スライド タイトルなし

感染症の疫学とその制御
世界の感染症の現状
世界死因別死亡率(2011年,WHO)
死因
1.悪性新生物
2.虚血性心疾患
3.感染症
下気道感染症
下痢症
HIV/AIDS
4.脳梗塞
5.不慮の事故
6.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
7.糖尿病
死亡者数(万人)
787
702
685
320
189
159
625
360
297
139
死亡率(%)
14.4
12.9
12.6
5.9
3.5
2.9
11.4
6.6
5.4
2.6
世界の感染症の現状
全死因
感染症および寄生虫疾患
下気道感染症
下痢症
HIV/AIDS
結核
世界3大感染症
マラリア
髄膜炎
麻疹
B型肝炎
脳炎
百日咳
梅毒
推計値(万人)
685
320
189
159
98
59
41
17
14
9
9
9
割合(%)
12.6
5.9
3.5
2.9
1.8
1.1
0.7
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
2011年死因別死亡(WHO)
新興・再興感染症
新興感染症
人類が過去に知り得なかった新たな感染症で,局地的,
あるいは国際的に,公衆衛生上問題となる感染症
パンデミック(世界的大流行)
2009 新型インフルエンザ
2003 SARS
国際感染症
世界的対応が必要な感染症
新興感染症
1976
1976
1976
1977
1977
1978
1981
1982
1982
1983
1983
1988
1988
1989
クリプトスポリジウム
Legionella pneumophila
エボラウイルス
Campylobacter jejuni
ハンタウイルス
Staphylococcus aureus
HTLV-I
Escherichia coli O157:H7
Borrelia burgdorferi
HIV
Helicobacter pylori
HHV-6
E型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス
急性・慢性下痢
レジオネラ症(在郷軍人病)
エボラ出血熱
腸炎
腎症候性出血熱
毒素性ショック症候群(TSS)
成人T細胞白血病
腸管出血性大腸炎,溶血性尿毒症
ライム病
エイズ
消化性潰瘍
小児の突発性発疹
E型肝炎
C型肝炎
全世界
米国
アフリカ
全世界
極東,東欧,北欧
全世界
日本を中心にアジア
全世界
欧州,北米
全世界
全世界
全世界
東南アジア
全世界
新興感染症
1992
1992
1993
1994
1994
1995
1996
1997
1999
1999
2002
2009
2011
2012
2013
Vibrio cholerae O139
Bartonella henselae
シンノブレウイルス
ヘンドラウイルス
Clostridium difficile
HHV-8
牛海綿状脳症プリオン
インフルエンザウイルス(A型H5N1)
ニパウイルス
ウエストナイルウイルス
SARSウイルス
インフルエンザウイルス(A型H1N1)
SFTSウイルス
MERSコロナウイルス
インフルエンザウイルス(A型H7N9)
新型コレラ
猫ひっかき病
ハンタウイルス肺症候群
肺炎
偽膜性大腸炎
エイズ患者のカポジ肉腫
クロイツフェルト・ヤコブ病
トリインフルエンザ
脳炎
ウエストナイル熱
SARS
新型インフルエンザ
SFTS
MERS
トリインフルエンザ
南アジア
全世界
全世界
オーストラリア
全世界
全世界
英国
アジア
マレーシア
米国
全世界
全世界
東アジア
中東
中国
クリプトスポリジウム症
1976年に初めてヒトでの感染が報告される
Cryptosporidium parvum,C. hominis(胞子虫類)
感染源:汚染水系,患者の排泄物,家畜
症状:粘液便・軟便と腹痛
AIDS患者への感染 → 衰弱死
1984年 5,900人が井戸水より感染,米国テキサス州
