FIMについて 意義、限界、活用 鶴巻温泉病院回復期リハビリテーション病棟(医師) 澤田石 順 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 はじめに 前回のFIMに関する院内勉強会は、FIMによる7段階評価 の基礎概念と各項目の点数付けという実務的な内容で あった。 この度、最初にFIMとは統計学的にどんな性質の尺度で あるかを解説し、ついでFIMの限界はどんなところにあ るかを指摘しつつ、FIMの応用(使い道)例を提示する。 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 F I M と は FIM: Functional Independence Measure ◆認知機能5項目、運動機能13項目の計18項目 について、全介助を1点、監視を5点道具なしで自 立を7点とする7段階で評価。 ◆総計は 126 点、最低で 18 点 ◆Independenceという言葉からして自立の度合 いを評価するように思えてしまうが、本質的には 他者や道具への依存の度合いを表現 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ※このスライドは数年前のもの。もっと広がっていると思われる 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 FIMはどんな尺度? 尺度の種類:名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比尺度 定性的変数(カテゴリ変数):名義尺度(男と女など) 定量的変数: 順序尺度,間隔尺度,比尺度 定量的変数: ①整数値しかとらない離散変数 ②実数 値をとりうる連続変数(長さのcmなど) FIMの各項目: 順序尺度で離散変数 FIMの合計点: 連続変数とみなして扱うことが多い 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 リハビリテーションの成果に関連する FIMの指標 FIM効果 リハビリテーションによるFIMの変化 FIM効率 FIM効果÷リハビリテーションの日数 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 F I Mに よ る 評 価 の 限 界 と 留意 点 FIMは他者や道具に依存しない度合いを評価するものであり、 自立している度合いをも、生活の質をも評価しない 誤り: ある障害者のFIM 効果が小さいことで、その人にとってリ ハビリテーションの意義が小さいと即断すること 誤り: FIM効果・効率という数字だけで施設(病棟)の業績を評価 すること 誤り: FIM効果・効率の改善を数値目標として設定すること ⇒ 必要: リハチームの能力改善、マンパワー強化、疾病管理の改 善などに努める(→結果としてQOLやFIM効率が向上するかも) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 F I M を 活 用 す る 対 象 ①個々の障害者:リハ効果や退院時期の評価 ⇒ ②入院時FIM・年齢の階層毎 ⇒ ③退院時FIMの階層毎: 特に自宅退院率 ⇒ ④病棟・施設毎: 重症度の偏りや成果を評価 ⇒ ⑤疾患・病変部位毎 ⇒ ⑥国毎: 医療システムとリハの効率・効果の関係 ⇒ 活用の目的は持続的に実践を改良すること!! 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ①個々の障害者への適用 症例01: 72才、脳幹梗塞、自宅退院 高次脳機能障害なし 在院日数 79日 FIM効果: 44 FIM効率: 0.56 当院の回復期リハ病棟の脳卒中全 体におけるFIM効果は中央値で20 点、FIM効率は0.18 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例02: 80才、脳梗塞、自宅退院 case2 FIM効果: 31 FIM効率: 0.32 高次脳機能障害なし 在院日数 99日 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例03: 92才、脳梗塞、非自宅退院 case3 認知症、左片麻痺 は中等度 在院日数 186日 FIM効果: 17 FIM効率: 0.09 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例04: 74才、脳梗塞、非自宅退院 case4 FIM効果: 41 FIM効率: 0.29 高次脳機能障害なし 在院日数 142日 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例05: 51才、脳梗塞、非自宅退院 気管切開、経管栄養、 四肢麻痺→気切孔閉 鎖、経口摂取可 在院日数 194日 case5 FIM効果: 21 FIM効率: 0.11 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例06: 82才、くも膜下出血、自宅退院 case6 FIM効果: 81 FIM効率: 0.59 退院後も予想通りに順調に回復し、 発症前と変わらない状態に 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例07: 59才、脳梗塞、自宅退院 case7 FIM効果: 62 FIM効率: 0.38 入院時は経管栄養、気管切開、 重度四肢失調→軟飯・一口大摂 取、気切孔閉鎖、室内歩行自立 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例08: 80才、脳梗塞、非自宅退院 重度の高次脳機能障害(HDS-R 0点) 在院日数 78日 case8 FIM効果: 5 FIM効率: 0.06 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例09: 27才、破裂脳動静脈奇形、自宅退院 重度の高次脳機能障害、重度四肢麻痺 経管栄養→経口摂取 QOL改善 無表情→表情豊かに case9 FIM効果: 1 FIM効率: 0.006 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例10: 81才、脳梗塞、非自宅退院 case10 FIM効果: 82 FIM効率: 0.71 ほぼ無言で追視なし、経管栄養→ 正常な会話、常食摂取 在院日数 116日 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例11: 73才、脳梗塞、非自宅退院 重度の高次脳機能障害、家族はADLが自立 しない限り自宅退院は不可能と入院時より 明確で自立するまでリハを強く希望。障害受 容促進のため長時間の説明を繰り返し、施 設申し込みを依頼したものの、実際の申し込 みは入院後20週。 