広島文教女子大学心理臨床研究 却1 1 Vo . l2 p p.20-24 女子大学生の対人ストレスコーピングおよび 友人との付き合い方に及ぼす性格特性の影響 谷 岡 瞳 1) ・ 田 頭 穂 積 2) E妊'ec t so fp e r s o n a l i t yt r a i to nc o p i n gw i t hi n t e r p e r s o n a ls t r e s sa n d d e a l i n gw i t hf r i e n d si nf e m a l ec o l l e g es t u d e n t s H i t o m iTANIOKA & HozumiTAGASHIRA 要約 本研究では,対人ストレスコーピングおよび友人との付き合い方に及ぽす性格特性の影響について検討した。 9 5 名の女子大学 生を対象に,対人ストレスコーピング,友人との付き合い方,性格特性の尺度を用いて,因子分析を行った。対人ストレスコー ピング尺度においては「回避J["関係維持J["解決先送り J["プラス思考J["自己正当化」の 5因子,友人との付き合い方尺度につ 因子,また性格特性 ( B i gF i v e ) 尺度に いては. ["防衛的 J["自己自信J["同調的 J["全方向J["被愛願望J["積極的相互理解Jの6 おいては. ["情緒不安定性J["外向性J["誠実性J["調和性J["開放性」の 5因子が抽出された。本研究の因果モデルにおいて,性格 特性が友人との付き合い方,対人ストレスコーピングとそれぞれ正の関連性を持つことが示された。 B i gF i v e ) キー・ワード:対人ストレスコーピング,友人との付き合い方,性格特性 ( 1.問題と目的 いる"。また,高井 ( 2 0 0 8 ) は,大学生の悩みが生じ 現代社会はストレス社会と言われるように,日常のあ る人間関係の種類として,友人関係や恋愛関係,家族 らゆる場面でストレスに直面せざるをえなくなってい 関係,先輩後輩関係やアルバイト先の人間関係などを る。これまでストレスに関する研究はさまざま行われて 挙げており,内容的には性格領域に関するストレスに いるが,特にストレスとコーピングの関連性については 分類されるものが最も多く,男子よりも女子の割合が J . X 1 1 .2 ( 胸 ) 。 数多くの研究がなされている(加藤.2 多かった。具体的に, ["人見知りをしてしまう Jや 日本の女性(15-24 歳)の大きなストレスイベント 「人が自分のことをどう,思っているのか非常に気にな としては,厚生労働省の平成 1 2年度保健福祉動向調査 り心配」という他者懸念や不安感,劣等感や自身欠如 によると,職場や学校での人付き合いが4 5 . 2 % . 次い に関するものである。次いで,対人スキル不足,コミ 2 6 . 2 % ),自由になる時聞がない で,仕事上のこと ( ュニケーションスキル不足,心を許せる友人がいない, ( 2 0 . 9 % ),収入・家計(15. 4 % ),家族関係(15.1%) 2 0 0 8 ) の結 希薄な人間関係などを挙げている。高井 ( などとなっている。中でも,職場や学校での人付き合 果より,青年期の女子の 39%が友人関係で悩んでおり, いなどの対人関係に起因した対人ストレスイベントが その中でも,自分の性格に関する悩みが最も多いこと 最も大きなストレス状況となっている。加藤 ( 2 0 0 0 ) 9 6 ) は,“友人関係に起因 がわかる。また,遠矢(19 によると,“青年にとって,対人ストレスイベントと するストレスは,青年が発達課題に直面する際に不可 の遭遇は避けることのできない問題であり,ストレス 避であり,中でも友人関係は最も重要な人間関係であ フルなイベントのなかでも比較的大きな割合を占めて る"と述べている。これらの研究を概観すると,青年 期女子において対人ストレスコーピングと友人との付 1 ) 広島文教女子大学大学院人間科学研究科教育学専攻 2 ) 広島文教女子大学人間科学部初等教育学科 き合い方は重要な課題であると考えられる。 一方,対人ストレスコーピング研究において性格特 谷岡・田頭:女子大学生の対人ストレスコーピングおよび友人との付き合い方に及ぼす性格特性の影響 2 1 性と対人ストレスコーピングとの関連についてはあま れない。そこで本研究では,友人との付き合い方を基 2 0 0 1 ) は. BigFiveと対 り検討されていなしミ。