1987年 32,000人が水道水より感染,米国ジョージア州
1993年 403,000人が水道水より感染,米国ミルウォーキー市
1994年 461人が雑居ビル水道水より感染,神奈川県平塚市
1996年 8,812人が町営水道より感染,埼玉県越生市
治療:対症療法,免疫不全患者にはパロモマイシン投与
レジオネラ症
1976年 米国フィラデルフィアの元軍人の大会で182人が
急性肺炎の症状を訴え29人が死亡 → 在郷軍人病
Legionella pneumophila (グラム陰性桿菌)
循環式浴槽の配水管中などに発生するバイオフィルム中に
生息するアメーバなどの微小生物に寄生して増殖する
20~50℃の水温で生育し,36℃前後が最適温度
感染経路:レジオネラ菌を含んだエアロゾルを吸い込むことで感染
症状:ポンティアック熱型(主症状は発熱で感冒様症状),肺炎型
2000年 静岡県掛川市の温泉施設で23人感染,2人死亡
2000年 茨城県石岡市の入浴施設で45人感染,3人死亡
2002年 宮崎県日向市の温泉施設で295人感染,7人死亡
治療:マクロライド系,キノロン系,テトラサイクリン系,リファンピシン
エボラ出血熱
病原体:エボラウイルス(フィロウイルス科)
-鎖RNA:非分節ゲノム型
1976年にスーダンの患者から分離
感染経路:患者の血液,分泌物,排泄物,自然界の宿主は不明
症状:発熱,頭痛,筋肉痛,嘔吐,下痢,腹痛
→ 口腔,歯肉,結膜,鼻腔,皮膚,消化管に出血傾向
潜伏期間7日程度,死亡率50~80%
治療法:対症療法
1976年
スーダン株:患者284人,死者151人(53%)
1976年
ザイール株:患者318人,死者280人(88%)
1995年
ザイールで流行,患者315人,死者 244人
1996年
ガボンで流行,患者60人,死者 45人
2000年
ウガンダで流行,患者426人,死者173人
カンピロバクター感染症
Campylobacter jejuni (グラム陰性短型らせん菌)
1977年にはじめて食中毒菌と認識
細菌性腸炎の原因菌として最多
感染源:食肉(鶏肉),飲料水
症状:腹痛,下痢,発熱
治療:抗菌薬(エリスロマイシン,キノロン)
腎症候性出血熱(HFRS)
1976年 腎症候性出血熱(HFRS)の病原体として韓国で分離
ハンタウイルス属ハンターンウイルス(HFRSウイルス)
ブニヤウイルス科 -鎖RNA:分節ゲノム型
分布:ヨーロッパ~アジア(中国)
感染経路:自然宿主であるネズミの排泄物からの経口・気道感染
症状:発熱,出血傾向,腎不全(致死率10%)
治療:対症療法
毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome, TSS)
黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus TSST-1産生株
1978年 米国で発見
感染経路:黄色ブドウ球菌に汚染された生理用タンポン
症状:発赤,発疹,発熱,嘔吐,下痢 → 低血圧などのショック症状
重症の場合は腎不全などの多臓器不全
治療:抗生物質による化学療法
成人T細胞白血病
ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-I レトロウイルス科)
+鎖RNA:エンベロープ被覆型
1981年 成人T細胞白血病の原因ウイルスとして発見
ウイルス感染者3~5%(九州地方),発症率0.1~0.05%/年
潜伏期間 30~70年
感染経路:母子感染(母乳感染),性交感染
症状:リンパ節腫脹 → 高カルシウム血症,免疫不全
治療:抗がん剤(ビンクリスチン,シクロホスファミド,ドキソルビシン,
メソトレキサート,エトポシド など)による化学療法,難治性
骨髄移植,モガムリズマブ(抗CCR4抗体)による治療
腸管出血性大腸菌感染症
大腸菌 Escherichia coli (グラム陰性桿菌)
O157:H7,O111:H-,O104:H4 など
