セキュリティ資源としての多言語教育 ~ミス・コミュニケーショ ン・コーパスの 構築へ向けて~ 砂岡和子(早稲田大学政治経済学術院) (07/12-08/03 NICT特別研究員) 言語グリッドミーティング報告 於COCON烏丸(京都四条)2008/02/22 目次 多言語教育は必要か? 早稲田大学多言語異文化交流の取り組み アジア4校間中国語Chat交流 アジア6大学遠隔学生TV会議 遠隔語学チュートリアルプログラム 異文化コミュニケーション障害の克服法 言語グリッドプロジェクトへの期待 多言語教育は必要か? 現地適応型ビジネス、外交、社交の手段 研究、調査の言語ツール 西欧中心的価値観脱構築の入り口 自己相対化の鏡 “多” 言語より“多元”学習 セキュリティ資源としての多言語教育 安寧と自尊心は基本的セキュリティ資源 民族アイデンティティの理解 地域共通課題への共感醸成 地域固有語による送受信有効 早稲田大学生中国語履修目的 2005年度「チュートリアル中国語」アンケート 上級受講生26名 複数回答可(回答率74.3%) 英語以外の早稲田大学語学科目 (各学部設置を除く) 2007年度全学オープン語学科目 計22語種[499コース] アイヌ語[5] 、アイルランド語[1] 、アラビア語[6] 、 イタリア語[18] 、インドネシア語[3] 、スペイン語 [55] 、スワヒリ語[1]、タイ語[4] 、タガログ語[1] 、 中国語[116] 、朝鮮語[38] 、デンマーク語[2] 、 ドイツ語[118]、バスク語[1]、フランス語[80] 、ベトナ ム語[2] 、ペルシア語[1] 、ポーランド語[2] 、ポルト ガル語[2] 、モンゴル語[2] 、ルーマニア語[2] 、 ロシア語[39] 不足と感じる語学力 2005年度後期「チュートリアル中国語」 アンケート上級受講生26名(回答率74.3%) Asian Cyber College構想 産学共同によるアジア地域大学間交流と授業コンテンツ流通促進 早稲田大学デジタルキャンパスコンソーシアム(DCC)作成 早稲田大学 CCDL - Cross-Cultural Distance Learning 英語・中国語・日本語・韓国語・ドイツ語による交流校 2007年度参加大学抜粋[2003年以降累積21ケ国、60大学、年間約800回開催] 高麗大学(韓国) ノッティンガムトレント大学(イギリス) 江原国立大学(韓国) エジンバラ大学(イギリス) デ・ラ・サール大学(フィリピン) エセックス大学(イギリス) マラヤ大学(マレーシア) ユタ大学(アメリカ) シンガポール国立大学(シンガポール) コロラド大学(アメリカ) SEAMEO RELC(シンガポール) シラキュース大学(アメリカ) ハワイ大学マノア校(アメリカ) ハワイ大学ヒロ校(アメリカ) タマサート大学(タイ) 極東大学(ロシア) 首都師範大学(中国) 北京大学(中国)、清華大学(中国) 復旦大学(中国) バプティスト大学(香港) 国際交流基金(オーストラリア) 台湾大学、台湾師範大学、淡江大学、元智大学 ブルネイ大学(ブルネイ) キール大学(ドイツ) モナシュ大学(オーストラリア) ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア) オークランド大学(ニュージーランド) ザイド大学(UAE) 早稲田大学CCDL 支援体制 早稲田大学デジタルキャンパスコンソーシアム(DCC)作成 アジア4校間、中国語Chat交流 2003-2005年 早稲田 Cu-SeeMe 中国語交流組織図 文学部 高麗大学 PC 端末 3 台 3 号館 306 室 教育学部 16 号館 510 室 政経学部 3 号館地下 PC 室 台湾師範大学 PC 端末 3 台 首都師範大学 PC 端末 3 台 Chat交流用言語ツール Windows98 CuSeeMe 米国 WhiteAppel社製ソフト 中国語入力 オムロン(株) cWnn ↑中韓へ配布(現在はBi`ZMate Web経由) 翻訳辞書 高電社(株) J-Server 参照辞書 卓上電子辞書、書籍辞書 翻訳通訳支援 TA、教員 アジア3校同時チャット 実践例(a) 国際舞台へ夢 <------- CCDL Conference [3] Friday, November 28, 2003 16:33:07 -------> Korea-c2: 听说waseda也非常难考 CNU#1: 在韩国,考大学也很难么?