加藤 ( に,性格特性 ( B i gF i v e ) が対人ストレスコーピング 人ストレスコーピングとの関連性について,情緒不安 および落合・佐藤(19 9 6 ) の友人との付き合い方にど 定性,開放性の高い人はネガティブ関係コーピングを, のような影響を及ぼすか. 3者の関連性について検討 外向性,調和性の高い人はポジテイブ関係コーピング することを目的とした。 を,開放性,誠実性の高い人は解決先送りコーピング を選択する傾向が強いと述べている。加藤 ( 2 0 0 1 )は , 誠実性と解決先送りコーピングとに弱い正の関連性を ' B r i e n &DeLongis ( 19 9 6 ) 認めているのに対して. Q 2 . 方法 1~ 4年生) 9 5 対象者:広島県内の女子大学生 ( 名を対象とした。 では,誠実性 ( B i gF i v e ) と回避的コーピングには負 調査時期:2010年 1 1月 。 の関連性が示されている。このように性格特性 (Big 調査用紙:本調査の質問紙は. 3つの尺度から構成 F i v e ) と対人ストレスコーピングの聞には必ずしも一 された。①和田(19 9 6 ) による BigFiveの情緒不安定 貫した結果が示されていなしミ。 2項目で 性・外向性・調和性・誠実性・開放性は,各 1 また,加藤 ( 2 0 0 1 ) の対人ストレスコーピングは 3 構成されているが,本研究では各因子の因子負荷量の 尺度であったが. Q'Brien & DeLongis ( 1 9 9 6 )は , 高い方から 6項目を抽出し計30 項目を採用した。②友 9尺度の対人ストレスコーピングを用いており,内容 1 9 9 6 ) の青 人との付き合い方の尺度は,落合・佐藤 ( 的に対応するコーピング尺度はあまり存在しない。こ 5 項目を使用 年期における友人との付き合い方の尺度3 19 9 6 ) の研究 のため,加藤と Q'Brien & DeLongis ( した。③対人ストレスコーピングの尺度は,加藤 結果を直接比較することはできないと考えられる。そ ( 2 0 0 0 ) の大学生用対人ストレスコーピング尺度 3 4 項 こで,本研究では加藤 ( 2 0 0 1 ) によるわが国の対人ス 目を使用した。 トレスコーピングを基に BigFiveとの関連性につい て,再検討する。 手続き:調査用紙を授業時に配布し無記名で回答 してもらった。全ての尺度項目の評定は. 1 5:非常 ところで,加藤 ( 2 0 0 6 ) は,友人関係目標を,“向 4:かなり当てはまる J1 3:どちら に当てはまる J1 性,異性を含めた友人と,どのような付き合い方をし とも言えない J1 2:あまり当てはまらない J1 1 :全 たいと考えているか"と定義し対人ストレス過程に く当てはまらない」の 5件法で、行った。 おける友人関係目標が果たす役割を検討している。加 2 0 0 6 ) は,落合・佐藤 ( 1 9 9 6 ) の友達との付き合 藤 ( 3 . 結果と考察 い方 6因子を用いているが,さらにクラスタ分析を行 尺度の因子構造 い,防衛,自己自信,相互理解の因子を友達付き合い BigF i v eの尺度30 項目に対して,主因子法 (Promax の「深い一浅い」次元に,また全方位的,同調,被愛 回転)による因子分析を行った。因子負荷量が.4 0 以下 願望の因子を「広い一狭い」次元に統合し. 4つのタ の 5項目を除外し,残りの 25項目について再度因子分 イプ(深い広い,深い狭い,浅い広い,浅い狭い)別 9 6 ) と同様の 5因子が抽 析を行ったところ,和田(19 に対人ストレスコーピングとの関係を検討している。 情緒不安定性 J1 外向性 J1 誠実性」 出されたため. 1 友人関係目標の 4つのタイプによって対人ストレスコ 「調和性J1 開放性Jの因子と命名した ( T a b l e1 )。 ーピングの使用状況が異なることから,友人関係目標 次に,友人との付き合い方の尺度 3 5項目に対して, が対人ストレス過程において重要な変数であることを 主因子法 (Promax回転)による因子分析を行った。 示唆している。しかし加藤は,実際に友人との付き合 因子負荷量が 40以下の 9項目を除外し,残りの 26項 い方が対人ストレスコーピングにどのような影響を及 目で再度因子分析を行ったところ. 1 防衛的 J1 自己自 ぼすのかについての検討を行っていない。