迫り来る新型インフルエンザ 鳥インフルエンザの行方

迫り来る新型インフルエンザ
鳥インフルエンザの行方
個人・企業の対策
風邪とインフルエンザの違い
原因
風邪
インフルエンザ
アデノウイルス、ライノウイルス等
900種類、一部細菌
インフルエンザウイルスA・B、C
感染経路 接触感染
飛沫感染、空気感染
症状
喉の痛み、鼻水、くしゃみ、咳
発熱は37-38度程度
高熱、強い頭痛、全身倦怠、筋
肉痛、関節痛等激しい症状
初期
鼻や喉の乾燥感、くしゃみ
悪寒、頭痛、突然の高熱
その他
全身症状はない
鼻や喉の症状は、全身症状の後
期間
比較的短期間
5日位、激しい症状
合併症
中耳炎、副鼻腔炎等
気管支炎、肺炎、脳炎、ライ症候
群、熱性けいれん等
インフルエンザとSARSの違い
原因
インフルエンザ
SARS
インフルエンザウイルスA・B・C
新型コロナウイルス
感染経路 空気感染、飛沫感染、 接触感染
飛沫感染、接触感染
症状
高熱、強い頭痛、全身倦怠、筋肉痛、
関節痛等激しい症状
38℃以上の発熱、咳、息切れ
、呼吸困難、肺炎
経過
悪寒、頭痛、突然の高熱。咳、くしゃみ 急激な発熱、咳などのインフル
などの局所症状は後。通常1週間程
エンザ様の前駆症状で発症。
度で軽快。
約1週間後に呼吸困難、乾性
の咳などの肺炎症状が現れ始
め、それとともに感染力も増強
する
その他
潜伏期(1日〜5日:平均3日)
潜伏期中も感染性あり
潜伏期(2日〜10日:平均5日)
潜伏期、当初は感染性無し
鳥インフルエンザとは?
鳥の間で流行するインフルエンザで、普通は低
病原性。致死性の高いものが高病原性鳥インフ
ルエンザ(High Pathogenic Avian Influenza)
A型ウイルスでサブタイプは16×9種類存在
人への感染はまれで、濃厚接触によるケースの
み。熱を通せば鶏肉も卵も感染源にはならない
鳥インフルエンザウイルスは渡り鳥を介して広が
っている。鳥の輸入も関連が重要視されている
WHOに報告されたヒトの高病原性鳥インフルエンザA
(H5N1)感染確定症例数
アゼルバイジ
ャン
カンボジア
中国
ジブチ
エジプト
インドネシア
イラク
ラオス人民民
主共和国
ナイジェリア
タイ
トルコ
ベトナム
合 計
2003
確定
死亡
症例
例数
数
2004
確定
死亡
症例
例数
数
2005
確定
死亡
症例
例数
数
2006
確定
死亡
症例
例数
数
2007
確定
死亡
症例
例数
数
0
0
0
0
0
0
8
5
0
0
1
0
0
0
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0
1
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0
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0
0
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0
0
0
0
0
0
0
0
4
8
0
0
20
0
4
5
0
0
13
0
2
13
1
18
55
3
2
8
0
10
45
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
4
0
0
0
3
4
0
17
0
29
46
0
12
0
20
32
0
5
0
61
98
0
2
0
19
43
0
3
12
0
115
合計
確定症
例数
死亡例数
0
8
5
1
3
0
20
33
0
1
2
0
5
29
0
7
25
1
38
108
3
7
16
0
15
87
2
0
2
2
2
2
0
3
4
0
79
1
0
0
7
67
1
0
0
4
44
1
25
12
100
330
1
17
4
46
202
確定症例総数は死亡例数も含む。
WHOは検査により確定された確定例だけを報告する。
2007/10/09
鳥インフルエンザウイルスの広がり
•
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•
カモなど野生の水鳥は感
染しても無症状で、ウイル
スのみ糞で排出し続ける(
保菌者)
カモなどの渡り鳥は冬場湖
沼地帯に降り立ち湖沼の
水をウイルスで汚染する
水、直接接触を介して養鶏
に感染。養鶏は感受性が
高く、病原性が高い
養鶏と共存するブタ・馬・ア
ヒルなどにも時に感染
さらに鳥→ヒト、ブタ→ヒト
過去のパンデミック
1850
1847
42 年
1889
1900
1918: “スペインフル”
A(H1N1)
29 年
1918
39 年
1950
1957
1968
5千万人の死亡者
11 年
1957: “アジアフル”
2百万人の死亡者
A(H2N2)
1968: “香港フル”
百万人の死亡者
2000
A(H3N2)
香港インフルエンザ以来パンデミックは発生していない
WHOのフェーズ分類
フェーズ
定義
1
ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されてい
ないが、ヒトに感染する可能性を持つウイルスが動
物から検出される。
2
ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されてい
ないが、動物からヒトへ感染するリスクの高いウイル
スが動物から検出される。
3
ヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認さ
れているが、ヒトからヒトへの感染は基本的にない。
4
ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が
確認されているが、感染集団は小さく限られている。
5
ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が
確認され、大きな集団発生が見られる。パンデミック
発生のリスクが高まる。
6
パンデミックが発生し、世界の一般社会で急速に感
染が拡大している。
イメージ
呼称
鳥
イ
ン
フ
ル
エ
ン
ザ
新
型
イ
ン
フ
ル
エ
ン
ザ
WHOフェーズ、米国フェーズ
新型インフルエンザ、パンデミック?