我以为只有中国的大学难考,因为人很多啊 Waseda PSE-#1-C: 最近不太难啊 Korea-c2: 韩国,日本,中国的大学难考差不多 CNU#1: 是么?早稻田好像是唯一一个在中国设考场的大学 Waseda PSE-#1-C: 大家,将来想做什么呢? CNU#1: 大家方便留个e-mail么? Waseda PSE-#1-C: 对来我说,为了学会汉语去中国留学 Waseda PSE-#1-C: 还要去美国留学 CNU#1: 我啊,相当外交官,不过,我要真当上了外交官,第三次世界大战就不远了 Korea-c2: 我希望国际法官。 Korea-c2: 那么, 我们交换e-mail怎么样? アジア3校同時チャット 実践例(b) アジア文化情報の共有 <------- CCDL Conference [1] Friday, November 28, 2003 16:02:19 -------> CNU-7: 你们喜欢听王菲的歌曲吗? Korea-c2: 我喜欢 Waseda Lit-#3-C: 我也 Korea-c2: 她很棒 Waseda Lit-#2-C: 我也喜欢 CNU-7: 她出了新的cd Korea-c2: 怎么样? CNU-7: 名字叫《将爱〉 Korea-c2: 好听吗? Waseda PSE-#2-C: 我喜欢他的eyes on me CNU-7: 非常好听 Korea-c2: 是啊! チャット交流による成果 1. 支援組織体制の整備 遠隔教育センター立ち上げ TA、学習コーチのサポート体制整備 学内語学スクール設立と学外機関との授業提携 2.海外提携大学教員間の協同促進 3.学生の学習動機増強 中国語Tutorial口語運用プログラム開設 中国語情報処理能力向上(聴説読写+打!) 4.学習記録の情報処理と科学的分析 チャット交流の課題 1. 交流組織維持の負担 交流時間調整に苦労 誹謗応酬の調停 教員、TAのサポート負担大 2.音声交流の要望大 3.非母語、L2学習者の言語力限界 4.言語翻訳ツールの精度、結果提示速度不足 日中韓遠隔TV会議 アジア6大学共同異文化交流授業 「アジア学生ネットワーク」 2002年ー2008年現在に至る 高麗大学 北京大学、清華大学 早稲田大学 台湾師範大学 慶応大学SFC アジア6大学遠隔TV会議の運営 隔週、中国語/日本語で開催 年平均20回 2002年から通算80回 サーズ、西安日本人寸劇事件、台湾総統 選時、北京側欠席 学生による自主運営 ■ 開催日程・議題選定・資料作成・司会輪番 電子メイル・BBSで連絡(中国語/日本語) 日中韓遠隔TV会議 アジア6大学共同異文化交流授業 左上から時計回りで早稲田大学、台湾師範大学、高麗大学、 慶應義塾大学、北京大学、清華大学 早稲田学内遠隔授業用施設 授業用テレビ会議室 1)Live on&Polycom使用可 2)Live on のみ 3)Polycom (テレビ会議)のみ 5教室 3教室 11教室 計19教室 2007年早稲田遠隔授業回数 各機器接続回数 1)Polycom 総接続回数 687回 2)早稲田学内利用接続回数 151回 計838回 内、異文化交流と語学学習が主目的の接続 概数 3分の1(使用言語英語8割、その他2割) 中国語交流用言語ツール 同時通訳支援 TA&教員 参照辞書 卓上電子辞書 Mail、BBSへの中国語入力 Windows Global IME Web翻訳辞書 高電社(株) J-Server ライセンス契約 遠隔学生TV会議の議題 盛り上がった議題(2004-2007年より抜粋) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 インターネット事情 携帯電話の使い方 校則・制服の是非 各国恋愛事情 できちゃった結婚 男女間の友情・同居 