ワークショップ「海洋中・深層循環のモデリング」 2007.01.11 潮流海底境界層における 乱流混合に関する数値的研究 坂本圭 (京都大学大学院・理学研究科) 1 研究テーマ ●潮流海底境界層:回転系において潮流(振動流)が形成する海底境界層 多くの海域で、コリオリ・パラメータfと潮流振動数σはオーダーとして同程度 →地球回転と潮流振動の両方が流れに影響 (Soulsby 1983) ●一般に、シアー不安定に伴う乱流は海水混合に寄与 特に、σ~|f|となる緯度(M2潮では74.5度)で、混合効果は大きいと報告 (Furevik and Foldvik 1996, Makinson 2002) →深層循環にとって重要な、極海域における高密度水形成過程に影響 (Robertson 2001, Pereira et al. 2002) ●しかし、回転だけ(エクマン層)と振動だけ(ストークス層)を考慮した境界層乱 流研究は数多いが、両方が存在する場合の乱流の振る舞いは明らかでない 回転と振動の効果の比を示すσ/fを変えて非静力実験を行い、潮流海底境界 層における乱流特性と混合効果を調べる 2 数値モデル モデル領域:矩形海領域 境界条件 海面:リジッド・リッド、非粘着 海底:粘着条件 水平:周期条件 潮流 (振幅8.5cm/s) 支配方程式系 回転系、非圧縮、非静水圧、リジッド・リッド条件、ブシネスク近似 変数を基本潮流場( )と擾乱場( )に分ける ν,κ=1cm2/s 実験6ケース σ/f : 0 (エクマン層), 0.5, 0.95, 1.05, 2.0, ∞(ストークス層) 実験群 密度一様、線形成層 3 結果:密度一様 統計的に定常な乱流場を解析 結果:次のouter scaleでスケーリングすることで、 時間:1/||f|-σ| 速さ:摩擦速度u* 長さ:δ=u*/||f|-σ| ストークス層(振動のみ)を除いて、乱流が相似性を持つことが分かった。 z/δ 例:トレーサーを用いた鉛直渦拡散 係数の見積もり ストークス層以外、ほぼ相似形 回転のみ(実線), σ/f=0.5, 0.95, 1.05, 2.0, 振動のみ(点線) →有次元では|f|~σとなる海域で特に混 合が大きい、これまでの報告と一致 海底 κ / δu* 4 結果:成層 次に、成層の下での乱流混合を評価するために 弱い線形成層(N2=1.0×10-6/s2)の初期場を与えて、時間発展を調べる z (m) 実験終了時(24潮流周期)の密度鉛直分布 回転のみ(実線), σ/f=0.5, 0.95, 1.05, 2.0, 振動のみ(点線) 海底 密度 (g/cm3) 密度一様と同じように、σ/f~1で活発な混合 →混合層:他ケースの約2倍の厚さ 4 結果:成層 乱流運動エネルギー(TKE)の解析 TKE供給はほぼ同じ TKEの時間変化 ~ 0 →TKE供給 ~ 粘性による散逸 +位置エネルギー(PE)への変換 一方、PE変換はσ/f~1で大きい この結果、 混合効率(PE変換/TKE供給)は4% と他ケースより1桁大きい 潮流海底境界層での乱流混合は σ/fに大きく依存 現在、混合効率を決める要因につ いて解析を続けている 回転 σ/f= 振動 のみ 0.5, 0.95, 1.05, 2.0 のみ
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