在院日数 246日 case11 FIM効果: 16 FIM効率: 0.07 入院の長期化とともにQOL低下 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例12: 71才、脳梗塞、非自宅退院 FIM効果: -58 FIM効率: -0.17 case12 中等度高次脳機能障害、軽度 左片麻痺。3回のてんかん発作 と抗てんかん剤の影響などによ りADL低下。 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例13: 67才、脳幹梗塞、自宅退院 経管栄養、気管切開、 重度四肢麻痺→全粥刻 み食摂取、気切孔閉鎖、 歩行器歩行 ▼発症後7ヶ月からの 急速な改善! ▼在院日数 267日 ▼退院後も回復が継続 case13 FIM効果: 70 FIM効率: 0.26 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 症例14: 39才、脳内出血、自宅退院 case14 FIM効果: 95 FIM効率: 0.75 麻痺が重度→軽度となり、ADL自立。 失語症などの高次脳機能障害も急速に回復 ★当院の回復期リハにおけるFIM効果が第一位 在院日数 127日 ▼退院後の目標は復職 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ② 入 院 時 F I M ・ 年 齢 の 階 層 毎 ③ 退 院 時 F I M の 階 層 毎 対象: 2003年6月から2006年12月5日 までに退院した脳卒中の936例 ※精査・加療の転院と死亡を除外 年齢 入院時FIM FIM効果 FIM効率 在院日数 中央値 76 50 20 0.18 111 平均値 74.9 55.2 22.3 0.25 116.5 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②③の対象936例の散布図 入院時FIMのどの階層 においてもFIM効果は 正規分布していない 散布図 FIM 効 果 入院時FIM 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-1:入院時FIMの7階層とFIM効果 35 31 30 28 25 24 22 21 20 15 12 11 10 5 0 18-29 P<0.01 30-41 42-53 p=0.97 54-65 P<0.01 症例数: 218(23.3%) 149(15.9%) 139(14.9%) 66-77 p=0.02 103(11%) 78-89 p=0.1 93(9.9%) 90- p<0.01 102(10.9%) 132(14.1%) 箱ひげ図 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-2:入院時FIMの7階層と在院日数 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 155 139 124 108 99 90.5 46.5 18-29 P<0.01 30-41 42-53 p=0.67 54-65 P<0.01 症例数: 218(23.3%) 149(15.9%) 139(14.9%) 66-77 P=0.03 103(11%) 78-89 p=0.17 93(9.9%) 90- p<0.01 102(10.9%) 132(14.1%) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-3:入院時FIMの7階層とFIM効率 0.3 0.27 0.27 0.25 0.25 0.2 0.2 0.16 0.16 30-41 42-53 0.15 0.1 0.08 0.05 0 18-29 P<0.01 p=0.77 54-65 P<0.01 症例数: 218(23.3%) 149(15.9%) 139(14.9%) 66-77 p=0.63 103(11%) 78-89 p=0.43 93(9.9%) 90P<0.01 102(10.9%) 132(14.1%) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-4:入院時FIMの階層と自宅退院率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 92 76 81 66 50 40 28 18-29 30-41 42-53 症例数: 218(23.3%) 149(15.9%) 139(14.9%) 54-65 66-77 103(11%) 93(9.9%) 78-89 90- 102(10.9%) 132(14.1%) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-5:年齢の5階層とFIM効果 30 28 参考1 25 22 参考2 21 20 17 参考3 15 箱ひげ図 10 9 5 0 50代 p=0.28 症例数: 59(6.3%) 60代 70代 p=0.17 167(17.8%) 80代 P<0.01 343(36.6%) 90代 P<0.01 26(29.5%) 66(7.1%) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-5:年齢の5階層と在院日数 118 116 114 112 110 108 106 104 102 100 117 114 113.5 107 106 50代 p=0.40 症例数: 59(6.3%) 60代 70代 p=0.42 167(17.8%) 80代 P=0.04 343(36.6%) 90代 p=0.65 26(29.5%) 66(7.1%) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ②-5:年齢の5階層とFIM効率 0.35 0.32 0.3 0.25 0.25 0.2 0.19 0.15 0.14 0.1 0.07 0.05 0 50代 60代 p=0.43 症例数: 59(6.3%) 70代 p=0.06 167(17.8%) 80代 P<0.01 343(36.6%) 90代 P<0.01 26(29.5%) 66(7.1%) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ③:退院時FIMの9階層と自宅退院率(%) 120 100 96 89 80 72 60 51 50 45 40 25 20 21 14 0 18-29 30-41 p=0.06 症例割合: 8.0% 42-53 p=0.57 7.1% 54-65 P=0.02 6.5% 66-77 p=0.51 5.4% 78-89 90-101 p=0.83 7.2% 7.8% P=0.02 10.1% 102113 114126 