学校伝染病と かぜ症候群 - 野崎医院/埼玉県

その対策と予防と治療
大河小学校校医
野崎
浩
明治31年
「学校伝染病予防および消毒法」という法律が制定
平成10年
法律」
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する
目的
種類
すなわち感染症予防法が制定された。
学校保健法ならびに学校保健法施行規則
学校における集団生活の中で伝染病の感染拡大を防ぐ
第1種
エボラ出血熱、クリミヤ・コンゴ出血熱、ペスト、
マールブルグ病、
ラッサ熱、急性回灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、
ジフテリヤ、
腸チフス、パラチフス、SARS、 天然痘
第2種
インフルエンザ、百日咳、麻疹、流行性耳下腺炎、
風疹、水痘、
咽頭結膜熱、結核
インフルエンザ
解熱したあと2日を経過するまで
百日咳
特有の咳が消失するまで
麻疹
解熱したあと3日を経過するまで
流行性耳下腺炎
耳下腺の腫脹が消失するまで
風疹
発疹が消失するまで
水痘
すべての発疹が痂皮化するまで
咽頭結膜熱
るまで
結核
主要症状が消失した後2日を経過す
医師が出席可能と認めるまで
条件により出席停止の措置が必要と考えられる伝染病
溶連菌感染症、ウィルス性肝炎(A型肝炎)、手足口病、
伝染性紅斑、ヘルパンギーナ、マイコプラズマ感染症、
流行性嘔吐下痢症
通常出席停止の措置は必要ないと考えられる伝染病
アタマジラミ、水イボ(伝染性軟属腫)、とびひ(伝染
性膿化疹)
ウィルスと細菌の違い
ウィルス
構造
細菌
細胞
(単細胞生物)
アミノ酸とタンパ
ク質
大きさ
50~100n
m
1000n
m
(1μ
m)
白血球
CRP
抗生物質
低下あるいは正常
熱のわりには正常のこ
とが多い
効果なし
上昇することが多い
上昇することが多い
効果あり
感染経路
飛沫感染
μm以上
病原体が付着したほこり(飛沫)を吸う。飛沫の大きさ5
みで放出され
膜に付
であり3feet未満までしか到達できない。咳やくしゃ
た体液の飛沫が病原体を含んでいて、これが他人の粘
着することで感染が成立する。
空気感染
が
も病原性を
の粘膜に
空気中に、飛沫に含まれて飛散した病原体が、飛沫の水分
蒸発して5μm未満の軽い微粒子(飛沫核)となって
保ったまま、3feet以上の距離を浮遊し、これが他人
付着することにより感染が成立する。
接触感染
付
接触する
病原体の付着した皮膚同士の触れ合い、または、病原体が
着した手すり、ドアノブ、聴診器などの物体の表面に
第2種の学校伝染病
インフルエンザ、
百日咳、
麻疹、
流行性耳下腺炎、
風疹、
水痘、
咽頭結膜熱、
結核
麻疹(はしか)
原因
麻疹ウィルス
感染経路
空気感染・飛沫感染・接触感染
潜伏期間
1~2週間
臨床症状
カタル期(3~4日)・発熱、咳、鼻水、結膜炎をおこし次第に咳が強くなる。
発疹期(4~5日)・カタル期後いったん解熱する。この頃、口の中にコプリック
斑と呼ばれる白い斑点が出る。半日ほどで再び39~40℃の高熱が出現し発疹
が出現。発熱、咳、鼻水、結膜炎などの症状はさらにひどくなり、下痢を伴うこ
とも多い。
回復期・徐々に発疹の色も退色し、汚い色になり皮がむける。解熱したあとも咳が
残ることもある。
治療
対症療法のみ
麻疹ウィルス
麻疹の診断
麻疹の発疹
リック斑
コプ
麻疹の合併症
脳・神経系の合併症
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
1/10
万
麻疹脳炎
/ 1000
1
咽頭気道系の合併症
中耳炎
~10/100
肺炎
4~7/100
消化器系の合併症
