数学のかたち ε − N 論法 Masashi Sanae 極限値の直観的な定義 {an}を実数からなる数列として、nを限りなく大きく する。an が一定の値αに限りなく近づくとき、 lim an= α 𝑛→∞ で表す。 【命題】 a,b を実数とする。このとき 任意の ε > 0 に対して |a – b|< ε が成り立つならば、a = b である 証明 a ≠ b と仮定する。 𝜀0 = 𝑎−𝑏 2 𝑎 − 𝑏 < 𝜀0 = とおくと、仮定より 𝑎−𝑏 2 ・・・(*) が成り立つが、(*)より 𝑎 − 𝑏 < 0 なので矛盾。 よってa = b ■ 【命題】の直観的イメージ a,b を実数とする。このとき 任意の ε > 0 に対して |a – b|< ε が成り立つならば、a = b である どんな小さな数 ε > 0 をとっても、|a – b|の値は ε より小さくできる。 極限値の厳密な定義 任意の ε > 0 に対して、ある N0 ∈ N が存在して、 n≧N0 をみたす任意の n∈N について | an − a|< ε をみたすとき、数列 an の極限値は a であるといい、 lim an= α 𝑛→∞ で表す。 定義の直観的なイメージ どんな小さな数 ε > 0 を決めても、その ε に対応し て十分大きな数 N0 を決めれば、その番号から先 では an は a との差が ε より小さいところ(近傍)に 入っている。 1 lim = 𝑛→∞ 𝑛 【例題1】 0 (証明) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 1 𝜀 + 1 と定める。このとき、 N0 > 1 𝜀 よって、n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 1 𝑛 1 𝑛 −0 = 1 𝑛 ≤ 1 𝑁0 <𝜀 − 0 < 𝜀 が成り立つから、 1 lim = 𝑛→∞ 𝑛 0 ■ 𝑛+3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+2 【例題2】 1 (証明) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 1 − 𝜀 2 + 1 と定める。このとき、 N0 +2 > 1 𝜀 よって、n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 𝑛+3 − 𝑛+2 𝑛+3 − 𝑛+2 1 = 1 𝑛+2 ≤ 1 𝑁0+2 1 < 𝜀 が成り立つから、 <𝜀 𝑛+3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+2 1 ■ 2𝑛+3 lim 2 = 𝑛→∞ 𝑛 【例題3】 0 (証明) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 1+ 1+3𝜀 𝜀 + 1 と定める。このとき、 N0 > 1+ 1+3𝜀 𝜀 よって、 n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 2𝑛+3 𝑛2 < 2𝑛+3 𝑛2 2 𝑛 −0 = + 2 1+ 1+3𝜀 𝜀 + 3 𝑛2 ≤ 3 1+ 1+3𝜀 2 𝜀 2 𝑁0 = + 3 𝑁 02 2𝜀 1+ 1+3𝜀 +3𝜀2 − 0 < 𝜀 が成り立つから、 1+ 1+3𝜀 2 2𝑛+3 lim 2 = 𝑛→∞ 𝑛 =𝜀 0 ■ どうやって n0 を決めるのか 1 lim = 𝑛→∞ 𝑛 【例題1】 1 𝑛 −0 = すなわち よって 1 𝑛 ≤ 1 𝑁0 N0 > N0 = <𝜀 1 𝜀 1 𝜀 0 としたい。 としたい。 +1 とすればよい。 どうやって n0 を決めるのか 𝑛+3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+2 【例題2】 𝑛+3 − 𝑛+2 1 = N0 +2 > N0 = 1 𝑛+2 1 𝜀 1 − 𝜀 2 +1 ≤ 1 𝑁0+2 <𝜀 1 どうやって n0 を決めるのか 2𝑛+3 lim 2 = 𝑛→∞ 𝑛 【例題3】 2𝑛+3 𝑛2 −0 = 2 𝑛 3 + 2 𝑛 ≤ 2 3 + 2 𝑁0 𝑁0 0 <𝜀 𝜀𝑁02 −2 𝑁0 −3 > 0 N0 > 1+ 1+3𝜀 𝜀 N0 = 1+ 1+3𝜀 𝜀 +1 問題 問題1 3𝑛 lim = 𝑛→∞ 𝑛−2 問題2 𝑛2+1 lim 2 = 𝑛→∞ 𝑛 問題3 2 𝑛−3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+1 3 1 2 3𝑛 lim = 𝑛→∞ 𝑛−2 【問題1】 3 (証明) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 6 𝜀 + 3 と定める。このとき、 N0 −2 > 6 𝜀 よって、n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 3𝑛 − 𝑛−2 3𝑛 − 𝑛−2 3 = 6 𝑛−2 ≤ 6 𝑁0−2 3 < 𝜀 が成り立つから、 <𝜀 3𝑛 lim = 𝑛→∞ 𝑛−2 3 ■ 𝑛2+1 lim 2 = 𝑛→∞ 𝑛 【問題2】 1 (証明) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 1 𝜀 + 1 と定める。このとき、 N0 > 1 𝜀 よって、n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 𝑛2+1 2 − 𝑛 𝑛2+1 2 − 𝑛 1 = 1 𝑛2 ≤ 1 𝑁02 <𝜀 1 < 𝜀 が成り立つから、 𝑛2+1 lim 2 = 𝑛→∞ 𝑛 1■ 2 𝑛−3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+1 【問題3】 2 (証明) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 5 − 𝜀 1 2 + 1 と定める。 N0 > 5 − 𝜀 1 2 よって、n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 2 𝑛−3 − 𝑛+1 2 𝑛−3 − 𝑛+1 2 = 5 𝑛+1 ≤ 5 𝑁0+1 2 < 𝜀 が成り立つから、 <𝜀 2 𝑛−3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+1 1■ 2 𝑛−3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+1 【問題3】 2 (別解) 任意の ε>0 に対して、 N0 ∈ N を N0 = 25 𝜀2 + 1 と定める。 N0 > 25 𝜀2 N0 > 5 𝜀 よって、n≧ N0 をみたす任意の n∈Nについて、 2 𝑛−3 − 𝑛+1 2 𝑛−3 − 𝑛+1 2 = 5 𝑛+1 < 5 𝑛 ≤ 2 < 𝜀 が成り立つから、 5 𝑁0 <𝜀 2 𝑛−3 lim = 𝑛→∞ 𝑛+1 1■
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