ヒトからヒトへ容易に感染するヒトのインフルエ
ンザの大流行
過去に流行した事のない新型インフルエンザ
であり、ヒトに免疫がない
今流行の鳥インフルエンザから発生するかは
不明
いつ・どこでパンデミックが発生するか不明
今、何故問題になっているのか?
•
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•
鳥、ヒト、あらゆる動物に感染する機会が増えれば増える
ほど、ウイルスが変異する確率は高くなる
渡り鳥の移動の阻止、鳥類全ての処分は不可能である
パンデミックが何処かで発生すれば、その波は一気に世
界中に広がる
パンデミック発生時には航空船舶の移動制限が行われ、
物資の流通が困難になる
社会的不安の発生、暴動のおそれもある
新型に対するワクチン製造は半年かかるため、流行の第
一波には間に合わない
効果が期待されている抗ウイルス薬の備蓄が十分でない
(2008年までに8100万人分備蓄予定:米国)
パンデミックに備える投資は通常のインフルエンザや他の
災害の被害を減じる事につながる
特効薬? タミフル
 基本的な作用機序
ウイルス増殖後の発芽を阻害。ウイルスを直接殺さない
 使い方
予防的投与、治療投与。48時間以内開始、出来るだけ早急に
 副作用
腹痛、下痢、吐き気、発疹など軽微
 授乳:基本的に授乳禁止
母乳中へ移行するが微量
 小児への影響:精神錯乱?
インフルエンザ自体に熱性せんもう作用
 老人、体力低下者に優先投与
使いすぎは耐性を招く。全ての症例に使ってはいけない
英国:ハイリスク患者のみに処方。慢性の呼吸器疾患患者、腎疾患患者、糖
尿病患者、65歳以上の患者など。
米国政府の方針
6月13日、米国政府の関係部局は、起業界、
保健医療業界、宗教界に対して、Pandemic
Flu対策として、食料品の備蓄、家庭に留まる
ための準備を米国市民に促すように求めた。
保健福祉省のマイク・レービット長官
「Pandemic Influenzaに対して準備すること
は、各自の責任分担である」
新型インフルエンザ流行に備えたチェックリスト家庭用
Pandemic Infuluenza Planninng:
A Guide for Individuals and Families
By U.S. Department of Health and Human Services
http://www.pandemicflu.gov/plan/tab3.html
1.流行に備えた計画
水・食料品の備蓄
薬剤の備蓄(痛み止め、胃薬、風邪薬、電解
質液、ビタミン剤等)
家庭での看病の仕方について話し合っておく
地域グループの緊急事態対策に進んで参加
する
コミュニティの対策が機能するために、自ら参
加する
2.感染の広がりを抑える方法
石鹸水での手洗いを子供に教え、自ら
も正しいモデルとなる
咳・くしゃみ時にティッシュでカバーする
事を子供に教え、自らも正しいモデルに
なる
病人に近づかないように教え、もし病気
の場合には学校は休ませる
3. 緊急時のために自宅に備えておく物
調理済み食品、プロテイン・フルーツバー、
シリアル、豆類、ドライフルーツ、クラッカー、
缶入りジュース、ミネラルウォーター、ベビ
ーフード、ペットフード
血糖計や血圧計、石鹸、アルコール系の
手消毒薬、解熱剤、体温計、下痢止め、ビ
タミン剤、電解質液、食器消毒剤、懐中電
灯、電池、ラジオ、缶切り、ゴミ袋、ティッシ
ュ、トイレットペーパー、使い捨ておむつ
米国内企業向け
新型流行に備えたチェックリスト
By CDC PandemicFlu.gov
パンデミック第一波の仮定
罹患率、病原性など予測不能であるが・・
世界どの地域で発生しても米国上陸まで1ヶ
月強
社員の25%が欠勤
第一波の流行は最大8週間継続
1.流行に備えた準備計画
新型インフルエンザ対策委員会の設置
必要不可欠な社員と業者を特定
代替労働力のトレーニング
製品需要のシナリオを作っておく
経済的損出の算出
国内、国際移動の影響の算出
最新情報のアップデートシステムの確立
緊急時の通信計画の確立