一方,落 信J1 同調的 J1 全方向 J1 被愛願望 J1 積極的相互理解」 9 6 ) は 6因子からなる,青年期における 合・佐藤(19 )0 1 同調的」の尺度 の 6因子が抽出された (Table2 友達との付き合い方の発達的変化のみを研究してお には,落合・佐藤(19 9 6 ) の「積極的相互理解」の因 り,友人との付き合い方と対人ストレスコーピングの 子項目「友達と分かり合おうとして傷ついても仕方な 関連については検討していなしミ。また,これまでわが い」が含まれていた。この項目は因子負荷量が負のた B i gF i v e ) と友人との付き合い方の関 国で性格特性 ( め,傷つかないように友達と分かり合おうとして,友 連性を検討した研究は,筆者の知る限りでは見受けら 達に同調的な付き合い方をすると解釈できることか 2 2 広島文教女子大学心理臨床研究第 2号 2011 Table1 性格特性 (BigFive) の 因 子 分 析 結 果 項目丙蓉 r F l 情 安 首 つ 苦 長 緒 に 労 芦不 な な 安 ゑ り や 定 性 す 』い 官 i i I i f i b i z i 日 .84 .83 7 9 7 9 . 7 5 .64 0 2 -.53 .24 05 04 -.04 .04 . 0 1 0 6 0 4 1 3 1 8 06 一1 5 一.04 06 06 03 .09 . 0 7 . 0 7 .09 .10 .1 8 .00 .00 . 0 1 一 .1 6 0 2 1 3 . 0 9 . 0 9 . 0 8 .1 3 .20 .1 4 一.02 一. 1 1 .06 .05 .83 .78 .74 .58 . 5 2 .48 1 5 .1 0 一 .1 2 0 8 0 3 一. 1 1 0 9 .1 8 一. 0 1 0 2 0 2 0 1 1 6 .1 5 .09 1 3 77 .72 .68 .60 .06 .1 2 0 5 -.03 。 。 0 9 1 0 0 8 . 0 1 覚 で に 富 鋭 ん るい でいる F 5 .1 0 03 -.05 3 2 05 04 -.09 る F4 -.09 0 3 . 2 1 0 6 1 9 0 2 い し せ、 でない i Z 5 ← ← F 3 .80 .77 .77 7 1 .67 .66 r l 町務 独 想 美 、 F 2 .1 3 . 0 8 一. 0 3 一. 0 4 . 0 4 .1 3 し、し、 面 な りでない b S 、 実 加 性 減 き で f J R { し 』 で な 工 、 成 ノ 無 怠 レ 頓 惰 り 行 着 で F 1 1 1 .02 .05 1 9 千田 目 ー 一. 0 3 . 2 3 1 5 0 9 一.05 一.03 .00 .1 6 .09 -.05 . 0 1 1 9 .82 .55 .55 F l F 2 0 0 9 F 3 0 6 9 1 5 8 F 4 0 6 9 5 1 1 0 7 0 F 5 0 8 6 2 6 6 。0 6 5 2 2 0 因子間相関 F l F 2 F 3 F 4 F 5 ー Table2 友 人 と の 付 き 合 い 方 の 因 子 分 析 結 果 震官丙零 F l F2 F3 F4 F5 F6 宮 弓 。 I 宅 Av--AU'I 09166 一 一 4斗Aphυa斗Ati り nUハり 'Iハ •••• i 円 りG ハυ14n41i つdnL 0 020 一一 1794 tpOFORυ ヴ • -一 -・目・ E---- ハ hU219ムにυρhV 1i1i 可inunυ 5694 ﹁ η4 D t 司 巧 4 ワ&ハUAυti •••• ‘ F h dh ﹁U AHunkUA4 141i1iハu n u 17137 10032 一一一一 1i'in4ηd nu'i'i'I 004BAn,ム内︿d AVハ U 胃I'i -E dnLQUQU B 市 A'iqdqu 内 ・ 一一一 ・ ---- nudFhuηonMU 弓 dFOFhuaaτ ---- tinぺ υti ワ ム n411ハU1A -↑ pnvS4 品 ハHvn吋V ハUAU ワゐ唱Bム 一一 ウ tnhUAUヮ “ ハU ハリハリハυ 同『被愛願望 J みんなから愛されていたい みんなに好かれていたい 一 F4 r 全方向 j どんな人ともずっと友達でいたい どんな友達とも協調しあいたい どんな友達とも仲良しでいたい どんな友達とも楽しく付き合いたい auoonuoOFhu n δ 勾tnoFOFD 円 Qd t 円 Guqd i ハU ハununυ ハU , .. F3 r 同調的』 みんなと違うことはしたくない みんなと何でも同じでいたい 友達と分かり合おうとして傷ついても仕方ない みんなと意見を合わせようと思う •••••••••• は 