A 71-year-old woman with chronic hypertension 動脈硬化症による腹部大動脈瘤 17班 奥野美季 清水亨 辻圭太 松村勇輝 中村祥子 1 Case history ・71歳 女性 ・慢性高血圧、腎機能正常 ・降圧薬カプトプリル処方 2 数週後 • 軽度の膀胱炎 (抗生物質で治癒) • BUN 72mg/dl • クレアチニン 3.6mg/dl にそれぞれ上昇 ↓ • カプトプリル中止(薬物有害反応の恐れ) • 超音波検査(腎の大きさ測定)→偶然、腹 部大動脈瘤発見 (4.0×4.5cm) 3 大学病院にて • 跛行、起坐呼吸が陽性 • 心電図検査→前中隔心筋梗塞の既往 4 数日後 • BUN、クレアチニン値が正常に戻る • 大動脈造影 大腿部からのカテーテル:粥状硬化症のた め失敗 腰部からのカテーテル→腎動脈の狭窄と 大動脈瘤が造影 5 手術 ・腎臓専門医→手術適応でない BUN、クレアチニン値が正常に戻ったため ・外科医→大動脈瘤の根治手術を決定 手術により腎動脈の狭窄も治療可能のため ↓ ・術後ショック→多臓器不全→腸管全体の梗塞→死 亡 6 目次 I. カプトプリル II. 動脈瘤 (腹部大動脈瘤) III. 粥状硬化症 IV. その他(腎動脈狭窄、ショックな ど) V. どのようにすべきだったか? 7 Ⅰ.カプトプリルの薬理作用 • ACE(angiotensin converting enzyme)を 阻害してangiotensinⅡの生成を阻害する。 これによってR‐A‐A系を遮断し、血圧を下 げ、リモデリングを抑制する。高血圧の第 一選択薬。 • 副作用 空咳・腎機能低下 8 R-A-A系 Captopril 血圧↓ ACE 腎血流量↓ 腎臓 傍糸球体装置 レニン AngⅠ 交感神経 NA分泌 AngⅡ 血管収縮 血管抵抗↑ Aldosterone Na+,水保持 angiotensinogen 血圧↑ 9 なぜカプトプリルを用いると 腎機能が低下するか? • AngⅡは輸出細動脈を収縮させることによ り糸球体圧を上昇させて、GFRを増加させ る。 • カプトプリルを用いるとAngⅡの生成が阻 害されるためにGFRが減少して腎機能が 低下する • 腎機能低下の指標 BUN 血清クレアチニン 10 ・BUN(blood urea nitrogen:血清尿素窒素) 正常値:10‐20mg/dl ・血清クレアチニン 筋肉のクレアチンリン酸分解産物 正常値:0.4-1.4mg/dl 両者ともにGFRの減少とともに値が上昇する 11 目次 I. カプトプリル II. 動脈瘤 (腹部大動脈瘤) III. 粥状硬化症 IV. その他(腎動脈狭窄、ショックな ど) V. どのようにすべきだったか? 12 Ⅱ.動脈瘤 • 定義:動脈壁が何らかの原因で破綻し、正常動 脈径の50%以上に拡張した状態 • 分類:a.真性動脈瘤 b.仮性動脈瘤 c.解離性動脈瘤・・動脈壁が2層に解離 • 発生部位:胸部、胸腹部、腹部 13 14 腹部大動脈瘤 15 腎動脈下腹部大動脈瘤が最も多い 16 原因 1.粥状動脈硬化症 2.嚢胞性中膜壊死 3.感染(梅毒、真菌、結核など) 4.その他(外傷など) 17 腹部大動脈瘤 • 男性に頻発、女性の場合は閉経後発症 • 原因は90%以上が粥状硬化症 • 一般的に無症状。破裂、また破裂の前兆として 症状が現れる。 • 症状:腹痛、跛行など ※この症例では瘤内にできた血栓による塞栓形成 や大腿の粥状硬化症が、跛行の原因と考えられ る。 18 腹部大動脈瘤 19 予後 • 動脈瘤の大きさと、合併する冠状動脈や 脳血管疾患の重篤度に関与 • 本症例では6cm未満なので、予後は比較 的良好 生存率(平均69歳) 1年後 3年後 5年後 10年後 瘤径6cm未満 75. 0% 68. 3% 47. 8% 11.1% 瘤径6cm以上 47. 5% 12. 1% 6.0% 0% 20 治療 • 根本的治療は手術のみ • 手術の場合は人工血管移植 • 手術適応 1.瘤径5cm以上 2.破裂、切迫時は早期手術が必要 →緊急手術をしても約半数は死亡 • 虚血性心疾患、下肢の閉塞性動脈硬化症の合 併に注意 21 直型 Y型 人工血管 22 診断 1.臍上で体表から直接触れるので患者が発 見したり、他疾患の診察で偶然発見される ことが多い。 