第5回講義 マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌 11月4日 消費と総需要 ケインズ型消費関数のもとでの 有効需要の原理 11月4日 ケインズの消費関数 • 短期的な所得と消費には次のような関係 が観察されている。(ケインズの消費関 数) C=A+c・YD • C: 消費支出額(計画された消費) • A: 基礎消費 • c: 限界消費性向 • YD: 可処分所得 YD≡YーT (T=0ならばYD=Y) 11月4日 限界消費性向と平均消費性向 • c 限界消費性向=追加的可処分所得の 増大によって増える消費の割合 • c=消費の増分/可処分所得の増分 • ケインズ型消費関数では一定の値で0か ら1の間の数値をとると仮定されている。 0 < c < 1 11月4日 • 平均消費性向は可処分所得一単位あたり の消費をさす。 • 平均消費性向=C/YD • ケインズ型消費関数のもとでは平均消費 性向は常に限界消費性向より大きく、かつ 可処分所得の増大とともに減少する。 • C/Y= (A+c・YD)/YD = c+A/YD 11月4日 C(YD) A c YD1 11月4日 YD 可処分所得がYD1のときの平均消費性向 総需要関数 • 経済には消費者と生産者しかいない(政 府と海外部門はない、T=G=NX=0)と想 定しよう。 [すなわちYD=Y] • (計画された)投資支出は I で一定である 仮定する。 • このとき、所得水準Yのもとでの、計画さ れた総需要は以下のようになる。 AD(Y) ≡ C(Y)+I=A+c・Y+I 11月4日 AD(Y) A+I c Y 11月4日 均衡生産量と均衡所得の決定 • 有効需要の原理で述べたように、均衡生産 量は総需要に等しくなるように決定される。 すなわち、均衡生産量Y*は、以下の等式を みたす総生産水準である。 Y*=AD(Y*) (8) =C(Y*)+I (8 ‘) =A+c・Y*+I (9) • 均衡生産量Y*は均衡所得として分配さ れる。 11月4日 均衡生産量と均衡所得の決定 AD(Y) A+I 45度線 c Y* 11月4日 Y 貯蓄投資の均等化条件 • また、(8)式からから計画された消費を差し引 くと次を得る。 Y*-C(Y*) =AD(Y*)-C(Y*) S(Y*) = I (11) • すなわち、均衡生産の決定条件(8)式は上記 の、計画された貯蓄=投資という条件(11)式 でも表現できる。 11月4日 貯蓄関数のグラフ • S(Y) =Y-C(Y) = Y-A-cY =-A+(1-c)Y • (1-c) は限界貯蓄性向と呼ばれている。 S(Y) Y ー( A+I ) 11月4日 1-c 貯蓄投資の均等化条件の図 S(Y) S(Y) I 0 Y Y* ー( A+I ) 11月4日 1-c 乗数効果 11月4日 独立支出と均衡総生産量 • (9)式に示される、均衡総生産について解くと、 以下を得る。 Y*=[ A+I ]/(1-c) • [ A+I ]は計画された総需要AD(Y)のうち、所 得に依存しない独立支出とよばれるものであ る。それはここでは、基礎消費と投資支出か らなっている。いま、独立支出をAで表すこと にしよう。 11月4日 独立支出の乗数効果 • 独立支出AをΔA単位増大させたとき、均衡生産水準 Y*はどれだけ増大するか? • 増大した独立支出A+ΔAのもとで、均衡生産水準は [A+ΔA]/(1-c)になる。これか増大前の独立支出Aのも とでの均衡生産水準をさしひくと、 [A+ΔA]/(1-c)-A/(1-c)=ΔA/(1-c) となる。すなわち、 ΔA単位の独立支出の増大はその 1/(1-c)倍の総生産の増大をもたらす。 11月4日 独立支出の乗数効果 • 1/(1-c)は独立支出乗数と呼ばれる。 • 特にΔAが投資の増大による場合、 1/(1-c)は投資乗数と呼ばれる。 11月4日 独立支出Aの拡大と乗数効果 S(Y) S(Y) I -ΔA 0 Y Y* ー(A+I ) 1-c ΔA/(1ーc) ー(A+ΔA+I ) 11月4日 独立消費Aの拡大と乗数効果 AD(Y) 45度線 ΔA A+ΔA+I A+I c Y Y* 11月4日 ΔA/(1ーc) 政府部門の導入 11月4日 政府部門 • 政府部門は所得税TAを徴収し、 国民に移転し支払いTRを支払 い、政府購入Gを支出する。 • 所得税率をtとすると、 TA=tY となる。 • 可処分所得は Y+TRーTA 11月4日 である。 均衡総生産の決定 • このとき、計画された総需要は以下のように なる。 AD(Y)≡C(Y+TR-TA)+I+G =A+c・(Y-TR- t・Y)+I+G • したがって、均衡生産水準Y*は以下の式で 決定される。 Y*= C(Y*+TR- t・Y*)+I+G (20) =A+c・(Y*-TR- t・Y*)+I+G (20’) 11月4日 均衡総生産の決定(続き) •(20)式を書き換えると次のようにも 表せる。 Y*-C(Y*+TR- t・Y*)‐G = I Y* +TR- t・Y* -C(Y*+TR- t・Y*) +t・Y* -TR‐G = I Spvt(Y*)+Sgovt(Y*)= I S(Y*)= I 11月4日 均衡総生産と乗数 • (20’)式を均衡総生産Y*について解くと 次を得る。 Y*=[A+c・TR+I-G]/[1-(1-t)c] • すなわち、政府購入Gを独立に一単位 増大させたときの均衡総生産の増加は 1/[1-(1-t)c]である。 • これは政府購入乗数と呼ばれている。 11月4日 均衡予算乗数 • 均衡予算:政府の税収と支出[購入と移転支払い]が 税収と等しいとき、均衡財政がはかられている。 TR+G=t・Y • 均衡予算がはかられているとき、(20‘)式は以下のよ うになる。 Y*=A+c・(Y*-G)+I+G • したがって、均衡予算のもとでの均衡総生産は以下 のように計算される。 Y*= G+[A+I]/(1-c) • 均衡予算の下での政府購入乗数は1である。(Gの 一単位の増大は一単位の均衡生産量増大をもたら す) これを均衡予算乗数という。 11月4日
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