有限幾何学 第13回 Hallの結婚定理 次の結婚問題を考える. 男性の有限集合があり,各男性は何人かの女性と知り合いで あるとする.すべての男性が知り合いの女性と結婚できるように, カップルが組めるにはどんな条件が必要か? 男性 男性と知り合いの女性 東方 御坂,白井,初春 虹村 御坂 岸部 佐天,食蜂,白井 空条 佐天,白井 Hallの結婚定理 男性の集合をV1, 女性の集合をV2とすると, この問題は次の用語を用いることで 2部グラフG(V1,V2)の問題に置き換えて考えることができる. M⊆E(G)がV1からV2への完全マッチングであるとは • Mに属する辺は端点を共有しない かつ • V1に属する任意の頂点はMに属するある辺の端点である Hallの結婚定理 M⊆E(G)がV1からV2への完全マッチングであるとは • Mに属する辺は端点を共有しない かつ • V1に属する任意の頂点はMに属するある辺の端点である V1 V2 Hallの結婚定理 Hallの結婚定理 G=G(V1,V2):部集合がV1とV2の2部グラフ V1からV2への完全マッチングが存在する ⇔ V1の任意の部分集合Aに対して,|NG(A)|≧|A| NG(A)=∪v∊ANG(v) Hallの結婚定理 Hallの結婚定理の証明: V1からV2への完全マッチングが存在する ⇒ V1の任意の部分集合Aに対して,|NG(A)|≧|A| の証明: V1からV2への 完全マッチングMによって誘導される誘導部分グラフをG’とすると, V1の任意の部分集合Aに対して,|A|=|NG’(A)|≦|NG(A)| Hallの結婚定理 Hallの結婚定理の証明:(⇐の証明) V1={ v1,v2,…, vn}とおく. nに関する帰納法で証明する.( n=1のときは明らか ) V1の真部分集合Aに対して, |NG(A)|=|A|であるとき,Aを臨界集合と呼ぶ. 臨界集合が存在するか,存在しないかに分けて証明する. Hallの結婚定理 Hallの結婚定理の証明:(⇐の証明) 場合1:臨界集合が存在しない場合 x∊NG(vn)を選ぶ(どれでもよい). G’をGからvnとxを取り除いた結果生じるグラフとする. このとき,臨界集合が存在しないことから, V1-{vn}の任意の部分集合Aに対して, |NG’(A)|≧ |NG(A)|-|{x}|≧|A|+1-|{x}|=|A| よってG’に対して帰納法の仮定を適用することで V1-{vn}からV2への完全マッチングMが存在することが分かる. このとき,M∪{xvn}がV1からV2への完全マッチングとなる. Hallの結婚定理 Hallの結婚定理の証明:(⇐の証明) 場合2:臨界集合が存在する場合 V1’={v1, v2,…, vl}を臨界集合としてよい(注:l < n). V2’=NG(V1’)とおき, G’をV1’ ∪V2’によって誘導される誘導部分グラフとする. 注:V1’は臨界集合なので|V2’|=|NG(V1’)|=|V1’| このとき, V1’の任意の部分集合Aに対して,|NG’(A)|=|NG(A)|≧|A| よってG’に対して帰納法の仮定を適用することで V1’からV2’への完全マッチングM1が存在することが分かる. Hallの結婚定理 Hallの結婚定理の証明:(⇐の証明) 場合2:臨界集合が存在する場合 V1’’= V1-V1’ , V2’’= V2-V2’ とする. G’’をV1’’ ∪V2’’によって誘導される誘導部分グラフとする. このとき, V1’’の任意の部分集合Aに対して, |NG’’(A)|≧|NG(A∪V1’)|-|V2’|≧(|A|+|V1’|)-|V2’|=|A| よってG’’に対して帰納法の仮定を適用することで V1’’からV2’’への完全マッチングM2が存在することが分かる. M1∪M2がV1からV2への完全マッチングとなる. 提出課題13 問1(ハーレム問題): Bは男性の集合とし,Bの各男性は2人以上の 恋人と結婚したいとする. この問題に解があるための必要十分条件を見つけよ. 提出課題13 問1のヒント: ・ 2部グラフG(V1,V2)に置き換えて考える.(V1が男性の集合) ・ 必要十分条件は V1の任意の部分集合Aに対して,|NG(A)|≧2|A| ・ 必要性は簡単に分かる ・ 十分性の証明にホールの結婚定理を用いる ・ V1の各頂点を2個の独立点に分ける (∴ V1のコピーV1’を考える) ・ |NG’(A)|=|NG(A’)|≧2|A’|≧|A|
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