第3回講義 - Faculty Server, Faculty of Economics, Keio

第9回講義
マクロ経済学初級I タイプIIクラス
海外部門
国内
政府
消費
輸入
政府購入
輸出
総生産
GDP
財・サービス市場
生産者
家計
利
子
所
得
投資
労働
生産への
土地
投入 賃金・地代・利潤
要素 資本
所得
生産要素市場
貯
蓄
労働・資本
貸し出し
金融市場
資産市場
借り入れ
利払い
消費関数と総需要
ケインズ型消費関数と
有効需要の原理による生産水準決定
ケインズの消費関数
• 短期的な所得と消費には次のような関係が観
察されている。(ケインズの消費関数)
C=A+c・YD
•
•
•
•
C: 消費支出額(計画された消費)
A: 基礎消費
c: 限界消費性向 0<c<1
YD: 可処分所得 YD≡Y+TRーT
(T=TR=0ならばYD=Y)
貯蓄関数
• 民間貯蓄は所得から消費支出を差し引いた
残りとして定義される。
• 民間貯蓄関数は以下のように定義される。
Spvt(YD) ≡ YD-C(YD)
=-A+(1-c)・YD
• (1-c)は限界貯蓄性向と呼ばれる。
• Spvt (YD)は可処分所得水準YDの下での計
画された民間貯蓄である。
貯蓄関数
• 政府貯蓄は税収から消費支出を差し引いた
残りとして定義される。
• 民間貯蓄関数は以下のように定義される。
Spvt(YD) ≡ YD-C(YD)
=-A+(1-c)・YD
• (1-c)は限界貯蓄性向と呼ばれる。
• Spvt (YD)は可処分所得水準YDの下での計
画された民間貯蓄である。
貯蓄関数
• 政府貯蓄は
政府収入-政府支出(政府購入+移転支出)
Sgvt≡T-G-TR
として定義される。
• 民間貯蓄と政府貯蓄の和が国民貯蓄Sである。
S(Y)= Spvt(YD)+ Sgvt=Y+TR-T-C(YD)+T-G-TR
S(Y)=Y-C(YD)-G
総需要関数
• 経済には消費者と生産者しかいない(政府と海
外部門はない、T=TR=G=NX=0)と想定しよう。
• (計画された)投資支出は I で一定である仮定
する。
• このとき、所得水準Yのもとでの、計画された総
需要は以下のようになる。
AD(Y) ≡ C(Y)+I=A+c・Y+I
(次図参照)
AD(Y)
AD(Y)
c
A+I
Y
均衡生産量と均衡所得の決定
• 有効需要の原理で述べたように、均衡生産
量は総需要に等しくなるように決定される。
すなわち、均衡生産量Y*は、以下の等式をみ
たす総生産水準である。
Y*=AD(Y*)
(1)
=C(Y*)+I
(1 ‘)
=A+c・Y*+I
(2)
• 均衡生産量Y*は均衡所得として分配される。
Y=AD(Y)
AD(Y)
AD(Y)
c
A+I
45゜
Y*
Y
貯蓄投資の均等化条件
• また、(2)式からから計画された消費を差
し引くと次を得る。
Y*-C(Y*) =AD(Y*)-C(Y*)
S(Y*) = I
(3)
• すなわち、均衡生産の決定条件(1)式は
上記の、計画された貯蓄=投資という条
件(3)式でも表現できる。(次図を参照せ
よ)
S(Y)
S(Y)
I
1-c
Y*
-A
Y
乗数効果
独立支出と均衡総生産量
• (9)式に示される、均衡総生産について解くと、
以下を得る。
Y*=[ A+I ]/(1-c)
• [ A+I ]は計画された総需要AD(Y)のうち、所
得に依存しない独立支出とよばれるものであ
る。それはここでは、基礎消費と投資支出か
らなっている。いま、独立支出をBで表すこと
にしよう。
独立支出の乗数効果
• 独立支出BをΔB単位増大させたとき、均衡生産
水準Y*はどれだけ増大するか?
• 増大した独立支出B+ΔBのもとで、均衡生産水
準は[B+ΔB]/(1-c)になる。これか増大前の独
立支出Aのもとでの均衡生産水準をさしひくと、
[B+ΔB]/(1-c)- B/(1-c)=ΔB/(1-c)
となる。すなわち、 ΔB単位の独立支出の増大
はその1/(1-c)倍の総生産の増大をもたらす。
独立支出の乗数効果
• 1/(1-c)は独立支出乗数と呼ばれる。
• 特にΔBが投資の増大による場合、
1/(1-c)は投資乗数と呼ばれる。
政府部門の導入
政府部門
• 政府部門は所得税TAを徴収し、
国民に移転し支払いTRを支払
い、政府購入Gを支出する。
• 所得税率をtとすると、
TA=tY
となる。
• 可処分所得は
Y+TRーTA である。
均衡総生産の決定
• このとき、計画された総需要は以下の
ようになる。
AD(Y)≡C(Y+TR-TA)+I+G
=C+c・(Y+TR- t・Y)+I+G
• したがって、均衡生産水準Y*は以下の
式で決定される。
Y*= C(Y*+TR- t・Y*)+I+G
(20)
=C+c・(Y*+TR- t・Y*)+I+G (20’)
均衡総生産の決定(続き)
• (20)式を書き換えると次のようにも表せ
る。
Y*-C(Y*+TR- t・Y*)‐G = I
[Y* +TR- t・Y* -C(Y*+TR- t・Y*)]
+[t・Y* -TR‐G] = I
Spvt(Y*)+Sgovt(Y*)= I
S(Y*)= I
均衡総生産と乗数
• (20’)式を均衡総生産Y*について解くと
次を得る。
Y*=[A+c・TR+I-G]/[1-(1-t)c]
• すなわち、政府購入Gを独立に一単位
増大させたときの均衡総生産の増加は
1/[1-(1-t)c]である。
• これは政府購入乗数と呼ばれている。
均衡予算乗数
• 均衡予算:政府の税収と支出[購入と移転支払い]が
税収と等しいとき、均衡財政がはかられている。
TR+G=t・Y
• 均衡予算がはかられているとき、(20‘)式は以下のよ
うになる。
Y*=A+c・(Y*-G)+I+G
• したがって、均衡予算のもとでの均衡総生産は以下
のように計算される。
Y*= G+[A+I]/(1-c)
• 均衡予算の下での政府購入乗数は1である。(Gの
一単位の増大は一単位の均衡生産量増大をもたら
す) これを均衡予算乗数という。