白 F2 r 自己自信』 友達と意見が対立しでも,自信を無くさないで話し合える 友達と意見や考えが食い違っても,自信をなくしたりはしない 友達と本音でぶつかりあっても,自分のありのままの姿で接したい 友達と意見を交し合っても,それほど惑わされない みんなと意見が違っても,できるだけ自分の意見を言うようにしている - - - - -一 --一 ••••••••••••• •••••••• A斗Ad仏LPhupnuFhuFhυ'kdnwd itinununυ$itin4 咽 ,F hυnυ ワ AznL ム A生 ハυ Aせ 一一一一 のvouou nVAv-Aqム -E ・ ・・・・・ 白 つ -K7anvqυ1A1AnHva生 ハUAUAU'iAU'inυ ハU りん Fhυnkuzυnvnuphup nunu--ハリヮ“ quAυ1i nunv ハUハun41Anuov 一 一 つ ゐ つ 企 円 ipbηJU1AAWUA- SFO noau 。n0t0q0U0960n0uadcaouマ 円『防衛的 J 友達に自分のすべてをさらけ出すのは危険である 友達にはありのままの自分は出さない 友達と本音で話すのは避けている 友達に自分の全てをさらけ出すのは危険である 友達とは本音で話さない方が無難だ 友達には自分の考えていることを全部言う必要はない 傷つきたくないので、友達には本当の姿を見せられない 友達とは何でも本音で話し合うようにしている .04 .05 .02 .07 .85 -.05 1 .75 .02 . 0 1 -.05 .1 9 .1 --- GU4笠 凋 法 375 ぺ 巧, nυ E ' h υ A ハ hUA斗AA斗 一 RυnxuaA宝 ハυ'Iハ リ 一 ぺ nxUAd 同 qd 内 4 ハUハU F 1 F 2 F 3 F 1 F 5 F 6 ハ 悶子間相関 戸川 unudnku nL14 u 1 n吋νnxU44A AHvqtυ'Bム F6 r 積極的相互理解』 友達と本当の姿を見せ合うことで 少しくらい傷ついてもかまわない 誰にでも好かれるのは無理だと思っている 友達と本音を言い合うことで,傷ついても仕方ない F 1 F 2 F 3 F 4 F 5 F 6 一 1 8 7 . 2 0 8.1 6 1. 0 5 3. 2 8 4 3 4 7 . 0 1 2. 0 6 9. 2 6 3 一 .320 .261-.270 . 3 6 9 .1 0 5 0 0 4 谷岡・田頭:女子大学生の対人ストレスコーピングおよび友人との付き合い方に及ぼす性格特性の影響 2 3 T a b l e3 対人ストレスコーピングの因子分析結果 F 4 nyRυ'1149d iハ nunU も Unu 4A1AAUQdFb EeAqムワム 1iTA 一 一 ・ りム AUT- 1iquqdワ 1i 可 114AU -一 nbAυ り ん nu-- 唱i GUnmUAせ τi nU3i ハUつム .84 .80 . 5 1 5 244 AV 76 ハUnδ ↑ qu i 唱 AU 一 121 ワμ1inυη 4 τ 4 内 FO hURu nUハUnu -- .75 .63 .56 . 4 7 一一一 QdワJu--tAQUQU 3A14nUTI 内 JAU qd1AqdA宝 司iqd nUハ υnυnunu-- 品 ハ り Qdaqつ' Upo --AUAす のUAU •••• .89 F5 -A1i 内 41iワ臼 nJnbワム 1AnuAU--oun4Q4qd っ 一 一“ 一一一 oo--qu nboo--ハu nu--ワム 1i1LハυAU-- “ っ qu1aQ014ndAせ・1 nuハU141AハUAvnu 臼 つ drDAUnudoe a m官 auaunhuaudz ・ の尺度には,落合・佐藤(19 9 6 ) の「防衛的 j の因子 F3 勾 。 一一一一- ・4 F O I 同調的」と命名した。また, I 積極的相互理解」 ‘7 067'ntnvA 0Uつん 1iつ 臼 ハ Uつム 内 0 ら , ↑一一一一一 た 一 二中 王 ここ /与ハ十JチJ .63 .63 .59 .59 .55 . 5 1 F 2 d 4・1iη ム司tQU1400 弓 υ E且qdワutinLnリ内 /M 凡 .80 . 