下痢
5~8/100
7
麻疹の予防(通常予防)
ウィルス感染症の中で一番感染力が強い。
20分間同じ部屋の中にいると感染が成立し、麻疹ウィル
ス
が感染した非抗体保持者のほとんどは顕性感染する。
麻疹ワクチンの接種(抗体獲得率95%)
(生後12ヵ月から90ヵ月未満の男女幼児に定期接種する
MRワクチン(乾燥弱毒生麻疹風疹ワクチン)
対象者
1期
生後12月から生後24月に至るまでの間に
あるもの
2期
の始期
5歳以上7歳未満の者であって、小学校就学
に達する日の1年前の日から当該始期に達す
る日の
前日までの間にあるもの。
ブースター効果
体内に作られた抗体などの免疫機能は、その後何度
かウィルスに暴露されることで、その機能を保ち、維持さ
れる。
終生免疫
これを得るには、実はブースター効果が必要であり、
1度できた免疫が、何度かウィルスに接触することが重
要である。
最近の麻疹感染者増加の謎
予防接種の普及
麻疹患者数の減少
子供のころに予防接種により麻疹の免疫を獲得した人でも
その後の麻疹ウィルスに接触する機会がない。
ブースター効果が得られない。
終生免疫を得られない。
2000年頃から数年前までほとんど見られなかった成人の
麻疹患者の急増。
抗体を持っていない人が麻疹患者と接触した場
合の予防対策(暴露後予防)
1、接触後72時間以内に麻疹ワクチンを接種す
る
(万一発症しても軽症化する)
2、γ-グロブリンを接触後6日以内に投与する。
(妊婦、免疫不全者が対象)
風疹(3日はしか)
原因
風疹ウィルス
感染経路
飛沫感染
潜伏期間
2~3週間
臨床症状
耳介後部、後頭部、頚部のリンパ節腫脹が見られ数週間持続する。
悪寒、倦怠感、眼球結膜の軽度充血、鼻水、咳等の症状も見られる。
径5mm程度の淡紅色の斑丘疹が、顔面、頚部、頭部、体幹、四肢へと広が
り、
約3日間程度持続し色素沈着、落屑なく消失。発疹とともに40~60%に
38~39 ℃
の発熱が出現。
治療
対症療法のみ
風疹ウィルス
風疹の診断
風疹の合併症
関節炎(指、手首、膝など
みられる
風疹脳炎
000~6000
血小板減少性紫斑病
~3000
有痛性)
年長児、成人で
1/4
1 / 2500
先天性風疹症候群
妊娠20週までに母体が風疹に罹患すると経胎盤的に持続
的に
胎児感染がおこり、胎児に先天障害をひきおこす。
1.眼症状(白内障、緑内障、網膜症)
2.心疾患(末梢性肺動脈狭窄、動脈管開存)
風疹の予防
1、定期予防接種
12~90ヵ月未満の男女幼児に定期接種する。(1994年予
防接種法)
2006年4月より麻疹風疹混合(MR)ワクチンが12~23ヵ
月児を対象に
定期接種となった。
1歳になったら速やかに接種す
る。
さらに就学前の1年間にMRワクチンの2回目を接種する。
2、任意接種
定期接種もれ者、風疹抗体陰性の成人男性、妊婦の家族、医療、
教育、
福祉従事者、妊娠前や出産後の婦人など1歳以上であれば、すべ
ての
年齢で接種可能。
百日咳
原因
百日咳菌
感染経路
飛沫感染
潜伏期間
7~10日
臨床症状
カタル期(1~2週間)・感冒症状から始まり通常の鎖咳剤では咳が治まらない。
痙咳期(3~6週間)・乾性咳嗽が激しくなる。特有な発作性の連続的な咳込みと
whoop。
回復期(6週間以降)・特有な咳込みが減少。
治療
抗生物質投与 (エリスロマイシン、クラリスロマイシン)。咳が出る前であれば症状は軽
くなる。
咳の症状が出始めてからは症状の改善効果はないが5~7日で除菌できるので他人への感
染は
防げる。
百日咳の合併症
6ヵ月未満児に多い(1997~2000年の米国
での報告)
入院率
肺 炎
痙 攣
脳 症
死 亡
63.1%
11.8%
1.4%
