下水試料を対象としたエストロゲンの GC/MSによる高感度測定法 帝人エコ・サイエンス(株) ○末岡峯数、 大岩俊雄、 田辺 薫 独立行政法人土木研究所 八十島誠、 小森行也、 田中宏明 目 次 1. 2. 3. 4. はじめに - 測定対象エストロゲン 試料の前処理フロー&GC/MS測定条件 誘導体化の検討 測定精度 (1) 検量線 (2) 繰り返し測定精度 (3) 添加回収試験 5. 下水試料の測定結果 6. まとめ 付表 GC/MSクロマトグラム-標準液&下水試料 1.はじめに ・下水試料は多くの夾雑成分を含むため、前処理精製法が重要で ある。 ・エストロゲン類のホルモン作用は、内分泌撹乱化学物質のエスト ロゲン様活性に比べて高く、低濃度でも生物的影響を及ぼす可 能性があるため、高感度測定法が必要である。 ・LC-MS/MS法より更に高感度測定法の検討と確認。 測定対象エストロゲン 2.下水試料の前処理精製フロー 基 本 フロ ー E1 , E2 , EE2 測定 E1 , E2 , EE2 , E3 測定 試 料 ↓ 濾 過 ↓ ろ 液 ↓ ← SS 抽出液は濾液に (MeOH 超音波抽出) サロゲート 添加 各 d体 20ng 固相抽出 ↓ 溶 出 ↓ 濃縮乾固 ↓ 溶 解 ↓ 遠心分離、N2ブロー乾燥 ← 溶出溶媒 6ml ← ← 溶出溶媒 EtO A c/M eO H (1/1) 10%アセト ン/D C M アセト ン 洗浄 6ml N 2ブロー ← MeOH 1ml ← MeOH 5ml N 2ブロー ← DMFA 100μl BSA 200μl TM S化 (80℃/60min) ↓ 濃縮乾固 N 2ブロー ↓ 溶 解 ← ウンデカン ↓ G C -M S EtO A c/M eO H (5/1) n-Hx/DCM(1/1) 1ml N H 2カラ ム ↓ 溶 出 ↓ 濃縮乾固 ↓ 溶 解 ↓ O asi s H LB N 2 ブロー フ ロリ ジルカラ ム 同 上 10ml ↓ 溶 出 ↓ 濃縮乾固 ↓ 溶 解 ↓ C 18 カート リ ッ ジ 100μl HR-GC/MS測定条件 G C M S 装置 カラム 温度 (昇温速度) 注入量 H P 6890 Series H P -5M S 0.25m m × 30m 150℃ - 300℃ (20m in) ( 20 ℃・ m in-1 ) 1 μl 装置 イオン化 分解能 測定イオン(SIM ) 測定対象 E1 /E1-d2 E2 /E2-d3 EE2-1/EE2-d4 EE2-2/EE2-d4 E3 /E3-d2 JEO L JM S-700D ( 二重収束型 ) EI ( + ) 1000 SIM (m /e) 342.21 344.22 416.26 419.28 368.22 372.25 425.24 429.26 504.30 506.31 TM S化物 3-TM S-E1 3,17-TM S-E2 3-TM S-EE2 3,17-TM S-EE2 3,16,17-TM S-E3 HR-GC/MS 測定条件 2 参 考 TM S化物のM S(EI)イオンの相対強度 TM S化物 3-TM S E1 3,17-TM S-E2 3-TM S-EE2 3,17-TM S-EE2 3,16,17-TM S-E3 M+ 10 10 9 (1 ) 11 〔M -C H3)〕+ 備 考 ( 1 ) : 基準 (1 ) (1 ) (1 ) 2 (1 ) 4.