P<0.01 P<0.05 13.6% 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 9.9% ④-1:病棟間比較 対象: 2003年6月から2005年6月に退院した623例 2fs病棟 246例 2階 南 3階 3fs病棟 276例 南 4階 4fs病棟 111例 南 •診療データベースに登録され FIM のスコアが正しく記 載されている症例に限定(脳卒中が78.6%) ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時年令 80 70 79 76 78 2fs病棟 3fs病棟 4fs病棟 60 50 40 30 20 10 0 2fs-3fs: p < 0.05 ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時発症後日数 50 40 42.5 40 41 3fs病棟 4fs病棟 30 20 10 0 2fs病棟 有意差なし ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIM 60 55 56 3fs病棟 4fs病棟 50 40 48.5 30 20 10 0 2fs病棟 p=0.02 p=0.14 ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 FIM効果 20 21 15 10 0 12 2fs病棟 3fs病棟 p=0.01 4fs病棟 p=0.0002 ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 在院日数 120 100 116 103 98 80 60 40 20 0 2fs病棟 3fs病棟 p=0.0062 4fs病棟 p=0.001 ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 自宅退院率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 51 2fs病棟 55 3fs病棟 58 4fs病棟 有意差なし ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIM<54の割合 2fs病棟 58.1% 3fs病棟 46.0% 4fs病棟 49.5% ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIMの階層 & FIM効果 2fs病棟 35 3fs病棟 2-3: p=0.087 3-4: p=0.021 30 4fs病棟 2-3: p=0.060 3-4: p=0.10 33 25 24.5 22 20 20 15 10 18 18 18 16 15 13 14.5 12.5 9.5 9 5 5 0 18-35 36-53 54-71 72-89 90- ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIMの階層 & 在院日数 2fs病棟 140 120 3fs病棟 138.5 126 125 100 4-2: p=0.08 4-3: p=0.15 126 116 116 114 98 4fs病棟 95 97 96 88.5 80 60 54 50 51 40 20 0 18-35 36-53 54-71 72-89 90- ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ④-2:年毎の比較 対象:2003年1月1日から2005年11月 15日に退院した初発脳卒中の438例 2003年 82例 2004年 183例 2005年 173例 •精査・加療の転院と死亡例を除 外 ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 全体の比較:中央値[平均値] 2003年 2004年 2005年 年 齢 入院時発 入院時 症後日数 FIM FIM効果 在院日数 FIM効率 自宅退院率 76.5 [75.7] 75 [75.3] 41 [43.2] 37 [40.9] 20 [24.2] 18 [20.7] 76 41 [74.9] [57.2] 56 [57.6] 49 [55.0] 104 [108.5] 109 [117.7] 0.25[0.28] 66% 0.15[0.23] 57% 55 19 117 0.17[0.27] [57.2] [21.2] [116.8] 57% 有意差なし ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIMの階層 & FIM効果(中央値) 2003 2004 2005 35 32 30 2004-2005: p=0.04 27 25 22 23 24 23 20 17 15 15 10 14 11 11 10.5 5 0 18-41 42-65 66-89 90- ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIMの階層 & 自宅退院率 2003 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 2004 2004-2005: p=0.03 2005 94 93 96.3 100 77 76 76 66 44 39 30 27 18-41 42-65 66-89 90- ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIMの階層 & 在院日数(中央値) 2003 160 2005 149 140 120 2004 138.5 120 119 117 126.5 100 92 94.5 80 70 60 55 42.5 40 33 20 0 18-41 42-65 66-89 90- 有意差なし ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時FIMの階層 & FIM効率(中央値) 2003 2004 2005 0.5 0.4 0.38 0.3 0.28 0.27 0.21 0.2 0.25 0.26 0.21 0.19 0.2 0.14 0.1 0 0.09 0.1 18-41 42-65 66-89 90- 有意差なし ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時年齢の階層 & FIM効率 入院時年齢の階層 & 在院日数 入院時年齢の階層 & 自宅退院率 入院時年齢の階層 & FIM効率 2003年~2005年の間に 有意差は認められなかった ※全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第9回研究大会(高知市)で発表 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ④-3:施設間比較 藤田保健衛生大学・七栗サナトリウム (FITプログラム)との比較 ●療法士とリハビリテーション医学専門医を十分に 確保し、年間365日リハを実行している先進的な施 設と当院回復期リハ病棟との治療効果/効率 の比 較を試みた。 ※鶴巻温泉病院の学術研究発表会(2006年3月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 比較対象データ FITプログラム: 藤田保健衛生大学・七栗サナトリウ ムの回復期リハビリテーション病棟(当時、52床) 参照文献: Full-Time Integrated Treatment Program, a New System for Stroke Rehabilitation in Japan Comparison with Conventional Rehabilitation Am J Phys Med Rehabil 2004;83:88–93. 医学書 院より 発行の 書籍の ※鶴巻温泉病院の学術研究発表会(2006年3月) 表紙よ 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 り 七栗サナトリウム(FIT)の優位点 • 優秀なリハ医学専門医が教授クラスを含めて多数お り、医師あたり患者数は16人未満(当院は25~52人) • 専従セラピストは52床に20人、当院は約15人 • 病棟の廊下も病室も広く、同一フロアに訓練室があ るなどリハのために特化した作りになっている • 十分な数のセラピストを確保しての365日リハ ※鶴巻温泉病院の学術研究発表会(2006年3月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 七栗サナトリウム・回復期リハ病棟 廊下は6m×50m 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 対象症例 • FIT 58例: 脳卒中症例のうち脳幹・小脳病変、 重篤な合併症、再発・転院例を除外し、「入院 時の認知FIM≧25、運動FIM≦80、発症後日 数 30~80」 • FIT前 48例: 七栗サナトリウムにおけるFIT導 入前における上記条件での成績 • 当院 45例: 症例数を確保するため、発症後 日数と重篤な合併症に関する規定を外し、74 才以上を除外して平均年齢をマッチさせた ※鶴巻温泉病院の学術研究発表会(2006年3月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 入院時データの比較 当院 FIT FIT前 年齢(才) 64 62.8 64.7 発症後日数 25 49.8 54.1 FIM-運動 56.3 60.6 64.3 FIM-認知 31.1 32.3 31.0 FIM-総得点 87.4 92.9 95.3 ※鶴巻温泉病院の学術研究発表会(2006年3月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 治療成績の比較 当院 FIT FIT前 在院日数 76.8 69.8 80.0 FIM効果-運動 22.3 20.3 12.7 FIM効果 24.2 21.8 14.0 FIM効率-運動 0.35 0.30 0.16 FIM効率 0.37 0.32 0.18 ※鶴巻温泉病院の学術研究発表会(2006年3月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ⑤:疾患・病変部位毎の比較 脳卒中の病型・病変部位と回復期リハ の効果・効率との関連について解析 対象: 2002年4月から2006年4月10日ま でに退院した脳卒中の565例 ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 脳卒中565例の内訳 脳梗塞 369例 脳内出血 148例 非外傷性くも膜下出血 48例 脳梗塞/脳内出血 517例のうち、 テント上に主病変 419例 テント下 98例 ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 Hodges-Lehmann estimator(推定量) 中央値と同様に正規分布しない量の代 表値として適している 単なる中央値よりも頑健な推定量である 8 4 5 10 8 8 4 6 5 6.5 10 9 4 4.5 5 7 7.5 10 例えば、{8, 4, 5, 10}の4つの数 値のHedges-Lehmann推定量 は左表により算出できる。1)背 景が赤の数値と緑色の数値を 足して2で割った値を水色の領 域に記す 2)水色の領域の数 値の中央値がHodgesLehmann推定量となる ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 病型別/入院時比較: HLe 脳梗塞 90 80 70 p=0.001 77.5 脳内出血 SAH p=0.04 72 71.5 60 p=0.04 p=0.01 49.5 50 50 56.5 50.5 40 39 39.5 30 20 10 0 年齢 発症後日数 ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 入院時FIM HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 病型別/成果比較: FIM効果 脳梗塞 30 脳内出血 p=0.03 25 p=0.002 26.5 25.5 19.8 18.5 18 28 24.5 22.5 20 SAH 10 0 中央値 HLe ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 病型別/成果比較: FIM効率 脳梗塞 脳内出血 0.4 SAH p=0.01 0.35 p=0.05 0.32 0.29 0.3 0.27 0.23 0.2 0.2 0.23 0.19 0.16 0.1 0 中央値 HLe ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 病型別:入院時FIMとFIM効果(HLe) 脳梗塞 60 50 p=0.001 脳内出血 SAH 54 p=0.0002 40 30 20 10 30 20.5 16 15.5 29 23 25.8 23 16.5 12 13.5 0 18-41 42-65 66-89 ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 90-126 HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 部位別/入院時比較: HLe テント上 テント下 p=0.003 80 70 76 74.5 60 63 50 52.5 40 