0.2%
0.8%
生後2ヵ月以内の乳児の合併症
肺炎
痙攣
脳症
25%
3%
1%
百日咳の予防
定期予防接種
生後3ヵ月から90ヵ月未満の乳幼児に定期接種する。
DPTワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風トキソイド混合ワ
クチン)
生後3ヵ月より接種開始し、3~8週間隔で3回、1~1年半後に追加
接種
1期
初回
生後3月に達した時から生後12月に
達するまでの期間(3回)
3回
1期
追加
1期初回接種(3回)終了後12月に
達した時から18月に達するまでの期
間
1回
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
原因
ムンプスウィルス
感染経路
飛沫感染、接触感染
潜伏期間
2~3週間
臨床症状
発熱、急速な耳下腺腫脹(2日以上持続)。多くは片側耳下
腺が
腫脹した後、1~2日以内に反対側耳下腺も腫脹。
治療
対症療法のみ
ムンプスウィルス
流行性耳下腺炎の診断
流行性耳下腺炎の合併症
脳、神経系の合併症
髄膜炎
3~10 / 10
0
脳炎
10000
難聴
0000
2~3 /
1 / 250~1 / 2
腺組織の合併症
睾丸炎
乳腺炎
卵巣炎
消化器系の合併症
25 / 100
15~30 / 100
5 / 100
流行性時耳下腺炎の予防
予防の唯一の手段はムンプスワクチン接種。
(任意接
種)
副反応・・・・
000
髄膜炎の発症
1 / 2000~10
暴露後接種やγ-グロブリン投与は効果なし。
施設や学校でムンプスの流行が始まったとき早期に流行を終息させ
る
唯一の手段は、既往歴、ワクチン歴のないムンプス感受性者全員に
水痘
原因
水痘帯状疱疹ウィルス
感染経路
飛沫感染、空気感染、接触感染。
潜伏期間
13~17日
臨床症状
個体差が大きい。はじめは体幹部や顔面頭部に発疹が現れ、や
が
て全身に広がる。発疹は、点状紅斑、丘疹状発疹、水疱、痂皮
など
が混在する。(丘疹
水疱
膿疱
痂皮、1週
間)
重症度判定・・・永井のスコア
治療
水痘の診断
水痘の合併症
呼吸器系の合併症
肺炎
脳、神経系の合併症
脳炎、小脳失調症
消化器系の合併症
肝炎、ライ症候群
血液系の合併症
血小板減少症
皮膚の合併症(最も頻度が高い)
細菌による二次感染(ほとんど
は軽症)
蜂窩織炎
Reye’s syndrome(ライ症候群)
インフルエンザ、水痘の感染後、
特にアスピリン(アセチルサリチル酸)
を服
用した場合に急性脳症や肝臓への脂肪浸
潤をひき起こし、肝不全等により死にい
たる。
死に至らなくとも軽度から重度の脳障害
を
水痘の予防
1、水痘生ワクチン
「水痘の罹患が特に危険と考えられるハイリスク患者」
である小児が第一の接種対象。(健康小児にも接種できる)
健康小児に水痘ワクチンを接種した場合の抗体獲得率90%。
副反応はなし。
2、暴露後予防
水痘患者と接触したのち72時間以内に水痘ワクチンを接種すれば
水痘
の発症を免れるか、発症しても軽症に経過する。
結核
原因
結核菌
感染経路
飛沫感染、空気感染。
臨床症状
乳幼児型結核(0~6歳)
感染即発症。血行性に結核菌が播種され結核性髄膜炎、脳底部膿瘍、脳内
血管
炎。
成人型結核(小学生以降)
幼少時に感染した結核菌がマクロファージ内寄生体として存続した後、ス
トレス、
加齢、免疫不全状態などを誘因として再び活性化して、血行、リンパ行性
に肺内
撒布される。浸潤型結核。空洞形成型結核。
微熱の持続、原因不明の咳嗽、体重減少。
治療
結核の疫学
世界で毎年600万~800万人の新規活動性患者が
発生。
年間20~30万人が死亡している人類最大の感染症。