1982年,米国で重症の出血性下痢患者より分離
2012年の日本における感染者は1,371例
Vero毒素(VT1,VT2)を分泌
十~数十個の菌の感染で発症
感染経路:飲食物からの経口感染
症状:激しい痙攣性の腹痛,血便,下痢
溶血性尿毒症症候群(HUS)
治療薬:キノロン,ホスホマイシンなど
ライム病
1976年に米国コネチカット州ライム郡で発見された流行性関節炎
Borrelia burgdorferi (スピロヘータ)
1982年にマダニから分離
分布:北米,欧州,ロシア,日本を含む極東地域
患者数:数万人/年
感染源:マダニによる刺咬 感染
第1期:遊走性紅斑,インフルエンザ様症状,髄膜炎様症状
第2期:皮膚症状,神経症状,心疾患,眼症状,関節炎,筋肉炎
第3期:慢性期,重度の皮膚症状,関節炎
治療法:抗生物質投与
(テトラサイクリン,エリスロマイシン,セフトリアキソン)
後天性免疫不全症候群(AIDS)
HIV-1(レトロウイルス科)+鎖RNA:エンベロープ被覆型
1983年 AIDSの原因ウイルスと同定
CD4陽性Tリンパ球(ヘルパーT)に感染
潜伏期間8~10年
2011年の日本における感染者は1,535例
感染経路:性交,輸血,麻薬注射,垂直感染
症状:免疫不全による日和見感染症,カポジ肉腫
治療:逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼ阻害薬による発症予防
ピロリ菌感染症
Helicobacter pylori グラム陰性短型らせん菌
1983年に慢性胃炎患者の胃より分離
消化性潰瘍において高率に検出
菌の投与により慢性胃炎発症
日本人成人の50%が保菌者
消化性潰瘍の治療
胃酸分泌の抑制 → 高率に再発
除菌療法 → 再発低率
治療:プロトンポンプ阻害薬+アモキシシリン+クラリスロマイシン
突発性発疹
ヒトヘルペスウイルス6型・・・1988年に山西らが発見
ヒトヘルペスウイルス7型・・・1994年に山西らが病原性確認
(ヘルペスウイルス科)二本鎖DNA:エンベロープ被覆型
生後4~12ヶ月の乳児に高率に発症
潜伏期・・・約10日
2歳までにほぼ100%感染 → 潜伏感染
感染経路:唾液からの経口感染,経気道感染
症状:発熱(2~4日),熱降下後に全身発疹(かゆみなし)
治療:解熱薬による対症療法
新型コレラ
Vibrio cholerae O139 グラム陰性桿菌
コレラ菌 Vibrio cholerae O1
1992年にインドで非O1菌によるコレラ
(患者1万人,死者700人)
感染経路:汚染された水・食物を感染源とする経口感染
症状 コレラ:水様下痢,脱水症状,チアノーゼ,腹痛や発熱はない
新型コレラ:コレラと同様(半数は腹痛を伴う),軽症
治療:輸液による水分・電解質補給
テトラサイクリン,キノロン
猫ひっかき病
Bartonella henselae (グラム陰性多形性短桿菌)
1992年に米国で猫ひっかき病の原因菌解明
1997年には米国で4万人が罹患
感染経路:ネコによる創傷感染 ネコ → ノミ → ネコ
日本ではネコの9%~15%が菌を保有(症状なし)
症状:リンパ節炎,微熱,全身倦怠,関節痛,吐き気
免疫不全症の患者では細菌性血管腫
治療:通常は自然治癒,アモキシシリン,ゲンタマイシン
ハンタウイルス肺症候群
1993年 米国でハンタウイルス肺症候群を報告
ハンタウイルス属シンノンブルウイルス(ブニヤウイルス科)
-鎖RNA:分節ゲノム型
分布:南北アメリカ
感染経路:自然宿主であるネズミの排泄物からの経口・気道感染
症状:発熱,頭痛,呼吸困難,肺水腫,浮腫(致死率40%)
治療:対症療法
ヘンドラウイルス感染症
ヘンドラウイルス(パラミクソウイルス科)
-鎖RNA:非分節ゲノム型
1994年 オーストラリアでウマ21頭が感染し,14頭が死亡
調教師ら2人が感染し,1人死亡
感染経路:オオコウモリが自然宿主(20%以上が感染)
ヒトへの感染経路は不明
症状:発熱,出血性肺炎,脳炎
治療:対症療法
偽膜性大腸炎