7 1 宇t ι r 内, しし考たたしせたた ににをしみに任っし ううととてたたうたに思たたたに よよこうえししたたよしきとったたししと いるなそ考におししいに行だ思っしににこ たなすう探てたうなにになうたりんと恩ルううる したしをよをっしょめううらよし成学たと一よよ作 にしをいたすろなにるつよよわるにのをしだピるうを うにい合しかとにうれ見い﹂いだれう然﹄か長強﹄アす言人 ょう合きたに明﹂とちょ入をなりなこ忘よ自考何成勉化ををを友 いよきた付つ者を持い持るけとわ送えにはい'思でて会当在話見の ﹄なる付けのな悪鼻錐良気す受こあ先考ととなずス験し社正存に意ん 避しすち避上にをの係ののををのり決りここしせラ経とも己の的のさ 回を視だを面人手手関手手拶手分わ解まののにもブの問れ自分極分く ﹁話無友人表1相相 相相挨相自関﹁あそそ気何﹃こ人こ﹃自積自た FrprrrFrrr F l 項目い]谷 2 1 .12 06 1 0 1 2 28 1 4 .10 1 0 .09 .13 05 .16 .03 . 6 9 .52 .50 .48 化」の因子と命名した。 2 0 0 0 ) の大学生用対人ストレスコーピングで 加藤 ( I ポジテイブ関係 JI ネガティブ関係 JI 解決先送 項目「誰にでも好かれるのは無理だと思っている」が は , 含まれていた。これは,積極的に相互理解しようとすれ り」の 3コーピング因子が抽出されているが,本研究 ば誰からも好かれるのは無理であると解釈することが出 では,加藤の「ポジテイブ関係」コーピング因子が 来るため,この因子を「積極的相互理解」と命名した。 プラス思考 JI 自己正当化」の 3つに分 「関係維持 JI 次に対人ストレスコーピングの尺度 34項目に対し かれたために, 5因子解となった。 V a r i m a x回転)による因子分析を行っ て,主因子法 ( 以下の 8項目を除外し,残りの た。因子負荷量が.45 26 項目について再度分析を行ったところ, 5因子解が 対人ストレスコーピング司友人との付き合い方司性 格特性との関連性 T a b l e3 )。各因子は以下のように解釈され 得られた ( B i gF i v e ) が友人との付き合い方,なら 性格特性 ( I 話をしないようにした JI 無視する びに対人ストレスコーピングに影響を及ぼすという因 友達付き合いをしないようにした」な ようにした JI 果モデルを立て, Amos19.0を用いて共分散構造分析 I 回避」因 を行った。最も当てはまりのよい因果モデルとして 子と命名した。第 2因子は「相手の良いところを探そ Figure 1のようなパスが得られた。適合度指標は, 相手の気持ちになって考えてみた JI 挨拶 うとした JI GFI=. 8 7 6,AGFI=. 7 9 4,CFI=. 7 9 9,RMSEA=. 108と するようにした」などの項目が高い正の負荷量を示し i gF i v e なった。適合度は十分に高いとは言えないが, B I 関係維持」因子と命名した。第 3因子は から友人との付き合い方へのパス係数は . 5 9(p< . 0 5 ), 「あまり考えないようにした JI そのことにこだわらな . 0 1 ) 対人ストレスコーピングへのパス係数は. 9 3 (p< そのことは忘れるようにした」など いようにした JI で,それぞれ有意となった。 た。第 1因子は, どの項目が高い正の負荷量を示したので, たので, I 解決先送り」 性格特性 ( B i gF i v e ) から友人との付き合い方への 因子と命名した。第 4因子は「この経験で何かを学ん パス係数が有意となったことから,性格特性が友人と 人間として成長したと思った JI これも だと思った JI の付き合い方に影響を及ぼすことが確認されたと言え 社会勉強だと思った」などの項目が高い正の負荷量を B i gF i v e ) の5因子が対人スト る。しかし'性格特性 ( I プラス思考」の因子と命名した。第 5 因子は「自分の存在をアピールした JI 積極的に話を するようにした JI 自分の意見を言うようにした」な どの項目が高い正の負荷量を示したので, I 白己正当 レスコーピングに影響を及ぼすわけではなく,調和性, の項目が高い正の負荷量を示したので, 示したので, 外向性,開放性の高い人が,被愛願望的,全方向的,同 調的な友人との付き合い方をする傾向が強いと言える。 B i gF i v e ) が対人ストレスコーピ 次に,性格特性 ( 2 4 広島文教女子大学心理臨床研究第 2号 2 0 1 1 o ① 0 E品生日唾E 。 3 5牟 取 数値は標準偏回帰係数を示す。 *p< . 0 5 **p< . O l 柿ヤ<.∞l F i g u r e1 性格特性 ( B i gF i v e l と友人との付き合い方,対人ストレスコーピングの因果モデル ングに及ぼす影響について検討する。