マンガをコマの構成 要素に分解する 話題提供:住山晋一 日本心理学会第68回大会 ワークショップ 今日の話題 Ⅰ—1. 画像編集ソフトを使って、コマを分解する Ⅰ—2. スコア譜形式による視点と話者の整理 Ⅱ マンガと書字方向 Ⅰ—1. レイヤー分解 ★構成要素 ○マンガの構成要素: 絵・言葉・コマ枠 ○コマの構成要素 : 主体・背景・吹きだし・ 形喩・音喩など ★画像編集ソフトのレイヤー機能を活用する ○レイヤー機能:透明なフィルム ○レイヤー機能の活用:任意の部分を表示したり 消したりできる ★ファイルを作る 手法1 トレーシングペーパーで構成要素を トレースしてから入力 ・作者のペンの運びを疑似体験できた。 ・時間がかかった。 手法2 ソフト上で構成要素に分解 ・時間が短縮できた。 ・線の区別に苦労した。 ★“夏目”表現論の課題 1. 身体感覚に依拠する分析では、マンガが描けなければ “絵”“線”の分析ができないことになる。この、身体感覚 に頼る部分を開くことはできないのか? ・トレーシングペーパーで描き写すだけでも、一端は分 かってもらえる(夏目) 2. このままだと個別の作品の評論に終始しそう。 ・作業の最中は結構おもしろい。しかし、散発的で蓄積が ないと、ただの遊びに終わってしまう。 Ⅰ-2. スコア譜形式による 視点と話者の整理 ★少女マンガ『毎日が夏休み』(大島弓子) のレイヤー分解で気づいたこと ・言葉が多い ・話者不明の言葉がある ・絵やコマが重なっている ★スコア譜 見開き1ページを単位にして、分解・再配置する。 ・横軸:時間 ・縦軸:視線の主体(誰の見た目?)と言葉の 主体(誰の言葉?) (登場人物が多く、それぞれがセリフや内言を 話すと、スコアは縦に長くなる。) ★視点とセリフ 外在的 内在的 視 物語世界を 外か 物 語 世 界 を 内 か 点 ら 見た眺め ら 見た眺め 作者の解説、 ナ 言 レ ーショ ン セ リ フ ・ 内面の 葉 基 本 的 に 客 観 的 告白など 描写 内在的視点・内在的言葉を理解するためには、 「心の理論」が成立している必要がある。 ★分析 ・『毎日が夏休み』: 重層する言葉・言葉を通して主人公と同一化する ・『マスター・キートン』: 視覚を通した同一化・ルポルタージュ的手法 ・『ドラえもん』:前主観的描写・安定した描写 Ⅱ マンガと書字方向 現在のマンガ形式で、縦書きの言葉が横書きに なるのか? ・現在は縦書き(左へ行送り)+左横書き ・完全横書きへの見通し 小説・マンガの領域で横書きが主流にな らないかぎり、縦書き・横書きの併存は 続く 『横書き登場』(屋名池誠著)より ★オリジナル版と書字方向を 変化させたものの比較 ・オリジナル版が縦書きのもの:『Dr.コトー診療所』 ・オリジナル版が横書きのもの:『まり子のパラード』 ・見開き2ページを使用。オリジナル版と吹きだしの文字の書字方向 を入 れ替えたものを用意。 ・最初にオリジナル版を見たあとで、書字方向を変えたものを見て い、感想を述べてもらった。 もら ★感想 ・書字方向を変化させたものは読みにくい。 視線が自然に流れず、吹きだしを読むとき にせき止められる。 コマの中を行ったり来たりしてしまう。 ・読み手の読みの速さで印象が違う。 読みの速い人;読みにくい。視線がスムー ズに流れない。 読みの遅い人;書字方向の変化は気になら ない。字体の不自然さの方が気になる。 まとめ “夏目”表現論で述べられたもの “コマの配置、コマ内の構成要素の配置で読者 の視線を巧みに誘導している。” →吹きだしの中の書字方向の影響大。 縦書き、横書きに適応した構成要素の配置 になっている。 →現在の形式のまま、書字方向だけが横書き になることはないのではないか?
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