39 30 40.5 20 10 0 年齢 発症後日数 ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 入院時FIM HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 部位別: FIM効果 テント上 テント下 30 p=0.07 20 21 18 22.5 19.5 24 20.9 10 0 中央値 HLe ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 部位別: FIM効率 テント上 テント下 0.4 p=0.013 0.3 0.29 0.25 0.23 0.2 0.23 0.19 0.16 0.1 0 中央値 HLe ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 平均値 HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 部位別: 入院時FIMとFIM効果(HLe) p=0.035 テント上 テント下 30 26.8 25.525.5 25.5 p=0.003 23 20 16.5 16 11 10 0 18-41 42-65 66-89 ※神奈川県脳卒中カンファレンス(2006年4月) 90-126 HLe: ホッジス・レーマン推定量 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 ⑥:国際間比較 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 まとめ1 入院時のFIMの点数で、個々の障害者のFIM効果を 推定できない ⇒ 高齢ほどFIM効果は小さく、著名な改善はまれ ⇒ 到達したFIMの点数と自宅退院のしやすさは単純に 比例はしない ⇒ テント下病変はテント上病変よりもおおむね予後が 良好 ⇒ くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞の順におおむね予 後が良好 ⇒ 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 まとめ2 FIMの諸指標は当院の回復期リハビリテーション病棟 の業績が2003年から2005年の間に改善していることを示 さなかった ⇒ 障害者の重症度に病棟間のかたよりがあった ⇒ 当院の回復期リハ病棟は、先進的とされる七栗サナト リウムのFIMプログラムと同等の成果をあげていることが 示唆された ⇒ 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 おわりに FIMは誤った使い方( ⇒)をしない限り有用 我々は日本国で最良の実践(Best Practice)を目指すべきである FIMを成果測定手段の一つとしてもっと活 用していくべきである 本スライドは回復期リハ病棟の院内ホームページ http://3fs-jsawa/pukiwiki/の 「研究と発表・投稿」ページに常置(利用は全く自由) 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 18-29 中央値:12 平均値:19.5 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 30-41 中央値:21 平均値:25.8 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 42-53 中央値:22 平均値:24.3 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 54-65 中央値:31 平均値:31.1 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 66-77 中央値:28 平均値:25.1 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 78-89 中央値:24 平均値:23.3 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 90-126 中央値:11 平均値:11.2 度 数 FIM効果 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 18-41, 年齢70未満 度 数 中央値:28 平均値:34.5 FIM効果 箱ひげ図 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 18-41, 年齢70-84 中央値:15 度 数 平均値:22 FIM効果 箱ひげ図 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:入院時FIM 18-41, 年齢85以上 中央値:8 平均値:11.1 度 数 FIM効果 箱ひげ図 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 箱ひげ図:入院時FIM 18-41, 各年齢層のFIM効果 第三四分位 中央値 第一四分位 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 度数分布表:正規分布の例 平均値:0 中央値:0 度 数 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 鶴さんデータ(伝票-書類-ケアプラン)での FIM総合点の経過図の表示方法 ②「グラフ表示」 ボタンをクリック ①「FIMの編集、 一覧表印刷…」 ボタンをクリック ③このように描画 されます 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日 数値目標の悪例 社会保険 事務所 年金未納率(未納者÷年金支払い 義務者[分母])の低下 ▽理由: 未納率を下げろとの中央か らの強い圧力 全国で年金支払い免除 の本人の申請なしで勝 手に手続きする事例が 続出(分母を小さくして観 能率を下げようとした) ある職業 紹介所 第一線業務者に対する職業紹介成 功率(就労成功者÷担当失業者[分 母])の向上命令 年齢が40代以上とか仕事 の実務経験不足のため就 労が困難な失業者をなる べく担当しないようになって しまった ▽紹介成功率が一定限度を下回る とその人自身(!)が解雇される危険 ある回復 期リハビリ テーション 病棟 自宅退院率の向上と在院日数の短 縮 ▽理由:2006年4月の診療報酬改定 で病棟の回転をよくして利益を確保 する必要にせまられた 自宅に退院できそうな障害 者以外は原則として入院を 認めない方針に変更 鶴巻温泉病院 院内勉強会 2006年12月11日
© Copyright 2024 ExpyDoc