2.検査法:超音波、CTスキャンなど 3.大動脈造影法による同定 23 大動脈造影法 aortography 造影剤注入による大動脈あるいはその分枝 のX線像 ・逆行性~:大動脈の分枝の1本(今回は大 腿動脈)から逆行して行う。 ・経腰~:背中から直接カテーテルを挿入し て行う。 24 カテーテルの挿入 大腿動脈からのカテーテル挿入(逆行性) 25 カテーテルの挿入 経腰でのカテーテル挿入(経腰法) 26 • 超音波診断 特に腹部大動脈瘤の診断において用い られる。 瘤の存在、瘤径、破裂や周囲の血腫の有 無、解離の有無、分枝動脈の状態などを 正確かつ容易に診断をつけることができる ため、手術の適応の決定に有効である。 27 目次 I. カプトプリル II. 動脈瘤 (腹部大動脈瘤) III. 粥状硬化症 IV. その他(腎動脈狭窄、ショックな ど) V. どのようにすべきだったか? 28 Ⅲ.粥状動脈硬化症 • 定義:内膜の巣状の線維性肥厚、脂質沈着、アテ ロー ムを生じ、さらに合併病変と して石灰沈着、潰 瘍、血 栓などを伴うもの • 好発部位:大動脈、冠動脈、脳底動脈 • 症状:一般的に無症状だが、主要分枝に 狭窄、閉塞を生ずると症状が現れる。 29 粥状硬化症の経過 30 粥状硬化症の分布図 瘤の形成 31 リスクファクター • • • • 高脂血症 高血圧 喫煙 肥満 四大因子 • 他に糖尿病、年齢、ストレスなども 32 治療 • 根本的治療はない • 1次予防:生活改善(禁煙、体重のコントロール、 血中コレステロールの減少、運動の持続) • 2次予防 a.薬物療法 抗血小板薬 抗凝固薬 高脂血症薬 b.血管形成術、血管内膜除去、バイパス術 33 目次 I. カプトプリル II. 動脈瘤 (腹部大動脈瘤) III. 粥状硬化症 IV. その他(腎動脈狭窄、ショックな ど) V. どのようにすべきだったか? 34 Ⅳ.腎動脈の狭窄 考えられる原因・・・ • 大動脈瘤による圧迫 • 粥状動脈硬化症による狭窄 35 ショック shock ①心原性・・・・・・心筋のポンプ機能の低下 (心筋に内在する梗塞など) ②低容量性・・・血液ないし血漿の喪失 (出血、重症な火傷、外傷な ど) ③敗血症性・・・全身性の細菌感染 (エンドトキシンショック) 36 ①、②、③の結果 ⇒心拍出量および有効な循環血液量の低下 ⇒進行性の血圧低下とそれに伴う虚脱 ⇒組織の灌流異常と細胞の低酸素状態 37 今回の症例では・・・・・・ ・過去の心筋梗塞と粥状硬化症による心臓ポンプ 機能の低下 ・大動脈瘤手術の際に大出血し、体液が著しく低下 この2点によって術後にショックが引き起こされたと 考えられる。 また腹部大動脈瘤の根治手術後…… 上・下腸間膜、内腸骨動脈の養う組織が虚血 ⇒腸壊死 38 腸管壊死を防ぐには? 特に、下腸間膜動脈が閉塞していても・・・ ①両側の内腸骨動脈に血流がある →下腸間膜動脈の再建不要 ②両側の内腸骨動脈に血流がない →再建必要 ※今回の症例では、再建が行われて いなかったのではないかと考えられる 39 下腸間膜動脈 40 下腸間膜動脈 内腸骨動脈 41 目次 I. カプトプリル II. 動脈瘤 (腹部大動脈瘤) III. 粥状硬化症 IV. その他(腎動脈狭窄、ショックな ど) V. どのようにすべきだったか? 42 Ⅴ.どのようにすべきだったか? アテローム性の心疾患(心筋梗塞の既往、大腿部大動脈 造影がうまくいかなかったなどによる)、心不全(起坐呼 吸など)があったと考えられる。 ↓ 大動脈瘤は5cm以下なので経過観察して、 アテローム性硬化症に注目したほうがよ かった ※原則として ①アテローム性心疾患の治療を優先 ②瘤の大きさにより、瘤と同時に手術(瘤の大きさが小) 43 2回に分けて手術(瘤の大きさが大) 問題 問1.カプトプリルの説明として誤っているも のはどれか? ①血圧を低下させる ②腎機能を低下させる ③Aldosteroneの合成を促進する ④ACEの作用を阻害する 44 答え ③ 45 問2.動脈瘤の説明として誤っているものは どれか? ①腎動脈直下の腹部大動脈瘤が一番多い ②瘤の径が3cmになれば、すぐに手術 すべきである ③原因として粥状硬化症がある ④原因として梅毒の感染がある 46 答え ② 47
© Copyright 2024 ExpyDoc