Clostridium difficile (嫌気性グラム陽性芽胞形成桿菌)
1994年に抗生物質による菌交代現象の報告
抗生物質,特にリンコマイシン系抗菌薬や広域ペニシリン
などの投与によって正常腸内細菌叢が弱体化し,
Clostridium difficileへの菌交代現象が生じたことによる
症状:発熱,下痢,大腸内に白黄色の隆起病変(偽膜)
治療:抗生物質投与の中止
メトロニダゾール,バンコマイシンの投与
カポジ肉腫
1995年に原因ウイルス同定
ヒトヘルペスウイルス8型(ヘルペスウイルス科)
二本鎖DNA:エンベロープ被覆型
高齢者に発症,AIDS関連型は悪性度が高い
皮膚病変:着色斑 → 結節形成 粘膜病変:着色斑,腫瘤
悪性型・・・粘膜侵襲,リンパ節侵襲,消化管侵襲
治療
切除,凍結療法,電気凝固
ビンブラスチンまたはインターフェロン-αの病変内投与
放射線照射(病変多発またはリンパ節浸潤例)
高活性抗レトロウイルス療法(HAART)・・・AIDS関連型
クロイツフェルト・ヤコブ病
(伝達性海綿状脳症)
症状:進行性痴呆または意識障害
ミオクローヌス(持続時間が極めて短い痙攣様の反復する動き)
数ヶ月で無動・無言状態,1~2年で死亡(変異型は進行遅い)
1996年に英国で狂牛病感染牛プリオンを介しての感染を確認
プリオン:タンパク質性感染粒子
発症機構:神経細胞表面の正常プリオンタンパク → 異常構造体へ変化 →
異常プリオンタンパクの蓄積 → 神経細胞が変性
感染経路:(ヒツジスクレイピー肉骨粉 → BSE)
BSE肉骨粉 → BSE
BSE → 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
感染性臓器:脳,脊髄,眼,回腸遠位部,末梢神経,骨髄
治療:対症療法
高病原性トリインフルエンザ
インフルエンザウイルスA型(オルトミクソウイルス科)
-鎖RNA:分節ゲノム型
エビアンウイルス・・・トリに感染するが通常ヒトには感染しない亜型
1997年
1999年
2003年
2003年
2004年
2008年
2013年
香港でエビアンウイルスA(H5N1)型による患者18人,死亡6人
香港でエビアンウイルスA(H9N2)型による小児患者2人
高病原性トリインフルエンザA(H5N1)型がアジアのトリに流行
オランダでエビアンウイルスA(H7N7)型による患者89人,死亡1人
ベトナムで感染23人中15人死亡,タイで感染10人中7人死亡
インドネシアで感染24人中20人死亡
中国でトリインフルエンザA(H7N9)型による患者135人,死亡44人
感染経路:トリの糞便に含まれるウイルスをトリが吸入することによる
季節性インフルエンザの死亡率:約0.05% 気道粘膜上皮細胞のみに感染
トリインフルエンザH5N1の死亡率:約50% 全身の細胞に感染
ニパウイルス感染症
ニパウイルス(パラミクソウイルス科)
-鎖RNA:非分節ゲノム型
1999年,マレーシアで養豚業者が感染(265人中105人死亡)
感染経路:フルーツコウモリが自然宿主 → ブタ,ウマ,イヌ,ネコ
養豚からの鼻汁,尿を介した接触感染
症状:発熱・倦怠感などインフルエンザ症状,脳炎
治療:対症療法
ウエストナイル熱
ウエストナイルウイルス(フラビウイルス科)
+鎖RNA:エンベロープ被覆型,日本脳炎ウイルスの近縁
1999年
2002年
2003年
2005年
2007年
2009年
米国内で初の感染者62人,うち7人死亡
米国で感染者4156人,死者284人
米国で感染者9862人,死者264人
米国で感染者3000人,死者119人
米国で感染者3623人,死者124人
米国で感染者720人,死者32人
感染経路:トリ → 蚊 → ヒト
症状:80%は無症状,インフルエンザ様症状,脳炎
治療:対症療法
予防:蚊に刺されないようにする
重症急性呼吸器症候群(SARS)
SARSウイルス(コロナウイルス科)+鎖RNA:エンベロープ被覆型
中国広東省で300人以上が呼吸器症状(肺炎クラミジア?)