我が国の15歳以下の小児が罹患する結核は、新規登
録患
者は年間300人。(そのうち乳幼児が75%)
結核の届け出率は人口10万人当たり27.9人(平
成14年)。
結核の診断
1、ツベルクリン反応
自然陽転児。反応発赤径が大きい、強陽性。
2、クォンティフェロン検査
結核が活動性かどうか判定できる。
3、血液検査
成人・・赤沈値亢進、10000以上の白
血球増多。
乳幼児・・血清総IgM値が高値となる。
4、喀痰、胃液の鏡検、培養
5、画像診断
胸部単純X線検査、胸部CTスキャン
結核の予防
1、排菌者の徹底的治療
2、BCG接種
溶連菌感染症
原因
β溶血性の連鎖球菌
感染経路
飛沫感染、接触感染
潜伏期間
2~5日(咽頭炎)、7~10日(膿痂疹)
臨床症状
発症は急激、咽頭痛で始まり、倦怠感、38℃以上の発熱、頭痛。
嘔気、嘔吐、腹痛を伴うこともあり。(咽頭炎、扁桃腺炎、下顎
頚部リン
パ節炎)抗菌剤の投与がなくとも自然治癒がみられ、3~5日で
解熱し
他の症状も1週間で軽快する。
治療
第1選択薬・・・ペニシリン系(アモキシリンが最もよく用いら
れる)
溶連菌感染症の疫学
季節
冬季から春と初夏にかけての2つの発生ピーク。
好発年齢
2~5歳に多い。
発生状況
近年全体の報告数が増加。迅速診断キットの普及で
診断技術が向上したためか?
溶連菌感染症の合併症
扁桃周囲膿瘍
化膿性頚部リンパ節炎
急性副鼻腔炎
中耳炎
リウマチ熱(咽頭炎からの期間は平均18日)
急性糸球体腎炎(咽頭炎からの期間は10日)
溶連菌感染症の予防
1、うがい、手洗い。
2、発症リスクの高い開放創の存在、最近の手術後、出
産後、
水痘の併発時には、抗生物質を予防投与する。
抗生剤が適正に開始され24時間経過すれば患者には感
染性
はない。
ロタウィルス
原因
ロタウィルス
感染経路
糞口感染、空気感染、接触感染。
潜伏期間
約2日。
臨床症状
米のとぎ汁のような白色の下痢(激しい)、嘔吐(激し
い)、発熱
(2日以内)。約半数に気道症状あり。下痢は1週間以内
に消失。
治療
対症療法
ロタウィルスの疫学
季節
2~4月に流行。
好発年齢
生後6ヶ月から2歳の乳幼児に多い。5歳までにほとんど
の小児
が経験する。
発生状況
乳幼児のウィルス性胃腸炎の主要原因。
開発途上国では今でも感染症による死因の1/3、40~
50万人
を占めている。
わが国では、年間検出報告数は、500~800例。
ノロウィルス感染症
原因
ノロウィルス
感染経路
糞口感染、空気感染、接触感染。
潜伏期間
1~2日
臨床症状
発熱、腹痛、嘔吐、下痢、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛。
特に嘔吐がひどい。
治療
対症療法
ノロウィルスの疫学
季節
11~1月にピーク
好発年齢
乳幼児から成人まで。
発生状況
平成17年の食中毒発生状況によると、ノロウィルスによ
る食中毒
は事件数は274/1545件(17.7%)、患者数は
8727/27019名
(32.3%)で患者数第1位。
ノロウィルスの予防
1、十分な手洗い。
2、患者の隔離。
3、汚染された物や場所は
ディスポーザブルのマスク、手袋を着用し、次亜
塩素酸
ソーダ(キッチンハイターなど)で消毒、ビニー
ル袋に入
れて廃棄。
4、流行期に生ものの接種に注意
85℃以上、1分以上の加熱でウィルスは失活す
急性上気道カタル性疾患として定義される。
上気道とは、鼻腔、咽頭、喉頭であるが、下気道上
部(気管)、下気道下部(気管支)も含んで考える。
カタルとは発熱、咳、鼻水、咽頭炎、喉頭炎等の炎
症を
主体とした症状。
ウィルス
ライノウィルス
0%~50%
コロナウィルス
