2005年12月22日

2006年1月26日
ファッションにおける流行の採用段階に影響を与える要因
―ファッション関与と性格特性を比較して―
寺尾 朋子
1
流行
1.流行現象
(1)流行とは(中村,1997)
・特定の行動様式や思考様式が特定の成員に
受け入れられ、急速に普及し、やがては消滅
していく社会現象。
・社会生活のあらゆる面で生じるが、人の服飾・
化粧・髪型で顕著に現れる。
・採用の可決が個人の自由意志に委ねられてい
る点・衰弱が急激であるという点で、制度的行
動や慣習と異なる。
2
(2)ファッション
①その時代時代の、最も一般的な普遍的行動
様式をつくりあげる流行。通常は服飾などの
流行に用いられる(川本,1981)。
②単に服装、あるいは服装から髪型・化粧・アク
セサリーまでを含めて用いられる。
3
2.流行を採用する理由(中村,1997)
①新奇ものや変化を求める動機
②個性化と自己実現の動機
③集団や社会への適応動機
④自己の価値を高く見せようとする動機
⑤自我を防衛する動機
流行を採用するのは、以上の動機のいくつか
が、互いに影響を及ぼし合いながら働くためであ
る。
4
3.流行の個人差
ロジャース(Rogers,1983)は、個人がどの段階
で流行を採用するかによって、5つのタイプに分
類した。
(A)革新的採用者:冒険的な人々
最も早く流行を採用し、せっかちで冒険的な性
格。
(B)オピニオン・リーダー:尊敬される人々
特定の分野に精通し、情報を提供したり、助言
を求められることにより、周囲の人々に影響を
5
与える。
(C)前期多数採用者:慎重な人々
社会に是認されてから流行を採用し、慎重な
性格。
(D)後期多数採用者:疑い深い人々
大多数の人が採用した後に流行を取り入れ、
懐疑的で用心的な性格。
(E)採用遅滞者:伝統的な人々
伝統志向が強い性格。
6
(A)
(B)
(C)
(D)
(E)
動
員
人
数
(A)
(B)
2.5% 13.5%
ー
χ-2σ
ー
χ-σ
(E)
16.0%
(D)
34.0%
(C)
34.0%
ー
χ
革新的採用者
初期少数採用者
前期多数採用者
後期多数採用者
採用遅滞者
ー
χ+σ
時間
図1 流行の採用段階
7
目的
ロジャースは流行の採用段階と性格特性には関
わりがあると述べている。しかし、私は流行の採用
段階と性格特性には関係がなく、むしろファッショ
ンへの関与の強さが、流行の採用段階に影響を
与えると考える。
そこで、調査を通じて流行の採用段階と性格特
性・ファッション関与の関わりをみていく。
8
仮説
(ⅰ)a ファッション関与はファッションにおける流
行の採用段階に影響を与えず、性格特性の
みが流行の採用段階に影響を与える。
b 各採用段階の性格特性別の平均点にお
いて、革新的採用者の冒険的な性格の平均
点が最も大きく、その他の採用者には差がな
い。その他についても同様である。
c ファッション関与は革新的採用者>初期少
数採用者>前期多数採用者>後期多数採用
者>採用遅滞者の順に強いという関係が成係が立
しない。あるいは、上の関係式において3つ以上
等号を認める。
9
(ⅱ)a 性格特性はファッションにおける流行の採
用段階に影響を与える。
b 各採用段階の性格特性別の平均点において、
革新的採用者の冒険的な性格の平均点は唯一大
きくない。その他の採用段階についても同様に、対
応する性格特性の平均点が唯一大きくない。この
関係が3つ以上成立すれば、仮説bを認める。
c ファッション関与は革新的採用者>初期少数採
用者>前期多数採用者>後期多数採用者>採用遅滞
者の順に強い。なお2つは等号を認める。
10
調査
・調査時期:2005年11月21日~2005年11月30日
・調査対象:香川大学生117人、中国短期大学生
60人
・調査方法:ある授業において質問用紙によって
実施
・調査内容
ファッション生活の状況
ファッション関与
流行の採用段階
性格特性
11
結果
仮説
(ⅰ)b 立証されない
c 立証される
→【a ファッション関与はファッションにおける流
行の採用段階に影響を与えず、性格特性のみ
が流行の採用段階に影響を与える。】は立証さ