上海・香港の旅行者がハノイで呼吸器症状を発症
病院内で40人以上が感染
中国,香港,台湾,カナダ,シンガポール で流行
(感染者8422人,死亡者916人,致死率11% )
2003年7月5日にWHOは世界全体でSARSが終息したことを宣言
2002年
2003年
感染経路:患者の気道分泌物による飛沫感染
症状:発熱,咳,呼吸困難,肺炎
治療:ステロイド,リバビリン?
新型インフルエンザ
インフルエンザウイルスA(H1N1)型(オルトミクソウイルス科)
-鎖RNA:分節ゲノム型
2009年 メキシコ,米国から世界各地に拡大,3000人以上が死亡
気道感染にとどまる弱毒型
致死率は季節性インフルエンザなみの0.05%
ブタインフルエンザ由来でヒトからヒトに感染する
治療:ノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル,ザナミビル)の投与
予防: A(H1N1)ソ連型に対するワクチンは無効
新型インフルエンザワクチンは有効
ブタ
インフルエンザ
ヒト
インフルエンザ
~1998年
北米
ブタインフルエンザ
トリ
インフルエンザ
ヨーロッパ/アジア
ブタインフルエンザ
新型インフルエンザ
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウイルス(ブニヤウイルス科)-鎖RNA:分節ゲノム型
2009年
2011年
2013年
中国中央部山岳地域で原因不明の疾患が集団発生
中国で病原体特定
日本で初患者(前年に死亡した患者からウイルス検出)
過去の例も加えて32人の患者確認,うち死者15人
感染経路:マダニによる刺咬感染
症状:1~2週間の潜伏期,発熱,消化器症状(致命率:6~30%)
血小板減少,白血球減少,血清酵素異常(AST,ALT,LDH上昇)
治療:対症療法,リバビリン?
中東呼吸器症候群(MERS)
MERSコロナウイルス(コロナウイルス科)+鎖RNA:エンベロープ被覆型
2012年
2013年
中東へ渡航歴のある患者から新種のコロナウイルス発見
アラビア半島,ヨーロッパ,チュニジア で感染者確認
(患者90人,死者45人,致死率50% )
感染経路:不明(患者との濃厚接触による感染例あり)
症状: 2~15日の潜伏期,重症の肺炎,下痢,腎障害
治療:対症療法
新興感染症流行の原因
従来の疾病に対しての病原体同定
消化性潰瘍(Helicobacter pylori)
突発性発疹(HHV-6,HHV-7),C型肝炎ウイルス
病原体の遺伝子変化
AIDS,新型インフルエンザ
自然宿主である野生動物とヒトの接触
エボラ出血熱,腎症候性出血熱,ハンタウイルス肺症候群
ヘンドラウイルス感染症,ニパウイルス感染症
化学療法薬使用による体内環境変化
偽膜性大腸炎(Clostridium difficile)
再興感染症
既知の感染症で,人類がその制御に成功し,公衆衛生上問題となら
ない程度まで患者数が減少していた感染症のうち,再び流行しはじめ
て患者数が増加し,人類の脅威となりつつある感染症
再興感染症流行の原因
病原体の抗原変化・・・インフルエンザ
薬剤耐性病原体の出現・・・マラリア
予防接種の停滞・・・狂犬病,麻疹,風疹
再興感染症
結核・・・結核菌 Mycobacterium tuberculosis
感染と治療に無関心
1997,1999 日本で罹患者数増加
1999
結核緊急事態宣言(厚生省)
2000~2010 11年連続で減少
2011
再び増加に転じる
百日咳・・・百日咳菌 Bordetella pertussis
予防接種の停滞
1970後半 日本で再流行
2001
米国で流行
2002
アフガニスタンで流行
2003
スーダンで流行
再興感染症
ジフテリア・・・ジフテリア菌 Corynebacterium diphtheriae
予防接種の停滞
1990~1995 ロシアで大流行
ペスト・・・ペスト菌 Yersinia pestis
