第6章 モータの基礎知識 サーボモータ ステッピングモータ ●モータ(アクチュエータ)の種類と特徴 ●モータの動作原理 ●モータ制御(パワーエレクトロニクス) ソレノイド 【研究紹介】 港湾内の環境保全を目指した 内航船舶用排熱回収システムの開発 排熱利用スターリングエンジン ●研究目的と概要 停泊している船舶のディーゼルエンジ ンから放出される排ガスが,港湾地域 の大気環境汚染の原因となっている。 東京湾 その対策は急務 ●停泊中の船舶による環境汚染 東京都環境局 東京港内の年間排出量推計 解決方法として・・・ 停泊中の発電用ディー ゼルエンジンを停止させ るシステム 陸上からの電力供給 年間34000隻が入港 自動車の約8倍! インフラ設備,導入コスト・・・ 排熱回収による発電・ 蓄電システム 低温排熱利用技術・・・ ●排熱回収システム 開発コンセプト ●必要最小限の電力を貯蔵する。 ●設置スペースが小さい。 ●既存船への設置が可能である。 ★2 kWで2日間の蓄電 ★10 kW×10時間の利用 ●システム構成 ●実験用スターリングエンジンの構造 仕様および目標性能 平成17年度に開発した実験用スターリングエンジン ピストン径 100 mm ストローク(DP) 36 mm ストローク(PP) 28 mm 定格ガス圧力 3~4 MPa 定格ガス温度 280~300℃ 定格回転数 1000 rpm 目標出力 500 W ヒータ管材質 銅合金 再生器 SUS製積層金網 クーラ管材質 SUS304 発電機 誘導式 ●実験用スターリングエンジンの構造 ●実験用スターリングエンジンの外観 ●ディーゼルエンジン排ガスによる運転 ディーゼル排気管 ●H18/9/22より運転 を実施中。 スターリングエンジン ディーゼルエンジン仕様 型式 MU323DGSC 立型4サイクル ディーゼルエンジン シリンダ数 3 シリンダ径 230 mm ストローク 380 mm 定格出力 350 PS (257 kW) 定格回転数 420 rpm ●実験結果の一例 ディーゼルエンジンのエネルギーバランス ●実験結果の一例 ●排熱エネルギーの回収効率 を上げるためには? ●システムを完成させるため には? スターリングエンジンのエネルギーバランス 第6章 モータの基礎知識 サーボモータ ステッピングモータ ●モータ(アクチュエータ)の種類と特徴 ●モータの動作原理 ●モータ制御(パワーエレクトロニクス) ソレノイド 6.1 モータとアクチュエータ モータ ①原動機,蒸気機関,内燃機関など動力発生機類の総称。 ②特に電動機。 ③「自動車の,内燃機関の」などの意味で複合語をつくる(モータ ショー,モータオイルなど)。 アクチュエータ ①機構の制御を行うための「動き」を生みだす部品。 ②コントローラによって制御される。 ③電気で動作するもの,油圧または空気圧で動作するものがある。 (1) 産業用機械のアクチュエータ NC工作機械 (2) ロボットのアクチュエータ 実験用魚ロボット ●アクチュエータ技術を利用した機械 工事車両 産業用ロボット 介助用機器 http://www.komatsu.co.jp/ アミューズメントロボット http://www.ecat.sony.co.jp/ 6.2 回転式モータの原理と特徴 ★フレミングの左手の法則 に従う電磁力を利用する。 ★直流モータと交流モータ は,アクチュエータ技術の 基本。 (1) 直流モータと交流モータ ●アクチュエータ技術の基本は,直流モータと交流モータ。 ●それらの構造・特徴を理解する。 (a) 交流モータ(ACモータ) (b) 直流モータ(DCモータ「) 産業用モータ (2) 直流モータ 直流モータの特徴 ●小型・高出力 ●電圧変化による出力 制御が容易 (a) 産業用直流モータ (b) 模型用直流モータ ●直流モータの基本原理 ●永久磁石とコイル,整流子で構成される。 ●フレミングの左手の法則に従って回転する。 ●実際のモータで は,コイルを増や して,どの位置で も駆動力が得られ るようにしている。 ●直流モータの構造 直流モータの内部構造 ●直流モータの構造 ●ケース内側に永久磁石 ●回転子に複数のコイル ●整流子とブラシで電流の方向を切り替える。 ●直流モータの問題点① ブラシで発生する火花(スパーク)によってノイズが生じる。 コンデンサによるノイズ低減 コンデンサによって,端子の交流成分(ノイズ)を吸収する。 ●直流モータの問題点② ブラシの摩耗により,保守が必要であり,信頼性が低い。 ステータ ロータ (ネオジウム磁石内蔵) ブラシレスDCモータ ブラシをなくした直流モータも普及しつつある。 ●直流モータの問題点③ マイコン等のデジタル信号による出力制御が難しい? ①専用素子や専用ドライバを使う。 ②トランジスタを使う。 次回製作 (3) 交流モータ 交流モータの特徴 ●大型化・大出力化が容易 ●構造が簡単で高信頼性 ●安価 一般に使われているのは, 交流誘導モータ (交流インダクションモータ) 産業用交流モータ (出力400W,減速機構付き) ●交流モータの種類 (a) 三相誘導モータ (b) 単相誘導モータ 交流には,三相と単相の2種類がある。 ●三相交流誘導モータの構造 固定子(コイル) 軸受 回転子 ●三相交流誘導モータの基本原理 三相交流 ● 複数のコイルに120°ずつずれた三相交流電圧を入 力することで回転磁界が生じ,回転力が得られる。 ●単相交流誘導モータの構造 回転子 固定子(コイル) コンデンサ ●単相交流誘導モータの動作原理 ●複数のコイルで構成されている。 ●コンデンサによって,一方のコイルの位相をずらすことで,回 転磁界が生じ,回転力が得られる。 ●交流モータの使用例 交流モータの問題 モータ 回転数・出力制御 が難しい。 モータ (a) ボール盤 (b) コンプレッサ用モータ ●産業分野や家電(扇風機や洗濯機)の汎用モータとして広 く使用されている。 ●交流モータの問題点① 回転数・出力制御が難しい。 汎用インバータと周辺機器 インバータによって回転数制御ができる。ただし,厳重なノイズ 対策が必要。 ●交流モータの問題点② 交流の電気を蓄えることはできないので,原則として商用電源が 必要となる。 市販インバータ (AC100V,3kW) ディープサイクル 鉛蓄電池 (12V 60Ah×18個 →10 kWh) 直流バッテリとインバータ インバータで直流を交流に変換する。 (4) モータの性能特性 直流モータの性能線図 ●電圧とトルク(負荷)によって,回転数や出力が変わる。 ●一般に,直流モータは一定電圧を与えたときの特性を表す。 ●直流モータのカタログ(参考) ●直流モータのカタログ(参考) 【補足】エンジンの性能特性 (a) エンジンの性能特性 (b) 自動車用エンジンの 性能曲線(カタログ) 6.3 サーボモータ ★回転角度制御・回転速度制御ができるモータ サーボ機構 回転速度や機械的な位置などの フィードバック制御系 サーボモータ サーボ機構に使用するモータ またはサーボ機構を使用したモータ ①正確な回転が必要な場合に使用される。 ②直流モータを利用したもの,交流モータを利用したものがある。 ③駆動力が比較的大きく,ロボットのアクチュエータとしてよく利用 されている。 ④制御の時間遅れが問題となることがある。 (1) R/Cサーボモータ ●回転軸の回転角度が可変抵抗によって検知される。 ●回転角度が外部からの制御信号による目標角度と一致す るように制御するシステムが構成されている。 (1) 産業用サーボモータ 交流モータ ロータリエンコーダ (a) コントローラ (b) サーボモータ 産業用ACサーボモータ(200W) (3) サーボモータの使用例 実験用水槽の造波装置(海技研) 実験用動揺装置(海技研) ●動揺台を用いた車いすの実験 ●スターリングエンジン用発電機の性能評価装置 サーボモータ トルク計 IPM発電機 6.4 ステッピングモータ ★メカトロニクス機械で重要なアクチュエータ ①パルス信号を与えるごとに,一定の 角度ずつ回転する。 ②正確な回転角度制御が可能である。 ③パルス周波数を変えることで,回転 速度が変わる。 ④パルスモータとも呼ばれる。 ⑤限界のトルクを超えると制御できなく なる(脱調)。 ⑥回転数が高いほど,トルクが小さい。 ステッピングモータ (1) ステッピングモータの構造 ●ケース内に永久磁石を用いた回転子 ●周囲に複数のコイル ●コイルに対して順番に電流を流す。 (2) ステッピングモータの動作原理 (3) ステッピングモータの使用例 (a) 時計 (b) OA機器 (4) ステッピングモータのマイコン回路 ステッピングモータとマイコン回路 (4) ステッピングモータのマイコン回路 マイコン回路 ●ウミガメ型海中ロボット ●ウミガメ型海中ロボット ●ウミガメ型海中ロボット ●ウミガメ型海中ロボット ●ウミガメ型海中ロボット 6.5 リニアアクチュエータ ★メカトロニクス機械ではリニア運動が必要となることがある。 ロボットアーム 電動リニアアクチュエータ 介助用ベッド (1) 電動リニアアクチュエータ 回転式モータとラック・アンド・ピニオン機構を 用いたリニアアクチュエータの一例 ●電動リニアアクチュエータの使用例 介助用車いすの駆動モデル(2004年度卒業研究) ●介助用車いすの駆動モデル ●介助用車いすの駆動モデル (2) ソレノイド ★電磁石を機械的運動に利用したアクチュエータ ①鉄心にコイルを巻き,電流を流すと磁力が生じる。 ②電気機器の制御に使われる(リレー)。 ③簡単な機械的運動ができる。 (a) リレー (b) 小型ソレノイド ●簡単なソレノイド(電磁石) 簡単なソレノイド (3) 油圧アクチュエータ ★大出力・大推力が必要な場合に使用される。 ①油圧エネルギーを機械エネルギー に変換する。 ②圧力差を利用して,ピストンを動か す。 ③土木機械,工作機械,建設機械の ような大出力が必要な装置で使用さ れる。 工事車両(重機) ●油圧アクチュエータの基本構成 油圧ポンプ,コントロールバルブ,油圧シリンダから 構成される。 ●油圧アクチュエータの動作原理 コントロールバルブの動作 6.6 まとめ ★直流モータと交流モータが基本 ★サーボモータとステッピングモータはメカトロ機械を 組み上げる際に重要 ★リニアアクチュエータはメカトロ機械を組み上げる際 に使いこなしたい技術 ★それぞれの特徴を把握して,モータ(アクチュエータ) を選定することが重要 【演習問題】 ★リニアアクチュエータの特徴を活かしたメカ トロニクス機械を考えなさい。 その構造を図面で表し,特徴が活かされる 理由を文章で説明しなさい。
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