計画の定期的な予行演習
2.従業員、顧客対策
欠勤社員数の予測
社員同士や顧客との接触方法についての検討
インフルエンザワクチンの推奨
医療機関へのアクセスの可否を検討し、必要なら
ば改善
メンタルサポート機関へのアクセスの可否を検討
し、必要ならば改善
重要な社員と顧客を特定し、計画に組み入れて
おく
3.基本理念の確立
社員の欠勤、復帰時期に対する理念の確立
フレックスタイム、自宅勤務に対する理念の確立
職場でのインフルエンザ拡大予防対策
新型インフルエンザ感染が疑われる社員に対す
る処置方法、対策理念の確立
流行発生地域への渡航、発生地域の社員の搬
送、帰国に関する理念の確立
流行時計画の施行と中止、企業活動の中止等に
関する権限者、条件、手続きの設定
4.従業員と顧客保護のための資材配給
全ての事業所に感染防御用品(ハンドソープ、
ティッシュ、ゴミ箱等)を提供
従業員・顧客との通信手段の確保
緊急時に利用可能な医療機関の確保
5.従業員への伝達と教育
 新型流行についての基礎的予防教育(症状、感染の仕
方、手洗い、咳のエチケット等)の普及
 従業員の恐怖や不安、噂や誤情報の発生に対して早め
に手を打つ
 情報の伝達が文化的、言語的に適切である事を確認す
る
 作成した流行に対する準備や対応計画について従業員
に予め知らせておく
 自宅療養患者のケア方法について情報提供する
 従業員や取引業者、顧客への情報伝達のプラットホーム
(ホットライン、ウェブサイト等)の開発
 新型流行や対応方法についての正確な情報源を特定し
ておく
6.外部組織との連携と地域への協力
 保険会社や医療機関と流行時の計画を共有し、対応能力を
検討しておく
 政府、州や地方公共医療施設と流行時の計画を共有し、対
応能力を検討しておく
 地域に対して寄与可能な点について、州や地方公共医療施
設に伝達しておく
 コミュニティへの寄与を強化するための、他企業と協力可能
な最良の方法を共有しておく
大流行抑制のための数理モデル
 パンデミックが外国で発生してから50日で米国に到達、そ
の60日から80日後に感染のピークが来る
 中等度で55%、高度で68%の感染率、治療が必要なのは
半数。(米国だけで8800万人から1億人が要治療)
 出入国あるいは国内旅行の制限は、実行率が99%を上回らな
いかぎり、感染拡大を2~3週以上遅らせない
 流行ピーク時の学校閉鎖は、発病率のピークを最高40%低減
させる
 患者の隔離や家庭での検疫は、大きな効果を上げる
 患者の治療により感染を抑制することはできるが、あくまで
発症から1日以内に抗ウイルス薬を投与した場合だけである
 人口の50%に投与できるだけの治療薬がある場合は、家庭を
主体とした予防薬投与と迅速な学校閉鎖とを組み合わせるこ
とにより、発病率を40~50%低減できる
 世界的大流行に先だってワクチンを備蓄しておけば、ワクチ
ンの有効性は低くても発病率を大きく低減できる可能性があ
る
Nature Vol.442 No.7101, Aug 27th 06
情報サイト
 CDC新型インフルエンザ関連情報
http://www.cdc.gov/flu/pandemic/
 米国政府による新型インフルエンザ情報サイト
http://www.pandemicflu.gov/
 厚生労働省・新型インフルエンザ対策情報
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkakukansenshou04/index.html
 外務省海外安全ホームページ・感染症情報
http://www.anzen.mofa.go.jp/sars/sars.html
 労働者健康福祉機構 海外勤務健康管理センター
http://www.johac.rofuku.go.jp/news/060130.html
 国立感染症研究所・感染症情報
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
 在ニューヨーク日本国総領事館
http://www.cgj.org/jp/html/index.html