性格特性 ( B i g 文献 F i v e ) から対人ストレスコーピングへのパス係数が有 加藤 意であったことから,調和性,外向性,開放性の高い 人は,関係維持,プラス思考,自己正当化のコーピン グを選択し,回避的なコーピングを使用しない傾向が 強いと言える。本研究の関係維持,プラス思考,自己 2 0 0 1 )の 正当化の対人ストレスコーピングは,加藤 ( ポジテイブ関係コーピングと対応することから,加藤 2 0 0 1 ) のネ の結果を支持するものといえよう。加藤 ( ガテイブ関係コーピングは,本研究と同じ回避的コー 司 2 0 0 0 大学生用対人ストレスコーピング尺 2 5-2 3 4 . 度の作成教育心理学研究, 48,2 加藤 司 2 0 0 1 対人ストレスコーピングと B i gF i v e との関連性について性格心理学研究, 9,1 4 0-1 4 1 . 加藤 司 2 0 0 6 対人ストレス過程における友人関係 1 2-3 21 . 目標教育心理学研究, 54,3 加藤 司 2 0 0 7 対人ストレス過程における対人スト レスコーピング 加藤 司 ナカニシヤ出版. 2 0 0 8 対人ストレスコーピングハンドブッ ピングから構成されており,調和性から回避的コーピ ク一人間関係のストレスにどう立ち向かうか ングへのパス係数は,両者とも負となっている。しか カニシヤ出版. 2 0 0 1 ) ではポジテイブ関係,ネ し開放性は,加藤 ( ガテイブ関係,解決先送りの全てのコーピングと正の 'Brien & DeLongis 関連性が認められているが, Q ( 19 9 6 ) では,回避的コーピングと負の相聞があった。 ' B r i e n & DeLongis このことから,本研究の結果は Q 厚生労働省大臣官房統計情報部 ナ 2 0 0 2 平成 1 2年度保 健福祉動向調査の概況 ( h t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p / t o u k e i / s a i k i n / h w I h f t y o s a / h f t y o s a O O / ) T . B .,& DeLongis, A .1 9 9 6Thei n t e r a c t i o n Q ' B r i e n, ( 1 9 9 6 ) を支持していると言えよう。また本研究では, c o n t e x to fproblem-,e m o t i o n -,andr e l a t i o n s h i p - 2 0 0 1 ) の性格特性 ( B i gF i v e ) と「解決先送り 加藤 ( f o c u s e dc o p i n g :Ther o l eo ft h eb i gf i v ep e r s o n a l i t y コーピングJとの関連性は,見られなかった。 o u r n a lo fP e r s o n a l i t y ,6 4,7 7 5 8 1 3 . f a c t o r s . l 性格特性 ( B i gF i v e ) は友人との付き合い方,対人 落合良行・佐藤有耕 1 9 9 6 青年期における友達との ストレスコーピングのそれぞれに影響を及ぼすことが 付き合い方の発達的変化 示されたが,友人との付き合い方から対人ストレスコ 5 5-6 5 . ーピングへの有意なパスは示されなかった。青年期に おける友人関係は,心理的に自立していくプロセスに おいて大きな支えとなる。友人との付き合い方によっ て,ストレスフルな状況になったり,ストレスが軽減 されたりもする。今後の課題として,親友あるいは友 鈴木綾子 教育心理学研究, 44, 2 0 0 6 大学生のストレス対策 小杉正太郎 . l4 9-1 5 2 . (編)ストレスと健康の心理学朝倉書店 Pp 高井範子 2 0 0 8 青年期における人間関係の悩みに関 0,8 9 9 5 . する検討太成学院大学紀要, 1 遠矢幸子 1 9 9 6 友人関係の特性と展開 人との付き合い方が対人ストレスコーピングにどのよ 奥田秀字(編) うに影響するのか比較検討する余地が残される。 P p . 8 6-1 1 6 . 和田さゆり 尺度の作成 大坊郁夫・ 親密な対人関係の科学誠信書房 1 9 9 6 性格特性用語を用いた BigFive 心理学研究, 67,6 1-67.
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