新しい自然感染巣(ネズミ → ノミ → ヒト)
1994 インド(患者876人,死者54人 )
2002 マダガスカル,コンゴ(患者1456人,死者168人)
コレラ・・・コレラ菌 Vibrio cholerae
輸入感染,地震による衛生環境の悪化
1995 バリ島観光旅行者にコレラ患者発生(296人)
2010 ハイチで感染者17万人,死者3,651人
再興感染症
マラリア・・・マラリア原虫(胞子虫類)
クロロキン耐性マラリア,殺虫剤耐性ハマダラカ
トキソプラズマ症・・・トキソプラズマ原虫(胞子虫類)
寄生虫免疫力の低下,野生動物での流行
2002 ブラジルで流行
2004 タスマニア島のヒツジに流行
リューシマニア症・・・リューシマニア(鞭毛虫類)
殺虫(サシチョウバエ)剤使用量の低下
南アジア,南米での流行,エイズ患者への感染
再興感染症
デング熱・・・デング熱ウイルス(フラビウイルス科)
殺虫剤抵抗性蚊(ネッタイシマカ,ヒトスジシマカ )の出現
予防・治療薬の欠如
東南アジア,南米などで流行
黄熱・・・黄熱ウイルス(フラビウイルス科)
殺虫剤抵抗性蚊(ネッタイシマカ)の出現,不十分な予防接種
アフリカ,中南米で流行
狂犬病・・・狂犬病ウイルス(ラブドウイルス科)
ワクチン接種率の低下,ペットブーム
中国の感染症による死亡者数の3位(AIDS,結核に次ぐ)
1996年 発生159件
2006年 発症者3279人,死者3209人
2009年 発症者2213人,死者2131人
再興感染症
インフルエンザ・・・インフルエンザウイルス(オルトミクソウイルス科)
抗原の変化
1957
アジアかぜ(H2N2)
1968
香港かぜ(H3N2)
1977
ソ連かぜ(H1N1)
2009
新型インフルエンザ(H1N1)
麻疹・・・麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科)
予防接種の停滞
MMRワクチン・・・麻疹,流行性耳下腺炎,風疹
ムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎 → MRワクチン
2007 日本で再流行
風疹・・・風疹ウイルス(トガウイルス科)
予防接種の停滞
2011 日本における罹患者 378人
2013 日本における罹患者 14,357人
耐性菌による感染症
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)
mecA 遺伝子:β-ラクタム薬への結合親和性の低下した
PBP2'(ペニシリン結合タンパク)をコード
mecA 遺伝子下流に挿入配列(IS431)
β-ラクタム,アミノ配糖体,マクロライド耐性(多剤耐性)
院内感染起因菌
易感染性患者(がん,免疫低下,術後患者など)に
重篤な感染症(敗血症,肺炎,腸炎,心内膜炎など)
治療:バンコマイシンまたはテイコプラニンの単独投与
アルベカシン+スルバクタム/アンピシリンの併用投与
予防:医療従事者の手洗い,マスク・ガウン着用の励行
バンコマイシン耐性腸球菌感染症
Vancomycin-resistant Enterococci(VRE)
Enterococcus faecium(VREF),E. faecalisなど
vanA(プラスミドTn1546上),vanB(主に染色体Tn1547上)
ペプチドグリカンのD-Ala-D-Ala → D-Ala-D-Lac
vanC(染色体上)
ペプチドグリカンのD-Ala-D-Ala → D-Ala-D-Ser
症状:易感染性患者における腹膜炎,術創感染症,肺炎,敗血症
治療:リネゾリド,キヌプリスチン・ダルホプリスチン
人獣共通感染症
人獣共通感染症(人畜共通感染症,動物由来感染症)
ヒト以外の脊椎動物とヒトの間を伝播可能な病原体に起因する感染症
ペスト・・・ネズミ
狂犬病・・・イヌ,ネコ,野生温血動物
日本脳炎・・・ブタ,鳥類
AIDS・・・霊長類
SARS・・・ハクビシン?