測定精度 (2) 繰り返し測定精度 標準液の繰り返し測定 (LC -M S/M S法との比較) 注入量 10 pg 測定対象 G C /M S法 LC -M S/M S法 注入量 1μl/10ppb(1ng/0.1m l)標準液 注入量 10μl/ 1ppb(1ng/1m l)標準液 H R-G C /M S測定(n=6) 平均値 C .V. ID L ppb % pg LC -M S/M S測定(n=6) 平均値 C .V. ID L ppb % pg E1 10.44 1.2 0.37 1.11 6.0 2.1 E2 9.97 0.5 0.15 1.11 6.9 2.3 EE2 10.58 1.4 0.44 0.99 10.4 3.1 E3 10.61 1.7 0.53 1.19 10.4 3.7 ID L :装置検出下限(注入量の 3S値) LC-MS/MSとの検出下限値の比較 測定対象 H R - G C /M S 法 ng・ l-1 参考 LC -M S /M S 法 ng・ l-1 E1 0.04 0.2 E2 0.02 0.2 EE2 0.04 0.3 E3 0.05 0.4 分析試料量 1L 検出下限値 標準試料の繰り返し測定の 3 S 値 4.測定精度 (3) 添加回収試験結果 測定対象 無添加 ng 純水 添加 ng 二次処理水 流入水 回収率 無添加 添加 回収率 無添加 添加 回収率 % ng ng % ng ng % E1 0.1 20.1 100.1 1.0 21.5 102.6 4.0 26.0 110.0 E2 0.0 21.1 105.7 0.2 20.2 99.6 1.2 22.0 103.6 EE2 0.0 18.9 94.6 0.0 18.9 94.5 0.0 18.7 93.5 E3 0.0 20.0 99.9 0.9 20.3 97.0 24.3 44.4 100.5 試料 純水 、二次処理水 、流入水 添加量 各 20 ng 内部標準(サロゲート) 各 20 ng ( 各 0.5L ) 5.下水試料のエストロゲン測定結果 下水処理場概要 水処理方式 標準活性汚泥法 エスト ロゲン測定結果 HR-GC/MS法 下水試料 E1 流入下水 二次処理水 (最終沈殿池流出水) 測 定 対 象 E2 EE2 備 考 E3 28.84 3.99 <0.04 99.82 4.78 0.24 <0.04 0.41 -1 単位:ng・ l (参考) LC -M S /M S 法 下水試料 E1 流入下水 二次処理水 (最終沈殿池流出水) 測 定 対 象 E2 EE2 備 考 E3 27.2 3.2 <0.5 130.1 4.4 <0.5 <0.5 <0.5 -1 単位:ng・ l EE2 は流入下水及び二次処理水とも検出されなかった。 (検出下限値以下) 6. まとめ 下水試料を対象としたエストロゲン遊離体4種(E1,E2,E3,EE 2)についてHR-GC/MSを用いた高感度測定法について検討した。 下水試料の前処理精製法は、既報のLC-MS/MS法で実施して いる方法に準じて実施した。 誘導体化は市販のシリル化剤について比較し、反応が早く濃縮が 容易なBSA(N,O-Bis(trimethylsilyl)acetamide)を用いて検討した。 エストロゲン遊離体のBSAシリル化物のHR-GC/MS測定は、以 下のSIMイオンを用いて測定した。 E3 EE2 E2 E1 測定対象 3, 16, 17-T M S -E3 3, 17-T M S -EE2 3-T M S -EE2 3, 17-T M S -E2 3-T M S -E1 シリ ル化物 M+ 〔 M -C H 3〕 + M+ M+ M+ S IM イオン 6. まとめ (2) HR-GC/MSを用いた測定は、四重極MSを用いたLC- MS/MS法に比較して、いずれも約1桁高い検出感度が得 られた。 下水試料への添加回収試験は、いずれも94~110%の 良好な結果が得られた。 標準的な下水処理場の流入水 及び 二次処理水について 測定し、従来のLC-MS/MS法の検出下限値以下の濃度 まで検出できた。ただし、EE2については、流入水及び二 次処理水とも0.04ng・L-1のレベルを下回っていた。
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