大動脈瘤とは 動脈とは、心臓から血液を全身に運ぶ管です。大動脈はその中で最も太い動脈です。老化やその他の原因で、 大動脈の一部が弱くなり、ふくらんだものを動脈瘤と言います。動脈瘤のできる部位により胸部大動脈瘤、腹部大 動脈瘤、胸腹部大動脈瘤と呼ばれています。腹部大動脈瘤は、おなかに拍動する固まりを触れることもあり、比 較的発見しやすいのですが、胸部大動脈瘤の場合は体の外から触れることができず、無症状に経過するため、 検査で発見する必要があります。 病気の危険性について 初期の段階で動脈瘤がまだ小さい場合は、大きな危険性はありません。しかし動脈瘤が拡大し、弱くなった 大動脈の壁が血流の圧力に耐えることができなくなると、大動脈瘤は破裂してしまう可能性があります。 治療について 大動脈瘤は5cmを超えると破裂の危険が高くなりますので、治療を行うことを薦められます。また5cm以下で あっても拡大速度が速い場合や形が悪い(嚢状瘤)場合は手術適応ととなります。切迫破裂や破裂は緊急手術 となります。 主な治療法には以下の2つの方法があります。 ①人工血管置換術 ②ステントグラフト内挿術 ①人工血管置換術とは 大動脈瘤の手術は瘤を切除し人工血管に置き換える(置換する)手術です。 人工血管は合成繊維ででき ており耐久性に問題はありません。人工血管置換術は確実な治療方法です。 胸部大動脈瘤:人工血管置換術 腹部大動脈瘤:人工血管置換術 ②ステントグラフト内挿術とは 大動脈瘤の治療としては①のような開胸・開腹による人工血管置換術が一般的ですが、最近では足の動 脈などを露出し、血管にカテーテルを挿入して人工血管(ステントグラフト)を患部に装着するステントグラフ ト内挿術が普及してきています。開胸・開腹による人工血管置換術よりもよりも体への負担を軽くし、入院期 間も短縮することができます。ステントグラフトとは人工血管にステント(バネ状の金属)を取り付けたもの で、それを圧縮して血管内に挿入し、患部で人工血管を広げます。大動脈瘤は切除されずに残りますが、 ステントグラフトにより蓋をすることで血流をなくして動脈の拡大・破裂を防止します。 胸部大動脈瘤:ステントグラフト内挿術 腹部大動脈瘤:ステントグラフト内挿術 また、ステントグラフトによる治療では大動脈の枝をつぶしてしまうような場合には、事前に血管同士をつな いでおいて(バイパスしておいて)、その後にステントグラフトを留置する手術も行っています。 大動脈解離とは 大動脈の血管壁は正常では内膜、中膜、外膜の3層構造をしていますが大動脈解離ではこの内膜に亀裂がで き、その亀裂から血液が外膜側へ流れ込み、血管が2重構造になります。 大動脈解離は、近年増加しつつあり、予後が不良のために注目されている病気です。 突然発症し、放置すれ ば、StanfordA型の場合は発症後48時間以内に50%、1週間以内に70%、2週間以内に80%の高率で死亡すると いわれています。 部位による分類について 部位と範囲により治療方針が異なります。亀裂が上行大動脈に発生する Stanford A型と下行大動脈に発 生するStanford B型に分類されます。 治療方針について 急性大動脈解離のStanford A型では放置すると心タンポナーデや冠動脈閉塞に急性心筋梗塞を合併し致命 的となるため診断がつき次第、緊急手術の適応となります。 Stanford B型は一般的には血圧を下げ、安静にして解離腔の血栓化を待つ保存的治療が選択されますが解 離腔が大きく破裂しかかっている(切迫破裂)場合、または破裂している場合、腹部臓器障害や下肢の血流障 害が認められる場合は手術が必要となります。 急性大動脈解離の手術は動脈瘤手術と同様に人工血管置換術やステントグラフト挿入術を施行します。
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