STSNJ3・23・2003 科学技術文明の制御について (マクロSTSの視点からの考察) 2003・3 科学技術・生存システム研究所 神出 瑞穂 2015/9/30 1 科学技術文明論的矛盾(マイナス効果) • “科学技術の進展は社会を急速に変化させる。 このこと自体が問 題” :福井謙 一、江崎玲於奈、トインビー • “現在は社会が科学技術の進展に対処できる かどうか“実験“を行っている時 代” :ドナルド・D・ブラウ ン • “そのスピードの速さ:人類の適応力限界、淘汰 圧になってきてい 2015/9/30 2 る” :江崎 20世紀科学技術文明の功罪(総括) • 現代科学技術文明は科学技術を 「人間の生活空間の拡大」、「人間の能力の拡大」 のために極度に利用してきた • 科学技術の進歩が人類にプラスとマイナスの影 響を与えた • 功罪あい半ば(21世紀への英知・ノーベル賞受賞者の提言ほか) • 科学技術に功罪ありのグローバルコンセンサス 2015/9/30 3 図1:科学技術文明システム • 科学技術・人間・人工物・環境の因果関係 +の 効用 必要は発明の母 発明は必要の母 科学 技術 人工物 人間 (触媒作用) 民主主義 自由主義 資本主義 社会への 適用 エネルギー ポジテイブ フィードバック 2015/9/30 ーの 効用 新しい ニーズ 人間 新しい ニーズ エントロピー 4 図4:科学技術文明システム上の功罪の位置づけ 科学技術に功罪あ りのグローバル コンセンサス 物質的生活 水準向上 知識増大 法則の発見 科学 技術 核・大量破壊兵 器 健康・寿命 人口増大 民族間 相互理解 人工物 戦争 + 社会への 適用 ー 恩恵の偏在 南北問題 大規模S 事故 2015/9/30 変化のスピード 人類の淘汰圧 人間 人間の尊厳 疎外・倫理 無制限な 欲望の刺激 快適な生活 環境 新しい ニーズ 環境問題 資源・エネル ギー・水問題 生物多様化破壊 人間 人口増加に伴う 諸問題の発生 新しい ニーズ 5 21世紀の課題(1) • 「人類は科学技術に頼らざるを得ないが果たし てこのまま進んで利益が実害を上回りえるか」 :江崎玲於奈 • 「科学知識の総体を無限に拡大し、技術を通し て社会に無制限に適用することが望ましいこと なのか」 :沢田允茂 • Impossibility:The Limits of Science & the Science of Limits:J.D.Barrow • 出典:「科学にはわからないことがある理由」J.D.バロウ、青土社 (200 0) • 文化の多様性(地域、民族)と科学技術 2015/9/30 6 21世紀の課題(2) • それでも21世紀は科学技術文明を推進 – 持続可能な成長のためには必須 (世界科学アカデミー宣言2000・5、科学技術基本法) – 進歩の歴史観は健在 – バイオ、ナノテク、情報、循環型社会、STS? • 基本課題:「現代科学技術文明の制御」 • 人類は自分で生んだ文明を自分で制御 する方法論をまだ見つけていない • *STCカー: “アクセルあり、ハンドル、ブレーキなし” 2015/9/30 7 文明の制御のための情報の重要性 • • • • 科学技術が専門分化、文明のシステムの複雑性 絶対的価値判断、正確な予測の困難さの増大 環境問題のように結果が出てからでは遅い 「21世紀の特徴は、危機の経験的自明性がなくなって、 危機評価の情報依存性が明らかになったこと。 情報の 信頼度を高める基礎作業の成功なしに我々人類は 21 世紀の難局を乗り切れない。」 • 「ニコルス・ルーマン:システムの信頼をコントロールする ためには、専門的知識がますます必要、簡単なチェック も、専門家のみが行いうる」 • 出典:「21世紀の倫理を求めて」加藤尚武、NHK(2000) 2015/9/30 8 図6:文明計測制御システム・コンセプト (人間工学・サイバネテイックスシステム+計測制御システム) 図1の科学技術 文明システム 入力 人間A (制御主体) (欲求の はかり) 自動制御 システム 制御 2015/9/30 (X次計測対象) (1次計測対 象) 科学 技術 S Sh Sdx/dt 人間B 社会へ の適用 出力 Se センシンング アナリシス 人工物 Sa 制御系 条件設定 S は セン サー 情報蓄積 9 提案:科学技術文明計測制御システム(図6参照) • 科学技術文明システム(図1)に付加し、文明全体を計 測制御するサブシステム • 科学技術活動、人工物と社会へ適用時の振る舞い(+、 -)、人間の欲望、環境、文明の変化速度、加速度など を計量、分析し継続的に蓄積、フィードバックして制御 主体の人間がシステム制御 • 交通管制、電力システム、化学プラントなどの物理・化 学計測、オゾンホール、温暖化などの環境計測、核査 察、マーケットリサーチ、世論調査などの個別計測 →オートノミックに文明計測制御システムへ進化 • 人間Aは文明の制御主体、人間Bは人工物の利用者 (人間Bは時と場合により人間Aになる) 2015/9/30 10 科学技術文明計測制御システムの特徴 • 物理量、工学量、感覚量、感情量すべてを計量 • ユビキタス情報システム(公開性) • センシング・アナリシス情報のDB化(共有性) • システム制御、自動制御ハイブリッドシステム (功罪の「診断」・「治療」から「予防」への可能性) • 個別の物理/化学計測、環境計測でなく文明 全体の計測というコンセプト • 科学技術文明システムのサブシステムとして進化 2015/9/30 11 終わりに • 文明の制御:STS論的組織・体制論、政策論と 文明の計測制御システム構築運用は車の両輪 • 文明の計測制御システムは 一種の「社会技術」 として研究が必要 • 自律神経系 = 科学技術文明計測制御 システム 2015/9/30 12
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