8%~9%
インフルエンザウィルス
5%
RSウィルス
2%~5%
アデノウィルス
5%
3
ウィルス
ライノウィルス
0%~50%
コロナウィルス
8%~9%
インフルエンザウィルス
5%
RSウィルス
2%~5%
アデノウィルス
5%
3
ライノウィルス感染症
原因
ライノウィルス(100以上の亜型が存在)
感染経路
飛沫感染、空気感染、接触感染
潜伏期間
1~4日
臨床症状
くしゃみ、鼻閉、鼻漏、咽頭痛、頭痛、咳、倦怠感。
症状は2~3日がピークですぐに回復する。
治療
対症療法のみ
かぜ回復の5大原則
1、ゆっくり睡眠をとり、体を休める。
2、体を温かく保ち、のどの乾燥を防ぐ。
3、消化がよく栄養のあるものをとる。(タンパク質、ビタ
ミンB1、C)
4、熱がある場合には、水分の補給を十分に行う。
5、手洗い、うがいで常に清潔に保つ。
アデノウィルスの疾患
疾患
ウィルス存在部
好発年齢
型
呼吸器感染症
咽頭炎
急性呼吸器疾患
肺炎
咽頭
咽頭、気道、肺
咽頭、気道、肺
幼児、小児
軍隊新兵
幼児、免疫不全者
1、2、3、5、
6、7
3、4、7、21
1、2、3、4、
6、7、21
眼感染症
咽頭結膜熱
流行性角結膜炎
咽頭、結膜
結膜
幼児、小児
年齢関係なし
1、2、3、4、
6、7
8,19,37
性器分泌液
膀胱、尿
成人
幼児、免疫不全者
19,37
11,21
腸管、便
幼児、小児
31,40,41
泌尿器感染症
子宮頚部・尿道
炎
出血性膀胱炎
腸管感染症
胃腸炎
アデノウィルス感染症
桃炎
非化膿性結膜炎
滲出性扁
咽頭結膜熱(プール熱)
7~8月に流行
高熱
咽頭炎
結膜炎
倦怠感
アデノウィルス感染症の予防
高濃度でのアルコール消毒(90%エタノール)
プールの場合は塩素濃度を0.4ppm以下にしないよ
うに
する。
家庭や職場ではタオル等の共用はしないようにする。
マイコプラズマ
原因
マイコプラズマ菌(Mycoplasma pneumoniae)
感染経路
飛沫感染
潜伏期間
2~3週間
臨床症状
頭痛、発熱、咽頭痛、咳などの感冒様症状。(乾いた咳)
肺炎を発症しても基本的には3週間程度で自然治癒する。
小児の場合は肺炎はまれであり、多彩な肺外病変を呈する。
治療
マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質
ニューキノロン系抗生物質
マイコプラズマの疫学
季節
以前は4年ごとの夏季に流行が見られオリンピック病とま
で
呼ばれたが最近はそのような規則性はない。年間を通して
流行するが秋が多い。
好発年齢
抗体検査では、1歳までに40%、5歳までに65%、大
人で
は97%が感染を受けていることが判明。比較的若年者に
発生。
発生状況
アメリカでは毎年200万人の患者が発生し、10万人が
マイコプラズマの合併症
系統
皮膚
直接型
スティーブン・
ジョン
ソン症候群
感覚器
間接型
混在
難解
蕁麻疹、不定形紅
斑、
多形滲出性紅斑
結膜炎、虹彩炎
中耳炎(急性、 突発性難聴
滲出性)
無菌性髄膜炎、
脊髄炎
神経系
早発性脳炎
遅発性脳炎、神経
炎、
精神異常
脈管系
心外膜炎
閉塞性血管炎、
脳梗塞
消化器系
不整脈、心筋
炎、川崎病
肝機能障害
血液系
自己免疫性溶血性
貧血、血小板減少
性紫斑病
筋骨格系
糸球体腎炎、
膵炎、炎症性
腸疾患
伝染性単核球
症、再生不良
性貧血、DIC
クラミジア
原因
細胞内寄生菌(Chlamydophila pneumoiae )
感染経路
飛沫感染(乾燥に弱く自然環境では数時間で感染性がなく
なる)
潜伏期間
1~4週間
臨床症状
咳嗽(乾性、遅延する)、咽頭炎(咽頭痛が強い)、