堕胎について 酒とタバコ 北京オリンピック 外国へのステレオタイプな印象 遠隔学生TV会議の議題 意見対立する議題(2004-2007年より抜粋) 1 2 3 4 5 6 格差社会 環境 教育 著作権問題 日中報道 台湾問題 地球市民としての共通課題 雪害で京珠高速道路湖南地区に滞留中のトラック 人民日報社より コミュニケーション障害の要因 異文化背景に起因する要因 ○母集団社会の文化、教育に根差した思考 ○ Media propaganda、Stereotypeな固定観念 言語的要因 ○語学力不足 ○Interactiveな口語教育不十分 例;発言権取得、終了時の言語方略 →データで可視化必要 異文化コミュニケーション支援 討論に耐える語学力の養成 極少人数会話クラス[チュートリアル中国語学 習プログラム]の創設 オンデマンド中国文化講座シリーズ作成 CALL、Web教材による自律学習 基礎語学スキルの向上 中国語Tutorial授業(対面型) 中国語Tutorial授業(遠隔型) 台湾師範大学から 毎週中国語レッスン配信 ■ 北京大学から 毎週中国語レッスン配信 ■ 2007年遠隔語学チュートリアル授業回数 Business Tutorial English(超上級) アデレード大学 チュートリアル中国語上級(遠隔) 北京大学、台湾師範大学 年間約300回実施 内、英語約200回 中国語約100回 異文化コミュニケーション 語学学習支援プログラム 携 帯 電 話 CALL HomePage 成績管理データ、教案データ、討論BBS 異文化理解オンデマ ンド講座シリーズ Call drill テキスト課文、声調 聞き取り練習 練習問題コーパス Tutor Report Call drill 語法練習 語法コーパス LessonText WebWriting 作文練習 作文添削コーパス ミスコミュニケーショ ン支援プログラム テーマコーパス チュートリア ル中国語学 習プログラ ム 遠隔異文化 交流プログ ラム 語学スキル向上用ツール① CALL声調自習プログラム 比企静雄、砂岡和子、劉松(早稲田大学)作成 中国語合成音声利用のWebText ② (a)fast (b)middle (c)slow (d)slow+pause (e)ローマ字注音、漢字、声調波形図 富士通研究開発中心(北京)作成 Drill Mobile Telephone③ Sign in page Select excises Drill start 劉松(早稲田大学国際情報研究科院生) 作成 WEB作文添削④ レベル別出問・概念マーク付き 学習履歴管理サイト⑤ オンデマンド中国異文化理解講座シリーズ⑥ 「農業と環境から見る中国」 (中国語版&日本語版) 2007年度早稲田オンデマンド講義総数 通学制実績(「科目-クラス」数) ・パーフェクトオンデマンド(授業に関わる講義・試験な どすべてをオンデマンドで行う科目) → 61講義 ・フルオンデマンド(通常講義はすべてオンデマンドだ が、ガイダンスや試験などは教場実施) → 56講義 ・ハイブリッド(教室授業と、オンデマンド授業とを併用 して行う科目) → 301講義 ・ 合計 418講義 オンライン・コミュニケーション支援の難点 動画記録の再生、分析、加工が煩雑→単発 SuperAdviserの不在→啓発、内省の機会少 Interactiveな口語指導基準不足 対策 遠隔会議録画のオンデマンド化 2002年-2008年1月 約60本 計100時間余 過去録画の閲覧と相互注記、分析 談話分析と研究 学生遠隔会議録画の蓄積とオンデマンド化 異文化背景に起因するコミュニケーション障害要因 ○母集団社会の文化、教育に根差した思考 ○ Media propaganda、Stereotypeな固定観念 →単発、同一価値観集団交流では無理 →異文化集団相互の観察、内省、啓発有効 →データによる可視化有効 専門家によるコミュニケーション障害コメントフォーマット(旧版) 目次(障害キーワード) キーワード説明 1 相手への呼応 聞き取れたか、理解できたかが相手に伝わらない。 