れない。
12
仮説
(ⅱ)b 立証される
c 立証されない
→【a 性格特性はファッションにおける流行の採
用段階に影響を与えず、ファッション関与のみ
が流行の採用段階に影響を与える。】は立証さ
れない
13
表1 性格特性の採用段階別の平均点
流行の採用段階
性格特性 全体 革新的
初期少数 前期多数 後期多数
採用遅滞者
採用者
採用者
採用者
採用者
11.37
9.84
10.40
9.78
冒険的な性格 10.24 10.59
オピニオン・
13.09 14.03
13.58
13.36
11.90
12.56
リーダー特性
11.00 ○ 14.16 ○ 12.83
13.10
慎重な性格 13.11 13.00
6.58
7.72 ☆
7.63 ☆
6.98
疑い深い性格 7.09 6.19
12.34 □×◎▽
伝統志向性 13.09 12.62 □ 13.21 × 13.92 ◎ 13.23 ▽
(注)同じ記号は採用段階間に5%水準の有意差があることを示す。
14
表2 ファッション関与の採用段階別の平均点
流行の採用段階
ファッション 全体 革新的 初期少数 前期多数 後期多数
採用遅滞者
採用者 採用者 採用者 採用者
関与
56.23 58.57 ○ 63.32 △ 60.80 ☆ 57.00 □ 44.68 ○△☆□
(注)同じ記号は採用段階間に5%水準の有意差があることを示す。
15
考察
1.流行の採用段階とファッション関与の関係が認
められなかった理由
①尺度の問題
革新的採用者と後期多数採用者のα係が.06
と低い。また、今回の調査はロジャースの定義よ
り、今回の調査は革新的採用者が約9倍、後期
多数採用者は約2倍だった。
→革新的採用者でない人が革新的採用者と、後
期多数採用者でない人が後期多数採用者と判
断されたのではないか。
16
表3 採用段階の人数
革新的 初期少数 前期多数 後期多数
採用者 採用者 採用者 採用者
ロジャースの定義
2.5
13.5
34.0
34.0
今回の調査
20.9
10.7
28.3
16.9
単位:%
採用
遅滞者
16.0
23.2
17
②革新的採用者のファッション関与の捉え方の
問題
革新的採用者の一ヶ月の洋服代は1~2万円と
初期少数採用者の次に高く(図2)、ファッション
雑誌を一ヶ月に一冊以上読んでいる人は最も多
い(表4)。このことから、革新的採用者のファッ
ションに対する興味は高いと言える。
図3のグラフより、革新的採用者の興味はファッ
ションだけにとどまらないことが分かる。
18
→ 革 新的 採 用者 は 他の採 用 者 と 比較 す る と
ファッション関与は高いと考えられるが、ファッ
ション意外にも興味があることが多いので、自己
のファッション関与を低く捉えたのではないか。
表4 ファッション雑誌の講読状況
採用段階 全く読まない 半年に1冊程度 2,3ヶ月に1冊程度
7.9
9.0
19.8
全体
13.5
0.0
10.8
革新
0.0
5.3
21.1
初期
2.0
4.0
24.0
前期 0.0
13.3
20.0
後期
19.5
22.0
22.0
遅滞
1ヶ月に1冊
41.2
51.4
52.6
46.0
40.0
22.0
単位%
1ヶ月に2冊以上
22.0
24.3
21.1
24.0
26.7
14.6 19
革新
初期
前期
後期
遅滞
4万円以上
3万円~4万円
2万円~3万円
1万円~2万円
5千円~1万円
5千円以下
0
10
20
30
図2 一ヶ月の洋服代
40
50
比率(%)
20
100
前期
(
後期
)
40
%
革新
80
初期
比
60
率
遅滞
20
0
その他
通信費
・ D V D
化粧品・美容
書籍
ガソリン代
雑貨
レジャー
外食
21
服・アクセサリー
図3 小遣いの使い道
C
D
2.
女子大生はファッション以外に外食やレジャー
などにも興味があるので、これを充実させた
ファッション雑誌を作れば、雑誌の売上があがる
のでないか。
3.
女子大生の一ヶ月の洋服代は平均1~2万円
なので、女子大生をターゲットとする場合は、こ
の金額内の洋服の値段を設定すればよい。
22