研究会200908

ウインドプロファイラによる接地
境界層観測の現状
古本淳一
はじめに
• 接地境界層:
– 地表の影響を直接受ける領域
– 大気・大気間のエネルギー・物質輸送を考える
上で高い時間・空間分解能観測が重要。
自由大気
– 地表の被覆状態により大きくエネルギー輸送が
変化し、局地的な気象現象に大きな影響を及ぼ
している。
• 従来のフラックス測定は主にタワー観測が主で
あったが、地表面が一様でない場合には局地
風が発生し、エネルギー・物質を輸送するため、
風速の微細な水平分布を捉えることが重要。
• さらに顕熱、潜熱フラックスを定量的に理解する
にはその面的構造を捉えることが有効。
混合層
接地境界層
地表
接地境界層内の鉛直エネルギー
輸送は
接地境界層:乱流
混合層:対流
により行われている。
研究目的
• ウインドプロファイラやライダーを用いた大
気観測を接地境界層観測に適用し、地表
面と接地境界層、さらに上層の混合層や
自由大気との相互作用を明らかにする。
• ライダーやウインドプロファイラアンテナを
傾けて水平方向に走査する。
超音波
風速計
赤外線
CO2計
• 信楽MU観測所が森林に囲まれていること
を活用して森林と大気の間のエネルギー・
物質交換に着目して研究を推進する。
本研究では、
LTRアンテナを傾けて観測し、接地境界層内部の乱流散乱およびRASS
観測を実現して風速、気温の3次元分布を観測する。
小型ラマン・ライダー観測を水平に向けることで水蒸気立体構造を得る。
NICT 1.3GHz WPRの現状
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2009年1月: 大宜味から信楽に移送
2009年2月: CPUカードの手配
2009年2-7月: 診断作業
2009年7月: DSPボードの故障を確認
2009年8月: 三菱電機所有の予備ボードで屋内部分
(IFの出力)までできることを確認
• 2009年8月: モジュールとDSPカードの通信カードの
不調を確認
• 2009年8月24日(予定):予備通信ボードで動作チェッ
クを行う。
• 2009年9月 アンテナを傾ける架台の制作
京大LTRは稼働する状態である。アンテナを傾ける観
測は京大LTRをもちいて行う。
LTRのアンテナを傾ける架台
2m角のLTRアンテナ
強いサイドローブ
の存在方向
アンテナ
設置地点
LTRのグラウンドクラッタ強度
鉛直
北(天頂角10.5度)
東(天頂角10.5度)
8km
6km
4km
2km
南(天頂角10.5度)
西(天頂角10.5度)
500m以下ではグラウンドク
ラッタのスペクトル密度は乱
流エコーより20dB程度高い。
高度500-2000mでは、両者は
同程度の大きさ。
LTRのビームパターン
アンテナの辺に平行な方向には水平方向に-50~-40dB程度のクラッタ強度がみ
られる。アンテナの頂点方向のサイドローブは十分に弱く、-50dB以下のようであ
る。
クラッタが強くて受信機が飽和してしまう際には、
1.アンテナ出力にアテネーターを挿入。
2.アダプティブクラッタ抑圧を導入
が対策として考えられる。
RASSスピーカーのビームパターン
3kHz, 0.5秒間の正弦波を用いて20m先から
音圧を測定。
地面からの反射の影響を防ぐために音圧計
の下部にウレタン製の覆いをつけて計測
ホーン長を2種類(約3m と 1m)の2種類、出口
部のギザギザ構造のあり、なしの場合に計測
短ホーン
ホーン長3mはビーム角は鋭いが、
ホーン内部の反響防止のための
吸音材の影響を受けて音圧が低下
している。1m程度のホーンで観測を
行うのがよいと考えられる。
長ホーン
黒:出口部のギザギザの構造あり
赤:出口部のギザギザの構造なし
まとめ
• ウインドプロファイラやライダーを用いた大気観測を接地境界層観測に
適用し、地表面と接地境界層、さらに上層の混合層や自由大気との相
互作用を明らかにすることを目的として、ライダーやウインドプロファイラ
アンテナを傾けて水平方向に走査する研究を推進している。
• 特に、信楽MU観測所が森林に囲まれていることを活用して森林と大気
の間のエネルギー・物質交換に着目した研究を行う。
• NICTのLTRを信楽MU観測所に移設し、修理を進めている。また、ウイン
ドプロファイラのアンテナを傾ける架台の設計を行っている。
• 傾けた方向のRASS観測に対応したスピーカーのビームパターンを計測
した。これにより、ホーン長を短縮したほうが強度が強く、ビーム角も
レーダー走査範囲と合致するビーム角が得られることが分かった。