高病原性鳥インフルエンザ・・・鳥類
腸管出血性大腸菌感染症・・・ウシなどの家畜
人工増加と経済活動の拡大
野生動物と人間社会の境界消失 → 新病原体との接触
感染症対策機関
WHO(世界保健機構)
痘瘡撲滅計画(1959~) → 撲滅宣言(1980)
根絶計画対象・・・ポリオ,麻疹,風疹
新興感染症のアウトブレイク対策・・・国際ネットワーク
SARS,新型インフルエンザ対策が奏功
CDC(米国疾病管理予防センター)米国
NIID(国立感染症研究所)日本
国内の疾病の予防,管理の指揮・監督,公衆衛生水準の保持
日本における感染症の現状
主要死因別死亡率(人口10万対)の年次推移
1945~2011年
250
悪性新生物
結核
200
脳血管疾患
心疾患
150
100
肺炎
50
0
昭和20年
1945
25
1950
30
1955
35
1960
40
1965
45
1970
50
1975
55
1980
60
1985
平成2
1990
7
1995
12
2000
17
2005
人口動態統計 厚生労働省大臣官房統計情報部
注: 1995年の心疾患の低下および脳血管疾患の上昇は、ICD-10の適用と死亡診断書の改正による影響が考えられる。
23
2010
日本における感染症の現状
感染症の脅威の減少
衛生環境の改善,化学療法薬の開発,ワクチン接種,医療の進歩
結核
結核患者は激減したが,罹患率は先進国中で飛び抜けて高い(19/10万人)
法定伝染病(~1994)
痘瘡,ジフテリア,猩紅熱,ペスト,パラチフス,腸チフス,日本脳炎,
発疹チフス,コレラ,流行性脳脊髄膜炎,赤痢 → 激減
日本における感染症の現状
肺炎・・・死亡率増加(3位)
薬剤耐性菌(ペニシリン耐性肺炎球菌など)の増加,高齢化
AIDS・・・HIV感染者数は横ばい(新規感染者1001人/2011年)
性感染症(STD)・・・高い感染率
性器クラミジア,淋菌,性器ヘルペス,尖圭コンジローマ,梅毒
院内感染・・・患者数増加
MRSA感染症,薬剤耐性緑膿菌感染症
感染症関連法規
感染症法
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
1994年施行,2008年改正
一類~五類
指定感染症(1年間限定) ← 政令
既知の感染症(一類~三類感染症,新型インフルエンザを除く)で
あって,感染症予防法の規定を準用しなければ,国民の生命と
健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症
新感染症 ← 政令
既知の感染症とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので,
病状の程度が重篤であり,国民の生命と健康に重大な影響を与える
おそれがある感染症
新型インフルエンザ等感染症(新区分) 2011年より
感染症法
感染症類型
一類感染症
二類感染症
三類感染症
新型インフルエンザ
等感染症
感染症名
エボラ出血熱
クリミア・コンゴ出血熱
痘瘡
南米出血熱
ペスト
マールブルク病
ラッサ熱
急性灰白髄炎(ポリオ)
結核
ジフテリア
SARS
鳥インフルエンザ(H5N1)
コレラ
腸管出血性大腸菌感染症
細菌性赤痢
腸チフス
パラチフス
新型インフルエンザ
再興型インフルエンザ
主な対応・措置
★直ちに医師は届出
★消毒等の対物措置
医療費・・・入院は公費
性格
感染力,罹患した場合の重
篤性等に基づく総合的な視
点からみた危険性が極めて
高い感染症
疑似症患者への適用
無症状病原体保有者への適用
★直ちに医師は届出
★消毒等の対物措置
医療費・・・入院は公費
感染力,罹患した場合の重
篤性等に基づく総合的な視
点からみた危険性が高い感
染症
疑似症患者への適用
★直ちに医師は届出
☆状況に応じて入院
★消毒等の対物措置
☆特定職種への就業制限
医療費・・・医療保険
1類相当
感染力,罹患した場合の重
篤性等に基づく総合的な視
点からみた危険性が高くな
