Voronoi Game on Graph and its Complexity 寺本 幸生 上原 隆平 (JAIST) ボロノイゲーム 競争施設配置問題の理想化されたモデル 競争施設配置の例 – – – – 競争している2人のチェーン店(コンビニなど)の経営者 B, R が、それ ぞれ n 個のお店を新たに開店しようと計画している。 消費者は最寄のお店を常に利用する。 経営者 B, R は交互にお店を開店していく (B が最初にお店を開店)。 このとき、相手より多くの収益(商圏の面積)を得るためには、どのよう な戦略でその n 個のお店を配置すればよいか? 目的と関連研究 目的: – ゲームモデルにおいて、先攻Bと後攻Rのどちらかに優位性があるの かを調べる。もしあるなら、その必勝戦略を与える。 関連研究: – 1次元の連続区間(線分,円周)上のボロノイゲーム Ahn らにより、後攻Rの必勝戦略が示されている。 また、離散的なモデル(パス,サイクル)では必ず引き分けると結論。 必ず引き分けるとは限らない! 離散モデルは議論の余地がある – 2次元の連続領域内(矩形領域)のボロノイゲーム どちらかに優位性があるかどうかは未解決。 木構造のようなグラフ上のボロノイゲームは自然な拡張。 (パスやサイクルに対してより2次元に近づいているという意味で) グラフG上のボロノイゲームVG(G, n) プレイヤーBとRが交互に頂点を占領していき、それぞれ n 個ずつ頂点を 占領したらゲーム終了。(Bが先攻) 例: 10x10のグリッド点のランダム全域木 2頂点間の距離:最短路上の辺の個数 50 プレイヤーBが占領した頂点。 プレイヤーRが占領した頂点。 このとき、各頂点は近接関係により 3つのタイプに分けられる。 • B に支配されている(近い)頂点 • R に支配されている(近い)頂点 • 両プレイヤーに支配されている頂点 44 最終的に、完全に支配している頂点数 により勝敗が決まる。 グラフ上のボロノイゲームでの目的(1) Ahnらの主張が成り立たない場合が存在することを示す。 先手が必ず勝つような場合がある。(完全 k 分木を例に) – – ラウンド数の少ない場合と 大きな完全 k 分木を例に、先手に対する必勝戦略を示す。 完全 k(>1) 分木上のボロノイゲーム 完全 k 分木: – – 全ての内部頂点はちょうど k 個の子を持ち、 全ての葉は同じレベルにある根付き木。 k ラウンド数が少ない(k 2n)場合: 先攻が有利 k 鳩ノ巣原理より、少なくともひとつは 誰にも占領されていない根の子が 存在する。 k<2n の場合 k が奇数でかつ kh < 2n < kh+1 を満たすレベルh が存在し、k 分木 T が 十分大きいとき、先攻は必勝戦略を持つ。 (実際は、2h 以上のレベルを持つような k 分木を仮定する) 2 グラフ上のボロノイゲームVG(T, n) における必勝戦略 ゲームフィールド T のサイズとラウンド数 n の関係により 必要に応じて戦略を変えなければならない。 キーレベル戦略 キーレベル h 上の頂点の個数 kh と ラウンド数 n の関係式 2n / kh > a (=1 + 2/k – 1/(k–1) ) かどうかにより戦略を変える。 kh と 2n がほぼ等しいかどうかで場合わけを行う。 2n > a kh の場合 戦略: レベル h 上の頂点をできるだけ多く取る 各家族の少なくとも一つの頂点は占領する レベル h 上の頂点をより多く制した方が勝つ Bはレベル h の半分より多くの頂点を占領できる 2n a kh の場合、キーレベルに固執すると負ける… 2n a kh の場合の戦略 最初に、キーレベルの1つ上のレベル h–1 の頂点をできるだけ多くとる。 キーレベルのまだいずれのプレイヤーに取られていない頂点vに関して、 その親が後手に取られているなら、v をとる。 レベルh+1の頂点についても、同じような戦略でとっていく。 このとき、先手の利得は後手の利得より少なくとも 2(kh – 1) / (k – 1) より多くなる。 k<2n の場合(2) k が偶数でかつ kh 2n < kh+1 を満たすレベルh が存在し、 k 分木Tが十分大きいとき、 両者が最善を尽くすと必ず引き分ける。 後攻Rは先攻 B の対称手を打てるので、負けることは無い。 Q. 後攻Rは必勝戦略を持つか? A. No. キーレベル戦略により、Bはレベルh上の頂点を 少なくとも半分は占領することができる。 最終的な利得としてRと同数の頂点を支配できる。 グラフ上のボロノイゲームでの目的(2) 一般のグラフ上でのボロノイゲーム VG(G, n) において、 必勝戦略が存在するかどうかを判定する問題の困難性について. 1-ラウンドボロノイゲーム 1-VG(G, n): 先手が、最初に n 個の点を置き、その後で後手が n 点置くような、 制限されたボロノイゲーム。 一般のグラフ上での1-ラウンドボロノイゲームに関して、後手が 必勝戦略を持つかどうかの判定問題がNP完全であることを示す。 Cheong et al. や Fekete et al. の2次元の矩形領域内の1-ラウンドゲーム について結果 後手が必ず先手の利得の 1+e 倍の利得を得る。 NP困難性 ある与えられた一般のグラフ上での1-ラウンドボロノイゲームに関して、 後手が必勝かどうかの判定問題はNP完全である。 – – – 各変数 xi に関して この問題がNPに属することは自明。 3SATからのリダクションを考える。 xi F : 3和積標準形の論理式 n : 論理式 F の変数の数 m : 論理式 F の項の数 i 各項 cj に関して 与えられた論理式 F からボロノイゲーム VG(G, n) の G を構成する。 項 cj がリテラル xi を含む xi x i cj x c’j cj 項 cj がリテラル xi を含む c’j つなぐ xi x i cj c’j つなぐ リダクションの例 後手は、少なくとも各変数 xi に対 応する頂点 xi+, xi- のいずれかを占 領しなければならない。 先手は、少なくとも 3n + m + 2n – 1 = 5n + m – 1 の利得を得る。 後手は、論理式 F を従属させるよう頂点を取ったとき、5n + m の利得を 得、かつこのときのみ先手に勝つことができる。 まとめと今後の課題 まとめ – 十分大きな完全k分木においては先攻 B の優位性を示し、その必勝 戦略を与えた。 – 一般のグラフ上の1-ラウンドボロノイゲームにおいて、後手が必勝戦 略を持つかどうかの判定問題はNP-完全。 今後の課題 – – – グリッド上のボロノイゲームの考察。(より実用的なモデルとして) 一般の木や k-tree, partial k-tree への拡張。 一般のグラフ上のn-ラウンドボロノイゲームの計算困難性について調 べる。
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