Ⅰ.薬物体内動態の制御(DDS) 最新の医薬品開発テクノロジー: ●コンビナトリアル化学 ※ 組合せで化学合成 ●ロボットアッセイ ※ 薬効スクリーニング ●ドラッグデザイン(in silico) ・構造活性相関 ・ADMET予測 T:毒性 ・相互作用予測 ・投与計画 ITは創薬・医療のいろいろな過程に関わっている 医薬品候補化合物数 スクリーニング: 約42万化合物 0.015 % 医薬品:63個 物性(製剤化) 医薬品開発の障壁(薬物体内動態): 低い血中濃度(高クリアランス)、低吸収率、副作用・相互作用 「クスリの宅配便」 適切な時間に必要量だけクスリを送り届ける 創薬技術の進歩は目覚ましく、短期間に有用な生物活性を持 つ化合物を見いだすことが可能となったが、生体内への吸収率 が低く、速やかに分解を受けるクスリも多い。また、重篤な相互 作用や副作用を招く例も後を絶たず、慎重なクスリの投与が求 められている。そこで、クスリを目的部位に送り届け(ターゲティン グ)、その送り込み速度を制御する(コントロールドリリース)機能 を持つ新しい概念の製剤設計が提唱され、クスリの生体内での 動きを精密にコントロールするドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System DDS, 薬物送達システム)と呼ばれる新しいクス リの投与形態が生まれ、最適な治療効果をあげている。DDSは、 宅配便が個人宅に品物を指定時間に届けるように、クスリを指 示通り正確に、適切な時間に必要量だけ、生体内の作用点に送 り届ける運搬システム「クスリの宅配便」に例えられる。 様々なオプションを備えた『薬の宅配便』 飲み薬 注射薬 貼り薬 時間 適量 吸 安 収 定 薬の宅配便 DDS号 速 効 徐 放 作用部位 その他の部位 DDSの分類 1 放出制御 3 体内分布の制御 (a) リザーバー型 (b) 高分子マトリックス型 (c) 拡散以外の駆動力利用 (a) (b) (c) (d) (e) 2 吸収改善 (a) 代謝・分解の防止 (b) 吸収促進剤 (c) プロドラッグ化修飾 標的指向型プロドラッグ 各種キャリアー 外部からの誘導・活性化 投与経路の工夫 代謝・排泄の抑制 4 遺伝子治療 (a) 遺伝子診断 (b) 遺伝子デリバリー DDS導入が必要な疾患 日本で実用化されたDDS ※ コントロールドリリース ※ プロドラッグ(吸収・安定性) L:long R:release Ⅰ-1 放出制御 (コントロールドリリース) 有効な薬物治療のためには、薬物を作用部位に適切な濃度- 時間パターンで送り込む必要がある。コントロールされた速度で薬 物を供給できる放出制御型製剤の開発が、活発に進められている。 一般には、一定速度での放出(0次放出)が目標。 薬物の放出制御はDDSに要求される重要な機能の一つであり、 薬物の血中濃度を必要な期間治療域濃度に保ち、薬物の治療効 果を最大にし、副作用を軽減させる。また、薬物の投与量・投与回 数を最小にし、コンプライアンスを向上させることができる。 ※ 0次放出 ※ 服薬遵守 QOL向上 放出制御型DDSの分類 薬物の放出原理: ・ 拡散過程による薬物の放出制御 ・ 拡散以外の物理化学的駆動力を利用した放出制御 (a) リザーバー(拡散制御膜)型 (b) 高分子マトリックス型 ※ 母体、基盤 (a) リザーバー(拡散制御膜)型 薬物を高分子などの放出制御膜で包みこみ、薬物の放出速度 を被膜の物性(半透膜性などの膜透過性)で決めるシステムであ る。包まれる薬物は固体が多いが、半固体や液体もある。コー ティング法やマイクロカプセル化法によって製造。 高分子マイクロカプセル: アスピリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩化カリウム、テ オフィリンなどを高分子膜でマイクロカプセル化し、持効性や徐放 性の経口製剤とする。アスピリンや塩化カリウムのマイクロカプセ ルでは、胃腸障害を軽減。 生体内分解性高分子マイクロスフィアによる 皮下・筋肉注射型システム: LHRHアゴニストである酢酸リュープロレリン(リュープリン®)を、 生体内分解性高分子、乳酸・グリコール酸共重合体のマイクロス フィア(平均粒子径約20 µm)に封入したシステム(Lupron depot®) が有名である。薬物は筋注後、高分子が徐々に分解することによ り4~5週間一定速度で放出される。前立腺癌の治療において、 薬物が水溶液の場合は毎日注射する必要があるが、本システム を用いれば月に1回の投与で済む。 ®:登録商標 リュープリン® 酢酸リュープロレリンの作用 LHRH (luteinizing hormone-releasing hormone) :黄体形成ホルモン放出ホルモン LHRHアゴニスト: 前立腺癌の病状進行を防ぐ 逆調節 テストステロンのレベルを低下 リュープリン®・テストステロン濃度
© Copyright 2024 ExpyDoc