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 対 象 2002年4月から2006年4月10日までに 退院した脳卒中の565例 除外規定: 1)精査・治療のため転院 2)死亡 ※既存障害の有無・程度、回復を阻害する合 併症の程度については考慮せず 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 脳卒中565例の内訳 脳梗塞 369例 脳内出血 148例 非外傷性くも膜下出血 48例 脳梗塞/脳内出血 517例のうち、 テント上に主病変 419例 テント下 98例 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 方 法 1. 評価項目: 入院時FIM・年齢・発症後日数、退院時 FIM、FIM改善幅(ΔFIM)、在院日数、発症から退院ま での日数、自宅退院率、FIM効率(ΔFIM÷在院日数) 2. 統計手法: 代表値として中央値、Hodges-Lehmann推 定量(以下、HLe)、平均値を採用し、二群の差異の検 定においては Wilcoxonの順位和検定を行い、必要な 場合に p 値を表示する。 •データ処理・解析にはフリーソフトのGNU awk version 3.1.5、およびR version 2.2.1 を用いた 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 FIM について FIM=Functional Independence Measure ◆実行している生活機能の計18項目について、 全介助を1点、要監視5点、自立を6、7点と評価 ◆総計は 126 点、最低で 18 点 ▽運動は13項目: 13 ~ 91 点 ▽認知は 5項目: 5 ~ 35 点 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 Hodges-Lehmann estimator(推定量) 中央値と同様に正規分布しない量の代 表値として適している 単なる中央値よりも頑健な推定量である 8 4 5 10 8 8 4 6 5 6.5 10 9 4 4.5 5 7 7.5 10 例えば、{8, 4, 5, 10}の4つの数 値のHedges-Lehmann推定量 は左表により算出できる。1)背 景が赤の数値と緑色の数値を 足して2で割った値を水色の領 域に記す 2)水色の領域の数 値の中央値がHodgesLehmann推定量となる 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 入院時FIM(横軸)とFIM改善幅(縦軸)の散布図 このように、入院時 FIMのどの階層を とっても、平均値を中 心とした分布をして いないことに注目 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 病型別/入院時比較: HLe 脳梗塞 90 80 70 p=0.001 77.5 脳内出血 SAH p=0.04 72 71.5 60 p=0.04 p=0.01 49.5 50 50 56.5 50.5 40 39 39.5 30 20 10 0 年齢 発症後日数 入院時FIM HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 病型別/成果比較: ΔFIM 脳梗塞 30 脳内出血 p=0.03 25 p=0.002 26.5 25.5 19.8 18.5 18 28 24.5 22.5 20 SAH 10 0 中央値 HLe 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 病型別/成果比較: FIM効率 脳梗塞 脳内出血 0.4 SAH p=0.01 0.35 p=0.05 0.32 0.29 0.3 0.27 0.23 0.2 0.2 0.23 0.19 0.16 0.1 0 中央値 HLe 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 病型別:入院時FIMとΔFIM(HLe) 脳梗塞 60 50 p=0.001 脳内出血 SAH 54 p=0.0002 40 30 20 10 30 20.5 16 15.5 23 29 25.8 23 16.5 12 13.5 0 18-41 42-65 66-89 90-126 HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 部位別/入院時比較: HLe テント上 テント下 p=0.003 80 70 76 74.5 60 63 50 52.5 40 39 30 40.5 20 10 0 年齢 発症後日数 入院時FIM HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 部位別: ΔFIM テント上 テント下 30 p=0.07 20 21 18 22.5 19.5 24 20.9 10 0 中央値 HLe 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 部位別: FIM効率 テント上 テント下 0.4 p=0.013 0.3 0.29 0.25 0.23 0.2 0.23 0.19 0.16 0.1 0 中央値 HLe 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 部位別: 入院時FIMとΔFIM(HLe) p=0.035 テント上 テント下 30 26.8 25.525.5 25.5 p=0.003 23 20 16.5 16 11 10 0 18-41 42-65 66-89 90-126 HLe: ホッジス・レーマン推定量 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 全脳卒中:退院時FIMと自宅退院率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 96.2 90 70 50 51 42 28 20 10 18-29 30-41 42-53 p<0.05 54-65 p<0.05 66-77 78-89 90-101 102113 114126 p<0.05 p<0.05 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 全脳卒中:退院時FIM(6点毎)と自宅退院率(%) 80 70 退院時FIM 18~77において、実行 しているADL量と自宅退院率は単 純な正の相関を示さない 60 57.1 50 50 43 30 22.2 20 10 36.7 37.9 40 18.8 21.1 19.2 3 0 18-23 24-29 30-35 36-41 42-47 48-53 54-59 60-65 66-71 72-77 p=0.03 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 全脳卒中:退院時FIM(6点毎)と自宅退院率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 96.4 FIMの値 95 が一人で 留守番可能か否かの分 岐点という経験的印象 が確認された 81.5 95.8 96.8 82.6 57.7 53.8 48.4 78-83 84-89 90-95 96-101 102-107 108-113 114-119 120-126 p=0.05 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院 結 語 • 回復期リハビリテーションの効果も効率も、 くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞の順に高 かった。 •入院時FIM18-41の最重症層では病型によ る差異が認められなかった。 •テント下病変はテント上病変よりも回復期リ ハの効果・効率が高かった。 •テント下病変においては、入院時FIM18-41 の最重症層のリハ効果が最も高かった。 神奈川県脳卒中カンファレンス 2006年4月15日 鶴巻温泉病院
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