2 沈黙 10秒以上言葉を発せず不安になる。 3 言い淀み(Filler) 言葉の間に「えー」「あー」「んー」などの音を多く使いすぎる。 4 発話開始(Turn取り) 発言交代の開始が不明、または唐突に話を始める。 5 発話区切り 発言の終わりがわからない。 6 語調 語調が威圧的であったり、イントネーションの間違い。 7 待遇表現 丁寧さの異なる言葉を混用、または応答がくだけすぎている。 8 発言態度 相手にとって理解困難な笑いや、ゼスチャー。公衆の場にふさわ しくない姿勢や身なりなど。 分析協力 日本語研究科講師 恵谷容子・飯島美知子先生 専門家の談話分析結果(旧版) 海外の政治的言動に敏感な中国 地域民族主義に敏感な北京・韓国・台湾 圧倒的言語力求める台湾・中国 発言の論理性要求する台湾・中国 語気、語彙の選択に保守的な台湾 外来語の混用嫌う台湾・中国 よそ見、髪いじり、腕組み、頬杖、照れ笑いなど をマイナス評価する言語専門家・北京・台湾 専門家の談話分析に対する参加学生の反応 学生BBS投稿から(1) 普段、自分を相対化し客観的に分析するというのは 容易なことではないと思う。 自分たちが行っている会議の様子を改めて映像で 見ると、「俺ってこんなの?(゜0゜)」と頬を打たれる 気分になる。 腕組みや、髪をいじるなど行為はそこまで目くじら立 て、不快を感じるほどではなかった。 テレビ画面は発言者の生のライブ感が伝わりにくい 。これがもし面と向かった会議ならば、「おい、ちょっ と」と指摘したい気分になるかもしれない。 建設的アドバイス求める学生 BBS投稿から(2) 否定的なコメントが多いと感じる。 専門家だからこそプラス志向の矯正法を提示して欲し いと思う。 専門家による指摘が原因で双方の関係が拗れてしまう とすれば、少し残念な気がする。 TV会議の趣旨は相互の語学交流であり、折り目正しく 話すことが主ではない(と勝手に理解しているだけです が...)。 普段気にしていない動作や潤滑剤だと思った笑顔や間 も、専門家は礼儀がないだとか語学力に欠けると位置づ けている。全てを改善する必要はない。 異文化背景に起因するコミュニケーション障害の克服 母集団社会の文化、教育価値観の相対化 Media への批判力育成 Stereotypeな固定観念の打破 →遠隔異文化交流で、異文化集団からの発言、 指摘により文化の相対性に気付き →人材国際移動による母集団内の異文化者の 存在を認識 →多文化相克中の“身内” の指摘、最も効果的 ミス・コミュニケーション学習支援プログラム 自覚難しい文化的背景、ノンバーバル、 パラ言語障害の可視化 相互注記による交流障害の認知 動画アノテーションツール開発 音声、動画でコメント挿入 個人情報処理後、 談話コーパス公開 日中韓遠隔TV会議談話コーパスの開発 動画アノテーションツールELAN (EUDICO Linguistic Annotator) 談話コーパスによるNS対NNS発話長比較 NS 嗯 |我 |我 |在之前 |也参加过一些 |就是 |这种 |就是 || 志愿者活动 ||| 我 |过去 |我| 经历一个 ||打工 |||你们 |知道吗?|啊 Disney セキュリティ資源としての多言語教育 アジアは多言語使用地域 英語は共通語として便利 地域の固有言語も盤石 各国、グローバル対応の多言語政策強化 例;中国孔子学院、韓国世宗学院 台湾英語公用化論、台湾語の普及 日本の言語政策は? 多言語教育のコスト 非メジャー言語は教育コスト大 機械翻訳で代替? 語学習得には実践体験不可欠 一定数の言語スペシャリスト養成 対面交流の質量保障 電脳技術と相互補完し付加価値創出 言語グリッドプロジェクトへの期待 グローバル対応の多言語政策推進 自分が寄与できそうなこと 異文化交流支援人材育成 異文化交流評価 談話データ蓄積と分析 日中機械辞書翻訳 NICT言語グリッドプロジェクトHPより ご静聴ありがとうございました。 砂岡和子 言語グリッドミーティング報告 於COCON烏丸(京都四条)2008/02/22
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