発熱(軽度)、気管支炎、肺炎、胸膜炎、中耳炎、副鼻腔炎
治療
マクロライド系抗生剤、テトラサイクリン系抗生剤
クラミジアの疫学
季節
季節性なし。
好発年齢
抗体保有率は小児期より年齢とともに上昇し、成人では60
~70%
である。
発生状況
各地で地域的な小流行を繰り返す。上気道炎の1~9%、下
気道
炎の5~15%の原因となる。数か月かけて徐々に集団内で
広がっ
ていく。
インフルエンザ
原因
インフルエンザウィルス(A,B)
A香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)
感染経路
飛沫感染、空気感染、接触感染
潜伏期間
1~2日
臨床症状
学童~成人
突然の高熱、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状。
2~3日で解熱しそのころから鼻水、咳嗽などの呼吸器症状。
完全な回復には1~2週間を要する。
乳幼児
全身症状は軽く呼吸器症状が中心となり普通感冒との鑑別が困難。3~4日
で解
熱傾向になってから再び発熱。(二峰性発熱)1週間発熱が続くこともあり。
B型インフルエンザでは下肢の痛みがあったり、嘔吐、腹痛などの胃腸症状
も強い。
治療
インフルエンザの発生状況
毎年冬季に流行を繰り返し人口の5~10%が罹患。
日本では600万~1200万人の患者が出ている。
毎年、数千人から数万人の小児が入院するが、死亡
例は
まれ。
日本での死亡者は毎年1000人以下程度。
インフルエンザウィルスの構造
インフルエンザの診断
インフルエンザ迅速診断キット
咽頭や鼻腔を綿棒で拭うかあるいは鼻汁を吸引して検体とす
る。
15分程度で結果判明。60~90%程度の感度。
注意点
1、病初期、特に12時間以内ではウィルス量が少なくキッ
トの感度以下の場合に偽陰性をしめす。
2、検体採取部位やぬぐい方により感度が異なる。
(鼻腔からの検体が検出率が高い)
インフルエンザの合併症
肺炎
中耳炎、副鼻腔炎
ライ症候群
脳炎、脳症
髄膜炎、脊髄炎、Guillain-Barre症候
群
筋炎、心筋炎、腸炎、腎不全
インフルエンザ脳症
「インフルエンザの感染に伴い急激に進行する脳障害で
あり、
インフルエンザにおける熱性けいれんなどを除く」
発生数
年齢
症状
80%)
毎年約100~500例
1~3歳に多い。
発症は急激(1日以内の神経症状の発症
痙攣(70~80%)
せん妄様意味不明の言動(20~3
0%)
予後
死亡(30%)後遺症(25%)
熱発に対して解熱剤投与は有
効か有害か?
ウィルスや細菌の感染時に熱発はどうして起こるの
か?
免疫力を強化して対抗する必要あり
体が免疫力を強化するために熱をあげている
実際に体温が上昇すると免疫力は上昇する
解熱剤を使って熱を下げてしまうと免疫力は低下す
る
インフルエンザの予防
インフルエンザワクチン
健康成人~学童
発症予防効果70~90%(流行株とワクチン株が一致)
低年齢(6歳以下)
A香港型に対して53.5%、B型では22.3%と大幅に効果下。
社会防衛の考え方
感染リスクの高い集団の抗体価を上げることでインフルエン
ザの
蔓延を防ぐ(高齢者の死亡率を減らす)
抗インフルエンザ薬
タミフル(オセルタミビル)
経口で使用するノイラミニターゼ阻害薬。
タミフルの内服によりインフルエンザの主要症状が1日以上短縮。
48時間以内の内服。1歳以上に投与可能。
小児の報告 48時間以内の投与例では、1日後に44%が37.5℃
以下に解熱、2日後には86%の患者が完全に解熱。
問題点
悪心、嘔吐、下痢。
耐性ウィルスの出現。(成人1%、小児5.5~2
0%)
耐性ウィルスの周囲への感染。(感染性は弱い)
精神神経症状の出現?