いが,特定の職業(食品を
取り扱うような職業)への就
業によって感染症の集団発
生を起こし得る感染症
感染症法
★直ちに医師は届出
☆媒介動物の輸入規制
★消毒等の対物措置
★ねずみ等の駆除
四類感染症
E型肝炎,ウエストナイル熱,A型肝炎,エキノコックス症,
黄熱,オウム病,オムスク出血熱,回帰熱,キャサヌル
森林病,Q熱,狂犬病,コクシジオイデス症,サル痘,腎
症候性出血熱,西部ウマ脳炎,ダニ媒介脳炎,炭疽,ツ
ツガムシ病,デング熱,東部ウマ脳炎,鳥インフルエンザ
(H5N1を除く),ニパウイルス感染症,日本紅斑熱,日本
脳炎,ハンタウイルス肺症候群,Bウイルス病,鼻疽,ブ
ルセラ症,ベネズエラウマ脳炎,ヘンドラウイルス感染症,
発疹チフス,ボツリヌス症,マラリア,野兎病,ライム病,
リッサウイルス感染症,リフトバレー熱,類鼻疽,レジオ
ネラ症,レプトスピラ症,ロッキー山紅斑熱
★7日以内に医師は届出
☆感染症発生状況の収集
★分析とその結果の公開,提
供
(感染症発生動向調査)
なお,全数把握と定点把握の2
種類がある
医療費・・・医療保険
五類感染症
(全数把握)
アメーバ赤痢,ウィルス性肝炎,急性脳炎,クリプトスポ
リジウム症,クロイツフェルト・ヤコブ病,激症型溶血性レ
ンサ球菌感染症,後天性免疫不全症候群,ジアルジア
症,髄膜炎菌性髄膜炎,先天性風疹症候群,梅毒,破
傷風,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症,バン
コマイシン耐性腸球菌感染症,風疹,麻疹
(定点把握)
インフルエンザ,咽頭結膜熱,A群溶血性レンサ球菌咽
頭炎,感染性胃腸炎,水痘,手足口病,伝染性紅斑,突
発性発疹,百日咳,ヘルパンギーナ,流行性耳下腺炎,
RSウイルス感染症,急性出血性結膜炎,流行性角結膜
炎,細菌性髄膜炎,無菌性髄膜炎,マイコプラズマ肺炎
,クラミジア肺炎,性器クラミジア感染症,性器ヘルペス
ウイルス感染症,尖圭コンジローマ,淋菌感染症,メチシ
リン耐性黄色ブドウ球菌感染症,ペニシリン耐性肺炎球
菌感染症,薬剤耐性緑膿菌感染症
医療費・・・医療保険
定点施設数
小児科定点(約3,000)
インフルエンザ定点(約5,000)
眼科定点(約600)
基幹定点(約500)
国が感染症発生動向調査を行い,
その結果等に基づいて必要な情
報を一般国民や医療関係者に提
供・公開していくことによって,発
生・拡大を予防すべき感染症
(旧4類感染症のうち,媒介動物
の輸入規制と,消毒,ねずみ等の
駆除,物件に係る措置を講ずるこ
とができるもの)
国が感染症発生動向調査を行い,
その結果等に基づいて必要な情
報を一般国民や医療関係者に提
供・公開していくことによって,発
生・拡大を予防すべき感染症
(従来どおり発生動向調査のみを
行う)
予防接種法
予防接種
定期接種・・・予防接種法で定める
一類疾病~集団予防
4種混合(ジフテリア,百日咳,破傷風,ポリオ),MR(麻疹,風疹),日本脳炎
BCG(2007から)
インフルエンザ菌b型,肺炎球菌(小児)(2013から)
ヒトパピローマウイルス・・・副作用のため勧奨を中止
二類疾病~個人予防
インフルエンザウイルス/高齢者
任意接種・・・希望者が受ける
予防接種健康被害救済制度・・・定期接種による健康被害の救済
医薬品副作用被害救済制度・・・一般医薬品による健康被害の救済
その他の感染症関連法
食品衛生法・・・病原微生物を病因とする飲食に起因する健康被害の防止
食中毒原因微生物を指定
家畜伝染病予防法・・・家畜伝染病の予防,蔓延の防止
ウシ海綿状脳症(BSE),鳥インフルエンザなど
狂犬病予防法・・・狂犬病発生の防止・撲滅
制定(1950) → 撲滅(1957)
検疫法・・・入国者の検疫,港湾地域の衛生対策,輸入食品の監視対策
輸入感染症,国際感染症の予防
一類感染症,マラリア,デング熱,高病原性鳥インフルエンザ
学校保健安全法・・・学校における感染症を含む保健管理,安全管理
一~三類感染症,インフルエンザ,麻疹