リレンザ(ザナミビル)
吸入で使用するノイラミニターゼ阻害薬。
気道での濃度は、タミフルに比べて100倍以上高い。
48時間以内吸入。5歳以上に投与可能。治療効果はタミフルと同等。
問題点
あまりなし。(耐性ウィルス出現なし。嘔吐下痢の患者に
も使える。
パンデミック(大流行)
高原不連続変異により新型のインフルエンザウィルスが
出現し
て、世界的な大規模な流行をおこす。時には、トリイン
フルエン
ザウィルスが突然変異により直接人に感染し、新型のイ
ンフル
エンザウィルスとなることもある。
過去の大流行における死亡
1918年
スペインかぜ
32万人が死亡
世界で4000万人、日本で
1957年
世界で200万人、日本で8
アジアかぜ
抗原不連続変異
抗原連続変異
人のインフルエンザウィルスは、毎年、突然変異を起こし、
HAとNAの抗原性が少しずつ変化する。
抗原不連続変異
人のインフルエンザウィルスは、数十年に一度、トリイン
フルエザ
ウィルスと遺伝子の交雑をおこし、 HAが鳥由来のウィ
ルスが出
現することがある。
新型インフルエンザ出現の可能性
2003年から東南アジアで鳥のH5N1インフルエン
ザが流行
し莫大な数の家禽が犠牲になった。鳥インフルエンザは
通常
は人には感染しないがH5N1に感染したニワトリに密
接に接
触した場合例外的に人への感染が起きている。(感染し
た人
の死亡率50%以上。)
さらに渡り鳥の媒介により、 H5N1インフルエンザ
ウィルスは
ヨーロッパ、アフリカまで流行が拡大。
インフルエンザの感染経路
渡りをする水鳥(カモなど)
水辺の家禽(アヒルなど)や鶏
家畜(豚)
人間
新型インフルエンザが出現した場合
もしも現代にスペインかぜクラスの毒性の強いインフ
ルエン
ザが出現したら??
世界で6200万人が死亡
(96%は発展途上国)
日本では死亡者数約5万人~64万人
日本での流行状況予想
最初の流行(2ヵ月以内)で全国民の25%(320
0万人)が発
病する。
次の流行でも国民の多くが罹患発病し、数年以内には
全国
民が必ず罹患発病する。国民の多くが新型インフルエ
ンザ
に対して免疫を持つ。
新型インフルエンザ対策
1、ノイラミニターゼ阻害薬による治
療
2、ワクチン接種
3、休校、隔離、イベントの中止など
の感染拡大防止策
4、手洗い、うがい、マスクの着用な
どの個人的予防策
ノイラミニターゼ阻害薬による
治療と予防
新型インフルエンザの出現
検査
臨床的に疑われれば、
結果が不
明でもすぐにタミフ
ルを投与。
早期投与
3200万人が2ヵ月以内に発病
タミフルの倍量投与、長期投与
タミフルの備蓄の問題点
1、国の備蓄計画は、700万人分の不足(流通在
庫を考えれば1000万人)
3200万人-2500万人
2、もしもタミフルを倍量投与すれば1250万人
しか治療を受けられない。1950万人分の不足。
3、日本のタミフル備蓄量は昨年12月の段階で、
世界第24位(1200万人分)。今後2500
万人分の備蓄を達成しても世界18位。
ワクチン接種
1、プレパンデミックワクチン(試作ワクチン)
1000万人分の試作ワクチンを備蓄し、新型イ
ンフルエンザの出現が必至となった段階で、医療
関係者、警察、消防署員など社会機能を維持する
人たちに接種する計画。
2、新型インフルエンザワクチン
パンデミック発生後に分離された人のインフルエ
ンザウィルスで作成するワクチン。安全性、有効
性は高いが、発病防止効果は50%ほど。国民に
十分供給するまで数か月。パンデミック第一波に
は間に合わないが、半年から1年後の第2波では
ワクチンによる大幅な患者数の減少が期待される。
結語
学校における感染症に対する対策、予防、治療には何
が
重要か?
個々の感染症に対する正しい知識を持つこと。
学校、地域、行政が一体となって対策に努め
る。
予想される感染症に対して、行動計画を策定
する。